「がーはっはっはー!!!残念だったな御一行!この聖剣と猫耳娘を褒める言葉は…俺が頂いたぁ!!!」
これは愚かな鍛冶屋兼酒場の主が起こした、どうしようもなく、何ともしょうもない事件である。
遡ること数時間前。
「ふっふ〜。坊主達は行ったな…」
鍛冶屋を求めてる人、酒場を求めてる人ごめんね!今日はちっとバカし私用でヨツンヘイムに来てるぜ!坊主達がトンキー?とかいうのに乗って移動してったからバレないようにもう1匹につかまって移動してる主です。
「さてと、おい【触覚まみれ】!安全速度で行けよ?って、あぁぁぁぁっ?!」
いきなりですが超ピンチ俺が手なずけたこのモンスター、何と俺の言うことを全く聞かない。それどころか空中数百メートルから垂直ダイブである。まぁ、道中邪神同士の殺し合いがあったが、そんなことはまぁ捨ておけ。本命のお出ましだ。
「【触覚まみれ】!止まれ!」
何とか言うことを聞かせ、坊主達の会話を盗み聞きする。そんな必要はないのだが今鉢合わせるのは非常にまずい。自分にとっても坊主達にとっても、そして湖の女王にとって。しばらくすると…彼女はこちらに向き直る
「まだいたのですか…」
「おうさ。可愛い娘のピンチ、父として見過ごすわけにゃーいかねえだろ。」
「いつから貴方が私達の父に?」
「酷すぎませんかウルズさん?!これでも元データですよ?!」
俺が今会話しているのは、先程坊主一行がクエストを頼まれていた人物ウルズである。まぁ、あの世界のパクリみたいなもんだからそこに存在するAIなんて全部俺の子供みたいなもんだ。
「はぁ…で、何をお企みになっているのですか?」
「あぁ?決まってんだろ、取りに行くのさ…エクスキャリバーをな!あ、ついでにこの世界の平和も」
「娘の願いをついでにする父がどこにいますか…」
「目の前にいるじゃん。」
「カリバーンを渡されて最下層に堕ちろ」
「AIとは思えない辛辣さ!もういい!!お前の前に金ピカに光る聖剣突き付けてやるからな!」
「でしたら、今すぐにその邪神をこちらで受け取りましょうか?」
「俺が悪かったです。」
正直、尻に敷かれている男にしか見えないかもしれないが一応俺が父だ。まぁ、そんなことはどうでもいい。俺は光の速さで邪神の背中で土下座したのだから。
「それで、実際のところお前さんの目利き的に坊主達はどうなのよ?」
「えぇ、苦しい戦いにはなると思いますが…彼らならやってのけるでしょう。」
「へぇ〜、一目置いてるわけだ。」
「もちろん。貴方が育てた戦士にハズレがいるとは思えませんから。」
「嬉しい事言ってくれるね〜。そんじゃ…俺も行くかな」
俺は再び、触覚まみれの背中に乗りダンジョンを見据えつつウルズに視線を送る。
「ウルズ、行ってくる。」
「…行ってらっしゃいませ。どうか、ご武運を…」
そうして、俺はウルズと別れを告げた。その後の不吉な言葉を聞くはずもなく。
「さてと…難易度どうしましょう。」
――――――――――――――――――
「はぁっ…!はぁっ!!あんのアマァ!!!」
坊主達を追いつづけ早数十分。俺は非常にまずい事態にていた。
「なんで!俺の時だけ…この部屋だけに!ラグナロクを起こしてんだよ!」
現在坊主達が片付けた階層を通り過ぎるだけのつもりでいた俺に突如、アルブヘイムでは考えられないほどの灼熱が襲ってきた。
「ムスペルへイムの炎の巨人なんて、流石に洒落になってねぇ…世界樹焼き尽くす軍勢相手に俺一人とかどんなクソゲーだ…!あ、俺そのクソゲーそのものだった。」
