昼は刀鍛冶、夜は酒場   作:kouga

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祈りを叶えた少女 起

 

あれはボクがまだ辻デュエルをしていた時のこと。

 

 

「ま、参った!リザインする…!」

 

 

挑んでくるものは決して探し求めているような人ではなく有象無象の中の1人。時間は少ないのに無情にもどんどん流れていく。そんな中、

 

 

「っ!」

 

 

肌を刺激するような今までに感じたことのない気配を感じた。それは、まるでボクを試すかのするかのように殺気やら挑発やらを感じさせるもの。周囲を見渡すがそれらしき人影は見当たらず、結局その場では何もなく時が過ぎた。

それから数日後

 

 

「はぁぁっ!」

 

「せやぁぁっ!」

 

 

突如として現れた全身を黒で統一した1人の剣士。今までの人達とは明らかに違う。剣を交えただけでわかる。この人は本当の戦いを知っていると、それと同時に本能が悟った。あの時感じた気配に僅かながら似ている。

 

 

「くっ…?!」

 

「やぁぁっ!!」

 

「…俺の負けだ…リザインするよ。」

 

 

勝負こそギリギリの接戦の末勝ったもののこの人はダメだ。この人は酷く勘が鋭く、それでいて人のことをよく見ている。いい意味でも悪い意味でも

 

 

「ねぇ、お兄さん」

 

「ん?なんだ?」

 

「お兄さん、何日か前にもボクのデュエル見に来てなかった?」

 

「?いや、俺は今日が初めてだよ。」

 

「…そっか…」

 

 

短い会話、だがそれでいい。この人はきっと気づいて欲しくない所までその内気づくだろう。問題は…

 

 

「はぁ…あいつのネタにされる…」

 

「仕方ないですよパパ。それに主さんも分かってくれるはずです!」

 

「あいつがそんな出来たやつじゃないってことぐらい分かってるだろ…ユイ…」

 

 

ふと耳にした会話。そこに出て来た人物に興味を持ちつつもその人はその場を後にし、再び辻デュエルは再開された。

 

これがボクとキリトの出会いだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

ところ変わって日付も変わって酒場。

 

 

「絶剣って剣士、名前はユウキ…だったかな?恐ろしく強かったよ。技術に関しては良くて五分、でもスピードに関しては完敗だ…」

 

「ほーう…そいつはすげーや。それで坊主、お前さんが負けるのは何となく知ってたがテメェ何食ってんだ?」

 

「ん?カレーだけど?」

 

「いや、質問が悪かった…なんで食ってんだ?」

 

「お通しじゃないのか?」

 

「どこの酒場にお通しでカレー出す店があんだよ!?そいつは俺の夕飯だ!」

 

「そんな怒るなよ。俺の枝豆やるから」

 

「その枝豆がお前に出したお通しだよ!!」

 

 

まぁ、なんとなくだけどね?あの嬢ちゃんなら坊主といい戦いをするだろうとは思っちゃいたよ?だが、正直勝っちまうとは思ってなかったさね。大方、坊主が二刀流じゃなかったとかそんなとこだろう。んなことよりも

 

 

「たっく……スピードに関しちゃお前さんより速いっつたか?」

 

「…あぁ。でもSAO帰還者じゃない。多分…彼女は俺達よりも長い間フルダイブし続けている…」

 

 

カレーの事は置いておこう。それよりも先に坊主の問題発言に加えて自分の予想が的中する。確かにSAO時代、絶険のようなプレイヤーは存在しなかった。

 

 

「もし仮に存在していたとしたら…

 

―――二刀流は彼女の手に渡っていた。」

 

「へぇ…」

 

 

夜も更けてきた頃。エールを片手に戦いの終始を語る坊主。そして、それを聞いてより一層興味をもつ俺であった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

時はまたも流れ鍛冶屋

 

 

「あーあ…客来ねぇ…」

 

 

相変わらずの我が店。経営者である自分が1番わかっているが、もう畳んじまった方がいいんじゃね?と思うほどに暇な数日。ここ数日は特にそれだ。何でも副団長殿も絶険に、負けたらしい。それどころかその絶剣が所属するギルドに加入し今日ボス攻略をしているようだ。

 

 

「今頃、ボスぶっ飛ばしてみんなでワイワイやってのかな…はぁ…」

 

 

そんな時、勢いよく扉が開く。

 

