伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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ペガサスフォーム発動回です!


八幡視点で超感覚を描写するの難儀しました。
常人の数千倍の感覚で見える世界って想像もつかないし(笑)


EPISODE:47 天馬の力は発動し、比企谷八幡は、拡大する世界の情報に圧倒される。<2>

葛飾区 00:26 p.m.

 

14号から振り落とされ、近場にあった7階建て程のビルディング屋上に落下した俺は、叩き着けられたダメ―ジに悶えるのもそこそこに起き上がり、追撃に備えた。

 

2月半ばの空は雲一つない快晴だが、吹き荒ぶ風は強く――変身中は然程そう感じないが――冷たい。

 

俺は上空をぐるりと見渡して、この青空のどこかで飛び回る14号を何とか捉えようとするが、やはり全く見つからない。

 

変身中は視覚も聴覚も、常人と比較しておよそ数十倍程度まで強化されている。

だが、どこを見ても視界には真っ青な空しか映らず、どれ程耳をたてても風の音しか……いや、待て。なんだこの音?

 

風の音に混じって、ごく僅かに“プーン”という夏場に蚊が耳元を通り過ぎた様な音が聞こえた。

 

……これは、そうか。奴の羽のお――

 

「ハッ!」

「ぬおっ!?」

 

聴覚に意識を集中して気付いた異音の正体に気づいた刹那、俺は急降下した14号の跳び蹴り喰らい転倒。慌てて振り返ってみたが、奴はまた素早く上空に飛び立ち姿を消した。

 

嬲り殺しにしようってことかよ……!

 

俺は再び耳を澄まして意識を集中し、先程聞こえた奴の羽音を捉えようとする。

……ダメだ。先程は奴が接近していたから聞こえたが、恐らく今は高度を上げているのだろう。風の音や近場を通過する電車の走行音以外、殆ど何も聞こえない。

 

一旦隠れるか?

いや、ここで俺が下がれば奴はまた空から人を狙い撃つ。

逆に俺がここで食い下がっていれば、少なくともその間だけ奴はこの場に留まる筈だ。

 

逃げに走るな。

ここで奴と遭遇出来た事自体がそもそも幸運なんだ。

 

――絶対にこの場で、仕留めるんだ!

 

――――――ドクン!

 

何処だ…………!

何処だ……!!

何処だっ!!!

 

聴覚だけじゃない。身体をすり抜ける風の流れや視界の端に映る塵にまで意識を傾ける。

全身をレーダーにする様に、奴を捉えようとした瞬間、ベルトからこれまでと違う音が響き、直後――世界が拡大した。

 

「っ! うっ……ぐぅううう……な、何だコレは!? ――って、また色が変わってる!?」

 

腕や胸の装甲が気がつくと緑色で左右非対称の物に変化している事に遅れて気付く。

だが今の俺はその変化に意識を向ける事すら出来ない状況に陥っていた。

 

空を見上げていた視界にはまるで風――大気の流れが可視化した様に見えた。

 

耳には風と電車の走行音以外、遥か遠くの車のクラクションを鳴らす音や犬猫や赤ん坊の泣き声、雑談の声。果ては聞いた事も無い音――超音波か?――まで入ってくる。

 

それ以外、触覚も嗅覚も、それまでと比べものにならない位に鋭敏化し、それらの膨大な情報が激流の様に脳に流れ込んできたのだ。

 

「あああっ……ぐぅう! し、死ぬ……! あ、頭が……破裂する……!!」

 

戦闘中であるにも関わらず膝を衝き頭を抱え、俺自身の意志とは無関係に流れ込む情報という毒に脳が蝕まれる。

世界が何倍にも膨れあがり、押し潰そう迫ってくる様に感じた。

 

このままいっそ気絶でも出来たら……などと考えた所で俺は、今が戦闘中であり、同時に“自ら望んで”この状況に陥っている事に気がついた。

 

――そうか。これが例の『彼方より邪悪を捉える戦士』なのか

 

赤坂を殺したあの『見えない未確認』に対抗する為に調べた姿だが、成程。

考えようによっちゃ時速200kmで空を飛び回る奴も『普通は見えない敵』って解釈できなくもない。――で、あるならば、やる1つだ。

 

「ぐぅうう……!!」

 

俺は依然として頭の中に流れ込んでくる感覚情報にグロッキーになりながらも立ち上がり、流れ込んでくる無数の雑音の中から、奴の羽音にだけ意識を集中させる。

 

――聞こえる。

それまでよりもずっと鮮明に、耳障りな翅の音が、徐々に近づいてくるのが……!

