伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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以前からお話しした番外編スタートです!

本編の時系列とは別の物語、本筋とは関係ない短編を書いていこうと思います。

そして第1弾は投稿日が丁度誕生日のいろはすメイン!

キャラの誕生日に合わせて短編みたいなのはこの先も書きたいと思うので何かやって欲しいネタがあったらメッセや活動報告のところに書いていただけると嬉しいです!


番外編
EXTRA EDITION:01 相変わらず一色いろはは甘え上手である。


3月11日 渋谷区恵比寿駅周辺 05:18 p.m. 

 

「フッ――おりゃああああああああああ!!」

 

渋谷に程近い、封鎖された公道で行われた1時間以上に及ぶ追撃と殴り合いの末、キツネに似た未確認生命体第17号の胸に、俺は決め手となる右脚の跳び蹴り叩き込む。

強烈な熱と衝撃が伝播し、浮かび上がる《封印》の古代文字。

 

「グゥウウ……アッ、アアアアアアアアアア!!」

 

そこから伝わるエネルギーは奴の肉体の上を光る亀裂となって走り、それが腹部の鬼か悪魔を模した様な形状のバックルに伝わった所で奴は他の連中の例に漏れず、木っ端微塵に爆発した。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……!」

 

俺がクウガとなって戦う様になって、早一月半。その撃破数は今回で14体。

 

……慣れてきた。

そういう言い方は甚だ遺憾だったが、実際『奴らを殺す手際』が良くなっている。

 

――それがどうしようもなく、虚しかった。

 

◇◇◇

 

未確認撃破後も当然の流れで行われる奴らの死骸などの発見する現場検証が行われ、数十名の警察官が忙しなく動き回っていた。

 

「お疲れ様」

 

その様子をトライチェイサーを脇に停め眺めていた俺に、雪乃はMAXコーヒーを手に声をかけた。

 

対策班の中心である彼女も、取り敢えずは小休止出来る程には状況も落ち着いてきたらしい。

 

俺は受け取ったMAXコーヒーのプルトップを開け、甘~いコーヒーを喉に流し込む。

 

少し前まではホット一択だったが、桜の開花も近いこの位の時期になると冷たいのも飲み心地が良い。激しく身体を動かし、疲労が蓄積した今なら尚更だ。

 

ポレポレ()でマッ缶を飲むとおやっさん、浮気した夫を無言で咎める妻みたいな目を向けて来るんだよなぁ。

コーヒーとマッ缶は別物として受け入れてほしいのだが……。

 

一方、雪乃は同じく自販機で買った午後の紅茶(ストレート)に口を付け、しばし2人無言で肩を並べ現場検証の様子を眺めた。

 

5分程そうした後、俺は雪乃に視線を向けず尋ねた。

 

「…………今回は何人殺された?」

「……スクランブル交差点で奴が正体を現して暴れ出した段階で一般人が29人。駆けつけて応戦した警察官が4人。――今回で未確認生命体事件の犠牲者総数は250人を超えたわ」

「……多いな」

 

おぞましい数を聞いて俺は飲み干したMAXコーヒーのスチール缶を力任せにグシャリと握り潰してしまった。

 

日曜昼下がりの渋谷スクランブル交差点。

多くの人間が文字通り交差するその場所で、第17号は怪人態に変身し、休日を満喫する人々を恐怖のどん底に叩き込んだ。

 

そして逃げ惑う人々の中から目に付いた順に片っ端から殺してまわり、雪乃から連絡を受けて俺が駆けつけるまで警官含む33人の命を奪ったのだ。

 

各未確認生命体毎の犠牲者数で言うなら、2日間で53人の犠牲者を出した第6号に次ぐ数だ。

 

所在が掴めない以上、どうしても後手に回らざるを得ないとはいえ、誰かの犠牲を以てしか奴らの出現を確認できない状況がもどかしい。

 

そしてそれは雪乃も……否、警察全体としても、同じ様だ。

 

「今、未確認生命体の出す特殊なフェロモンを嗅ぎわけられる警察犬を訓練して奴らのアジトを特定する作戦を進めているわ。上手くいけば近い内、掃討作戦が実行に移せると思う」

 

