※注意
この話はAIメインになります。筆者はこの話の中に出てくるAIの事を数年前にやったゲームでほんの少し知ってるだけなのでキャラが違うかもしれません。御了承の上でどうぞ
「はぁ〜…ん?……ユイ〜熱燗〜」
「はーい!」
「あはぁ〜…ん?…おねーちゃーん蜜柑もどきとって〜」
「はーい」
「姉を働かせるとは偉くなったもんだな…でっかい方の娘よ」
「パパだってさっきからお姉ちゃんに頼みっぱなしじゃん」
「俺はいいんだよ〜今日まで頑張って来たからな!」
「眠ることを?」
「仕事をな!!!
12月31日。PM18:00
流石のこの世界でもやはり大晦日ともなれば人は一気に少なくなる。特にまだ親元を離れていない学生なんかは部屋の大掃除をしたり、親戚やら祖父母やらの家に行ったりと大忙しだろう。しかし、少ないと言っても中にはこの大晦日にもこの世界に潜っている奴らは少なからずいる。今日だってたまたま街で出くわした常連の連中に店を開けてくれと泣きつかれたのだ。流石の主も今日くらいは休みたいと必死の逃亡を見せるが呆気なく捕まる。昼だけという約束で営業して今に至っているのだ。
そんな今の現状はと言うと、何故か永遠の別れを連想させるような泣き顔をされながら預けられたユイと随分と前から居候をかましているユイよりもでっかい妹。ユイは来たからには働くと言った感じで昼の時から酒場の方を手伝ったり軽い飯を作ったり、掃除を手伝ったりと大活躍である。それなのに夜になっても頑張っているのだ。
「たくよー…お前も姉であるユイを見習って働こうとは思わんのか?」
「あー、残念ながら私って剣しか持てないんだ」
「え?戦闘狂かな?じゃなくて現在進行形でリモコン持ってんだろ。返せ、ガ○使見てんだよ!」
「えー、もういい歳のおじさんが叩かれてるの見て面白い?それに田○さんなんてそろそろ尾骶骨イッちゃうよ?」
「おいおいそんなこと言ったら○正なんて今年こそ入れ歯がポーンっ!っていくぞ?」
「あー…」
何ともくだらない会話をしているのだろうか。あの頃からは想像もできないほどに何とも愉快な一時である。そんな事をしているうちにリビングにはお盆の上に大量の蜜柑もどきと熱燗を2号乗せ、ユイがやってきた。
「二人とも!食べて飲んでばかりしてると豚さんになっちゃいますよ?」
「だってよ、illfang the Kobold Lordさん?」
「えい」
「うぁっちぃっ〜!?!目がぁぁっ?!」
「主さん!?タオルタオル!」
「あはははっ!」
「もう、ダメじゃないですか!主さん治まりましたか?」
「あ、あぁ…何と…」
「あっ…!」
「かあ゛ぁっ!!熱の後に刺激がぁっ!刺さるような酸味のある痛みが眼球にぃぃっ?!?」
「あ゛はははっ!パ、パ…!動き方…!お腹痛いからやめてww」
「ご、ごめんなさい!主さん!」
「目がぁー!目がぁー!!!」
悲劇に悲劇が重なった。でっかい方の娘を煽ったのは自分の失態だが、まさか出来たてホヤホヤの熱燗を顔面目がけて掛けてくるだろうか?思っても見なかった不意の出来事にコタツから抜け出して捌かれる前のエビのように暴れ回る主。それを心配してくれる天使のような少女ユイはわざわざ冷たいタオルで目を冷やしてくれた。しかし、悲劇は続いた。
なんと、ユイという名の天使はすごいドジっ子だった。手をついたテーブルの上にはまるで狙っていたかのように蜜柑もどきが置いてあった。その蜜柑もどきは見事潰されその汁は何故か主の目に的確にヒットし今度は釣られた魚の如く暴れ回った。まさに泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったりである。
こうして馬鹿騒ぎしながらも夜は更けていった。
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PM23:30
「ヒックっ!…ちょいと飲みすぎたな…」
「ちょっとじゃないでしょ…飲み過ぎだよパパ…」
「そうですよ主さん。何合飲んだんですか?」
「あー、まぁ今日くらいはハメ外させてくれや…さてと!お前ら腹は空いてるかー!」
「「…?」」
「…腹は空いてるか〜!!!」
時刻は深夜に差し掛かるこの夜。コタツでぬくぬくしながら3人で談笑していた。あと30分で年を越すユイが少しだけソワソワしているように見えたため、主はこの夜を締めくくるために2人に手料理を振舞おうとしたところ首を傾げられてしまった。そんなことにはめげないしょげない主さん。先程よりも大きな声で部屋に響かせる。2人は顔を合わせてにやけながら大きな声で手を挙げた。
