伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

36 / 53
バヅー戦決着!

本当は明日投稿しようかとも思ったのですが連休終わりで憂鬱な人が一人でも楽しんでいただきたいと思い、投稿しました(笑)




EPISODE:35 勝利の女神に水の心を解かれ、戦士クウガは龍の技を体得する。<3>

『雪ノ下、負傷した奴らの搬送は桜井を含めて完了した! 第6号はどうだ!?』

 

「現在『青い4号』と交戦中です。戦況は……今のところは拮抗しています」

 

再び青い姿に変身したクウガ(八幡)と第6号がライフルの照準を定めるのも難しい機動力で動き回る中、私は杉田さんと互いの状況を無線で連絡し合う。

 

近隣住民の避難はほぼ完了し、第6号を逃がさない為の包囲網も完成しつつある。

後は決定打となる一手、奴をこの場で仕留める決め手さえ在れば……。

 

『そうか。俺も増援が到着次第すぐ合流するからそれまで何とか4号の援護を……ってオイ! こっから先は通行止め『ごめんさ~~い!』っておわあああ!』

 

「杉田さん? どうかされましたか!?」

 

そう考えてる折、無線越しにどこか聞き覚えのある悲鳴と杉田さんの叫び声が耳に入った。

まさか他の仲間の未確認が!?

 

『ああ、トラブル発生だ。何考えてんだかスクーターに乗った若い姉ちゃんが通行止めを無視してそっちの方に走っていった!』

 

若い女性? それにさっき無線で聞こえた声……もしかして!

 

「杉田さん、そちらの女性は私が対応しますので、引き続き増援の到着を待ってください!」

 

謎の闖入者の正体を直感した私は直ちに杉田さんに“彼女”の追跡は不要と連絡を入れその到着を待つ。――程なく、非常に不安定且つ明らかな違反速度で1台のスクーターが私の視界に入ってきた。

 

「あっ! ゆきのん!! おーい……ってキャアアアアア!」

「結衣っ!?」

 

明らかに不慣れな運転に加え、片手を離して脇見の末、横転。

 

――こんな時に言う事じゃないけど結衣、貴方は二度とバイクに乗ろうとしちゃダメよ……?

 

 

◇◇◇

 

未だ全容の掴めない“青の力”を用いた第6号との戦闘。

しかし人生やはり失敗を糧に得るものってのはあるんだろう。

 

情報源(ソース)は勿論、童貞ボッチな俺の25年の人生だ!

 

昨日ボコボコにされた経験と能力の性質の近い第6号(コイツ)との戦闘の中で、俺はこの姿の性質を何となく理解しつつあった。

 

「ハァ……ハァ……」

「フッ、ギガギ ド ギヅドギバ(意外としぶといな)! ザバ、ゴバシザ(だが、終わりだ)!!」

「くっ……!」

 

激しい動きの連続で消耗しつつも相手の動きに対応し、攻撃の方向を僅かにずらした上で逆にその勢いを利用した掌低(しょうてい)を叩き込む。

 

決定打にはならないが赤の時の様な力任せのパンチよりダメージは通るらしく、6号は僅かに呻き声を上げる。更に底から一歩下がって回し蹴り。

 

こちらもハンマーを叩き込む様な赤の時とは攻撃の意識を変え、重さではなく遠心力とスピード活かした“鞭”をイメージして叩き込む。

 

そうして2,3発叩き込んだら深追いはせずまた距離を取る。

昨日奴が披露したヒット&アウェイ戦法の俺風アレンジだ。

 

当初、俺はこの青い姿が単純に『余分な装甲と筋肉を削ぎ落とした軽量化』と認識していたが、それは誤りだった。

 

いや、確かに装甲も体重も著しく減少したのも事実だが、それ以上に大きいのは『筋肉の質の変化』だ。

 

無論俺も専門家ではないし、あくまで本やTV、それから体育教師をしている天使……じゃない戸塚の話を聞き囓った程度のにわか知識に基づく推測だが。

 

“赤のクウガ”が『力任せに敵を打ち倒す剛の戦士』なのに対し、

 

