伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
平成ライダーのお約束といえば、新フォーム登場といえばその力を遺憾なく発揮し圧勝っていうのがお約束ですから楽勝ですよね!(フラグ)
――邪悪なる者あらばその技を無に帰し、《流水》の如く、邪悪を薙ぎ払う戦士あり――
◇◇◇
港区内幸町 03:16 p.m.
「あっ、お待たせしました結衣さーん。お久しぶりでーす!」
「小町ちゃん! うん、こっちこそ急にごめんね?」
お店で優美子と別れた後、私は自分の中のまだ整理のつかない気持ちの答えを探してヒッキーの妹である小町ちゃんの仕事先を訪ねた。
彼女は一昨年の大学卒業後、料理雑誌を刊行している出版社へと就職し今では立派な編集者だ。
「いーえ、未来のお義姉様候補の結衣さんなら締め切り前だって大歓迎ですよ♡ それで今日は……って、まあ大体検討つきますけどね。応接室で話しましょっか?」
「うん。……ここに来る前AGITΩでお昼食べたんだけど、その時小野寺君から差し入れ預かってきたよ。『お仕事頑張ってくださいね小町さん』だって」
「えっ、雄くんがですか? うわやったビーフカツサンドだ♡」
店を出る時預かった紙袋を渡すや否や、眼をキラキラさせて喜ぶ小町ちゃん。
ヒッキーは今も頑なに交際を認めてないけど、この様子を見ると順調なのは一目瞭然だ。
周りで♡マークが乱舞しているのが見えるこのラブラブっぷり正直、羨ましい……。
「ささ、粗茶ですがどうぞ」
「ありがとう。――それでその、ヒッキーの事なんだけどね」
六畳程の応接室に案内されお茶を入れて貰った私はひと心地つきながら私は改めヒッキーやゆきのんの事、2人の気持ちに同調できない……ううん、したくても出来ない自分の気持ちを伝えた。
正直、妹みたいに思ってる小町ちゃんにこんな泣き言みたいな事を言うのは少し情けない気持ちはあった。
けど実の家族である彼女が今の彼の状況をどんな風に捉えているか、どうしても直接聞きたかった。
「小町ちゃんはさ、お兄ちゃんのこと……平気なの?」
「うーん……まあ変身して悪い怪物と戦うとか随分と“似合わないこと”やってるな~とは思いますけど、あの小賢しくて反則じみた解決策ばっか使うお兄ちゃんがそうするって事は、それしか他に手段はないんだろうなーって納得はしてますかね。――お兄ちゃん、口も性格も悪いけど、誰かに手を挙げるとか絶対しない人だし」
「……うん、そうだよね。そんなヒッキーがそうするって事は、それしかない。って事なんだよね」
捻くれた性格をしてても頼ってくる人は絶対無碍にしないし、腰は重いけど一度手を貸すって決めたら最後まで当たり前みたいに付き合ってくれる。
そして問題を解決するためなら自分が傷付く事も、貶める事も厭わない。
そういう人だから――見ず知らずの女の子と犬を助ける為に車の前に飛び込む様な人だから、私達は出会えた。
そういう人だから、好きになった。
今更確認するまでもなくわかりきった事なのに、それでも私は納得できなくて、受け容れられなくて……。
自分よりもっと近くにいて、ホントは不安な筈の小町ちゃんだって分かってるのに……。
「いや、でも、結衣さんの気持ちも全然普通の事だと思いますよ? ていうかぶっちゃけ、凄くありがたいって思ってます。そんな風にお兄ちゃんの事本気で心配してくれる人がいるって、身内として結構嬉しいっていうか、安心できますから」
「安心って……私はただ、不安でモヤモヤしてるだけで、ゆきのんみたいにヒッキーの事、何にも助けられてないし……」
「なーに言ってるんですか。
ただ憤って不満や不安を口にするだけの不甲斐ない私の手を握り、小町ちゃんはどこかお姉さんみたいな表情で諭す。
「だから結衣さんは、そのままでいいんです。納得できないことがあったらぶつかって、心配してあげながら、あの2人の傍に居てあげてください。3人が一緒ならきっと何があったって何とかなりますって!」
「3人なら……うん、ありがとう小町ちゃん」
こんな風にうじうじして、けどそれでもヒッキーやゆきのんの事を考える事が――想い続ける事が2人の為になるって言うなら……ほんの少しだけ、気持ちが楽になった。
2人の事が大好きだって気持ちが、何かの力になるというならこんなに嬉しい事は無いし、その気持ちだけなら、誰にも負けない自信があるから……。
「――――けど何か小町ちゃん、本当にカッコ良くなったね? 何かお姉さんみたいって思っちゃった」
「えへへそうですかー? いやまあ、年下クンと付き合うと自然とお姉さん風吹かせたくなるっていいますかー、ああでも家では結構甘えちゃったりするんですよー♪ という雄くんって意外と…………あっ、こんな時間にする話じゃありませんでした。忘れてください」
尊敬じみた想いを口にする私にその所以が最近お付き合いを始めた彼氏にあると言って惚気話を始める小町ちゃん。
ヒッキーが聞いたら血の涙を流しそう……ていうか昼間から出来ない話って何!?
