風来坊で准ルート【本編完結】   作:しんみり子

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・割とキャラ含め描写が不親切なので(がっつり書いてるとモチベが切れそう)、原作プレイ済み推奨です。出来れば7~9。さらに言えば7~14。欲を言えばぶっちゃけ全部。
・ネタバレもぽこじゃか出てきます。もう14ですら五年前だし……いいよね。
・パワポケあるある。出会いの仕方で既にルート入れるか決まる。つまり、喫茶店が初見の時点できっとフラグは建たなかったってことなんや(名推理)
・基本的に9主と性格は変わらないので、原作と変化のないイベント群はがっつり省略していきます。
・色々と趣味で書いてます。解釈違いや、非公式設定も使います。その辺ご了承ください。


《ワクワクなえぶりでい》I

『もっと野球をしたい』

 

 

『いろんなものを見たい』

 

 

『いろんな人と会いたい』

 

 

 

 

 

 

 

『俺は未練が多すぎるなぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 

『でも、それでも俺は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ワクワクなえぶりでい》I――ようこそブギウギ商店街へ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと。今日も冷えるな」

 

 川沿いの冷たい風に外套がはためく。気を抜けばここではないどこかへ飛んでいってしまいそうなテンガロンハットを抑えながら、俺は旅を続けていた。

 

 生まれた街を出て、それから二年ほどの月日が過ぎた。

 多くの出会いと別れを経験した今、価値観は以前と大きく変わったのだと感じられる。

 

 ――この世に魂を最も強く繋ぎ止めるもの。

 

 それはきっと未練なのだろう。

 死にたくない。まだ終わりたくない。まだ始まってすらいない。

 もっといろんなことを経験したい。もっとたくさんの出会いがしたい。

 

 俺のやったことは正しかったのか。義に適っていたのか。

 

 胸を張って、誰もに正義と言える何かを成し遂げたのだろうか。

 

 分からない。まだ、分からないことだらけだ。

 だからこそ、彷徨う。いや、流離う。俺の答えを見つけるために。

 

 正義の味方になるために。――正義を"善"にするために。

 

「さあ、行こうか」

 

 いつか正義の味方の真似事を、本物へと変えるために。本物に、なるために。

 

 

 

\パワプロクンポケット!/

 

 

→サクセス

 

→さすらいのナイスガイ

 

→はじめから

 

 

 イベントを短縮しますか?

 A:短縮しない

→B:短縮する

 

 

 

 ――カレーショップ:カシミール

 

「カンタを助けていただいて、ありがとうございました」

「いえ。ああいったことは流石に見過ごせませんから」

 

 最後に滞在した街を出て早数週間。川を沿って旅をしていた俺は、小さな町にやってきた。

 今は故あって知り合った神田カンタくんのお母さんが経営しているカレーショップで、お昼をごちそうになっている。申し訳ないとは思うが、哀しいかな俺には金がない。

 好意は受け取らざるを得なかった。金がないし。

 

 そしてこのカレーがまた大変美味しい。

 スプーンで掬って食べて掬って食べてを繰り返しながら、店主である神田奈津姫さん――カンタくんのお母さんに話を伺えば、なんでも先に起きた出来事はカンタくんが悪いとのことだった。

 

 カンタくんは見たところまだ小学生。それが大人に囲まれて虐められそうになっているのを、カンタくんが悪いとはいかなる要件か。詳しく聞けば、何でもカンタくんが彼らの車に落書きをしたとのことだった。

 

「商店街の草野球チームが、新しく出来たスーパーのチームに負けて……カンタはその腹いせに」

「カンタくん、野球好きなんですね」

「大好きだよ! オイラ、力もないし身体も小さいけど……きっとおじちゃんくらい大きくなって四番でエースになるでやんす!」

「それは楽しみだ」

 

 カンタくんの話を聞くに、いまいち野球のルールも理解しきれてはいないようであったが。それはさておき。

 ――草野球チーム同士の揉め事か。俺の人生はほとほと野球に縁がある。

 この前も、その前も。

 