“青のクウガ”は『そのしなやかさで相手の力を受け流す柔の戦士』なのだ。

 

スピードや跳躍力はあくまでそれを十全に活かす能力の一部であり、その本質はその細くとも柔軟なしなやかさにある。

 

――と、何だか神髄を理解した感を出したりしたがそうは言っても現状は相変わらず厳しい。

 

相手の動きに合わせたカウンタースタイルは常に敵の動きに注視していなければならず、肉体的にも精神的にキツいのだ。

 

加えて殺しがライフワークみたいな奴と貧弱な大学院生の俺とでは、例え同等の強靱な肉体を持っていても戦闘に於ける『動きの練度』に差があり過ぎる。

 

(スピード限定で言えば)スペックは完全に勝っているとしても、奴は徐々に俺の拙い動きに順応してきている。

 

そして何より、最も問題なのは『決定打の不在』だ。

 

機動力では優位に立てる。

柔軟な動きを忘れなければ敵の攻撃も無効化できる。

 

だが勝つために不可欠“攻撃力”がこの青にはないのだ。

 

「フン、チョグギ ビ ボスバジョ(調子に乗るなよ)!」

「っ! …………ぐぅう!」

 

そうした懸念を抱えた綱渡りの様な戦いの均衡が崩れたのは、それから程なくの事だった。

 

疲労によって反応が一瞬遅れた俺は、追いかけっこの中で動きの精度を増した6号に遂に押さえつけられてしまったのだ。

 

「ゴバシザ(終わりだ)……!」

 

左腕で右腕を、右腕で首を締め付けて、俺の動きを完全に押さえつける6号。

 

単純な力では勝ち目がない俺は1度組み付かれたが最後、脱出は困難だ。

 

クソ……!

 

「八幡!!」「ヒッキー!!」

「っ!?」

 

そんな絶対絶命の窮地に立たされる中、一発の銃声と大事な人達の声が、俺の耳に響いた。

そして勝利を目前にした第6号の側頭部には一発の銃弾が命中していた。

 

――雪乃はともかく何で由比ヶ浜がここに!?

未確認に人一倍恐怖を覚えていた筈の彼女の出現に俺は一瞬、思考が固まる。

 

「……チッ!」

 

一方、後一歩という所で横槍を入れられた6号はあからさまに機嫌を悪くし彼女達に迫る。

俺も慌ててそれを追いかけようとするが、その瞬間、由比ヶ浜は声でそれを阻んだ。

 

「待ってヒッキー!! そこにある手すりでも何でもいいから何か“長い物”を掴んで!! ――それが青いクウガの戦い方なの!!」

 

「長い物……っ!? わ、分かった!!」

 

この状況で何を言ってるのかと理解に一瞬掛かったが、俺は由比ヶ浜の言葉を即座に実行に移し、目の前の手すりを蹴りで力任せに引きはがし、手に掴む。

 

刹那、掌からエネルギーが流れ込むのを感じ、それを受けた手すりは全長1mの青に金色のラインが入った“棍”に変化。

 

更に青い宝玉が埋め込まれた先端がスライドし、変身した俺の身の丈=2mの長さに伸長した。

 

――そうか、これが欠けていた攻撃力を埋める最後の欠片(ピース)って事か!!

 

難解なパズルが組み上がった様な喜びもそこそこに、俺は数秒遅れで奴を追いかけ跳躍。

 

ライフルを構える雪乃と震えながらへたり込んだり悲鳴を上げたりせず、気丈に身構える由比ヶ浜ににじり寄る奴の前に立つ。

 

――昨日も思ったけどな……。あんま気安く俺の大事な人達(コイツら)に近づいてんじゃねえぞこのクソバッタ!!

 

先程戸部にドン引きされた感情にも似た、身勝手な嫉妬心を滾らせて俺は棍を叩き着ける。

 

気持ち悪い? 上等だ!

拗らせてようが重かろうが知ったことか!

お前らみたいな奴らに、絶対奪わせたりするもんかよ!!

