伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
本当にそうしようか、或いはifでも書こうか?
けどこういう意見はいただけて嬉しいのでこれからもどんどんコメントいただければ嬉しいです!
杉並区阿佐谷 06:49 a.m.
「やはり分からないわね……何故あの時、逃げたのかしら……」
城南大学に結衣を送り届けた後に捜査本部に戻った私は少しの休息を取った後、昨日八幡が突き落とされた高層ビルの前に来ていた。
現在、第6号の足取り関しては杉田さん達が捜査を進めてくれているので、私は奴の不可解な退却の意図を調べていた。
あの時、奴は確実にクウガにとどめを刺す事も、その場に居た私達を殺す事も出来た筈なのにしなかった。
そこには必ず何か理由があり、それを突き詰めればその弱点を繋がるかもしれないと思ったからだ。
蝙蝠の特性が反映して光に弱いという弱点を持つ第3号の様に。
しかしあれから科警研の榎田さんにバッタの生態と照らし合わせた上で意見を求めても、当日の天気や風向きなど跳躍に影響のある情報を検証しても、弱点らしい弱点にまつわる情報は得られなかった。
――やはり只の気紛れだった? いや、それにしても唐突過ぎだ。
少なくとも奴は、寸前まで確実に
あの時あの瞬間、私達にとっては幸運というべき『何かしらの要因』があった筈だ……。
何度も周辺を見渡してそれを探す中、一陣の風が吹き抜けた。
先日まで務めていた長野に比べれば大分マシだとは言え、1月末の早朝はやはり冷え込む。
――風? そう言えばあの時も……。
撤退の直前、第6号のマフラーが揺れていた事を思い出した私は、1つの仮説に行き着いた。
奴らは遥か超古代から甦った。
そしてその時代は、今より遥かに澄んだ空気だった筈だ。
つまり、奴らは――
◇◇◇
警視庁 合同捜査本部 09:55 a.m.
「工場の煙? 奴らはそんなもんが原因で逃げたって言うのか?」
「ええ、第6号のものと思われる転落死を発生順に調べた結果からも間違いない筈です」
それまでの捜査状況を共有する為に行われた会議の場で、私は早朝に直感した推察を元に榎田さんに検証して貰い、それの推理がほぼ間違いないだろうという太鼓判を押して貰った情報を発表した。
「最初に事件が発生したのは港区、それから奴は品川・杉並と場所を変えて犯行を繰り返していましたがその犯行は必ず『工場の煙が流れてこない場所』で行われていました。恐らく奴らは古代から復活してまだ数日というのもあり現代の空気、特に排ガスなどに抵抗がないのだと思います」
「銃弾すらものともしない化物がか? そりゃにわかには信じ難いが……筋の通った推理ではあるな」
殺戮を繰り返す怪物達に、環境破壊の是非について咎められた様で、複雑な表情を浮かべながらも、杉田さんを始めとした他の捜査員も首肯してくれる。
更にその中で桜井さんが更に一段、突っ込んだ質問をしてくれた。
「風向き……だとするとある程度奴の犯行場所を絞り込めるということですか?」
「ええ。局地的シュミレーションを行った結果、今日の出現地点は杉並の桃井を中心にした1km圏内に出現する可能性高いと思われます」
そこまで報告したところでこの会議室の中心に座る一条本部長が総括した。
「よし、その一帯を固めよう。杉田くんは杉並署と連携をとって捜索の現場指揮を頼む。桜井くんと高木くんは念の為、二番目に出現確率の高い場所をあたってくれ。何としても奴が次の犠牲者を生み出す前に捕捉するんだ。――頼んだぞ」
『ハイッ!!』
何としても市民の命を守り抜くという意志を感じさせる本部長の激励に続き、力強く返事して足早に会議室から出て行く捜査員達。
発足してまだ3日目だというのにその気持ちは1つだった。
一方、私はスマホを確認して八幡や結衣から連絡が無い事を確認した。
昨夜、結衣からLINEで八幡がやはり研究室におり、今は説得して部屋のソファで寝ていると連絡を受けているが相当が、何の音沙汰もないところを見るとまだ寝ている可能性は高い。
……いや、そもそもあれだけのダメージだ。昨日の今日で復帰できるとも限らない。
少しの逡巡の後、私は今回、敢えて八幡に連絡を入れず杉田さんらと共に犯行予測エリアの巡回に加わった。
◇◇◇
城南大学 考古学研究室 11:12 a.m.