「「おぉー!」」
「なら、しばし待て!天ぷらは何がいい?!!」
「「エビ!」」
「そんな物はこの世界にない!なんちゃってエビな」
かなり酔っ払っていた主。しかし、そんなふらついている主でも料理はできる。リクエストを貰いつつ厨房へと向かいすぐさま調理に取り掛かる。と言ってもこの世界のシステム的に茹でて上げて終わりである。必要とする時間はものの10分程であろう。もう既に麺を茹で終え、天ぷらをあげ終える手前である。そしてようやく
「はいよ!なんちゃって天ぷらそばだ〜!」
「わぁ!」
「ちょっとパパ!なんでお姉ちゃんはエビ2本なの!」
「働いた人にはそれ相応の報酬があるってもんだ…」
「うっ…はぁ、仕方ないか…」
「じゃあ、いただきます!」
「「いただきまーす!」」
こたつの上に並ぶ3つの器。それを一人一人が啜りながら単位のない話をして、いよいよその時が近づいてきた。テレビの方からカウントダウンの声が聞こえる。
「いよいよだな〜」
「5!」
「4!」
「さーん」
「「2ぃ!」」
「1…あけまして、おめでとう。」
「あけましておめでとうございます!」
「おめでとう!」
ようやく年を越した。ALOの中から誰が考えたかは知らないが鐘の音が鳴り響いている。それはまるであの世界の終わりを知らせた時のように世界中に大きく大きく響き渡り、新たな年の始まりを知らせた。
「そう言えばなんで蕎麦なんだろうね?」
「一般的には、蕎麦は切れやすいということから今年の厄なんかを断ち切る、という意味で食べられるそうです。」
「お姉ちゃんったら博識〜」
「それだけじゃねーぞ。蕎麦は細く長いと言うことから長寿の意味があるんだ。」
「太い方が良くない??」
「ん、確かにな…実際には年越しうどんっていうとこもあるし…ま、細かいことは気にすんな!」
「えー…」
我々がこんな知識を語りだしたら正直ネット上の情報を全ていうことになりかねない。程よく切り良く話をくぎりたいものだったが、でっかい方の娘が何ともまあ会話を困惑させるようなことを言うもんだから、ここから始まるユイの年越しそばの歴史講座が捗り、捗り、そのまま数時間経過した…
――――――――――――――――――
AM4:00
「ん…んー…パパ…ママ…」
「初夢まで坊主たちたぁ…幸せになったな…ユイ」
「なにしんみりしてんの?」
「……」
「な、なに?」
「いやぁ、こいつは驚いた。馬子にも衣装たあ言ったもんだな…」
「それ馬鹿にしてるからね?もう、行こう…」
「はいはい…」
蕎麦を食い終え、それなりの時間を様々なことをして過ごした。トランプをしては、何故か異常にユイがババ抜き弱かったり。大富豪をしては後先を考えずにでっかい方の娘が自爆したり。そんなことをしている間にユイはおねむの時間、寝顔を見つめながらも着替えを済ませ。少女の支度を待つ。
自分がユイの寝顔を覗いているといつもの前衛的でかなり責めている際どい服とは見違え、髪までいつもと様子を変え振袖姿で何とも大人しく大人な女性になっていた。まるで淑女のようだが、実はただの怪力ゴリラである。
「はぁーあ、どーせならキリトにエスコート兼ボディガードして欲しかったな〜」
「ボディガード〜??何だ、坊主はゴリラに襲われそうになるであろう可哀想なボッチプレイヤー守らなきゃいけねーのか?」
「私のボディガード!」
「いや、お前を守るよりも先に絡んできた酔っ払いを守る。」
そう、何が一番危険なのかと言うと、ここにいるなんとも可愛らしい我が娘だ。主は今、普通の歩道を首輪付きのライオンを連れて歩いているようなもの。そう、すなわち手綱を話したらその辺の一帯が殺人現場へと変わるのだ。主はそれを防ぐためにこうして監視役として歩いている。
「守るって…こんな美少女と歩いてるんだからパパが後ろから刺されるかもよ?」
「美少女……ん?」
「本っ当に失礼!」
「いやいや、美しいって言うにはまだ年が足りねーんだよ。俺からしたら、可愛いくて手のかかるそんな我が娘だよ…」
「お姉ちゃんと違ってごめんねーだ」
「ありゃりゃ、ご機嫌斜めか?」
「べっつにー!…あ、あれだ!」