 

「ハアアッ!」

 

身体のしなりと遠心力を利用して、横薙ぎに奴の顔面に左右一度ずつ叩き着ける。

 

「ガッ……!」

 

するとそれまで打撃では怯むだけで奴が呻き声をあげ動きを怯ませた。いける――!!

 

それまでになかった確かな手応えを感じながら俺はそれから反撃開始とばかりに二度三度と棍を叩き込む。

 

「ウゥ……バレスバ(なめるな)!!」

 

そんな怒濤の攻めに耐えかねて捨て身の反撃を試みる6号。

だが無駄だ。全長2mの棍は突き出せば奴の拳も足も届かない。

何より、攻撃を受け流す事に関しては素手の段階から完全に出来ている。

 

攻撃・防御・速度、全てに於いてこちらが上にたったのだ。

 

「グゥ……ウゥウウ……!」

 

度重なる棍による打撃を受け、既に第6号(ヤツ)の動きは鈍り、得意の煽りを口にする余裕も失われていた。

 

――ここで決める!

 

「おぅううらあああああああっ!!!」

 

そう決意した俺は全身のバネを最大限に利用して跳躍し、降下する勢いを加えた棍による渾身の打突を、奴の胸に叩き込んだ!!

 

その瞬間、棍の先端から先程の武器変化の時に近い、エネルギーの流動を感じた。

そして、その感覚が事実であることを示す様に、奴の胸には1号や5号を倒した時と同じ刻印

が浮かび上がっていた。

 

「……っ!! ……ウグッ……ガァ………アアアアアアアアアッ!!」 

 

その刻印を中心に全身に走るエネルギーの亀裂。

第6号は何とか堪えようとするが叶わず、亀裂が腹部の装飾品に達した所で、爆散した。

 

「…………ふう」

 

それを見届ける同時に、俺は構えを解いて深く息を吐く。

 

一度ボコボコにされた上での本当の本当に紙一重。

由比ヶ浜が来てくれなければ間違いなく殺されていた辛勝だが、とにかく……勝てた。

 

「ヒッキー!」

 

緊張状態から解放されると同時に変身解除した俺の元に由比ヶ浜と雪乃が駆け寄る。

 

危ない真似しやがって――なんてのは言えないな……。

今言うべき言葉は別にある。

 

「ありがとな。本当に助かった――お前がいてくれて、本当に良かった」

「えへへ……うん、どういたしまして!」

 

感謝の言葉を受け――久し振りに見た気がする――満面の笑みを俺に向ける由比ヶ浜。

 

ワンコの様な屈託のない笑顔、それは俺が……俺達が守りたい世界(日常)の象徴だった。

 

「さて、んじゃボチボチ警察も来るだろうし後は警部殿に任せて退散するか、帰りにメシでも喰ってこうぜ。今日のお礼に奢ってやる」

 

買い出しに行く途中だったことを思い出し、今更ながら空腹を訴える腹の主張に気付く。

 

「あー、うん。……えっとねヒッキー? ご飯もいいんだけど、さ。お礼なら……別のがいいかな? あたしもその……ゆきのんと同じで」

 

ところが由比ヶ浜は笑顔から一転してまた伏し目がちになり、モジモジと何かを要求する。

 

何だ? 雪乃と同じって…………あー!

 

しばし考えた末に気付き、若干照れ臭い気持ちになりながらも意を決し、リクエストに応じる。

 

「わかったよ…………ゆ、結衣」

 

「っ! ダハァ! 何かヤバい! 何かとっても恥ずかしい!! 顔熱い!」

 

「って、た、頼んどいて照れるなよ……余計にハズいだろ……」

 

「だって~~~!」

 

本人が言う様に顔を真っ赤にさせ、身体をクネクネさせる悶える結衣。

大げさなんだよお前……戸部とか葉山にはずっと名前で呼ばれてたじゃねえか。

 

「……で、お前は呼び方どうすんの? 俺は別にどっちでもいいけど」

 

「あー……どうしよっか? は、はちまん……って無理! 流石にそれまだちょっと無理! しばらくはまだヒッキーでお願い!」

 

いやお前、呼び方を変えるだけでなんでそんなに顔真っ赤にして照れてんの?