「ふぁああ~……って、もう11時過ぎかよ」
由比ヶ浜に解読を任せた後、泥の様に深い眠りから目覚めたのは横になってからほぼ半日後のことだった。
既に時刻は朝と言うよりは昼に近い時間帯になっており日頃は日曜でも(プリキュアを見る為に)基本早起きな俺は妙な罪悪感を覚える。
しかし一方で身体の方はすっかり快復し、痛み疲労感もない。
回復に大量のエネルギーを用いた為か物凄く腹が減ってる点を除けば至って快調だ。
寧ろ不規則極まる生活を送ってたクウガになる前より体調いいまである。
「すー……」
軽く身体を伸ばして視線を机に突っ伏した由比ヶ浜が寝息を立てており、PCも
俺が爆睡してる間も1人夜を徹して作業してくれたのだろう。
他に机の上には栄養ドリンクの空き瓶と、空になったコーヒーメーカーもあった。
徹夜が苦手で普段はもって1時までなコイツが、本当に力尽きるまで頑張ってくれていたことに若干の申し訳なさと、嬉しさを抱いた。
――ありがとな、由比ヶ浜。
俺は心の中で感謝の言葉を述べつつ、先程まで自分が横になっていたソファに彼女を寝かせて毛布を掛けた。
そういや昨日や初めて赤になった時もこうして雪乃を抱えたけど、変身してたのもあってか色々感触が違うな……うん、感触が、ね?
にしてもコイツ、爆睡してたとはいえよくもまあ男と同じ部屋でこんな無防備に寝てられんな……ってのはまあ、今更か。
早速解読してくれた文章に目を通そうか……とも思ったが止めた。
コイツの頑張ってくれた成果を寝てる間に読むのはちょっと気が引けたからだ。
取り敢えず腹も減ったし、まずは2人分の朝飯……じゃねえなもう。ちょっと早めの昼飯でも買ってこようかと思い、俺は上着を羽織って研究室を出た。
「うっす、ヒキタニくん! 何、これから買い出し?」
「戸部か……」
と、丁度そこで重役出勤を決めた戸部が現れる。
……コイツは良くも悪くも、絶妙なタイミングで顔を出すなぁ。
俺は数瞬の逡巡の末に研究室に入ろうとする戸部を阻み、こいつに頼み事をした。
「ああ、ちょっと飯買いにな。それで悪いんだがな戸部、俺が戻ってくるまでこの部屋入るの待ってくんない? ……中で今、由比ヶ浜が寝てんだよ」
「ん? 結衣も徹夜組? いや、寝かしたいってのは分かるけど、要するに静かにしてりゃよくね? 俺ってホラ、こう見えて寡黙なクール系だし?」
「いや……無防備な由比ヶ浜とお前を同じ部屋に入れとくのが嫌なんだよ。だから黙ってここに立ってて」
「酷くね!? ヒキタニくんってばどんだけ俺のこと信用してないの!!?」
自分でクールとか言っといて早速やかましく俺にツッコミをいれる戸部。
うるせえなぁもう。
「寝てるっつったろもっと静かにツッコミいれろアホ。……別に俺もお前が寝てる女にいかがわしいことするクズだとは思ってねえよ。――――ただ単純に、無防備なアイツを他の男に見せたくないだけっつーか……なんつーか……」
――って、改めて口にすると我ながら恥ずかしいっつーかイタいっつーか、控えめに言っても限りなくキモいな俺。由比ヶ浜本人が聞いたらどんな顔するか……。
……まあ、今更取り繕うのもダセェから否定はせんけど。
「ヒキタニくん……」
そんな俺の言葉を聞いた戸部は珍しく真面目な表情で俺を見据える。
「――
「オマエハナニヲイッテンノ……?」
真面目な顔で、アホな事を言い出した。
「えっ、違うの? 遂にっつーか、ようやく結衣とそういう感じになって、
「全然違うわ! つーか事後るって何だ事後るって!? ただ普通に夜通し解読して寝てるだけだよ!!」
「ぇええ……ちょ、じゃあ何? ヒキタニくんってば別に致した訳でもない
くっ、コイツにどうこう言われるのは心底腹立つがまあ我ながら気持ち悪いとも思うので反論出来ねえ……!