部屋に取り残された俺。迫り来る炎の巨人達。自虐しつつも俺は確実に前へと進む。
「この程度で音を上げると思うなよ…!ウルズぅぅぅ!!!」
男の戦いはまだまだ続く。
――――――――――――――――――
「はぁ、はぁ…やっと追いついた…」
何とか、炎の巨人達を殲滅しようやく尾行することに成功した俺。坊主達はというとようやくミノタウロス2頭を倒し、その次のボスも倒したようだ。
「ひゅぅ…ひゅ……最近の若い衆は早すぎる…俺には流石にキツいペースだ…って…あんちゃんの野郎…その仕事は俺のもんだろ…!……俺もあんな白い目で見られることになってたのか…って、待て…フレイヤだと…」
道中、あんちゃんの行動に一瞬嫉妬したが…自分はその名前を知っている。それどころか、その正体さえも…
「ようやく、ボスだな…クソジジイ対クソジジイか…」
自分のボソリといった言葉は数秒後、坊主達一同の度肝を抜くものになる。
「雷系のスキル…!来るぞ…!」
物陰に隠れていた俺、そして坊主、あんちゃんともに変容していくフレイヤに目を丸める。
「「「おっさんじゃねーか!!!」」」
「え?」
「ねぇ、アスナ今なんかあいつの声が聞こえたんだけど…」
「リズさん奇遇ですね…私もです。」
「そこ!」
リズムよくツッコミをする男二人に対して女性陣は多種多様な反応をみせる。
「?!っ!ぁ、ぁっぶね〜…」
なんと、新入りであろう1人の弓兵が自分の数センチ隣を射抜いたのだ。
「よし…最終段階だ!」
坊主達が玉座の後ろにある階段を降りていく。それを横目に男は碌でもないことを思いつきながらあとを付ける。
――――――――――――――――――
「200メートルくらいかぁ…」
「待ってたぜぇ…この時を…!!!」
トンキーの背中でシノンが矢を射る。そして、もう1匹の邪神の背中である男が矢を構える。
「あげるわよ。そんな顔しなく…てって…え?」
「がーはっはっはー!!!残念だったな御一行!この聖剣と猫耳娘を褒める言葉は…俺が頂いたぁ!!!
「な?!」
「って!大将じゃねーか!」
「そう!大将こと主です!」
それは一瞬の出来事だった。シノンが神業で手繰りよせたエクスキャリバーをなんと、違う方向から違う矢が回収していった。その人物こそあいつだ。
「主さん?!」
「ちょっとあんた何してんの?!」
「あぁ?!決まってんだろ!聖剣を取って、贋作ばらくだよ!」
「えぇ!ずるいですよ主さん!」
「黙れ生きるロリ!これは、俺が儲けの1部として使う!」
「「「「「「「はぁぁぁぁぁっ?!」」」」」」」
一同から一斉に素っ頓狂な声が漏れる。それもそのはず、あいつはプレイヤー史上最高のダサく、卑劣な行動をしているのだから。
「ふざけたこと言ってんじゃないわよ?」
「へっ!たかだか数週間のプレイヤーがよく吠える!俺に弓の技術勝ってからもの言いな!って…ちょ、ちょー!待てーっ!!」
「「「「「「「死ねー!!!」」」」」」」
「あ〜〜〜」
パーティー一同で魔法、弓矢を一斉掃射。あの、魔法嫌いのあんちゃんまでもだ。そんなのどうやったって捌けるはずもなく、邪神は消滅、あいつは奈落の底へと堕ちるのであった。
「覚えとけよてめぇらぁーー!!!」
そうして、愚かなる1人の男の野望は潰えた。
――――――――――――――――――
「ヴェル…スクルド…そして、ウルズ…ごめん…」
「「「……」」」
「これ…お前らの眷属の触角の塩焼き。意外と上手いから食ってみ?」
「「「死刑」」」
「あぁ…短い人生だった…」
これが、事の結末である。