あの日を境にボクは1度この世界を離れた。それでもアスナが、みんながボクをまたこの場所へと引き戻してくれた。
《Congratulation!》
「―――!―――!!」
この世界に来て多くの人達と出会い、多くの人達に救われた。今もボス戦を終えたばかりである。あの日から時間は流れ、様々な事と向き合い、そして今に至った。だが、未だに脳裏に焼き付く1人の男。その男との再開はもう…すぐそばまで来ていた。
「デュエル・トーナメントまであと数日か〜。さてと、見極めるとするか…
―――《絶剣》は勇者になり得るかね〜」
――――――――――――――――――
デュエル・トーナメント当日。この日は数多くの強者が集い、心を暑く試合を繰り広げていた。2ブロック分けられた戦い、それは熾烈を極めついに片方のブロックが終了を迎えた昼過ぎのこと。
「もー!悔しい!!」
「あはは!またボクの勝ちだねアスナ。」
「お疲れ様です。ママ」
「惜しかったな、後3秒あれば勝負は分からなかった。」
「だから余計に悔しいの!」
現在控え室には先程デュエルを終えたばかりのボクとアスナ。そして、それを見ていたキリトとユイちゃんがいた。正直ギリギリ勝てたというのが現実だ。キリトの言う通りあと3秒あったら負けていたかもしれない。けれどどうにか無事にボクは決勝戦へとコマを進める事が出来た。
「そういえばキリト。次の相手は誰なの?」
「あー、多分ユージーンだな。今頃デュエルの真っ最中だよ。」
「ボクと戦うまで負けちゃダメだからね!」
「分かってるよ…負けるつもりはないけど簡単には勝てないだろうな。」
「確かにユージーンさんは以前のパパと戦った時より強くなっていました。魔剣グラムもそうですが…」
「OSS、か…」
「私は5連撃が限界だったけどユージーンさんは8連撃だっけ?」
そう、ALOにOSSが追加されてからボクがマザーズ・ロザリオを完成させるまでサラマンダーの将軍、ユージーンが編み出したOSSが最強の絶技だった。そんな男がキリトの次の相手なのだ。
「はぁ、ユウキの11連撃に比べたらマシと考えるべきか…」
「キリの字!!」
「ク、クラインさん?」
突如、控え室の扉が勢いよく開かれる。そこには息を切らせたクラインの姿があった。様子を見る限り何やら焦っているようだが
「どうしたんだよ、クライン。便所なら…」
「便所は出ねーよ!それより、大変だ!」
「「「「?」」」」
「大番狂わせ…あの将軍が…!」
「!」
「…」
驚くキリトを横目にボクの胸騒ぎは確信へと迫りつつあった。そして、急ぎコロシアムに赴く。
――――――――――――――――――
時はほんの少し遡り、第2ブロック準決勝第2試合。
「ほぇ〜観客がこんなに…スゲーな」
どうも、皆さんこんにちは。主です、現在俺はデュエル・トーナメントに参加しているわけなのですが…絶剣と戦いたかっただけなのに何故かこんな所まで登っても当たることはなく決勝戦でないと対決は不可能らしいです。そのため今は姿を隠すべくいつもとは違う装備にひょっとこのお面を付けてます。そんな俺の目の前には何やら怖そうな大男が1人。
「アンタが対戦相手か〜サラマンダーの将軍にしてALO屈指の実力者、ユージーン将軍殿?」
「……」
「ん?どうしたんですかい?黙り込んじゃって。もしかして緊張してます?」
「…貴様、何者だ?」
「…通りすがりの鍛冶屋です。」
「冗談はよせ。俺の知っている鍛冶屋に貴様の様な異質な者は一人もいない。」
「じゃあ、こんな鍛冶屋もいると思って新しく認識して下さいな。」
まもなくデュエルが始まる。相対するは両手剣、魔剣グラムを持ちし猛炎の将軍。何でも特殊スキル持ちらしいが、まぁ何でもいいや。そんな軽い気持ちの俺とは裏腹に強ばり続けていた将軍の顔は開始と同時に殺気むき出しの表情へと代わり急速な近づいた。
「っ!?」
「そこだぁっ!」
「おっ?!っと…!」
「ちぃっ!」
身内バレしないように装備は一新した。武器に関してもそうだ。この大会では普段から使う刀ではなく、たまに使う武器を用いて戦ってきた。今も片手にダガーナイフを持っている俺なのだが…
「エアリアルシフト…透過か…」
初手、完璧に防いだつもりだった。だが、防いだどころか相手の剣は自分のダガーをすり抜け、眼前へと迫ってきた。何とか上半身を仰け反り躱したものの続く二発目、横一線からの上段の振り下ろしではかすり傷を負ってしまう。
「ほう、この武器の特性をすぐさま見抜くか…」
「ま、一応鍛冶屋だからな。目利きくらいは出来るさね…」
「そうか、やはり貴様には俺の全てをぶつけたくなった。その面、すぐさま切り落としてやろう!」
正直、少しばかり焦っていた。この男は情報だけならスキルだのみのゴリ押しプレイヤーだとばかり思っていたからだ。だが実際は違う。
「はぁぁっ!」
坊主にこそ劣るものの磨き上げられた最上級の技術に場数を踏んでいるだけあって鋭く研ぎ澄まされた戦いの感、そして極めつけは勝利への執着心。
「吹き飛べっ!」
「っ!」
透過した直後はスキル発動までの時間が生じる。そこをつこうとしたのだがまんまとハメられ気持ちのいいカウンターをダガーで防ぎつつもくらい、フィールドの端まで吹っ飛んでしまう。だが、皆さんお気づきだろうか?
