本日も晴天なり。つい先日、合コンに惨敗しやけ酒をしたばかりの今日この頃面白い話もないのだが、そこに1つの不安な報せが届く
「いらっしゃい!って、旦那!こっちに来るのは珍しくないですかい?」
店を訪れたのは強靭な肉体に色黒の肌、加えて自分を優に超える長身の男。仕事柄かなりわがままを聞いてもらったり聞いたりしている間柄、そう旦那だ
「すんません。茶ぐらいしかないですけど、とりあえずどぞ。そんで、今日はまた何でこの時間帯に?」
いつもであれば旦那は夜の酒場の方に顔を出し、そちらで仕事の依頼や随時情報交換をするため、鍛冶屋の方にはめったに来ない。
「え?装備を幾つか仕上げてほしい?いいっすけど…なんでまた?……は?ラフコフの残党?」
いい報せどころか、最悪の報せだ。殺人ギルド《ラフィン・コフィン》、これは攻略組50人がかりで壊滅させたギルドなのだが、その中でも討伐隊は11人、ラフコフ側も21人死亡。討伐隊の生存者たちに痛い記憶を刻んだ。そんな殺人ギルドの残党がいたというのだ。それも被害者が
「…旦那…そいつはマジですか?っ!坊主が被害者?!あのイカれ野郎ですかい?!へ?副団長殿の元側近?はぁ…なら大丈夫じゃないですかい。」
犯人はラフコフの残党ではあるものの本当に下っ端の雑魚だったらしい。だが、決して大丈夫ではなかった
「へ?大丈夫じゃない?……そっすか…殺しちまったんすね…またあの感覚を味わったんすね…」
坊主は以前の討伐作戦でラフコフの数名を手にかけている。いや、坊主だけではない。副団長殿にバンダナのあんちゃん達も殺したことがあるのだ。その重みといったら子供が背負えるようなものでは無いだろう。
「旦那、装備の方はすぐに仕上げます。いや、金は後日でいいです。え?なんでって…もう嫌でしょ。サポートしてきたプレイヤーが何かに奪われるのは…」
そう、自分は前線を離れてサポートに回った身だ。だからこそ、あの時のように自分の選択で誰かの命が奪われるのはどうにもやるせない。やれることはやっておきたいのだ。そう思い、鍛冶場に入り鉄を打った。
「ほいっ!俺の作れる最高装備計50式!他にも作り次第随時旦那の店に運びますよ。旦那、中層プレイヤー達のことよろしく頼んます。」
仕上げた装備を全て旦那に渡し、自分の仕事は終わった。本当であれば自分で渡せばいいんだろうが、もうその資格はない。理由は少しだけ過去に遡ることになるからまた今度
「それと、坊主にも見舞い品作ったんすけど…家にいないんすよね〜へ?結婚?へぇ〜坊主と?副団長殿が?結婚………へぇ〜……えぇぇぇぇっへっへっ?!?!」
過去を思い出し、歩き出せたことを実感する。
今日も今日とて鍛冶屋は正常運転。