「そうか……。まあ、1体ずつでもわりかしいっぱいいっぱいなとこで何匹も纏めてって考えるとそりゃそれで怖いけど……やるしかない、か」

 

「ええ」

 

未だクウガの力以外で奴らに対し決定打を与えられない。

 

そのクウガ()ですら、果たして徒党を組んだ奴らを相手にどれだけ出来るか……。

 

しかしそんな様々な不安要素を度外視した上でも、例え命懸けの作戦になるとしても、一刻も早く奴らを一網打尽にしなければならない。

 

それは雪乃を初めとした全ての警察官の意志であり矜持。

そして戦うと決めた俺自身の覚悟でもあった。

 

――本当はもう、誰一人だって奴らに殺されたくないのだ。

 

「解読の方はその後どう?」

 

「引き続きクウガの能力関係の碑文を中心に進めてる。――多分なんだが後1個か2個、別の姿があるっぽい。どんな力があるかはまだ分からんけど」

 

「そう、出来るなら必要に迫られる前に把握しておきたいわね。6号や14号の時みたいなぶっつけは、見ていて心臓に悪いわ……」

 

その後も俺達はしばらく今後の方策についてあれこれ意見を交わし、やがて捜査員は一時撤収というタイミングで解散した。

 

若い男女が休日に交わす会話としてはあまりに殺伐としていて、色気も何もあったものではない。

 

だが変な話、高校時代から彼女とこうして『成すべき事の為に必要な会話』をする時間は存外居心地が良かったりするのが不思議だ。

 

「解読も大事だけど徹夜なんかはほどほどにしておきなさい。能力が解明できても使う貴方が疲労困憊じゃ冗談にもならないわよ?」

「分かってるよ。その辺は結衣にも散々釘指されて、もう解読はあいつが主導で進めてる」

 

そうして最後にお母さんっぽい注意を促して彼女は本庁に、俺はポレポレへと帰って行った。

 

◇◇◇

 

文京区茗荷谷駅 09:20 p.m.

 

「あっ、先輩遅いですよ-! もうっ」

「いや、急に呼び出してもうとか言われても困っちゃうんだけど……お前、俺を呼べば当たり前の様に来る召喚獣か何かと勘違いしてない?」

「え~、だってぇ……寂しかったんだもん☆」

「あー、ハイハイ、いろはすあざと可愛いよー」

「うわ、何ですかその薄味対応……、24でこれやるの流石にちょっと恥ずかしいですからもっと気合いの入ったリアクション取ってくださいよ」

「恥ずかしいなら止めろよ……」

 

雪乃の忠告を聞いてその日は研究室に寄らずポレポレに戻った俺はおやっさんと2人夕飯時のお客さんを捌ききり、店の看板をCROSS-Z(クローズ)……じゃないCLOSE(クローズ)にし、自分達の夕飯の支度をしていた。

 

しかしそこへ閉店時を狙った様なタイミングで今日は大学の友人の結婚式という事で店を休んでいた一色から『引き出物超重いので迎えに来てください』と電話が掛かってきたのだ。

 

俺は内心だったらタクシーでも拾えよと文句を言いつつ、駅の改札で待つ彼女を迎えに来た。

 

披露宴の二次会でそこそこ飲んだのか、普段よりおめかしした彼女の頬はほんのりと赤いが、さりとて足取りや呂律に異常も見られず、まさにほろ酔いといった様子だ。

 

というかコイツ、こう見えてメッチャ酒強いから簡単には酔わないんだけどね。

 

「ホレ」

「ん、どもです」

 

そんな彼女の持って欲しいと言われた引き出物(確かにちょっと重い)を受け取る。

 

コイツの借りているマンションとポレポレは丁度この駅を挟んで徒歩20分程の距離にある。

つまりこの駅からなら10分程、俺はとっとと送って帰ろうと歩き出すが、そんな俺の袖を一色はちょこんと摘まみ、止めた。

 

「折角だからちょっと遠回りして歩きません? 酔い覚ましもしたいので」

 

相変わらず計算の行き届いた上目遣いでの懇願。

……ったく、開き直った上でわざとらしくやる所がズルい。

本っ当コイツは年上に甘える才能に溢れてるな。

 

