伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

35 / 53
三連休投稿三本目投下!

ホントはこの話でバヅーには逝ってもらう予定でしたが思いのほか字数が増えそうだったのであと一本分をもってドラゴンフォーム覚醒編(適当)を終わらせたいと思います。

それから後半の連休中に投下予定の次のシリーズですが、バチス戦の間の空白期のエピソードを描き、そこでまだ目立った活躍をしてない(出てきてはいる)ヒロインにスポットが当たる予定です。




EPISODE:34 勝利の女神に水の心を解かれ、戦士クウガは龍の技を体得する。<2>

杉並区 荻窪 11:43 a.m.

 

「撃てぇえええええっ!!」

 

昼時の噴水公園に響き渡る銃声。

 

東京のどこにでもある筈の近隣住民の憩いの場は、銃を携えた警官隊と異形の怪物による命懸けの戦いが繰り広げられる戦場と化していた。

 

「ハッ、ボンバロボバ(こんなものか)? ――ムン」

「うわああああああああっ!!」

 

十数名で包囲し、八方から弾丸を浴びせられる状況下にあって尚、ス・バヅー・バには焦りも危機感も、自らの命を奪いに来る者への怒りすらなかった。

 

否、寧ろ嘗ての時代――逃げ惑う腰抜けリントを追い回すだけだった古代のゲゲルでは味わえない『細く脆い牙や爪で反撃する脆弱な戦士』を対象とした狩りは、新鮮で楽しくすらあった。

 

――全く以て、今のリントは面白い。愛すべき獲物、楽しい玩具達だ!

 

そんな――命懸けで戦う警官等にとっては全く嬉しくない――賛辞を心の中で送りつつ、バヅーは着実に殺害者数(スコア)を稼いでいく。

 

そして総合53人目の獲物を仕留めたところで、昨日仕留め損なった一際印象に残る者が姿を現した。――彼が“クウガの女”と呼ぶ、この時代でも珍しいリントの女戦士だ。

 

「コラゲ バ(お前か)。ゾグギダ パ クウガ(クウガはどうした)?」

 

既知の間柄であるとばかりに語りかけるバヅーに対し、女戦士は表情を硬くしてこの時代の弓を構えた。そして意味の通じぬ言葉を当然の様に無視しながら、共に現れた仲間の戦士に指示を出した。

 

「…………杉田さん、桜井さん。負傷した人達のフォローお願いします」

 

「ああ! ……無理はするなよ雪ノ下?」

 

そして愚かにも効かない事はわかりきった矢を放ち単独で挑んでくる。

 

――全く以て勇敢で愚かな、殺し甲斐のあるイイ女だ!

 

基本リントなど十把一絡げとして扱う彼らにしては珍しい、個体への好意を抱きながら、バヅーは彼女をバギン グ ギブグ ビン レ(丁度54人目)の獲物として定めた。

 

 

◇◇◇

 

 

第6号から向けられる虫酸の走る視線を感じながら、私はライフルの引き金を引く。

案の定奴にはダメージらしいダメージは与えられていないようだったが、今はそれで良い。

 

今の私の目的は奴を倒す事ではなく一時的にでも引きつけて負傷した警官を避難させること、そして間もなく到着する増援が来るまで時間を稼ぐことだ。

 

――何故だか奴らに対して、妙に目を付けられやすい点には些か複雑な感情を覚えるが、今はそれを利用させて貰う。

 

「っ!」

 

対未確認用にと科警研が急遽仕上げてくれた高性能ライフルを放つ。

 

しかし第6号は飛来する弾丸をまるでドッジボールの球を避ける様な動作でそれを躱し、その強靱な脚力を駆使し一瞬で間合いを詰めた。

 

「ゴパシザ(終わりだ)」

「雪ノ下さん!」

 

軽く叩く様な所作で――私達人間にとっては――致命傷になる一撃を見舞おうとする第6号。

 