娘と歩いているとそこには軽く人が並ぶ程に多くの人で賑わっていた。正月限定で第1層の始まりの街にて御参りをできるシステムだ。こんな日になんでこんなにも多くのプレイヤーがいるのか…主は考えるのを止めてしまった。何とも可哀想な答えにしかたどり着かなかったからだ。
「何お願いすんだ?」
「言ったら叶わないでしょー」
「どーせ俺の耳には入ってくるだぜ?」
「そうかもしれないけどさ、様式美ってあるじゃん。こういう事、一つ一つの行いが大切だと思うの…それに、もうここはあの世界じゃない…今日くらいさ…居ないはずのものに、神様っていうのに…祈ったり願ったりしてもいいんじゃない?」
「…はぁ……そう、かもな…じゃあ!お祈りしますか!」
列に並びながら、恒例にもなりつつある願い事を相手に聞くというよく分からない事をする。まず持って叶うかもわからないものを願って、それが他に他者に言ったら叶わないなんて、正直馬鹿げてる。そう思っていた。だが、自分がこの世界に生きて、あの世界で生きてきて、人間というものに絆されたというのも事実だ。その絆された人間の力に敗北したのも事実。だからこそ今日くらいは人間というものになりきってみよう
「……パパ…」
「鍛冶屋が繁盛しますように鍛冶屋が繁盛しますように……」
「パパ…」
「厄介事が減りますように厄介事が減りますように……」
「……」
「えーと、あと、あとは…あ、一攫千金のチャンスを私めに…」
「パパ!!!」
「ほぁっ?!な、なんだよ…?」
「恥ずかしいからやめて…」
今日くらいという言葉に何か大切なものが外れたかのようにブツブツとお今日の如く呟き始めた主。人の目も後ろの列さえ気にせずそんなことをしていたらいつの間にか顔を真っ赤にした娘に一喝。強制終了をくらいその場から一旦離れた。
「本当に勘弁してよ〜!」
「すまねえな〜願い事なんて溜まりすぎて山になってるからよ〜」
「もう自分でどうにか出来るのだってあるじゃん!」
「え?!」
「え?!じゃない!…本当は何お願いしたの?」
「…さぁーな…今日が特別な日でも神様に願うことはやっぱりねーや…」
「そっか…私はねぇ〜」
「はぁ、言ったら叶わ…」
「これからもずっと、みんなで笑って生きていたい」
「……」
転移した先は鍛冶屋のある階層、そこにある山の近くまで歩いた。その山を登っている最中も娘に説教をされ続けたがこれに関してはぐぅのねも出ないため反論せずふざけていた。だが、唐突な娘の願いの暴露に一瞬にして歩みを止めた。
「何て、欲張りかな?」
「……」
「私達の存在っていうのはこの世界ありきのもの…酷く不安定なもの…この世界が終わった時。それは今度こそ私たちの最後だよ…」
「そんなのずっとずっと先に決まって…」
「分からないじゃん?何があるかなんて、誰にも分からない。明日にはもう…笑うどころか…生きることすら出来ないかもしれない…私は今でも少し怖いよ…」
「はぁ…お前さんも馬鹿だな〜」
「ば、ばか…??」
「大馬鹿だ。もし明日笑えなかったら明後日、2日分笑え。もし明日生きられなかったら、明後日2日分頑張って生きろ!そもそも!笑えない日なんて、来るはずねえだろ…
―――神様に届かなくても、俺に届いてる。」
「!…そっか…」
「お前さんの願い事は欲張りなんかじゃねえ!至極当然で至って普通な願い事だ!だからいつまでも、堂々と―――笑え!」
娘はずっと不安だったのだろう。この普通の生活が普通に生きていることが、彼女もまたあの世界で救われたものの1人。だからこそ生きたいと思う気持ちは何よりも大きいはずなんだ。それを周囲に知られないように隠してはいた。しかし、抱え込んでいたが故に爆発してしまえば、それは一見深刻に見える。しかし、そんなことは無い。彼女が不安になる必要なんてない。何故なら主がいるからだ。主とあの男との約束があるからだ。だから、主は迷いなく少女へと笑いかけた。
「うん!」
その時の少女の笑顔は初日の出に照らされ、頬を伝う雫は何よりも美しく零れこちたに違いない。日は登った。今年も、新たな物語が始まる。それでも彼らはずっと笑い続けるだろう。
「改めて、あけましておめでとう。―――ストレア」
「うん。あけましておめでとう。―――パパ」
「「へへ〜!」」
「早く帰ろ!お姉ちゃんが起きちゃう前に!」
「はいはい。」
(願いが叶うんだとするんなら、自分で叶える。だから、見守っといてくれや)
「今年もよろしく。」
今年もよろしくお願いします