俺はもう半ば諦めの境地で彼女の提案を聞き、一色のマンションへ15~20分程掛かるルートをゆっくりと歩き始めた。

 

「しかしアレだな? お前って同性の友達とかいないかと思ってたけど、卒業後とかもちゃんと交流のある奴もいたんだな」

 

「失礼ですね先輩と一緒にしないでくださいよ。けどその娘ったら酷いんですよ? ご祝儀奮発してブーケをこっちに投げる様にお願いしたのに、コントロールミスって中学生のとこに投げちゃうんですもん。つまりその娘が結婚するまで私達お預けですよ!?」

 

「いや、たかがブーケ1つにどんだけ根回ししてんのお前? ていうか何? そのブーケにかける熱い執念? お前まだ全然焦る歳じゃないだろ」

 

「いやいや、言っても私、来月でもう25ですよ? のんびりしてたらあっという間に行き遅れちゃいますよ」

 

いやそれお前、1コ上の雪乃や結衣も遠回しにディスってない?

2人共気にしてないっぽいけど当人達の前じゃ言わないようにしようね?

多分八つ当たりされるの俺だろうから。

 

「あーあ、なんやかんや二十代前半には結婚してると思ったのに全く……先輩の所為ですよ?」

 

「いや、知らんがな……」

 

ええ、何その『ゴルゴムの仕業』『乾巧って奴の仕業』『己ディケイドォオオ!』並の暴論?

俺の存在と一色の結婚年齢の因果関係について、是非とも理論的に説明して貰いたいもんだ。

 

そんな不条理な会話をしばし続けていると、やがて俺達は桜が植えられた並木道に差し掛かった。無論、まだ開花まではしばし掛かりそうだが。

 

「……桜、見頃は再来週くらいですかね? 今年は雪ノ下先輩もいますし、皆でパーッとお花見行きましょうね!」

 

「えぇ、また約束かよ……まあ、御苑辺りなら考える」

 

「ええ~あそこお酒NGじゃないですかぁ! ノンアルでお花見とかありえませんよぉ!」

 

「俺は桜の下にシート敷いて宴会花見より、のんびり歩いて回る散歩花見派なんだよ。ああいうバカ騒ぎ好きくないし」

 

東京には上野公園をはじめ花見スポットはあちこちあるが、個人的には新宿御苑が1番落ち着いて桜を楽しめる。

 

200円かかる上アルコール持ち込み禁止。4時には閉館と制約も多いが、手入れの行き届いた苑内をのんびり歩いたりベンチで日向ぼっこしながら本を読むのは、何か贅沢な休日の過ごし方だと思う。余談だが雪乃も御苑派だ。

 

しかし……

 

「お前、最近やたらあちこち出掛けようって提案するけど、怖くないの? 今日だって渋谷に未確認出たって大騒ぎだったぞ」

 

未確認生命体の出現して以来、世間は不要な外出に対し自粛ムードが広がっている。

都内近郊から地方への移住を検討する世帯も少なくないというニュースも聞く。まるで疎開だ。

 

無論誰も彼もがそうしてる訳じゃないが、コイツの場合寧ろ雪乃が戻ってきたのを口実に例年以上に出掛けよう遊びに行こうと提案してきている。

 

実際遭遇していない。奴らの事をニュースなどでしか知らない人間からすればそんなものなのかもしれないが、警戒心がなさ過ぎるのも心配になる。

 

「いやいや、そんなこと言ってもあんな変な化物相手の所為で外に出掛けられないとなんか悔しいじゃないですか! 引き籠もったら負けですよ」

 

何か『働いたら負け』の亜種が出たなオイ。

まあ、こんなご時世でここまで図太く生きられるってのは、尊い事だと言えなくもないな。

 

「それにホラ、悪い事する未確認は皆“4号”がやっつけてくれるじゃないですか!」

「っ!」

 

そんな話題の中、俺は一色の口から自然にでは名にギクリとした。

まさかコイツ……気付いてないよね?

 

「お前もおやっさんと同じで4号肯定派なの?」

 

「んー、まあどっちかと言うとは……ですかね? ホラ、4号って何かちょっと先輩に似てるじゃないですか? 群からはぐれてるボッチ未確認的な!」

 

「…………ああ、成程ね」

 

世間一般の認識では第4号()は奴らと同じく超古代から甦った同族。

つまりは『未確認生命体社会におけるはぐれ者』というのは言い得て妙な見解だ。

 

って、化物の世界でも孤立(ボッチ)扱いとかどんだけ筋金入りなんだよ!