しかしその攻撃は寸前で割り込んだ同僚――桜井さんの介入で私には届かず、代わりに彼の方を掠めた。

 

「桜井さん!?」

「クッ……だ、大丈夫。掠っただけですから……アグ!」

 

身を案じる私を逆に気遣う様に振る舞う桜井さんだが、未確認の攻撃だ。大した事がないなんて事はある筈がない。

 

苦悶の声をあげて蹲る彼に、第6号は無情に距離を詰めてくる。

 

「ギブグギギ(死ぬがいい)」

 

何とか少しでも接近を阻もうと銃弾を撃ち込んでも意に返さない。

くっ、このままじゃ……!

 

そんな窮状にバイクのエンジン音が鳴り響き、漆黒の車体が私達と6号の間に割って入ってきた。

 

「その人を早く逃がせ!」

「はちまっ……! 貴方、どうして!?」

「誰かさんがいらん気を遣ってくれたお陰ですっかり治った。言いたいことはあるけど、今は下がってろ! ――――変身っ!!」

 

第6号の出現を連絡しなかったことに苦言を呈しつつ、彼は腹部に手をかざしベルトを出現させる。

 

中心部が青く輝くベルトはいつもとはことなり起動音を響かせながら彼の姿は昨日と同じ青い戦士(クウガ)に変貌させた。

 

「こっちだ!」

 

そして、第6号を私達から遠ざける様に跳躍し奴を誘導、数十メートル離れた階段上で、人間の域を遥かに超越した動きを見せる2人の戦いが再開された。

 

 

◆◆◆

 

 

城南大学 考古学研究室 11:30 a.m.

 

「ん~……あれ? あたしどうしてソファで……って、そっか、ヒッキーが運んでくれたんだ……」

 

昨日……ていうか今日の明け方か、まで解読を繰り返してようやくヒッキー達の言ってた『青いクウガの使い方』が解読できたあたしは力尽きて寝ちゃったんだっけ……。

 

スマホの画面を見れば時間はもうお昼近くで、ヒッキーはいない。ご飯かな?

 

予定より大分遅れちゃったけど何とか未確認が出る前に間に合って良かった……あれ? ヒッキーが居なくて、お昼って……もしかして!

 

嫌な予感がしてラジオをつけてみる。

すると案の定、あたしが思った通り未確認生命体の出現ニュースが流れていた。

 

――ヤバい! 完全に寝過ごした!!

 

ここに居ないって事はヒッキーももう出ちゃったんだよね!?

 

どうしよう!? まずは2人にメール……ああ、でも戦ってる最中とかならマナーモードとかにしてるよね()()

 

そうなると絶対確実に伝えるには……。

 

直接戦ってる場所に行くしかない。

その結論に達したあたしはすぐにニュースで知った出現場所に向かおうと思ったけど、そこで足が床に縫い付けられた様に動かなくなった。

 

頭の中に浮かぶ、人を玩具みたいにバラバラにする第零号の影と、目の前で次々に人を殺していった第1号の凶行。

 

怖い。

自分からそんな奴らの居る場所に向かおうとすると、早く行かなきゃという気持ちに反してどうしても身体が動かなかった。

 

 

『――頼りにさせても貰うわね、由比ヶ浜さん』

 

『頼っていいか由比ヶ浜? 俺はクウガの力をちゃんと使いたいんだ。これ以上、未確認(あいつら)に好き勝手させたくねえ』

 

 

そんな恐怖心に足が竦むあたしの心に勇気を与えてくれたもの――それはゆきのんとヒッキーの言葉だった。

 

――そうだ。あたしはもう、2人の手を離さないって決めたじゃないか!

 

怖いのが何? そんなのヒッキーだってゆきのんだっておんなじに決まってるし!!

ていうか、2人がいなくなっちゃう方が何倍も、何十倍も怖いし!!!

