ブラッキー after
「俺、復ぁぁぁ活っ!久々に言葉発したよ…」
雰囲気のある夜の街、そんな中で一際賑わって見える1つの酒場。そんな所に今日も1人のプレイヤーが足を運ぶ。
「いらっしゃい!…あらあらあら、ブラッキー先生じゃないですかい。」
「その呼び方はやめてくれ。いつも通りで頼む。」
「はいよ。ほい、とりあえずエール」
自分の扱いにも慣れたように坊主は俺をあしらいエールを受け取った後に乾杯し飲み干した。
「「ふぅ〜!…げふっ…」」
二人同時に樽ジョッキを置き、勢いの良い声とともに口元を袖で拭う。そして、極めつけのゲップ。女性陣がいる前では絶対に出来ない事だが、今は2人だけだからよしとしよう。
「梅酒ロックで」
「…坊主、梅酒ロックでカッコつけるな…!腹筋が割れる…!」
「俺なりの努力の成果だ。」
すると坊主は普段のイキってる時と同じくらいのドヤ顔で注文をする。その内容がまぁガキの背伸びくらいのもののため吹き出しそうになるのを抑え笑いをこらえる。
「んっん゛!…ほら、なんちゃって梅酒ロックだ。」
「おぉー。梅だ…」
自分のなんちゃってという言葉にひっかかっていたのか飲んだ瞬間の感想が何とも素直で自分的にも少々嬉しさはある。
「そりゃーな…まぁ、ふざけるのはここまでにしよーか…どうだった?」
「…結果的には…みんな死んでたよ。」
先程までの和やかな空気が一転、急に真剣な話に切り替わる。元々は、今日この場で坊主からのこの報告を待っていたのだ。
「そうか…ま、当たり前か…」
「当たり前なんかじゃないだろ…誰だって確かめなきゃ信用できない、受け止めきれないさ…」
「…あぁ、そうだな。すまん…」
坊主達にしてみれば至極当たり前だ。誰だってあの世界でのことが、人の生死が100%真実なんて信用出来るはずがない。坊主なら尚更だった。
「…みんなの親族に頭を下げて回った……誰も、誰1人として―――俺を責めることはなかったよ…」
「……」
「情けない話だけど…俺は、どこかでまだ希望を持っていたのかもな。あんたに言われたように少しは楽になるかもしれない…って…そんなことあの世界にあるはずないのに…」
坊主は何とも情けない顔をしていた。涙を流そうにもどうやって流せばいいのかわからない。そんは様子でずっと俯いていた。
「坊主…お前はお前自身を許せなかったんだよな?」
「!…そう、だな…俺は今でも―――断罪されたい、そう思ってるんだ…」
「……」
「あんたに言われた通り、生きたくても死んだ人達がいる。そんなことは、分かってるんだよ…!それでも、俺だけが生き残ってしまったことが許せないんだっ…!」
それは、自分にはなく坊主にはある感情なのだろう。大切な物を失った。それなのに自分はのうのうと生きている。その苦悩は当事者には分からないものだろう。自分が上から説教していいものでは無い。だが…
「許せない…か……坊主。自身への断罪は自己満足に過ぎねえんだよ…」
「!」
「お前の死で、泣きボクロの嬢ちゃん達が生き返るか?ちげーだろ…お前が、見出した答えはなんだ?あの子があの世界で生きた理由はなんだ。」
「…俺は、サチと出会って強くなった…!サチに救われていた…助けてられていた…!サチは…俺の道しるべだったんだ…!ずっと、ずっと…!俺を、正しい方へ導いてくれてたんだ…!」
「……」
「不謹慎だってことは分かってる!それでも…!サチは、俺にとっての光だったんだ…あの子のおかげで、俺は今幸せなんだ…」
あの日、あの聖なる夜。少年は涙を失った。ずっと、それを流してはいけないと自分に言い聞かせているかのように、こらえていたのだ。それが流れたときは今日以上の何かがあったからだ。だからこそ、もう許してやろう。この少年は充分頑張ったのだ。
「分かってんじゃねーか……どうだ坊主?
―――もう、寒くないか?」
「…あぁ、暖かいよ…」
「そうか…」
自分はある日の少女の音声を思い出していた。目の前の少年は泣き疲れた様子でカウンターの伏せて眠っている。毛布をかけてやり、その少年を見つめながら―――隣の少女に問う。
「だとよ…泣きボクロ嬢ちゃん。」
「―――」
「坊主はもう、1人じゃねーと…大切な人達が沢山いるんだと…―――もう寒くねーってよ…」
「―――」
「嬢ちゃん…お前はあの世界の勇者の希望だったんだ。だから、もう眠れ。みんなが、待ってるだろ。」
『…主さん。ありがとう、さようなら。』
会話が無くなり、店内を静寂が包む。そんな中正常な判断のできる自分だけが取り残された。
「ばぁーか。礼を言われる様なやつじゃねーよ…俺は…」
また一歩、確かに歩を進める。
夜の街は今日も賑わう