Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】 作:秋塚翔
第一弾は趣味と好みで彼女たち。幼女先輩でも良かったけどまだ焦らしたい欲ががが。
ここから先に断っておきたいのですが、FGO編はあくまでも本編完結後のオマケ的な章なので、割とストーリーやイベント無視して色んなサーヴァントが出てくる予定です。なるべくこの時点では無理だろって経緯のある鯖は除きますが、そこはご了承いただけたら幸い。時系列も極力飛びませんが例外もあるかも。
いいですか?
>【はい】【いえす】
走る。
走る。
走る。
電源が落ち、非常灯のみが申し訳程度に足元を照らす廊下を、立香は無我夢中で走っていた。
逃げているはずなのに、逃げれている感じがしない──急に気が変わっていなければ、
──やがて、扉に電子錠の無い個室を見付けると、音を立てないよう慎重に押し開け入室。どうやら使われていないマスター候補生の部屋だった人気無い空間で、立香は限界まで上がり切った息を整える。
「大丈夫か? マスター」
「う、うん。心配してくれて有り難う……式さん」
「とりあえずここは安全だ。少し休んで、落ち着いたらこの状況を突破する手を探そうぜ」
英霊として備わる鋭敏な感知能力をフルに活用し、部屋の外を警戒する自身のサーヴァント・両儀式の言葉に力弱く頷き、不安を吐き出すように一息吐く立香。
彼女は今、カルデアで命の危機に晒されていた──
きっかけは、定期的に行っている召喚の時だった。
次なる特異点に向け、戦力の追加を目的とした召喚は直前まで普段と決して変わり映えしないものであった。
聖晶石を召喚サークルに投下し、どんな英霊が呼び声に応えて現れてくれるか心待ちにするいつもの光景。誰も来ない時もあれば、油断していると思わぬ強力な英霊が来て対応に四苦八苦する時もある日常は、その時だけは予想外の結果を生んだ。
サークルの真ん中に現れたのは、一人の少女。
背丈は小学校低学年ほど。立香が着るには躊躇われるようなフリフリの服を身に纏い、その手には現代的なデザインの包丁が握られている。当の少女はキョトンと、あどけない表情を浮かべていた。
「……包丁、さん……?」
同行していたマシュとハルが若干戸惑う中、立香は徐にそう呟く。
突如頭の中に思い浮かんだ、デジタルプロフィール風の情報。それが目の前にいる英霊のものであるのは、これまで幾人もの英霊を喚び出してきた経験から理解していたが、問題はその情報の少なさにあった。『包丁さん』『アサシン』と言うこと以外、殆どが覆い隠されているのだ。
そんな中、『包丁さん』と言うらしい少女だけは、何やら思案してから一言、小さな口を開いて鈴のような声を発する。
「うーん、良く分かんないけど……始めるね?」
途端、ブツンと何かが切れるようにして、辺りが暗闇に包まれた。
続けて──ぺたりぺたり。前から足音が近付いてくる。裸足だった包丁さんの足音だ。それは徐々に立香へと距離を詰め、スラリと暗がりで光が反射する包丁が立香の体に、
「マスター!」
突き刺されようとした瞬間、戦闘態勢を取ったマシュが横から包丁さんを盾で殴り飛ばした。姿形など、この状況ではとやかく言っていられない。立香を救ったマシュは包丁さんとの間に立ち塞がり、最大限警戒する。
「――痛いなぁ」
強く殴り飛ばされ、壁に打ち付けられた包丁さんは、ムッと顔を顰めて言葉通りの様子を見せるも、大した損傷は全くなくユラリと立ち上がった。
その異質さに、立香たちは底の知れない恐ろしさを本能的に感じる。
相手が理性の欠かれたバーサーカーであれば、絆を深めたり最低限許容するなどで信頼関係を結べよう。人間とは価値観の違う神霊級であっても、呼び声に応じて来てくれた以上は、多少なりとも認めてはくれる──だが、彼女は違う。良く分からないが、そもそも根本から異なるような、致命的の隔たりがあるのを立香は確信した。
「逃げて、マスター!」
ハルも似たものを感じたか、コレクションから小石を取り出し、包丁さんの足元に投げた。そうして注意を引いた隙に、立香達は召喚部屋から飛び出した。あれは、まともに戦って殺せる相手ではない。とにかく離れるべきだ。
──果たしてそれが、正しかったか誤りだったかは分からない。少なからず言えるのは、カルデアは今
「で、マスター。その"包丁さん"って奴は、他に何か分からないのか?」
呼吸が平時に戻ってきたところで、式が問い掛けてくる。
最近仲間入りした彼女は、この閉鎖空間と化したカルデアで唯一出会ったサーヴァントだ。