テンションおかしくない? てかヒッキー呼びのが恥ずかしい気もするのは俺だけ?

 

呼び方1つ変えるだけでこの有り様ってそれ以上になったらどうな……ゲフンゲフン! 何でもないですスミマセン。

 

「いきなり名前の呼び捨てが恥ずかしいなら、間を取って“ハッチ-”なんてどうかしら?」

 

「いや、お前はお前で何言ってんの? 俺はみなしごのミツバチじゃねえよ」

 

そんな俺達を見かねて(?)、妙な折衷案を提示する雪乃。

こいつ、偶に大まじめにボケるとこあるよな昔から……。

 

「……まあ、呼び方なんて変えたい時に変えりゃいいんじゃね? ヒッキーでもハッチ-でも八幡でも、お前が呼びたい時に呼びたいように呼べばいいさ。待っててやっからさ」

 

「ヒッキー…………うん!」

 

これ以上この話をすると俺も結衣も悶え死ぬかもしれんので一旦纏める。

そろそろ撤収しないと雪乃の同僚に鉢合わせしそうだしな……。

 

すると雪乃は何かを思い出したように結衣に尋ねた。

 

「そういえば結衣、貴方の乗ってきたスクーター、かなり派手に横転したけど大丈夫?」

 

「へ? …………あああっ忘れてた! どうしようヒッキー!? とべっちの原チャリだ!」

 

「あん?」

 

浮かれまくっていたから急に現実に戻され、ドラえもんに泣きつくのび太くんみたいな表情で俺に縋る結衣。

 

どうやって大学からここまで来たかと思えばそういう事か、ペーパードライバーの癖に無茶しやがってからに……。

 

「大丈夫大丈夫、戸部って超いい奴だからきっと笑って許してくれるって。心の友の俺が言うんだから間違いない」

 

「ヒッキー……こういう時だけとべっちのこと友達扱いするよね?」

「心の友って言い方も、映画でだけいい人になる音痴なガキ大将みたい胡散臭いわね」

 

アレ? 俺はただ結衣を励まそうとしただけなのに微妙に責められてね?

 

……まあ、実際問題、バイクの弁償は俺持ちって事になるんだろうなぁ。――助けられた結衣に払わせるのは論外だし。

 

その後、修理代の補填の為に先日断ったけーちゃんの家庭教師のバイトをする受ける事になったのだが、それはまた別の話。

 

博士号を取る為の論文作り、未確認との戦い、店の手伝いときてバイト――俺がゆっくり録り貯めたアニメを消化できるのは、まだ当分先みたいだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「フン、ショゲンバヅー ロ ゾン デキゾ バ(所詮バヅーもこの程度か)」

 

――この時、俺達は知る由も無かった。

 

倒した第6号の死に様を覗き、嘲りに来た見えざる死神の存在を……。

 

そしてそいつがもたらす悪意の爪が、俺の身近に迫っていたことも……。

 

この先に待ち受ける。苦い苦い、悲劇も……。

 

――そして俺は知ることになるのだ。

 

戦う力を持つ事の、本当に苦しみを……。




いかがだったでしょうか?

八幡は五代と違い武術の心得がないのですがその分持ち前の思考力を頼みにドラゴンフォームの特性を分析し、碑文解読前にある程度性質を理解した感じです。

ガハマさんの「ヒッキー呼び」はしばし継続、すぐに八幡呼びできないのはゆきのんとの差を出したかったからだったりします。

そして戸部のスクーター弁償の為にバイト始める八幡

戦闘:ゆきのん
大学:ガハマさん、ルミルミ
店の手伝い:いろはす
バイト:川崎姉妹

日々の生活がどんどんヒロインに奪われ、そのプライベートは既に風前の灯です。

信じられるか?
これで童貞なんだぜこの25歳?(爆)

次回はオリジナルストーリー、かなりビターな感じになると思いますが、お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。