「……シロウ。私……オレは蔵で鍛練をしてくるが」
「それなら、オレは先に寝てる。何かあったらランサーに頼むからさ」
……ようやく一人の時間が持てた。
朝からずっと隠してきたぶん、やりにくかったし。とりあえずは、町を散歩して
イリヤスフィールとバーサーカー。
あれがこの家を襲撃する可能性を減らしておきたい。
門から外へと出ようとした時だった。リリン、と鈴の音がする。この方向は……。
「ちっ」
舌打ちして武装をしながら走り出す。そして、あの木偶の坊の寝室に窓を割りながら入った。
月光がその人物を浮かび上がらせる。
砂漠で見た、キャラバンなどが着けていた帽子で目元を隠している。髪も完全に覆われている。ただ、褐色の良い肌に赤い線が入っているとこが伺えた。
「……?…………貴様、何者だ」
その手に握られているのはゲイ・ボルグだ。固く握られている。
「…………」
返答はない。良く見れば首に固く縄が結ばれていた。彼はゲイ・ボルグをしまい、立ち上がる。
「見られたか。まあいいさ。顔までは見えまい」
くぐもった声だ。口許に何かを巻いているわけでもないのに、そのくぐもった声は不自然に響く。
「……オレは、サーヴァント・ルーラー。と言ってもこの霊基は仮初めのものだが。どうだっていいさ、そんなのとは。だが戦力を削ぐのに失敗したとなれば話は別だ。……あんたを殺すことで釣り合いをつけるとしようかね」
不味い。
「トレース……!!」
「はいはーい」
明るい声音が響く。
「おにーさん、ちょっと退いてねー。引いちゃうとぉ、後味悪いからねー!」
私が入ってきた窓から一人の少女と巨大な白狼が現れた。
「あっはっはー。お兄さん、危ないって言ったじゃないか。もう、退いてくれないと殺しちゃうよって!まあでもそれはそれとしてさ。この人魔術師なんだよね、それなら殺されるのは可哀想だし。このサーヴァント・ライダーがお手伝いしてあげちゃう……かもぉ?」
ライダー……??
白狼はため息をつくようにがっくりと頭を下げた。
「あはは。私達、ホンモノじゃないから、大変だよねー。他のサーヴァントと渡り合うのー。トウウンも疲れるよねー。私ぃー?私はぁ、疲れたかも。えへへへへ」
白狼の頭をぽんぽんと叩いた巫女はそれから少し考えるふりをしてからニカッ!と威勢よく微笑んだのだった。
「ルーラーのお兄さん、こんばんはー!昨日ぶりだね、うふふふ、じゃあこんなバカのふりは止めるよ。ねえ、死んでくんない?」
狼はその口を大きく開いたのだった。そして、
「なぁんてね!」
少女が刀を抜刀したのだった。ルーラーの姿は消える。少女はちぇ、と舌打ちをして、床に足をつけたのだった。
「トウウン。もういいよ、ごめんねー。探索に付き合わせちゃって」
その瞬間、白狼は人間へと姿を変えたのだった。