あの時、包丁さんがカルデアの電源を落とした事で、数多いる英霊達は恐らく大半が実体化できない状況にある。しかし式は比較的無事であり、こうしてマシュらと分かれて単身逃げていた状況の心強い同行者になってくれていた。
立香は、そんな式の問い掛けに答える。
「うん……名前と、クラスだけ。後は断片的なデータだけかな? 彼女は、"カミサマ"らしい」
「神様?」
「いや、語感は同じだけど、多分違う。神霊って感じじゃないし、私自身違うって感じる。ただ、それが何でかって言われたら分からない……そんな感じ」
どうも彼女──包丁さんは色々と普通のサーヴァントとは在り方が違っているようだ。まだ正式な契約を交わしていないのに、彼女の最低限の事は分かる。だが、逆に言えば肝心な事は一切分からなかった。
そんな存在が自分の命を狙って、今も自分と同じ場所をさ迷っていると言う恐怖は計り知れない。
「カミサマ、ね。違いは分からないけど、案外あっさり倒せてたりしてな。ハルはともかく、マシュはあんなんでもお前の敵には容赦無いしさ」
怯えを見せる立香を元気付けるためか、式は楽観的に現状を推測する。直接会ってはいないが、話を聞く限り相手は子供だ。戦績は決して浅くないマシュなら既に打ち勝って、こちらに向かってきてるかもしれない。
けれど、それを否定するのは立香だった。
「
ハルほどではないが、夜に住まう怪異と関わってきた立香。感覚で分かる。あの愛らしさの裏にある異様さは、単に倒しただけでは拭えるものではないと。
式は、面倒そうに眉を潜め、しかし握ったナイフを弄びながら言う。
「ま、殺せるんだとすればオレの出る幕だ。暗いのもうんざりだし、とっとと探して始末しよう」
「……」
「? どうした?」
「ううん、別に」
「そっか──よし、行こうぜ。部屋の中じゃ袋小路だしな。もしかしたら他の連中とも合流できるかもしれない」
式が先導し、まずは外の安全を確認。それに立香は素直に着いていく。この状況下では、サーヴァントを信じて着いていった方が得策だ。
──自分を殺そうとした相手を殺したくないなんて、きっと私のエゴでしかないな。
そう、一人思い直す立香。包丁さんと言う少女に対して何か言い表せない引っ掛かるものはあるが、そんな不明瞭な迷いは、不気味な暗闇に呑み込まれ、不安と恐怖に押し退けられたのであった。
「あれか。私
マシュとハルは、物陰から様子を窺う。
消灯時間でないのに暗くなったカルデアの管内は人の気配が無く、それだけで不気味さが際立っていた。
しかし誰もいないと言うのは不安な反面、敵もいないと言う安全の証拠である。二人のサーヴァントは、恐る恐る廊下を進み出す。
「先輩は、ご無事でしょうか」
「うん……」
包丁さんから逃げる最中、立香はマシュとハルとは別行動を選んだ。
固まっていては居場所を把握されかねない。そこで立香は狙われているらしい自分が包丁さんを惹き付け、マシュ達にはダ・ヴィンチやロマニに救援を要請するよう指示したのだ。マスターが危険に晒される指示に当初は反対したマシュとハルだが、立香の「二人が危ない目に遭うのは耐えられない」と言う言葉で押し切られた。
ハルの懐中電灯の灯りを頼りに、辺りを警戒しながら進む二人。すると、ひたりと軟っぽい足音が前方から響いてきた。
「あの」
前からの幼い声に驚き、ハルがそちらに灯りを向ける。突然光を浴びせられた声の主は眩しそうに顔を隠す。その背格好はフリルのついた青色の着物らしい服に、髪をツインテールに結び――手には包丁が握られていた。
「貴女は……?」
先ほど見た包丁さんという少女と似ているが、違う容姿の少女にマシュは盾を構えつつ問う。それに少女は恐る恐ると言った様子で顔を向け、おどおどした声色で答える。
「私は……葵、です。お願い。椿ねえを、助けてほしいのです」
自身の正体を示すように刀身の長い包丁を大事そうに握り、葵という名の『包丁さん』はマシュとハルにそう懇願するのだった――
続きます。
第一弾はフリーゲームより「包丁さんのうわさ」でした。ノベル形式のPCゲームであり、マンガやノベライズでも展開してるフリゲの有名作だと思ってます。知らない方は是非実況動画などで見ていただければ!(布教)さしみん可愛いよさしみん。
包丁さんに翻弄される立香たちとマシュハルの元に現れる少女たち。果たしてどうなっていくか。
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