昼は刀鍛冶、夜は酒場   作:kouga

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いやまぁ…タレてましたよ?(真顔)何か?(真顔)






すいません。冗談です。お許しください┏○┓


歩く戦術総覧

 

 

本日も晴天なり!

 

 

うんまぁ。いい天気。本当に…閑古鳥が鳴く、とは言ったもんだ。あれ?自分で言ってて泣きそうだ。何でも?明日は?卒業トーナメントがあるとかで?坊主も美少年も店に来ないし?それどころか?街のゴロツキ連中も来ないし?ましてや、客が来ない。

 

 

「……店先の掃除…はさっきした…あ、鍛治具の整備…は昨日、した…あ!坊主の真っ黒黒助…!…は1週間前に…終わった……」

 

 

外から煽るかのようにホーホケキョっ!と聞こえてくる。静寂だけが店内に響き渡る。最近じゃ鉄クズしか打てなくなった自分に嫌気がさし、鍛冶屋なんだか、打ち直しやなのかわかったものでは無い。と分かってはいたのだが…

 

 

「い、いらっしゃいませ〜…あ、ありがとう、ござい、ました〜、、、い、いらっしゃい…ま…せ……」

 

「あぁ、邪魔するぞ」

 

「?!?!?!う、うぅぅ…!!いらっしゃいませ!ソルティリーナ・セルルト上級修剣士殿ぉぉぉぉっ!!!!」

 

「……邪魔するのはまた今度に…」

 

「待って!?お願いします!お願い致します!!お願い差し上げます(?)から?!何なりとお申し付け下さい!!!」

 

「お、おい!店内とはいえやめろ!外に聞こえでもしたら誤解されてしまう!」

 

「いえ…むしろ…私目の事を犬と…お呼びくださ、い?!」

 

「やめろ、と言っているだろう?」

 

「あ、あぃ…」

 

 

皆は歓喜の瞬間というものを経験したことがあるだろうか?それはどんな瞬間だった?坊主が女に殴られた瞬間?違う。美少年が告白断って裏で泥沼が起きている瞬間?ちがう!歓喜の瞬間とは…客が来た時だ。

 

何とそこには、卒業トーナメントを控えているはずのソルティリーナ上級修剣士殿がいた。

 

 

「聞き及んでいると思うが、明日使う…無理を承知で頼む。仕上げてくれ」

 

「…お家の方には?」

 

「掛け合った…だが、明日となると難しい…だから」

 

「あい、わかった。」

 

「!いいのか?そんな二つ返事で?」

 

「まぁ、ゼロから生み出すのに関しちゃ…自分より下手なやつなんざいませんが…」

 

「誇るな」

 

「武器を手入れするとなりゃ…まぁ―――それなりですよ!」

 

「そこは誇ってくれ…」

 

「安心して下さいよ…見せるんでしょ…坊主に」

 

「…あいつが、キリトが示してくれた。だから―――負けられない。」

 

 

 

武器の状態を見るに予選の時点で如何に接戦を窮めたのか状況が見て取れる。いつかの夜、彼女は言っていた。まだ、背中を見ていて欲しいと。彼女は察していた。坊主の、隠し持つ何かには、自分では到底辿り着けない道(剣)があると。だからこそ、負けたくない、先の男にも、背中を見る後輩にも。

 

その目はあまりにも清く、真っ直ぐに先を見ていた。

 

 

「作業に入らせていただきますよ?」

 

「そばで見学しても?」

 

「どうぞどうぞ」

 

 

熱の篭もる作業場。まぁ?一応鍛冶屋だし?そりゃあるよ?なんちゃってじゃねーよ!ちゃんとした俺の神聖領域だ。

 

 

「…決勝までは、順当かと?」

 

「…油断は出来ん。だが、負けるつもりは無い。」

 

「あの金髪坊主にも?」

 

「!……あぁ…」

 

 

工房の中、二人の会話が金属の響く間、ほんの僅かな隙間の中進む。こちらからは表情を見て取れない。だが、確実に剣士の腕が、少女の腕になっていた。

 

震えを殺すかのように片方の腕で掴んで、押さえ込んでいた。そうこうしている間に、外はすっかり暗くなっていた。

 

 

「…仕上がりです。」

 

「ふっ…見事なものだな…専属として雇いたいくらいだ」

 

「ははは!生憎と…こっちの方があってるもんでね」

 

「客一人いないのにか?」

 

「ごっ?!ぶ…?!」

 

「おい、ワインを吐くな…」

 

「いや、血ね?」

 

 

作業が終わる。我ながら過去最高の出来映えだと思う。それに答えるかのようにソルティリーナ上級修剣士殿も頷きつつ、軽い素振りをし、何度目かのスカウト。だが、まさかこっちが血を吐くことになろうとは。

 

 

「そいつがありゃ…坊主に背中見せられますかい?」

 

「……あの日の決闘を思い出す」

 

「坊主の?」

 

「あぁ…見せるべき背中をキリトに見てしまった。あの日を…」

 

「……」

 

「震えが止まらない…もし、決勝まで行けたとして、私はあれに勝てるのか?」

 

「……」

 

「キリトが、後輩が敬う背中を、私は…見せれるのか?」

 

「……」

 

「いくら自問自答しても、答えが出ない…」

 

「だったら、さっさと諦め…」

 

「だからここに来た。」

 

「!」

 

「キリトが…あの二人が言っていた。迷ったらぶつかればいい、と。」

 

 

振り向きざまに剣をかまえ、こちらを振り向く剣士はあまりにも美しく、あまりにも強く見えてしまった。背負った物の重さではない。背負う事を選んだ事が、この強さなのだ。

 

 

「着いてきな」

 

「……」

 

「言っとくが、あの日みたいに寸止めはしねぇ…防げなきゃ―――死ねや…」

 

「覚悟の上だ。あの日…何も出来なかった自分には、貴様に怯えた自分には、負けない!」

 

「そうこうなきゃ、な!!!」

 

「そして勝つ!貴様にも!過去の自分にも!!」

 

 

この夜の勝敗を知るものは誰もいない。だが、次の日ソルティリーナ上級修剣士はトーナメント優勝を果たしたという。

 

 

「あ、歩く戦術総覧上級修剣士殿!」

 

「その呼び方をやめろ…即刻首を跳ねるぞ!」

 

「お、お助けぇ……」

 

 

今日も今日とて鍛冶屋は正常運転。

 

 

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