伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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前回『今後は更新速度が大幅に落ちるかも』といいましたが今回は思いのほか早く書きあがったので投稿します。

ただやはりこちらの執筆に割く時間が減少するので頻度は落ちると思います。




EPISODE:45 何となく、比企谷八幡はズ・ゴオマ・グにイラッとする。

千葉県柏市 科学警察研究所 11:37 a.m.

 

雪乃から連絡を受けて先日訪れたばかりの科警研に到着した俺はエントランスで待っていた雪乃と合流し、ここの責任者である榎田さんの元へと向かった。

 

「急に呼びつけてごめんなさい。今回の敵の特性を話す前にまずは凶器の現物を見てもらった方が良いと思ったの」

 

「凶器? 今回の奴は武器でも使うのかよ?」

 

今回の未確認はいつぞやの蝙蝠野郎と同じ飛行能力を持つとは事前の連絡で聞いていたが、予想だにしていんかった追加情報に俺は首を傾げた。

 

これまで基本的に人間の数十倍の力を誇る怪力にものを言わせた素手で殺人を行ってきた。

 

もっと言えば余計な道具を使わなくても人の命など簡単に奪える奴らであると言えるが、そんな奴らが更に武器を使うという事実は、衝撃的だった。

 

もっと言えば武器を振り回す奴と戦うというのは、素手と素手で戦う以上に恐怖が伴う。

 

敢えて言おう、要するに俺は、ちょっとビビってます。

 

「それも含めて仔細はこれから……失礼します」

 

そんな俺の質問を一旦流しつつ、雪乃は榎田さんが待つ第2分析室と書かれた部屋にノックをして入室する。

 

「あっ、待ってたわよ雪乃ちゃん! それからえーと……比企谷四幡くん!」

 

白衣を羽織って長い髪を束ねた化粧気はないが気取らない魅力のある隠れ美人・榎田光さんが、ナチュラルに人の名を間違えながら声をかける。

 

ていうか勝手に半分にされちゃったよ!

 

「混ざってますよ榎田さん。未確認生命体第“四”号の比企谷“八”幡くんです」

 

「あーごめんごめん! ぶっちゃけ雪乃ちゃんの彼氏の4号くんって情報しか頭に残って無かったわ」

 

「気にしないでください。彼は昔から人に名前を覚えてもらえない事が特技みたいな男ですから。それと彼氏じゃありません」

 

「いや、何でお前がフォローしてんの? 確かにその通りだけど……」

 

何だか俺というサーヴァントの主人(マスター)みたいなノリの雪乃に思う所を感じながら“ヒキタニ”だの“ヒキオ”だの“ヒッキー”だの言われてた高校時代を思い出す。

 

……いや、ていうか今も普通にそう呼ばれてるな?

最近なんかそこに“クウガ”だの“第4号”だのも加わってるし、俺は野良猫の“イッパイアッテナ”か?

 

「それより例の針は?」

「あー、うん。丁度分析終わったところだよ」

 

そう言って榎田さんは証拠品に指紋がつかないようにと透明なビニール素材の袋に入った直径20cm程ある巨大な“針”を取り出した。

 

「分析の結果だとスズメバチの毒針のそれと極めて近い特性を持ったものみたいね」

 

「やはりそうでしたか。ここに来る途中、関東医大の監察医から送られた報告でも、直接の遺体はアナフィラキシーショックを起こしていたそうです。他には何かありますか?」

 

関東医大――てーと葉山が調べたのか。

6号との戦いの後本人から未確認関係の検死を担当する事になったとってたけど、忙しそうだな……。

 

「うん。アスファルトの陥没状況や針の状態をからざっと計算すると多分、千mから2千mの上空から放たれたんだと思う」

 

「2千m……八幡、青のクウガでそこまで跳べる可能性は?」

「ねえな」

 

右手を顎に添えた思案顔で尋ねる雪乃に、俺はスッパリと断言する。

 

第6号との戦いでその力を遺憾なく発揮した青のクウガは確かに赤と比較にならない跳躍力を持つがそれでも精々30mちょいが限界だ。今回は桁が違い過ぎる。

 

「そう。そうよね……そうなると対抗手段はヘリからの狙撃くらいしか思い浮かばないけど……」

 

「1件目と2件目の犯行場所の距離から推定される飛行速度は時速200kmよ?」

 

「人間と同じ大きさな上その速さで飛び回る奴を狙い撃つってのは現実的じゃねぇな」

 