「……笑いたきゃ笑え、キモイって自覚はある」
「ああ、いや笑わねぇよ? つーか笑う訳ねぇべ? 寧ろなんつーか……ヒキタニくんのそういうトコ、俺結構好きだぜ? うわあ! 今の何かマブダチっぽくね? うけるわマジで!」
普段わりかし辛辣な態度取ってる俺としては、日頃の恨みとばかりの嘲り覚悟してたのだが、戸部から反ってきたのは、意外な好意の言葉だった。
ったくコイツは、普段ただただウザいのに偶にこういう事を不意打ちで言うからずりぃよな。
「うけねえし別にマブダチっぽくはねぇよ…………まあ、サンキュ」
だからついうっかり、友達なのかと勘違いしちまう。
「まあ、そういう事ならしゃーないな。ここで待って他の奴が入ってこないようにすっから早く飯借ってきなよ。あっ、俺ウィザー
「って、何気に人をパシらせてんじゃねえよ」
「ついでついで♪」
と、最後にオチをつけつつ俺の要望を聞き入れる戸部に背を向けつつ、俺は研究室を後にした。
因みに戸部が言ってたウィザー堂とは元マジシャンとその助手だったという若い夫婦が経営してるドーナツ専門店でキャンパスに近く学生からの人気も高い。
因みに俺はプレーンシュガーが1番美味いと思う。
まあ(頼んでねえけど)門番までやってくれてるし、駄賃がてらにいいだろう。
店とコンビニも近いし、俺は徒歩で校門を抜けようとするが、そこでトライフォンが鳴った。
「――って、非通知?」
この端末から掛かるのは原則雪乃だけの筈だが、画面に表示されたのは匿名希望の発信者だった。俺は警戒しながらも通話アイコンをタップする。
『………………比企谷八幡くんだな? 未確認生命体第6号が行動を再開した』
電話越しに聞こえたのは威厳と力強さを感じさせる男性の声であり、その内容は本来雪乃が告げるものだった。
「アンタ何者だ? どうして俺の事を知ってる?」
突然、且つあからさまに怪しい通話相手に敵意を込めた声で尋ねる。
まさかとは思うが俺の正体に気づいた警察だの国だのが身柄を拘束する為の罠という可能性も考えられる。
そして何より問題なのは雪乃の安否だ。それが確認できない以上、俺はこの通話相手を信用できない。
『悪いがそれは話せない。立場上、俺は君を“知らないことになっている”人間なんだ。だがこれだけは断言する。――俺は彼女の味方だ』
「っ! …………場所は?」
しかしそんな俺の警戒心など見透かす様に、男は俺に対し最も琴線に触れる言葉を口にした。
ここで薄っぺらに『俺は君の味方だ』なんて言われた日には即刻通話を打ち切る所だったが、その言葉には……理屈や不信感を払拭する確かな誠意が感じられた。
だからって速攻で信用するほど俺だってチョロくもないが、少なくとも未確認を餌にしておびき寄せる様な浅はかな事をする人間じゃないということは、不思議と直感できた。
『場所は杉並区荻窪の噴水公園だ。現在第6号は警官隊と交戦中、雪ノ下くんも現場に向かっている』
――あのバカ! 俺の体調にいらん気を遣って連絡入れなかったのか!? ったく!
「すぐ向かう」
通話を着ると同時に俺は一旦駐車場に戻り、停めていたトライチェイサーを起動させる。
――悪いな由比ヶ浜、昼飯は少し遅れそうだ!
◇◇◇
警視庁 警備部長室 11:32 a.m.
「頼んだぞ。――比企谷八幡くん」
一条さんと八幡の電話越しの初邂逅。
因みに八幡は本編の態度を見ればお判りでしょうが、微妙に一条さんのことが気に入らなかったりします。
何故か?
電話越しに伝わる一条さんの『デキる男オーラ』がなんか腹立つからです。
イケメンが好きな男はそんなにいない(笑)
というかゆきのんの近くに謎の男(推定イケメン)がいるのが若干面白くないって感じです。
ガハマさんの寝顔関連もそうですが八幡は八幡なりに、彼女たちに不器用な独占欲をもっていたりします。