「ねぇ、アスナ…キリトって…あんなに武闘派だった…?」
「さ、さぁ〜…」
「正直、剣使ってる時よりしっくりきてるわね」
「シノンさんに同意です…」
「でも、キリトさんのあの動き似てませんか?」
現在、第2ブロックの決勝戦が始まって数分が経過した。そんな中ギャラリー達の声から漏れるのは意外の一言といったものばかり。唯一リーファだけが不服そうにしているが、なぜそんなことになったのかと言うと…
――――――――――――――――――
遡ること試合開始直後
「はぁっ!」
「よっ、と!」
二本の剣をたくみに交わし最速の剣技を繰り広げる坊主。それを槍でさばき続ける私事主である。
(下段突きからの上へのなぎ払い、そこから持ち手でのパリィ!)
(それを見越して、半回転から左横一線で右の大振り…)
互いに仕掛け合ってはいるのだが、両者ともにそれなりに手の内は知っている。そのため決定打はなく均衡状態が続いていた。だが、
「くっ!?」
「握りがあめぇ!」
先に不利になるのは坊主だった。まぁ当然といえば当然だ。手の内を知っているといっても坊主の場合は数十手あるうちの幾つか、それに対して坊主の攻撃を自分はすべて知っているのだ。攻めの中で生まれた一瞬の隙に坊主の左手を蹴り上げエクスキャリバーが宙を舞う。途端によろめきだす坊主を俺は見逃さない。
「らぁっ!」
「っおぉぉっ!」
「へっ…」
「!ごっ?!」
「突っ込みぐせは、直せっつてんだろうがぁ!」
「がっ…!」
「終ぇだ。」
エクスキャリバーを手放した坊主は一歩前進し懐へと入り込み剣を突き立てる。だが、それを見越して槍の中心で向きをずらし右側から全力でぶん殴った。かろうじて剣の腹で防いだものの威力は殺せず坊主は地面を転がる。最後だと言わんばかりに走り出し刺突をお見舞しようとした時。
「っ!いってぇぇっ?!」
「生憎と…俺だって成長してるんだよ…」
「このガキ…!」
なんと、あろう事か突き刺すタイミングと全く同じタイミングで坊主拳でカウンターの左ストレートを俺の顔面に放ったのだ。流石にこいつの徒手スキルは予想外すぎてモロにくらってしまい今度は俺が地面を転がった。
「なら、見してみろ!」
「言われなくても…!」
――――――――――――――――――
「はぁ、はぁ…!」
「どうだい?モヤシには厳しいだろ?」
繰り広げられるは徒手スキルでは無い。これはこの世界に最も不似合いなもの体術である。剣技の中に徒手スキルを含むやつもいるけど、こんなふうに武器を捨て互いに拳を交えるやつはそういない。現に俺もこれがぶっつけ本番である。
「ちっ!体力オバケめ…!」
「前からだがひでー名前しかねーな俺…」
「はっ、褒めてんだよ!」
「何様だっての!」
互いに駆け出し、拳を逆手で止め握り合う。
「よっこら…せっ!」
「なっ?!」
「てい、や!」
「ぐっ…!蹴りすぎ、なんだよ!」
「おわっ…?!と…」
(今!)