一先ずライフル弾で未確認に致命傷を与えられるかという問題をさておくにしても、幾らゴルゴやシティーハンターばりの射撃技能のある雪ノ下警部殿でも“高度数千mで空を飛び回る人型の存在”を射貫くなんて芸当出来るわけがない。

 

それどころかヘタに上空で対峙しようものならヘリが撃墜される可能性すらある。

 

『空を飛ぶ怪人』なんてのはソレこそ特撮番組じゃ腐る程いるが、実際問題現実に居て尚且つ飛び道具まで使われた日には、いっちゃあ何だが『ほぼ無敵』と言っていい存在だ。

 

ハッキリ言ってクソチート野郎である。どこかに転生してハーレムでも作ってろという話だ。

それでもソイツを倒さなければならないというならば、最も確実なのは――。

 

「何とか14号の動きを掴んで、奴が地上に降りてきた所をボコる。これ一択だな」

 

虫だろうと鳥類だろうと、羽のある生物だって四六時中空にいる訳ではない。

飛翔という行動が歩いたり走ったりするのと同じ運動行為である以上、必ず休息する時がある筈だ。

 

そんな文字通り『羽を休めている』瞬間を襲撃し、飛び立つ前に仕留める。或いは羽を引きちぎる。わざわざ奴らの土俵で勝負してやる義理など、何処にもないのだ。

 

「粗の多い作戦だけど、今の段階だとそれしかなさそうね……。問題は14号の動きだけど“ヴヴヴ、ヴヴヴ”――ちょっと失礼。――もしもし杉田さんですか? ――――ええ、――――はい、ちょっと待ってください。……榎田さん、地図と書く物をだしてくれませんか?」

 

対策を検討中、震えたスマホを取った雪乃は通話をしながらペンとメモを取り出して通話相手から伝えられる情報を書き込んでいく。

メモを覗けば、それは都内の地名と時刻だった――成程。

 

雪ノ下警部殿の意図を察した俺は榎田さんが用意してくれた関東平野の地図にマジックで書き出された場所に印を付け、それを時刻順に線と線で繋いでみた……ビンゴだ。

 

犯行の時間と時間の感覚は、1分前後の誤差こそあれどほぼ15分。

犯行場所と次の犯行場所の間には直線でほぼ等間隔。

そしてそれらを繋ぐと、螺旋を描く様に時計回りで移動を繰り返していた。

 

この時間差と動きの法則性は、奴が無意識に行ってる習性的なものなのか、或いは意図的に行っているものなのかは分からない。

 

だがこの法則性に則れば、少なくとも次の大凡の犯行時刻と場所は割り出すことが出来る。

 

そうして割り出すと次の犯行時刻は今から約10分後、場所は北区か……。

クソ、流石にこっからじゃ間に合わないな。

 

俺は内心で舌打ちしながら螺旋を描いた地図を通話中の雪乃に見せ、瞬時に理解。

 

「――ええ、そうです。北区の赤羽周辺です。時間は11時55分前後。難しいかも知れませんが可能な限り屋内への避難を呼びかけてください。――私と4号は、次の犯行予測地である葛飾区の方へ向かいます」

 

その上で電話相手に指示を出し、可能な限りの対策を唱えた上で次善の策を打ち出す。

 

「行くわよ八幡」

「おう」

 

通話を終えると同時に指示を出した彼女に返事し、俺達は分析室を後にする。

 

「2人共気を付けてね! ――――ていうか、本当に息ピッタリねぇ。何で付き合わないのかしら?」

 

 

◇◇◇

 

 

千葉県内公道 11:59 a.m.

 

 

前方を走る八幡のトライチェイサーと共に第14号の『次の次の犯行予測地』と黙される葛飾区へと向かう中、警視庁の通信網に合わせた無線に、新たな情報を報せる警報が鳴り、対策班のオペレーター・笹山さんの声が響いた。

 

『警視庁より各警察車両へ入電。第14号は北区赤羽1丁目で1人を殺害。現在は次の犯行予測地と思われる葛飾区へと飛行中と推定されます』

 

やはりダメだったか……。

第14号の飛行パターンが判明した段階で次の狙撃まで10分を切っていた為、完全な避難誘導は難しいと思っていた。

 

しかしそれでも、『その時、その時間に殺人が起きる』と分かった上で止められなかったのははやり忸怩たる思いがある。

 

だがそれでも奴らが殺戮を続ける以上、私は――私達は止まる訳にはいかない。

例え犠牲者の遺体を道標にする様な不甲斐ない手段であれ、僅かでも可能性があるのなら――。

 

「八幡」

『分かってる』

 

トライチェイサーの無線機を介し、同じ通信を聞いた八幡もまた心中は同じらしく、語気に静かな闘志を滲ませながらマシンを加速させた。

 

北区での犯行を実現させた以上、第14号が引き続き『螺旋の軌跡』に沿って次の殺人を起こす可能性は非常に高い。

 

また、先程より幾分か時間的に余裕のあるそちらの避難誘導が上手く完了すれば、業を煮やして地上に降りてくるという可能性も考えられる。

 

何とか上手く、そこを叩けさえすれば――!

