伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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前話ラストで登場した本郷教授が出張る回。

尚、本作の教授はあくまで一大学教授であり、元祖バッタの改造人間さんとは一切関係ありません(笑)

本作における『第1号』はグムンさんであり、仮面ライダーという名の英雄は八幡ただ一人だけです。


EPISODE:08 比企谷八幡は覚悟を決め、戦士クウガは“炎”を纏う。<1>

 

長野市 南長野パークホテル前 10:01 p.m.

 

「すまなかったな2人共、大変な時に留守にしていて」

 

「ホントですよも~う! でも戻ってきてくれて良かった!」

 

「てか先生こそ大丈夫なんスか? チベットの発掘作業、色々ゴタついてるって聞きましたよ?」

 

夏目教授の通夜が終わりホテルに戻った俺達は明日の午前中に東京へ戻るに辺り段取りを話し合っていた。

 

この二日様々な事が怒濤の勢いで起こりすぎて疲弊していた由比ヶ浜はこの頼り甲斐があり過ぎるおっさんの到着に安堵しているが、当人は俺の質問に難しい顔をする。

 

「何、教え子や共同研究チームにこんな事があったなら当然だ。……と言いたいところだったが、すまん。今からバイクを飛ばして東京に戻り、朝一番の飛行機でまた戻らなければならないんだ」

 

「ええ~~!」

「大変っすね……」

 

「本当にすまない。可能な限り早く区切りはつけるつもりだがそれでも当面、最低でも3ヶ月は掛かるだろう。その間、碑文解読を初めとした警察への協力は君達主導で行って欲しい」

 

頼もしい恩師の到着で肩の荷が下りた気持ちになっていた由比ヶ浜は落胆を隠せない。

だが、まあ、寧ろそんだけ立て込んだ状況で無理してこっちに顔を出してくれたのだからここは感謝するのが筋だろう。

 

……まあぶっちゃけ、俺個人がこのおっさんに苦手意識を持ってるってのもあるんだけどね。

考古学者としての実績は凄いし、誰に対しても鷹揚且つ誠実であり、熱い気質を持っている。

しかし如何せん、暑苦しくて強引で、一緒にいるだけでむやみやたらと疲れるのだ。

 

しかも厄介な事にどういう訳か先生の方は俺のことを気に入られてる節がある所だ。

 

 

 

その後、教授の正式な帰国が当分先という事でぐったりした由比ヶ浜が部屋に戻った後、俺は教授に伝わっているはずのクウガに関して分かる範囲で、且ついくらかの推測を織り交ぜて説明した。

 

「古代の文明が生み出した戦士のベルト……か。事実なら日本所か世界の歴史観すら覆りかねない話だな」

 

「先生が今追っかけてる『人類基盤史』、でしたっけ? アレも大概だと思いますよ……」

 

「フッ、まあ、確かにな――」

 

厳格な侍といった風貌の教授が子供っぽい笑みを浮かべた。

全く以て誰得感溢れるギャップ萌えではあるが、こうした互いの研究についてあれこれ語り合うのは考古学に限らず、学者の本懐と呼べるモノなのだろう。

 

加えて本郷教授は絶妙な距離感で相手の口滑りをよくする話術に長けていたりもするので、未だにボッチキャラを気取る俺なんかも気付けば色々本気で語り合っちゃったりする。

 

豪放である一方で他者の心を見抜き、その機微にも聡い、本当に恐ろしいおっさんなのだ。

 

「――随分と苦しい決断を迫られているみたいだな?」

 

だから、俺がこの腐った目の下に隠した本心を見抜かれても、さして驚きはしなかった。

 

「さっき雪ノ下……この件を捜査している刑事には必要ないって釘刺されました。大人しく東京に帰れって」

 

「そうか……その女性は君にとって、大切な人なんだろうな」

 

「えっ、ちょっ、なんで雪ノ下が女だって分かったんですか? てか普通知り合いの刑事って言ったら男を想像しません?」

 

「この位の事は分かるさ。教師ならばな」

 

いや、無茶苦茶言うなこのおっさん……。

悉く当たってるから余計にとんでもない。

 

「比企谷、君は何故、彼女が君を遠ざけていると思う? 民間人を危険に晒せないという刑事としての矜持か? 友人としての情か? それとも――」

 

更に教授は教え子()に問いかける。

彼女が俺を拒む理由を。

 

その問いが、漫然とした彼女の想いに対し、明確な輪郭を示してくれた。

 

彼女が俺を遠ざける1番の理由、最も恐れる理由、それはきっと、俺の中の迷いと同じ――。

 

「アイツは、『俺が俺でなくなる事』が怖いんだと思います……」

 

「……だろうな」

 

本郷教授は重々しく頷いた。

 

その答えは自分と彼女の立場を逆に置き換えれば簡単に出てきた。

 

仮に俺が刑事で、雪ノ下や由比ヶ浜があのベルトに選ばれたとしたら、俺は例え彼女達に嫌われても、戦いから遠ざけようとするだろう。

 

あんな化物との戦いで傷付いて欲しくない。

万が一にも死んで欲しくない。

得体の知れないベルトの力で、人ではない何かになって欲しくない。

 

そして何より、その手と心を、奴らの血で汚して欲しくない。

力を持って誰かを傷付け、奪う存在になんてなって欲しくないのだ。

 

きっと根っこの所は立場なんて関係ない。

一個人のエゴ、一方的で勝手な、けどどうしようもない程に深い情故なのだ。

 

そう思えば俺の今回の行動が、如何に雪ノ下や由比ヶ浜を不安にさせたかも痛いほどよく分かった。……全く、俺という男は、結局高2の頃からまるで成長しちゃいない……。

 

しかし一方でこうも思うのだ。

彼女達が俺の身を本気で案じ、不安を抱えてくれるならば、俺にもまた、彼女達を想い、それに殉じて動く権利があるのではないか。と――

 

そう考えると不思議に頭に掛かった靄が晴れ、視界が開けた気がした。

 

「比企谷」

 

そんな俺を見て、本郷先生は包帯の巻かれた右手(さっき由比ヶ浜が手当てしてくれた)を力強く掴んだ。――ていうか握力ハンパ無いんだけどこのおっさん!

 

「先程の通夜の場で、君のその淀んだ目とこの手を見て……正直安心したよ。力に呑まれた人間には、そんな苦しそうな表情はしないからな。――その胸に渦巻く苦痛は、君が奴らとは決定的に違う、人である証だ……!」

 

「っ!!」

 

その力強い言葉――比企谷八幡という存在が人間であるという断言は、強烈な説得力を伴って俺の全身に雷撃の様な衝撃を与えた。

 

未だこの拳に残る不快感も、戦いの中で覚える気持ちの悪い昂揚感も、それらを止められない自己への嫌悪感すらも、持っていて良いモノ、持ち続けるべきモノだと言われた事が嬉しかった。

 

「最終的にどの道を選ぶのか、それは君に委ねよう。だがどちらの道を選んだとしても、俺は君を信じ、支えると約束しよう。――比企谷八幡、君は君の信じた道を進みなさい」

 

最後にその言葉を残し、本郷先生は乗ってきた大型バイクに跨がって夜の闇に消えていった。

 

俺の胸に紅く燃える小さな“炎”を灯して――。

 

 

 




流石に八幡には五代ほど人間離れしたメンタルはないと思ったので、本郷教授の存在はそんな彼の心を補強する存在として登場させました。

基本的には滅多に出てこないゲストキャラ的な存在とお思いください。

次回、遂に八幡が――――!
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