昼は刀鍛冶、夜は酒場   作:kouga

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夫婦

 

 

本日も晴天なり。最近は客足もピッタリと止みやがった。鍛冶屋の儲けはほぼゼロ、なんて暇な数日間だったか…なんてことを思いながらも攻略が明日始まる今日この頃最後の客はすぐ側だ。

 

 

 

「お、やっと来たな〜待ってたぜ、御二方。」

 

 

 

店を開け入店して来たのは、仲良く手を繋ぎ互いに薬指に指輪をはめた坊主と副団長殿だった。

 

 

 

「お久しぶりです主さん。」

 

「本当ですよ〜副団長殿なんて酒場での愚痴こぼし大会以来じゃないですか〜ひぇっ…」

 

「何か、言いました?」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

 

ちょっとだけふざけただけなのに首元に細剣を容赦なく突きつけてくる副団長殿、その表情は笑っているようで笑っていない。その隣の坊主複雑な様子だ

 

 

 

「おい、人の嫁にちょっかい出すな」

 

「いやいや、坊主。よく見てみ?ちょっかいつうか剣突き出されてんだよ?デコピンしたらグーパンされてる感じだよ?」

 

「アスナに変なこと言うからだろ…」

 

「ははーん、さては…ヤキモチだな!」

 

「…はぁ…あんたのボジティブさには畏れ入るよ…首元に剣突きつけられてよくそんなこと言えたな!」

 

 

 

微妙例を出しつつも、いい感じに乗ってくれた坊主をちょっと嬉しく思う。だが、この状況を理解しているのなら早く剣を収めさせてほしいと思い主だった。

 

 

 

「まぁまぁ…とりあえず副団長殿?そろそろ剣下ろしてくれない?」

 

「……」

 

「アスナ、下ろしてやってくれ」

 

「うん!」

 

 

 

自分の発した言葉にはピクリとも動かない副団長殿だが、坊主が自分と同じことを言うとニコニコ笑いながら剣を下げた。

 

 

 

「ねぇ、なんで?!俺と坊主でなんでそんなに温度差あるんですか!?」

 

「月とスッポンって言葉わかるかしら?」

 

「私目がスッポンですか?!」

 

 

 

未だに笑顔を絶やさずこちらに向けて悪意ゼロで言葉を放つ容赦ない副団長殿。だが、坊主がここで口を挟んでくれる。

 

 

 

「アスナ…流石に言いすぎだよ」

 

「そうだよなぁー!坊主!」

 

「せいぜい、人間とゴギブリくらいじゃないか?」

 

「コールド負けじゃねーか!!!」

 

 

フォローをするかと思えば結局さっきと大して自分の位置が変わってない。むしろ害虫にランクダウンだ

 

 

 

「ふん!依頼じゃねーなら帰れ!俺は忙しいんだ!」

 

「「へぇー…客1人いないのに、か?/ですか?」」

 

「……」

 

「……」

 

「あなた方が神様です。何なりと申してください。」

 

「よしっ!」

 

「やったぁ!」

 

「…はぁ…」

 

 

 

かなりの虚勢を張ったのだが、それも報われず自分が膝をつき依頼を頼む側になってしまう。それを見て2人が笑ってくれたため。まぁ、いっかと思ってしまう。

 

 

 

「んじゃ仕事しますかね…で?依頼は?」

 

「俺はもちろん…コイツを打ち直してくれ」

 

「はいよ。副団長殿は?」

 

「私からは…これです。」

 

 

 

坊主はもちろんのことエリュシデータをカウンターへと乗せた。もう何度打ち直したか分からないが、今回はダントツで耐久値が削れている。まぁ、検討はついているが、副団長殿からの依頼は自分も驚かされるものだった

 

 

 

「!……綺麗な宝石だな。」

 

「はい。コレをネックレスにして欲しいんです」

 

「はいよ!…大切なものなのか?」

 

「…はい。」

 

「あぁ、そうだな…」

 

 

 

見ただけでわかった。あれは、あの子の心だ。そして、それを持っているという事は出会えたんだ。2人の反応を見る限りやはり出会わせて良かったと思う。

 

 

 

「……よっしゃぁ!仕事してくる!

あ、待ってる間にチューとかすんなよ!抱き合うのも禁止だかんな!」

 

「「だ、誰がするか!/するもんですか!」」

 

 

 

工房に入り、坊主の剣を強化素材で補い熱をおわせ打ち直していく。今までのどんな剣よりも丁寧に、強く、何度も何度も鉄を打つ、それはやがて形になりより良いものへと仕上がった。

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

 

次に細かい作業になるがまずはチェーンの部分を作り上げ、その先端に宝石が着くように位置を作り開ける。そして、最後に宝石をはめる。そうして、仕事が終わった。

 

 

 

「おーい!終わったぞ〜…チューした?」

 

「「してない!」」

 

 

2人にそれぞれ目当ての物を渡し、それぞれの反応を伺うがどちらも笑っている。なんて心躍る瞬間であろうか。それにあのネックレス、やはり作れて良かったと改めて思う。

 

 

 

「気に入ってもらえたようで何よりだ。これで先に進めるな?」

 

「はい。」

 

「……」

 

「どした〜坊主?」

 

「キリトくん?」

 

「…いや、まだやり残したことがあったよ」

 

「!」

 

 

 

副団長殿に対して何か心残りのありそうな坊主。すると、吹っ切れたようにエリュシデータを構えこちらに突きつけてくる。

 

 

 

「キリトくん!?何して…」

 

「アスナ、ごめん。でも…俺はこの人に勝たなきゃいけないんだ。」

 

「何かと思えば…記念すべき500敗目は嫁さんの前がいいのか?」

 

「5、500?!」

 

「違うよアスナ…今日で500戦1勝499敗だ!」

 

「へっ、そうかよ…来な」

 

 

 

副団長殿の様子を見るに話してはいなかったらしいが、まぁ驚くのは必然だ。だが、そんな副団長殿を置き去りにするように3人で裏庭に移動する。その移動中2人の話し声が聞こえる

 

 

 

「キリトくん、さっきの本当なの?」

 

「あぁ、俺は過去に1度もあの人に勝ったことがない…」

 

「冗談じゃ、ないのね?」

 

「うん。でも、今日は違う。俺も進まなきゃいけないんだ」

 

 

 

ようやく2人が裏庭に到着する。そこで自分も腰に得物を据える。

 

 

 

「ハンデほしいか?」

 

「冗談はよせよ。全力で来てくれ…」

 

「了解…」

 

 

 

デュエル開始まで残り数十秒。互いに会話はない、坊主の側にはネックレスを握り胸に手を置く副団長殿。その時自分には見えた。坊主が背負っているもの達が

 

 

 

「尋常に、勝負っ!」

 

「っ!はぁぁぁぁっ!!!」

 

「……重いな。本当に重くなった……」

 

 

 

坊主の剣を自分の刀が受け止める。そして、伝わる。口から素直な感想がこぼれる。

 

 

 

 

 

 

 

この日初めて、黒の剣士が1勝を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日もこれからも鍛冶屋は正常運転。

 

 

 

 




本当であればユイの心は攻略よりもっと前にネックレスになっていましたが、都合上許して下さい┏○┓
あと残り1話ですが、最後はまぁあの人ですね
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