「いやまあ、こんな事未来のお義姉様方に言うのも失礼なんですけど、ある意味じゃ私結衣さんや雪乃さんやいろは先輩より“大人”と言いますか……フフ」
――あっ、なんだろう? さっきまで尊敬してた筈なのにちょっと小町ちゃんにイラッときた。
高校時代の夏休み明けとか仲良かった娘が『私もう卒業したから、アンタ達とは違うから』みたいな事を言って見下してたのを思い出す。
――ああそういえば高1の時のさがみんもこんな顔してたなぁ。
「その……小町ちゃんって小野寺くんとはやっぱ結婚とか考えてるの?」
「ええ、もう雄くんさえよければ今日にでも籍いれたいですね。ただ雄くんってば妙に頑固なとこもあって『コックとして一人前になって小町さんを養える自信を持ったら俺からプロポーズします!』って言うからまだ当分先なんですけどねー。私的には早くウェディングドレスとか着たいんですけどぉ……フフ♪」
愚痴の体すら成さない惚気話をして身体をくねらせる小町ちゃん。
料理が出来て純朴で恥ずかしげも無く気持ちをぶつけてくれる年下のイケメンな彼氏持ち。
研究は好きだけどあわよくば働かずに生きていきたいとか偶に言う。捻くれてて絶対に自分から言質を取らせない
――あれ、なんだろう? 凄く負けた気がする……。
と、ヒッキーの事を話しに来ていた筈なのにいつの間にか小町ちゃんの惚気話を聞かされ始めた所で応接室の戸からノックの音が聞こえ、私達より少し年上の女性が顔を出した。
「ちょっとごめんね小町ちゃん、この後行く予定だった取材なんだけど……」
「あ、はいはい。5時からですよね。予定変更ですか?」
「うん、ていうか中止になった。何か阿佐ヶ谷の方でまた出たんだって例の未確認なんとかが。ここからも結構近いし、しばらくは外出控えろってTVで言ってる」
「「!!」」
うんざりとした態度で先輩記者さんが告げたその言葉を聞き私と小町ちゃんは一瞬お互いの顔を見合わせた。
またアイツらが出たという事は、そこにはヒッキーと、ゆきのんも……。
◇◇◇
「――――青くなってる!?」
強靱な脚力と高低差のある地形を利用する第6号に苦戦する俺は奴に拉致された雪乃を救おうと渾身の気合いを込めて跳躍。
するとそれまで限界到達点だった5階を跳び越えて奴以上の高さ誇る超ジャンプを発動。
同時にその身体は、それまでの赤く力強い肉体から、細くしなやかな青い体に変化していたのだ。
「自分でそうしようと思ったんじゃないの?」
「いや、何でこうなったか全然わからねえ……」
「ゴグザ(そうだ)! ゴンガゴ ゾ ラデデギダ(その青を待っていた)!」
突然の変化に戸惑う俺と雪乃だったが、そんな俺達とは対称的に第6号は待ちわびたとばかりに俺を指さし、挑発的な態度で迫ってきた。
「くっ……下がってろ雪乃!」
俺は
強靱な脚力にものを言わせた敏捷性と鋭い蹴りをしかけるて来る奴の攻撃を見切り、捌く。
やはりそうだ。
この無駄な装甲と筋肉を削ぎ落とした青い装甲は単純にジャンプ力が増しただけじゃない。
より軽く、よりしなやかに変質したその身体は敏捷性が大きく増していたのだ。
現に先程まで全く捉えきれなかった第6号の動きは完全に読める。
急激な変化も相まって、寧ろ今は奴の動きが緩慢にすら見えた。
「――――ハッ! ゴグゼバブデパバ(そうでなくてはな)! ボギ(来い)!!」
数度にわたる攻撃を全て凌がれたにも関わらず何故か上機嫌といった様子の第6号は、背後に
――更に高い場所で戦おう、ついて来い。とでも言いたいのだろうか?
