【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち

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最終話.新たな時代の始まり

☆ニニャ(アイン)視点

 

 

馬を走らせ、なんとか王都へ辿り着いたものの、その異様な雰囲気に戸惑った。王都は異形種達に監視されるように見張られており、彼らは 王都に入って来ようとした僕達にも近寄ってきたが、何処からともなく現れた“異形種の彼”のお陰で、無事に通された。

バレアレ薬品店で僕らを助けてくれた彼が教えてくれた内容によれば、この異形種達もナザリックの者達なので心配はいらないらしい。

 

 

なにか、とんでもない事が起こっているのか??

 

 

不安を感じながらも、王都内に入ると 僕らの想像を絶する光景が広がっていた。

 

半透明の・・・まるで幽霊のような者達が道を埋め尽くさんばかりに溢れており、誰もが喜びを顔に貼り付けていた。

獣人、エルフ、ドワーフ、リザードマン、それに種族が分からないが 羽が生えていたり 昆虫やスライムの様な姿をしていたりする者達・・・そして、人間。その誰もが仲良く笑い合い 喜びあっているのだ。

 

「王様!王妃様!万歳!!!」

 

「おめでたや、おめでたやぁ〜」

 

そんな半透明の者達から逃れるように、道脇には王都住民が 立ち尽くしており誰もが 呆然としながらその光景を眺めていた。

 

ルクルットが驚愕に目を見開き、呟いた声を聞きながら、僕は考えていた事が 口から出ていた。

 

 

「な、なんだこれ」

 

「幽霊・・・?」

 

 

ブレインが幽霊達の合間を縫うように足を進めながら 僕の手を取った。

 

「おい、離れるんじゃねぇぞ」

 

「う、うん」

 

ブレインを先頭に進んでいくものの、幽霊達は減る様子もなく、むしろ 奥へ行くにつれ増えていっているようだった。

 

僕らを見向きもしない彼らにそっと手を伸ばして、冷たい空気に触れたような感触に背筋が震えた。

 

 

「触れない・・・?」

 

「お、おお、どうなってるんだ」

 

 

ペテルの悲鳴じみた声が聞こえた。得体の知れない彼らが怖いのだろう。

だけど、僕にはこの幽霊達が 新しい時代の訪れを告げているように感じた。

 

 

「あれは、なんであるか??」

 

 

突然、大きい声を出したダインが空を指さした。そちらに視線をあげると、巨大な風景が映し出されていた。

王城を背景に豪華な壇上の上には 二人の男女が見つめあっており、その周囲を異形種達・・・あれは、階層守護者だろうか?その彼らが控えていた。

 

その女性に 既視感を感じて、よく良く見てみれば アレは忘れもしない大好きな姉の顔だった。

 

 

「姉さん!!??」

 

「あの人なのか?!」

 

「た、多分・・・」

 

 

ペテルの問いに 自信なく返答した。姉さんには 9年間会っていなかったのだ。だけど、きっと、あの顔は・・・

 

 

「王城前か。とにかく行くぞ」

 

 

同じ事を思ったのか、ブレインが声を上げ 向おうとしたーーその時だった。

あんなにひしめき合っていた幽霊達が 突如として 掻き消えた。

 

「消えた?」

 

「何がどうなって・・・」

 

ルクルットとペテルが 驚きの声を上げたものの、幽霊達がいなくなった事で 王城まで 向かいやすくなったのだ。僕らはそのまま全力で走り出した。

 

王城前には あの風景と同じだった。壇上の下に座らされている人達の大半は黒い空間の中へ連れてかれている最中であり 未だ座らされている人達も顔に恐怖を貼り付けていた。

 

 

「お、お姉ちゃん!!!」

 

 

目の前に来て確信した。壇上の上から降りてきていた女性は やっぱり姉さんだった。先程のようなドレスではなく、白のシンプルなワンピースを着た姉さんは 僕を見るなり 固まってしまった。

 

 

「まさか・・・アイン?」

 

「そうだよ、ずっと探してたんだ」

 

 