「はぁ、はぁ…くそっ…!」
「いてて…流石に衝撃吸収までは手が回んねぇ…」
相手さんが焦っている理由は明白。攻めてこそいる、だが一撃も俺に決定打を与えられていないのだ。斯く言うこちらも攻撃という攻撃は出来ていないのだが、これでは埒が明かない。
「あーあ、やめだやめだ。埒が明かねーや…」
「何のつもりだ?武器を捨ててリザインか?」
「いんや、そんなことはしねーよ。ただ、俺はアンタを見くびっていた。正直、てっぺんであぐらかいてるだけの名前だけの存在だと…だがそれは見当違いだったらしい。」
「…」
「非礼を詫びる。お前さんは強い、だからこそ…お前さんを倒すための俺の本気を見せよう。」
「その本気が武器を捨てることか?」
「いやいや、武器ならあるさ…ここにな?」
「っ?!ごはっ…!」
数メートルあった距離を相手の瞬き1回のうちに詰め、渾身のボディーブローを決める。くの字に曲がる体に間髪入れずに打ち込んでいく。
「しっ!」
「ぐっ…?!ごっ!がはっ!!」
「おっらぁ!」
「ぶっ…!な、めるなぁ!」
「…」
「なっ?!素手で…!」
「お返しだ」
「がっ!!」
相手の攻撃を許さない超近距離での乱打。徒手スキルとまではいかない。これは単純な体術だ。ボディーブローから始まった攻撃は顎へのアッパーを決め将軍の巨体を宙へと浮かせる。直後、覚醒したように鋭い目時と怒声を発し将軍の剣が頭部へと迫るが、なんとその人振りを拳で剣の腹を殴りパリィしたのだ。パリィによって常態を傾けられた将軍は為す術もなく、顔面を殴られ逆側のフィールドの端まで吹き飛んでいった。
「はぁ、はぁ…!」
「どうだい?リザインするか?」
「…ふっ…確かに実感はあったが、ここまでか…」
「あぁ、俺としては大人しく負けを認めてほしいんだが…」
「それは無理だな。せめて、一矢報いたい。胸を貸してもらえるか?」
「…おおとも。」
互いに歩み寄り、場所はフィールドど真ん中。距離にしておよそ2m、両者は目をつぶり一方が駆け出す。
「ヴォルカニック・ブレイザー!!!」
「……」
それは一瞬の剣技。何人が視認できただろうか?両手剣による8連撃は見事―――虚空を切っていた。
「……」
「貴様の目に、俺はどう見えた?」
「…その背中にのしかかるものは多いな。正しく、群れを束ね先頭を歩む強き将だった。」
8連撃をしたはずのユージーンの胸には主の手刀が突き刺さっていた。深々と突き刺さったそれを抜きユージーンは膝をつく。
「その目利きが偽りでないことを祈る―――斬れ」
「見事」
肩から腹を裂き。主の徒手スキル、手刀はユージーンを一刀した。
――――――――――――――――――
駆けつけた時、既に決着は付いていた。観客は愚か後方より見ていたサラマンダーの軍隊までもがどよめく。白地に朱のラインが入った袴にひょっとこのお面をかけた男はあのユージーンを一刀したのだ。
「…キリト…」
「悪い、ユウキ。さっきの約束はまた今度になるかもしれない。」
「え?ちょっ!」
「キリトくん!」
「パパ!」
まだデュエルが終えたばかりのフィールドにキリトは駆け出していった。
波乱は今巻き起こる。
――――――――――――――――――
「おいおい、第2ブロックの決勝はまだ早いんじゃねーか?」
「そんなことないさ、それにアンタはまだピンピンしてんだろ?」
「…はぁ、勘のいい坊主は嫌いだよ」
「安心しろ。気づいてるのは俺とユイくらいだ。」
「……そうか。」
「勝たせてもらうぜ?」
「一勝してから物言いな―――ブラッキー先生?」
様々な観客の声が響き渡る中、第2ブロック決勝戦は始まった。
すまない…ユウキの話なのに戦闘が長引いてしまった┏○┓
ですが次回こそユウキをしっかりと登場させます!
次回、赤眼の悪魔VS赤眼の死神 で会いましょう。