 

「ぐっ……そこか!」

「バビッ(何っ)……!?」

 

先程と同様に背後から飛び蹴りを仕掛ける14号。

俺はそれを――自身でも驚く程――正確に察知し、紙一重のタイミングで躱した上で腕を掴む事に成功した。

 

「よう。会いたかったぜハニー? オラアアッ!」

 

左手で奴の右手首を握りしめつつ、俺は渾身の右ストレートを叩き込む。

今度こそ逃がさん。ビルの下に叩き落とした上でキックを叩き込んでやる!

 

 

……と、考えたのだが、ここで思わぬ落とし穴があった。

 

「……ハッ、ゾンデギゾナ(その程度か)?」

「クッ、この姿もパンチしょぼいのかよ!?」

 

そう、緑に変化したこの姿のクウガはまるで感覚機能の増強に反比例する様に著しく身体能力が低下していたのだ。腕力の強さは多分、青とどっこい位か?

 

そしてそんな緑の弱点(非力)をこの一撃で把握した14号は、逆に好機とばかりに俺の身体を強引に掴み返し、力任せに俺を屋上から投げ飛ばした。

 

「って、またこの()()かよおおおおおおっ!?」

 

唐突に発動した新たなる変身能力、それを持て余した末のビルからの落下。

6号との初戦とほぼ同じ展開に、猛烈な既視感を覚えつつ、俺の強化された肉体は、地面に叩き着けられた。

 

 

◇◇◇

 

 

「待ちなさい!」

「ギギィ……!」

 

八幡が第14号と戦っていたその頃、私は意味不明な突撃をした末にクウガに殴られ、挙句は自ら天敵である日の光にその身を晒し、(ほぼ自爆で)ダメージを負った第3号を追撃した。

 

今現在、優先すべきなのは無論14号の撃破だ。

少なくとも日中は脅威度の低い第3号は一先ず捨て置き、八幡の援護に回るという選択肢もあった。しかし逆に考えればこの状況は殺害すら難しい未確認生命体の1体を生け捕りにする絶好の好機でもあった。

 

日中満足に変身出来ない第3号をなんとか行動不能に追い込んだ後、常時強い光を当てた部屋などに拘束すれば、これまで不透明だった奴らの殺人の目的や生態などを知る足がかりとなる。

 

また、仮に奴が何も話さなかったとしても、最悪始末した後その遺体を解剖すれば生物的な弱点を知る手がかりになる可能性が高い。

 

また、奴らと近い生物的特性を持つクウガ=八幡からベルトを取り除く術が見つかるかも知れない……。

 

いずれにしてもこうして日中、それも手負いの状態の奴と遭遇できたのは好機読んで然るべき状況だ。

私は前方で日の光を浴びて著しく弱り、人間態で逃げ去ろうとする3号の背後から銃を構えた。

 

――迷うな、人間態の姿の今なら……!