 

 

◇◇◇

 

 

葛飾区内・上空 00:13 p.m.

 

「……チッ、リントゾロレ、ボゴボゴド(リント共め、こそこそと)」

 

本人の預かり知らぬ所で|人間≪リント≫達により未確認生命体第14号と呼称されるようになったスズメバチ種のグロンギ“メ・バヂス・バ”は苛立っていた。

 

既に次の“針の生成”が完了しているにも関わらず、獲物として都合の良い、外を出歩くリントの姿が見当たらないのだ。

 

その予兆は、先程の狩りの段階であった。

バルバから聞いた紺色の服に身を包んだリントの雑兵達が、やたらと声を張り上げて『スミヤカニヒナンシテクダサイ』と呼びかけていた。

 

ボザンやザギーと違い、リント族の言葉など覚える気のないバチスだがそれらの言葉が自身の針を警戒する物であることは直観的に理解した。

 

――どうやら、愚鈍なリント共の中にも多少頭が回る奴らがいるらしい。

 

ゲゲルは大切な儀式であると共に楽しい遊戯と捉えるバヂスにとって、多少の妨害や障害や寧ろ歓迎して然るべきものだ。

 

しかし、だからといってこうも早い段階で対策を講じられるというのは面白くない。

 

なのでバヂスは、そんな忌々しい紺色の服を着たリントの尖兵を次の獲物として選定した。

 

程なく、リントの尖兵が良く駆る『白と黒の鋼の馬車』が緩慢な速度で走り、他のリント共に隠れるように促しているのを発見したバヂスはテリトリーである高度数千m上空から急降下。

 

時速20km前後の速度で付近の住民に外出厳禁を呼びかけるパトカーの前に降り立った。

 

「う、うわああああ! じゅ、14号っ……!」

 

突如舞い降りた約2mの異形の姿に車を急停止させ、戦慄する警官。

それでも、警察官としての矜持と使命感からパニックに陥り駆ける懸命に己を律し、運転席の脇にある無線機に手をかけようとする。

 

だが、そんな制服警官の意志力を踏みにじるかの様に、バチスはパトカーの正面から右手をかざし、毒針を射出。

 

「―――――――ギベ!」

「うっ……!!」

 

放たれた毒矢は一瞬の内に警官の胸を貫き、死に至らしめる。

 

地上に降りた以上、態々(わざわざ)一発撃つに15分掛かる針など使わず直接手にかけることも出来た。

 

これは愚鈍なリント達に『自分が殺した』と知らしめる。言わばサイン。

こそこそ隠れた所で、貴様らの運命は変わらないという、身勝手な宣告でもあった。

 

カチリ、と左手に装着したグゼパの輪を1つずらしてカウントを重ねたところで、バヂスは自身に、ねっとりとした嫉妬と羨望の籠もった視線を向ける存在に気付いた。

 

全身を黒ずくめのコートと帽子、更にはサングラスという徹底した黒一色の装いに身を包んだ男が居た。

 

現代人の認識で言えば――その異様な雰囲気も含め――発見次第即110番通報が妥当な純度120%の不審者の名はス・ゴオマ・グ。

 

未だ己の立場を理解せずゲゲルの機会を願い、もしそれが与えられたのなら間違いなくリントもクウガも蹴散らしてみせる。

ついでにあの白く美しいリントの女戦士の首筋にこの牙を……! と野心を燻らせる『自分はやれば出来る子だ』と信じて疑わない。ポジティブグロンギであった。

 

「ジュンチョグ、ザバ……(順調、だな……)」

 

それ故に、ゴオマは自分と同じ飛翔能力を駆使して順調にスコアを稼ぐバヂスが羨ましくて仕方がなかった。なんなら『お前、俺とキャラが被ってるんだよ』まである。

 

実際、己が彼の下位互換であるとは思いもせずに……。

 

「――フン、ゴラゲサ ドバ ヂバグ(お前らとは違う)」

「っ! …………ギギッ」

 

一方、バヂスはバヂスでそんなゴオマの嫉心やゲゲルへの渇望を理解した上で、見せ付けるようにムセギジャジャ(プレイヤー)の証であるグセパを見せ付け、ハッキリと言い捨てる。