先に仕掛けたのは主、筋力パラメーターで負けているとはいえまさかの左足を軸にしてほおり投げられた。何とか体勢を保ち着地に成功するが、瞬きする暇もなく飛び跳ねた主が空中で数発蹴りを放つ。しかし、やられっぱなしでは無い。こちらも負けじと蹴りのタイミング合わせそれを腕で払い除け一歩前へ出ながら殴り掛かるが、主は拳を足場に後方へと下がる。
そして、その隙を俺は見逃さない。
「セアー・ウラーザ…」
「マジか…!」
「ノート・ディプト!」
その瞬間コロシアムは黒い霧へと覆われていった。
――――――――――――――――――
「そういやぁ…幻影魔法使えたって妹が言ってたな…だがよぉ…
―――青眼の悪魔。いや、赤眼の悪魔になるか普通…」
「オォォォッ!!!」
コロシアムに現れたのは自分など有に越すほどの大きな悪魔。それはかつての城においてある階層の部屋を守護していた悪魔によく似ていた。いや、似ているとかのレベルではない。ほぼそれだ。
「槍じゃ届かねーな…なら…」
「…」
「おいおい、目くらましにもなっちゃいねーのかよ!って…うぉっ!?」
槍では不可能と考え装備を弓に変え、即座を矢を射る。しかし、一挙に放たれた数十本の矢はいつの間にか出現していた超巨大な大剣により防がれ、これまた巨大な拳が襲いかかり吹き飛ばされる。
「がはっ?!」
「―――」
「洒落になんねーな。でもよ坊主、スプリガンは…お前さんだけじゃねーぜ」
「ッ?!」
壁まで吹き飛び叩きつけられる。その直後視野が一気に暗くなる。何となく腹はたつが、今俺は坊主に見下されていたのだ。そこで冷静になり、武器をすぐさまやりに戻し、上段から振り下ろされた大剣を受け止める。
「…ノート・ディプト…」
先程と同じ光景。しかし、現れたものは全く違う。そこにいるのは悪魔を突き飛ばし巨大な命をかる鎌を持った1人の死神だった。
「▪️▪️▪️▪️▪️ッ!」
今ここに怪獣大戦争が幕を降ろされたのであった。
――――――――――――――――――
2人の試合は正直、ついていけない人達の方がいいと思う。
「…」
序盤の武器での戦闘、この時点で目では追い切れない戦闘がチラホラとあった。現に過去に戦った事のあるキリトが全力である二刀流を用いてあしらわれていたのだ。それも、スキルは一切無し単純な剣技でキリトが大敗していた。その後の体術においても、キリトは決して付け焼き刃とは言い難いレベルのものを見せた。それに対してあの男は、初見ですべて見切ったのだ。
「…」
「みんな伏せて!ユウキも!」
「え?うわっ!?」
だからこそ、より一層危険視した。今起こっている怪物の同士の戦い。双方、その巨体からは想像も出来ないほどのスピードと技術で競い合っている。その余震に気づかないほどに自分は今この戦いに見入っていた
「ねぇ、アスナ。あの人は…何者なの?」
「んー…多分だけど主さん、かな?」
「そうじゃなくて…なんて言うか…その……」
「……あの人はね、キリト君を導いてくれた人だよ。」
「え?」
「本人は否定するけどね。勝手に導かれて、勝手に英雄になったんだ、って…」
「……」
その言葉の真意はわからない。だが、アスナの言葉を胸に止めながらも…
「!まずいです、パパの魔法が解けます!」
「…キリト君…」
この戦いは終わりを迎えようとしている。
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終わりっていうのは結構唐突なものだと思う。現に俺はあの世界でそれを幾度も経験した。それがいい事だったり悪いことだったり、様々だ。だからこそ俺はこれを好機だと捉えた。
(魔法が解けた…チャンスは、もうない!)
魔法が解けた途端、空中へと晒される体。一気に思考をフル回転させる。現状、今自分に出来る最大の策。俺は羽を広げ剣を拾い全速力で死神の懐へと飛ぶ。
「はぁぁっ!!!」
「▪️▪️▪️ッ!」
死神の鎌を躱し、迫り来る手を弾き、ようやく懐が見えてきた。
(あと、1秒!)
「▪️▪️……やべ?!」
「ここだぁっ!」
完璧なタイミングだった。思った通り、自分の予測した時間通り主の魔法は解けた。その瞬間を見逃さない、俺は全速力のまま主へとぶつかろうとする。
「へっ…ばーか…」
「なっ?!」
「さてさて問題です。この速度で地面に突っ込む坊主、そして地面に突き刺さった俺の槍…結末は―――どうなるでしょうか?」
「……はぁ、完敗だ…」
「言ったろ、突っ込みぐせをなおせって」
2本の剣を重ね主へと突き刺そうとした時、あろう事か主は空中でその剣を躱し、背中へと回って関節を決めた。その瞬間俺の負けは決定した。
「…」
「動くな、っつても槍のダメージで死ぬか俺の手刀で首落とされるかのどっちかだけどな?」
「はぁ、リザイン…」
地面と激突する直前身体を貫かれた感触、それもすぐに全身を駆け巡る衝撃へと変わり、俺は敗北した。
――――――――――――――――――
「その祈りは、誰のためのものだ?」
「……」
「その祈りは、誰に捧げてんだ?」
「……」
「神様に、いるはずのないものにすがってるようじゃ…俺には届かねえよ」
「っ!」
「その剣は―――あの世界に届かねえよ」
主は高速詠唱を使えるって事にしといてください。次回、ようやくユウキです…
いやぁ…長かった。次回こそはユウキが大活躍するので是非閲覧してください!
それでは。