 

「お、いらっしゃい!って坊主かよ…どした?そんなに息切らして」

 

「今、暇か?」

 

「…忙しそうに見えるか?」

 

「そりゃそうか…じゃあ少しだけ手を貸してくれ」

 

「あ?わりーが今は鍛冶屋だ。そういうのは定休日にでも…」

 

「この店は年がら年中定休日だろ」

 

「…坊主…俺じゃなかったら吐血もんだぜ?」

 

 

カウンターに勢いよく頭をぶつけそのまま顔を上げたくない俺。メンタルへのダイレクト過ぎるアタックに危うく泣きそうになったが、何とかこらえることができた。

 

 

「アスナ達の手助けがしたい…力を貸してほしい。」

 

「…話聞かせろ」

 

 

今日副団長殿たちのギルドがダンジョンに潜りボス攻略するのは知っていたが、何でも他のパーティーが横取りするような動きが見られたらしい。そのため今現在、もめそうになっているそうだ。

 

 

「あのなぁ坊主…俺は揉め事が嫌いなん…」

 

「報酬はこの鍛冶屋をALO中に宣伝する、でどうだ?」

 

「お供します!」

 

 

こんな軽いノリで俺と坊主にユイと遅れてくるあんちゃんを加えて、俺たちはダンジョンに向かった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「次のボスは絶対にみんなで倒そう!」

 

 

アスナの言葉に救われた。正直、ボスに挑むなんてこの状況からじゃ不可能だ。ボク達の人数に対して相手は数倍以上。どうやったって厳しい。そんな時、

 

 

「え?」

 

「悪いな、ここは通行止めだ。」

 

「キリトくん!」

 

 

壁を走る影が見え後ろを振り返るとそこにはいつかデュエルをした黒の剣士がいた。アスナとのデュエルの際にも立ち会っていたように彼は味方だ。だが、ボクが驚いたのはそこじゃない。

 

 

「おいおい、ブラッキー先生よ。いくらあんたでもこの人数をソロで喰うのは無理じゃね?」

 

「そうだそうだ!!」

 

「どうかな?試したことないからわかんないな」

 

「そうだそうだ!!」

 

「「……」」

 

「おい、ブラッキー先生。こいつはアンタの連れか?」

 

「…おい、お前はどっちの味方だ?」

 

「あり?バレた?」

 

 

ふざけた声の発信源は何事もなかったかのように軍団の中から歩み出る。その瞬間、全身を緊張が駆け巡った。その男は袴姿に長刀と短刀を携えた探していた正体。

 

 

「主さん!」

 

「よう、副団長殿!それと、お初にお目にかかります勇者御一行ですね。すいませんね遅れちゃって、今片すんで少々お待ちを。」

 

「おいおい、状況が分かってねーみたいだな…メイジ隊焼いてやんな!」

 

 

敵の後方が部隊が一斉に詠唱を開始する。その瞬間ボクの目の前の人達も剣を構えだした。

 

 

「キリトくん!主さん!」

 

「坊主、合わせろ!」

 

「アンタが合わせてくれよ!」

 

 

後方から魔法が放たれると同時に声が聞こえ、つい振り向いてしまう。

 

 

「っ!みんな伏せて!」

 

「ちっ!残した!」

 

「あ、あぁぁぁっ?!」

 

 

たった一瞬の出来事、それを見届けられたものはそういない。放たれた3つの魔法。それは黒の剣士がそれを地上で全て軌道を変え、いつの間にか飛んでいた袴姿の男が扉付近の敵軍へと切り返し爆破。爆風より奇跡的に生き残った1人を切り捨てたのだ。

 

 

「魔法を、切り返した?」

 

「……」

 

 

何とかアスナと二人がかりでパーティーのみんなを伏せさせ、誤爆を防いだ。だが、当人の2人は口論してる始末である。

 

 

「おい坊主!剣先ではじくなっつってんだろ!腹で返せ、腹で!」

 

「無茶言うな!こっちはあんたのを見様見真似でやってんだぞ!」

 

「パパ!主さん!今は喧嘩しないでください!」

 

「…はぁ、アスナ!」

 

「うん!」

 

「ではでは、勇者御一行よ。よい旅路を。」

 

「ユウキ!」

 

「…行こう。」

 

 