 

つけ回されるのは鬱陶しいが、歯ぎしりをしながら自分を羨む彼を見下すのは、気分が良かった。

 

しかし、そんな一瞬の戯れが、彼のゲゲル達成に思わぬ影を落とすことになった。

 

「――っ! ザセザ!」

 

つい今し方、バヂスが放った毒針と似て非なる鉛の矢が、彼の左手首を掠め、これまでのキルスコアと共に、それを刻んだグセパを地に叩き落としたのだ。

 

一瞬呆気にとられた後、激しい怒りを覚え矢の放たれた先に視線を向けると、そこには自分に対し欠片の恐怖心も抱かず、力強い眼差しと共に銃口を向ける黒髪の美女――雪ノ下雪乃がおり、その背後には、黒いバイクを停車させた青年――比企谷八幡が睨み付けていた。

 

「ッ!! ゴラゲパ(お前は)……!」

 

その姿を捉え、怒りに震えるバチスより先に動き出したのはゴオマだった。

 

今が満足に活動できない日中だと言う事も忘れて怪人態に変身し、翼の浮力を活かして跳躍。

 

古代からの宿敵であるクウガの継承者である八幡――ではなく、むしゃぶりつきたくて堪らない。自分好みの最上の首筋をした雪乃に意識を集中させ、飛び掛かる。

 

「ギギィイイ!! ッシャアアア!」

 

「っ! 第3号!?」

 

――噛みたい! むしゃぶりつきたい!! 恐怖に涙を浮かべながら死ぬ様を見たい!!

 

歪んだ性癖と執着が交ざった殺意を向け、飛び掛かるゴオマ。

しかしまたしても、彼のその願望は叶わない。

 

「――変身っ!! オラアアアアアアッ!!!」

 

雪乃にめがけて飛び出したゴオマの顔面には、固くて重い――戦士クウガの拳が飛来したからだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「クキャアアア……! アッ、アアアアアアアアッ!!」

「雪乃、大丈夫か!?」

「え、ええ……」

 

俺達……いや、恐らく雪乃の姿を発見するや否や理性の吹っ飛んだケダモノ、もしくは不二子ちゅわ~んにダイブするルパンばりの勢いで飛び掛かってきた第3号。

 

雪乃に向けられたその血走った目付きが何故だか無性に腹立たしかった俺は、思考が伴うより先に腹部にベルトを出現させ、即座に赤いクウガへと変身。

 

他の者などまるで目につかない第3号のキモ不愉快な顔面に右拳を叩き込む。

 

ノーガードでこれを受けた3号は5m程ふき飛んだ後、地面を転がり周り、次いで今更ながらに日中であったことを思い出したのか? 今度は身体が焼けただれる苦痛にのたうち回った。

 

――前から思ってたけどコイツ、実はスゴいアホな奴なんじゃないのか?

 

というかお前、どんだけ雪乃に執着してんだ……ぶち殺すぞ?

 

「待ちなさい八幡! 今優先すべきは14号よ。……3号は私が相手するわ」

 

パンチの傷みと日の光に焼かれる苦しみに転げ回る3号に対し、俺は好機とばかりにとどめを刺そうと踏み出そうとするが、そんな俺を雪乃は呼び止め、より危険度の高い14号を先に倒す様に指示する。

 

事実、ずっと上空で人を射貫いてきた奴が降りてきた今はまたとない好機だ。しかし――

 

「少しは私を信じなさい。問題ないわ。ああいう下卑た視線を向ける輩への対応は慣れっこよ。――今は私より、守るべき人達の事を優先しなさい」

 

そんな俺の逡巡を悟った雪乃は窘める様に俺に14号討伐を指示する。

それは間違いなく正論なんだが……。

 

「……俺に取っちゃ、お前もその『守るべき人達』の1人なんだけどなぁ」

「っ! ……そういうのはいいから、行きなさい」

「……分かった。無茶するなよ相棒」

「善処するわ――相棒」

 

きっと後で思い返すとこっぱずかしくなって身悶えるやり取りをしながら、俺は第14号に向かい突進し、雪乃は人間態に戻って逃げ出そうとする3号を追撃した。

 




何か本作のゴオマさんってば登場する度に変態度が増してる気がする(爆)

けど個人的には違和感ないんだよなぁ……変態首フェチ蝙蝠怪人って(笑)

そしてそんな変態に迫られるゆきのんを見て猛烈にイラっとする八幡。

男の嫉妬は見苦しいとはいいますが、それだけ彼女の事を大事に思ってるということでw
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