 

「どうしたんですか先輩? 何だか凄いやるせない顔してますけど」

 

「いや、何でも無い……それで話戻すけど、別に4号は出てきた未確認やっつけるだけだから来る前に襲われたら危ないことには変わらないと思うぞ?」

 

「えー、だったら4号が来る前は先輩が私を守ってくださいね♡」

 

いや、無理だから、4号俺だから。

と心の中でツッコミつつ、無論本当のことなど言えるわけ内ので「えっ、俺を盾にして逃げんの?」と嫌そうな顔をして返答した。すると一色は逆ギレのごとく不機嫌になった。

 

「も~、なんですかその顔は~!? 可愛い後輩が『守ってくださいね♡』って頼ってきてるんですよ? そこはキリッと顔を引き締めて『可愛い後輩を守るのは当然だろ?』って囁くか、せめて鼻の下伸ばして満更でもない顔する所でしょう!? なってません!」

 

「先輩のリアクションにいちいちダメだしする後輩も充分なってない気がするんですけど?」

 

いろはすの要求する先輩像の要求値が高すぎて辛い……!

 

「フフ、まあ流石に身を挺して庇ってくださいとは言いませんけど、お花見には出掛けましょう! 結衣先輩とか雪ノ下先輩とか小町ちゃんとか誘って!」

 

甘えたり文句言ったりわがまま言ったり、コロコロ表情を変えて振り回

こういう所は本当に高校の頃から変わらない。

……変わらないからこそ、一緒に居て安らぎを覚え、同時に彼女の強さを感じた。

 

得体の知れない化物が跋扈するこの町の中で暮らしても、変わらず周囲の人間を引っ張り振り回す。アグレッシブで人使いの荒い後輩。

 

こいつとの約束は俺が帰るべき日常への道標になってくれている。

 

こいつに振り回されるこの日常が、俺がまだ化物でも、化物を殺すために身体を作り替えられた生物兵器でもない人間・比企谷八幡であることを自覚させてくれる。

 

――そう思えるならきっと、こういう時間も悪くないんだろうな。

 

「……まあ、取り敢えず行く方向で考えといてやるよ」

「はい♡ 言質取りましたからね? 後でドタキャンはなしですよ?」

「へいへい」

 

夜風はまだ冷たいが、不思議と肌寒さはもう感じなかった。

 

春はもう、すぐそこまで来ている。

 

【オリジナルグロンギFILE.1】

 

未確認生命体第17号 “メ・ギネ-・ダ”

メ集団に所属するキツネの特性を持つグロンギ怪人。2018年3月11日に行動を開始。

ゲゲルのノルマは『4時間で54人』。人が集中する日曜日の渋谷スクランブル交差点の真ん中で怪人態に変身。パニックになる人々を嘲笑いながら目に付いた人間を片っ端から殺害していった。

リント(人間)が慌てふためいたり恐怖する様子を見るのが何よりも好きだと考える愉快犯。人間態の時はサイケデリックな装いが多いメ集団の中では比較的普通の服装を選んでいるのも人混みに溶けやすくして、より自分が変身した際のインパクトを強調する為である。

まさに人間を化かすキツネの様な行動スタンスだが一方で彼自身は特に特筆した能力があるわけではなく、殺人手段も俊敏な動きと爪で命を狩るのみ。

 

警官隊と交戦中に駆けつけた“赤のクウガ”と交戦後、地力の差を痛感し恵比寿方面に逃走するがトライチェイサーの追跡。数時間に及ぶ戦闘の末、最後はマイティキックで倒された。

 




原作クウガ9話では五代雄介が妹のみのりに「もう戦うの慣れちゃった?」って中々ヘビーな質問されたことがありましたが、今回は「戦う事=相手を倒すことになれてしまった八幡の自己嫌悪」とグロンギの出現に良くも悪くも適応しつつある社会みたいなのを書きました。

そんな中で一色の存在が八幡にとって帰るべき日常を象徴してくれる。と
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