 

全身黒づくめの、どう見ても純度100%の変質者に銃口を向けながら、私は自身の中でほんの僅かに芽生えた躊躇を思考から捨て発砲する。

 

「アッ、アアアアアッ!!」

 

放った2発の弾丸背を向ける3号の左足と右肩を貫通。撃ち抜かれた奴はバランスを崩して倒れ込み、悲鳴を上げてのたうち回る。

やはり人間態であれば銃火器も充分致命傷を与えられるようだ。

 

倒れ悶える3号に対し、私は銃口を向けたままゆっくりと近づく。

人間であれば痛みでまともに動くこともままらない筈だが、例え風体は同じでも未知の生物だ。油断などするつもりはないし、そんな余裕はない。

 

あわよくば捕獲をと考えつつ、少しでも妙な素振りを見せれば即座に頭を撃ち抜くつもりで3号を睨み付ける。

 

「ハァ……ハァ……! …………ハァアアア♡」

 

「――っ!」

 

しかしそんな露骨な敵意を向ける私に対し3号が向けたのは、自らを撃ち抜いた物に対する怒りでも、ましてや殺される恐怖でもない。

 

粘性を含んだ様なある種の好意だった。

 

ゾクリ、と悪寒が走る。

見た目も中身も純度100%の変質者の気色の悪い笑顔。

職業柄、歪んだ嗜好や性癖を持った犯罪者とも対峙した経験は何度もあったが、そうした輩と全く同じ目をしている。うっかり銃口を頭部に向けてしまいそうになった。

 

以前から薄々勘づいていたが、どうもこの未確認、私に対し個人的な執着心を抱いているようだ。……正直、身の毛がよだつ程おぞましい。

 

「シャアアアッ!!」

 

――と、私が生理的な嫌悪感から引いた瞬間、3号は血走った目で口を開き、襲い掛かってきた。姿こそ人間態のままだが、私が射貫いた筈の肩と足の僅か1分にも満たず塞がっている。

 

夜間限定とされる能力や変質者じみた挙動にどうしても目が行ってしまうが、そこはやはり未確認生命体。恐るべき回復力だ。――正直、“一瞬”油断した。

 

「――っ!」

 

予想外の逆襲に飛び掛かってきた3号。

私はそんな奴の『力の流れ』を読み、僅かにそのベクトルをずらす。

 

結果、予想外の方向に運動エネルギーを向けてしまった3号は身体をぐるん、と回転させ、背中から地面に叩き着けられる。

 

「ガハッ!」

 

畳の上ならともかく、アスファルトの地面に投げ飛ばされれば並の人間なら大きなダメージになる。しかし相手は銃弾を受けても即座に回復する異形、私達の常識の埒外にいる存在だ。

 

単身である事や現状の装備を考えると、捕獲に固執するのはやはり危険だ。

私は確実に仕留めるべきと判断し、背中を打って呼吸困難に陥っている第3号の眉間に銃口を向ける。

 

――爆発せずに遺体さえ残れば、有益な情報を得られる筈だ。

 

打算も含んだ明確な殺意を向け、引き金に指をかけようとしたその時、仰向けに倒れている筈の3号が突如、引きずられる様に動き出す。

 

「グギギ……ガ、ガルメバ(ガ、ガルメか)!?」

 

そして不可視の縄でつり上げられる様な不自然さで起き上がり、首を押さえながら苦悶の声を漏らした。

 

まさか――――!

 

「ヤレヤレ、何をこそこそしてるのかと着けてみれば……バルバにイジメて貰うだけじゃ物足りなくなったのか? 出来損ない」

 

私と第3号しか居ない筈のこの場に、若い男の声が響く。

流暢な日本語で発せられた。しかし独特の冷たさを感じる声音が“奴ら”と同類である事を意識させる。

 

2週間前、鶴見さんの友人を始めとした45人を殺害した後に行方をくらまし、私達警察と八幡に、苦い敗北感を与えた『見せない未確認生命体』が、現れたのだ。




原作でカットされた逃亡ゴオマの追跡戦、首フェチな彼は生身で撃たれたことで新たな性癖の扉を開いた気がしなくもないです(爆)

八幡との違いとしてゆきのんは基本グロンギの事を害獣ととらえた上で対峙してるので基本的に銃を向ける事や殺すことに躊躇もありません。

まあ、さすがに生身相手には多少の嫌悪感はあるのですが「奴らは一人残らず根絶やしにする」という気概で戦っています。

この辺の意識の違いはいつか八幡との思わぬすれ違いを生むかも?

そしてそんな彼女の前に新たな敵が!
次回もお楽しみに!
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