道は開いた。後は進むだけと分かっていながらも、足取りは重い。理由はすぐ後ろにいるのだから。それでもボク達は今はボス部屋へと入っていった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「ヒーフーミーヨー…ダメだ。眠っちまいそうだ。おーい!あんちゃん、今何人目だ〜?」

 

「あー、大将か?!いま〜はえーと、わりー大体3人だ!」

 

「上出来。」

 

 

勇者御一行がボス部屋に入った直後、俺たちの目の前には何十人という敵が広がっている。それに対してこっちは3人と来たもんだ。

 

 

「坊主、カッコつけたはいいが正直負け戦だぜ?」

 

「知ってるよ。でも、今やんなきゃ後悔するだろ?」

 

「ふっ…そうかい。じゃあこうしよう。これは対決だ、呪文は禁止、飛行も禁止、あとユイのサポートも禁止。それでどっちが多く殺せるか…どうだ?」

 

「商品は?」

 

「無料修復券と飲み物サービス券どっちがいい?」

 

「修復券で頼む。じゃあ行くぞ、ぼったくりへっぽこ鍛冶屋!」

 

「お前が負けたらエクスキャリバーよこせクソガキ!」

 

 

 

今は、語られることのない男達の戦いが始まる。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「勝っ、た?」

 

 

不意にアスナから素っ頓狂な声が漏れる。最後の最後、ボクの懇親の一撃はボスのコアを貫き、分散させた。みんなが歓喜の声を漏らす中、不意に扉が開く。大方、相手方のギルドだろうと思い、ボクを含めみんながピースサインを浮かべようとした時

 

 

「最後の一人は俺が倒したろうが!」

 

「はぁん?俺が両腕斬り飛ばして後から殺るつもりだったんだよ」

 

「詰めが甘いんじゃないか?」

 

「んだと坊主こら!…っとお疲れ様です御一行殿。」

 

「え?キリト君、まさか…」

 

「あぁ、全員倒してきた。」

 

 

何と清々しい顔ですごいことを言ったんだこの剣士は。正直、目を丸くした。だが、それよりも。黒の剣士は多少なりとも息を切らしているだが、もう一方の男はピンピンしている状態だ。

 

 

「正直、ボス攻略よりも骨が折れたかもな?」

 

「言えてるな…」

 

「さてと、スリーピングナイツ、だっけ?おめでとう。お前さん達の名前はこの世界に名を刻んだ。誇れよ。特に、《絶剣》の少女よ、噂に違わぬ技量らしいな。流石―――フルダイブし続けているだけあるな?」

 

「っ!」

 

 

何人に聞こえただろうか?いや、関係ない。この男は何を知っている?いや、気にするな。ボクの本能が勘が警告していた。この男は危険だと。

 

 

「…おいおい、お前さん相手を間違っちゃいねーか?」

 

「っ?!ユウキ、何して…?!」

 

「…!」

 

 

男の言葉にのせられた?違う。この男は何も推測でものを語っているのではない。確証を持って知っている。こいつは、敵だ。ボス戦を終えたばかりの体にムチを打ち最速の刺突をお見舞するも難なく刀の腹で止められた。

 

 

「…構えてよ。無抵抗の相手は切りたくない」

 

「だったら鞘に収めな、これは忠告だぜ?」

 

「生憎とボク抜いた剣は収めが効かない質なんだ」

 

「…」

 

「そっちにその気がなくてもボクは貴方を切るよ…」

 

「はぁ…」

 

 

駆け出す。剣を構え男の懐へと。男に戦意の色は一切見受けられない。それでもここでやらなくてはいけないとそう思ってしまった。だが、

 

 

「っ?!」

 

「抜いた剣は収めが効かねえ…んなことは分かってんだよ。俺が言いてえのは…収めが効かねえのは

 

―――テメェだけじゃねーぞ…」

 

「そこまでだ。」

 

 

ボクの剣戟を難なく受け止めた男。そして一瞬だけ漏れだした殺気。かろうじて黒の剣士が二刀を抜き受け止めた。

 

 

「…ちっ、性格が悪かったな…どうにも性分なのか止められなくてよ。すまなかったな御一行。だが、絶剣の少女、その剣はしまっておけ…いずれ交わるさ…」

 

 

不可解な言葉と共に男はその場から転移し姿を消した。

 

 

「ユウキ…」

 

 

アスナから漏れる心配の声とともに―――物語は進んでいく。

 

 

 

 

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