震える声を押し殺しながら 壇上の下に座らされている人達の中を突っ切り ゆっくり近付いていくと 姉さんが 走り寄ってきて、僕に思いっきり抱きついた。

 

 

「アイン!!アインッ!あぁ、こんなにも大きくなって〜。可愛くなったわねぇ」

 

 

昔と同じように頭を撫でながら 笑いかけてくれる姉さんの姿を見て 僕は涙が止まらなかった。

 

ブレインが呆れたように、それでも嬉しそうにしていた。

 

 

「全く 変わんねぇな、ツアレ」

 

「あぁ!ブレイン!!すっかり男前になったのね。昔はあんなに悪ガキだったのに」

 

「お前は俺のオカンかよ」

 

 

姉さんは自身よりも身長が高いブレインの頭をわしゃわしゃと撫でながら、笑った。

 

 

僕らの横では、ペテルがルクルット、ダインと共に壇上から降りてきたモモンガ様に頭を下げていた。

 

 

「モモンガ様、ニニャのお姉さんを助けて頂き、ありがとうございます!」

 

「いや、礼を言うのは俺の方だ。彼女は俺の探し続けていた人だからな」

 

 

にこやかにしながら、話したモモンガ様の言葉に僕は首を傾げた。

 

 

「え?お姉ちゃん、どういうこと??」

 

「アイン、ブレインも 黙っててごめんね。私、実は前世の記憶があるの。前世での記憶を夢の中の出来事として 皆に話していたのよ」

 

 

・・・なんとなく、分かっていた事だ。姉さんの夢のお話は実在していたし、幼かった筈の姉さんは、余りにも大人びていたから。

 

 

「ニニャ、いや アインだったか?君のお姉さんは 俺の愛した人なんだ」

 

「え、え」

 

 

愛した人?姉さんが??前世でって・・・そういう事??

突然の事に混乱する僕に、モモンガ様が 喜色を帯びた声で宣言した。

 

 

「加藤さ、ツアレニーニャさんは 我が国の王妃に迎えるから、よろしくな義妹」

 

 

「えええええーーーーー!!!!!!」

 

 

顔を真っ赤にしながら照れている姉さんと そんな姉さんを見て 嬉しそうにしているモモンガ様を 視界に捉えながらも、僕は絶叫したのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

《アインズ・ウール・ゴウン》

 

突如、異世界からやって来た 人間種と異形種が共存する国家。その国に住まう者は平等に支配され、“害”にならない限り、安全は保証される。

 

他者を虐げるものは 決して許されず、元王国戦士長ガゼフ・フトロノーフやセバスチャンといった実力者達で構成された“警察”という組織に捕まるだろう。その中でも大罪だと判断されたものは 何処かへ連れていかれてしまうのだ。

 

支配下に下ったリ・エスティーゼ王国の貴族、王族は資格を剥奪され、宣言通り皆が平等に平民として支配された。

ザナック、レエブンといった一部の者達は“役人”としての仕事を与えられたそうだ。

 

リ・エスティーゼ王国を支配下に入れた後も、アインズ・ウール・ゴウンの勢いは止まらず、帝国、竜王国、エルフやドワーフといった国々まで支配下に収めていった。

かの王の逆鱗に触れ 滅ぼされた国があったが、その恐ろしさを目の当たりにした国々からすれば、反発など愚の骨頂であったのだろう。

 

 

アインズ・ウール・ゴウンの王である死の支配者(オーバーロード)は 元人間であり、王妃は元王国国民の女性である事からも分かるようにアインズ・ウール・ゴウンは特殊な例であり、人間種に寛大な支配者がいる為に異形種との共存が実現されたのだと思われる。

 

なお、王と王妃は仲睦まじく、度々 商店街などで お忍びで出かけられている姿が目撃されているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜END〜

 

 

 




完結です!
沢山のコメントや評価ありがとうございました...♪*゚

自分の妄想がちゃんと形に出来て 本当に嬉しかったです!
これも、皆さんのおかげです!ありがとうございました☆彡.。

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