本日も晴天なり。いやはや、最近はここら一帯に多くのプレイヤーが来て店が少しだけ有名になってしまった。何故かって?そんな事は自分にもわからん。なんでも坊主のねぐらがバレたらしいが今更なんの用があるのだろうか?
「いらっしゃい!おっ、珍しい客だな。店の方はいいのかい嬢ちゃん?」
心地よく扉が開いたかと思えば、なんともまぁ可愛げもなくむしろ不機嫌にさえ見えるピンク頭の少女が入口に立っていた。
「あ?副団長殿に任せてきたぁ?!お前さん正気か?なんでまた恋敵なんか…っ!?ご、ごめんなさい…どうかメイスだけはお納めください…」
自分の悪いくせが出た。ついつい余計な一言を発してしまい、不機嫌そうな顔が今度は殺意の篭った笑顔とともに攻撃となって、メイスでカウンターを凹ませた。
「はぁ…で?今日ここに顔出しに来たってことはいつものあれか?
え?それだけじゃない?」
嬢ちゃんがこの店に来る時は大抵ある一つのことをするためなのだが今日はもうひとつあるらしい。急に落ち込んだように椅子に座るとある記事をこちらに渡してくる。
「んだこりゃ?!黒の剣士の二刀流、ボスをソロ攻略っ?!かぁ~!しかも副団長殿とのこんな写真まで、こいつはもうあれだな…飲むしかねーな!」
その瞬間に凹んでいるカウンターをさらに破壊するほどの威力で嬢ちゃんは手をついて立ち上がり、胸ぐらを掴んでくる。
「嬢ちゃぁぁぁんっ!お、落ちついて!頭がもげる!脳みそがこぼれる!
はぁはぁはぁ…あ?副団長殿との写真のことじゃない?秘密にしてた二刀流のことがバレたことで落ち込んでた?」
何とかもう一度落ち着かせ座らせることに成功したが、何故坊主の回りの女はこんなにも自分の頭をもぐ勢いで揺さぶるのだろうか。いや、今はそんなことはいいただ女心というやつが分からないだけだ。
「はぁ…いやまぁ、女心ってのは複雑でわかんねーけどよ、坊主が秘密をバラしてでも守りたいものがあったんだろ?それだけは認めてやんなきゃな?いい女になれないぜ?」
そういって、嬢ちゃんの頭に手を乗せ軽く頭を撫でてやる。その間は珍しいことに抵抗することもなくただ涙しながら俯くだけだった。
「よしっ!ほら、いつまでも泣いてねーで!恒例のあれやるぞー!」
そうして嬢ちゃんを元気づけるために2人は奥の工房へといき所定の位置につく。
「今日は特別に嬢ちゃんが決めていいぜ?何を打つ? へ?刀でいいのか!いいねぇ~そうこなくっちゃ!」
恒例のあれとは嬢ちゃんと自分の武器作り対決だ。より良く仕上げた方の勝ち。ちなみにだがこの勝負では刀以外で嬢ちゃんに勝ったことはない。だが、刀であれば自分が負けることは絶対にない。
「へへ、嬢ちゃん。後悔するなよ?」
タイマーが鳴り響くとともに両者がそれぞれの素材を手に金属音を響かせる。そうして…
「おぉー!やっぱり嬢ちゃんの武器はいいね~。嬢ちゃんの思いが色艶になって刀身に現れてる。流石俺の弟子!」
終了と共に両者が刀を交換する。それを見て素直な感想を述べる。嬢ちゃんは一瞬だけ顔を赤くするも自分の持っている刀を見て肩を落とす。
「まぁ、そう気を落とすなって!俺は刀鍛冶専門な訳だしな!失敗作だけど。
え?当たり前だろこんなのは名刀じゃねー。どっからどう見ても妖刀の域に達してる。これじゃ売り物になんねーな…」
肩を落としたかと思えば自分の発言によりいっきに声を荒らげて食いつく。たしかに傍から見れば業物かもしれないが刀鍛冶の自分に言わせれば失敗の失敗作だ。それを平然と述べる自分に嬢ちゃんはとうとう頭を抱えてしまう。
「はははっ!それで嬢ちゃん?気は晴れたかい?
うむ、そいつはよかった。次来る時は刀鍛冶で負かせるようになってから来いよ?」
いつの間にか坊主のことなんぞ忘れているかのように嬢ちゃんは鍛冶に没頭していた。まぁ、それが目的でやっていたので結果オーライである。
「嬢ちゃん!忘れもんだ。坊主によろしく!」
帰り際スッキリしたように帰路につこうとする嬢ちゃんを呼び止めある剣を投げて渡す。それは坊主の愛用する2振りのうちの黒の剣。手入れを終えたのだが一向に取りに来ないため嬢ちゃんへと託したのだ。そうして嬢ちゃんもまた笑いながら今度こそ店をあとにした。
「女3人か…坊主に紹介してもらお。バンダナのあんちゃんは…まぁ、いっか」
競い合い高め合い、刀を生み出した。今日も今日とて鍛冶屋は正常運転。