「……チッ、アイツを追いかける。お前は下で待っててくれ!」
「えっ、ちょ……!」
奴に振り回されるのは業腹だったが当然無視も出来ず、俺は奴に続いた。
10階建てから15階建て、更に其処から20階、25階と階段をかけ上がる様に跳躍を繰り返し、俺達はこの周辺では1番の高い28階建ての高層ビルの屋上で対峙した。
――バカと何とかは高い所が好きってか?
と、心の中で奴をディスりつつ、俺はエセ中国拳法風に身構えて奴の攻撃に備えた。
「ムン!」
「ハッ―――――だああ!」
繰り出される拳と蹴りを躱し、俺は反撃とばかりに奴の腹部に連続パンチを叩き込む。
やはり敏捷性では
――しかし一方で、新たな問題が発生した。
「――フッ、ゾンデギゾバ(その程度か)? ハッ!」
「あっぅ……! 力が、弱くなってるだと!?」
急激に増強した跳躍力と敏捷性の対価とばかりに、パワーが急低下。
装甲も薄くなった見た目通り防御力が著しく落ち、奴の攻撃がさっきの3倍は痛えっ!
「――んの野郎っ!」
先程とは逆に正面からのどつき合いが有利とみた第6号の不敵な態度に苛つきながら俺は膂力の低下を少しでも補おうとより威力のある蹴り打ち込む。
が、これでもまだ弱い。
パンチと比べ多少奴を怯ませられたがそこまでだ。ダメージらしいダメージは殆ど与えられていない。
赤い時にあった内側から燃え上がる様なエネルギーも、弾ける様なパワーを秘めたパンチもキックも見る影がない。
というかぶっちゃけ、パワーに関しては白の時と同じか、ヘタすると以下まであるぞこの姿!?
メリットもデメリットも極端な方向に振り切り過ぎだ……!
「だったら……!」
打撃技じゃ決定打を与えられないなら、『柔よく剛を制する』だ!!
俺は余裕な態度をとる第6号に組み付き、奴を
――しかしそれはとんでもない失策だった。
「ハッ、ザング ン ゴガゴギバ(ダンスのお誘いか)? ――ムン!」
高校時代の選択体育でしかやったことのない俺のにわか柔道は、奴にとって児戯にも等しく俺はあっさりと奴に主導権を奪われてしまう。
組み技は奴の得意分野だった。
奴は手慣れた動きで俺の背後に回って腕を捻り、身体を拘束。
「ジャガバ(じゃあな)」
「なっ……!」
そして容赦なく、俺を地上に向かって放り投げた。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
いつかのテーマパークで乗ったフリーフォール系絶叫マシンなど比較にならない迫力の死への自由落下。
新フォーム登場=鉄板勝利フラグを崩す平成ライダー原点、それがクウガ(爆)
そもそも後輩ライダー達は初見の新形態使いこなしすぎなんですよ!
天才どもめ!(謎の逆ギレ)
そしてクウガがバヅーに敗北した一方、小町に謎の敗北感を覚えるガハマさん(笑)
悪いのは彼女ではなく、命を懸けて怪物と戦う勇気はある癖に女性関係に関しては未だにヘタレな八幡である(笑)