 

あたしは金縛りに遭ったみたいに足を強引に動かし扉を力強く開けた。

 

「うおっ! 何だ結衣起きたの?」

「とべっち!?」

 

するとドアの前では何故か部屋に入らずスマホを弄ってるとべっちがいた。

何で!? ていうかいるなら入って起こしてくれれば良かったのに! バカ!!

 

――と思ったところであたしはことを思い出し、とべっちに詰め寄った。

 

「とべっちって確かスクーター通学だったよね? お願い! ちょっと貸して!!」

 

「うぇ!? 何々どうしたの? 急に「急いでるの! 訳は後で話すからお願い!!」……ってわーったわーった。駐車場に止めてる黒いベスパな」

 

「うん! ありがと!!」

 

戸惑いながらも原付の鍵を貸してくれたとべっちに感謝の言葉を残し、あたしは急ぎ足で駐車場へ向かって原付の起動させる。

 

――ぶっちゃけ原付とか教習所で乗ったっきりなんだけど……まあ、ヒッキーとか結構簡単に乗り回してるし大丈夫だよね!?

 

「よーし、待っててねヒッキ……キャアアアア~~~~!!」

 

アクセルを思い切り回したら前輪が浮かんだ! ヒッキーがよくやってる奴だけど怖い!!

……ごめんとべっち、ひょっとしたら借りたバイク、無事に返せないかもしんない。

 

 

◇◇◇

 

 

――いきなり青ってマジかよ!?

 

正面で構える第6号――ズバズバ? を見据えながら俺は内心、焦っていた。

 

確かに赤で挑んだところで昨日の序盤戦の焼き直しになるのは関の山だろう。

 

しかし、かといって未だ能力の全容が把握出来て折らず、且つ昨日コテンパンに叩きのめされた紙装甲のこの姿で奴と対峙するのには抵抗がある。

 

というか赤も青もこいつに対しては性能が極端(ピーキー)過ぎるんだよ!

両方を足して2で割る位が丁度良いっていうか……紫とかならいい感じなんじゃねえの?

 

「…………ハッ、ラダカゴ ゼ ザギジョブバ(また青で大丈夫か)?」

 

そんな俺の戸惑いを見抜いたかの様に鼻で笑い、小馬鹿にした振る舞いをする6号。

やっぱ腹立つなコイツ……。

 

しかし弱気を見せた所で手心を加える奴じゃないのは確かだ。

不用意に隙を見せれば、今度こそ殺される。

 

弱みを見せるな、比企谷八幡。

自信がないなら虚勢を張れ、戦い方が分からないなら戦いながら探れ!

 

考えろ、どうすればこの戦いに生き残れるのか? どうすれば守れるのか?

 

答えが出るまで、考え続けろ!!

 

「ボチャチャブ ゾ ヅベス ゾ クウガ(決着を着けるぞクウガ)! ムン!!」

「ハッ!」

 

挑発らしき言葉を口にすると共に距離を詰めて迫る6号。

俺はその接近を素早く回避すると同時に奴の背中を捉え回し蹴りを叩き込むが、やはり軽い。

 

しかしやはりこの青い姿はスピードにでは完全に奴を凌駕していることが確信できた。

 

常に相手の動きを注視し続ければ早々ダメージを負うことはない。

後はそう、低下したパワーを補う術だけなのだ。

 

それが判明するまで、徹底的に粘ってやるぞ!

 

不退転の決意を胸に、俺はこの強敵との最後の戦いに挑んだ。

 




八幡の頼みを聞いただけなのにガハマさんに心の中でバカと言われたり愛車がスクラップのフラグが立つ戸部に合掌。

一応言っとくと作者は別に彼のこと嫌いじゃないです。
というかヘイトキャラ代表のさがみんなども含めてこの作品のキャラは大体好きです。

が、彼にはこういう「トホホ」な役回りが似合うのでこの様にしました。

……まあ多分、作中で1番イジメることになるのは他でもない八幡になるんだと思いますが(苦笑)

次回こそ決着をつけます!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。