「――だってあいつら汚いでやんすよ! 草野球に元プロなんて連れてきて!」

 

 二年前に出来たスーパー(しかも条例違反)に商店街の客を取られ、元々強いのが自慢であったブギウギ商店街の草野球チームも連敗中。ブギウギ商店街は意気消沈。人もどんどん離れてしまってシャッターの仕舞ったままの店が多くなってしまっている、と。

 カンタくんと奈津姫さんの話を総合すると、だいたいそのような感じだった。

 

「……事情は分かりました。カレー、美味しかったです」

「いえ、こちらこそ! ありがとうございました」

「おじちゃん、もう行っちゃうでやんすか?」

「――いや」

 

 美味しいカレーと、寂しい話を聞かされては。俺としても、少し情が沸いてしまうというか。これは俺の本能的な問題なのか。それは分からないが。

 

 立ち上がった俺を、縋るような目で見るカンタくんになるべく優しい目で笑いかけて。

 

「少し、この街に用事もあったから。商店街の会長さんってどこにいるか教えてくれるかい?」

「任せるでやんす! こっちでやんすよ!!」

 

 勢いよく店を飛び出したカンタくんと共に、俺はカシミールを後にした。

 

「確かにこれは、おせっかい野郎だ」

 

 小さく自嘲が漏れて出た。

 

 

 

 

 

 

 

(そして・・・)

 

 

 

 

 

 

「野球選手の助っ人だって? ――どういうことだよ会長さんよ。俺たちビクトリーズは商店街の仲間だけで勝つって決めてたじゃねえか」

「そうは言っても、もうメンバーが足りないよ」

 

 人の好さそうな商店街の会長に連れられてやってきたグラウンドでは、商店街の野球チームであるブギウギビクトリーズがちょうど練習を行っているところだった。

 

 おそらくはキャプテンであろう、無精ひげの男と会長が軽く言葉を交わす。

 ぼんやりとグラウンドを見渡せば、懐かしい土の匂いと、山特有の広い空。……ここで野球が出来たら、確かにとても気分の良いことだろう。

 ふと我に返ると、訝し気にこちらを見る男の姿。

 テンガロンハットを取り、軽くご挨拶。

 

「……まあ、良いが。それで、こちらの方が?」

「どうも、小波と言います」

「ふぅん。あんた、野球の経験は?」

「ルールは知っている」

「あはは、そいつは心強いね。俺は権田だ。権田正男。よろしくな!」

 

 意外と気の良い男のようだった。背中をばしばしと叩きながら高らかに笑う彼の表情に悪意はなく、どこか親しみを覚えすらする。少し昔の知り合いに似ている気がした。

 

「ああ、こちらこそ宜しく」

「……じゃあ、そうだな。少し打ってみてくれよ。のりお、ちょっと投げてくれ!」

「分かったー」

 

 向こうで軽くキャッチボールしていたやせぎすの男を権田は呼び止める。

 渡された木製バットを手に取ると、やはり少し重く感じた。金属バットを握っていた時間が長かったからか――それとも。

 

 ともあれ、軽く左打席に立つ。こうして野試合的に遊ぶのはそう久しぶりのことではない。身体が覚えているままに、のりおと呼ばれたやせぎすの男が投げた低めのストレートを叩いた。

 

 ……左中間、二塁打ってところか。やはり木製バットは飛びにくいな。

 

「戦力になりそうかな?」

「こいつは凄いな……即戦力だ」

「なら権田くん、きみが色々教えてやってくれ」

 

 打席から戻ってくると、会長と権田がそのような話をしていた。

 まだまだ俺も捨てたものではないらしい。軽く会釈して、バットを返す。

 

「権田さん、宜しく頼む」

「権田でいいよ。とりあえず、練習で怪我されても困るし……走り込みで体力をつけるところからだな」

「――」

 

 まずは、走り込みからか。

 ああ、そうだな。

 

「どうした?」

「よし、任せろ」

 

 ダッシュでその場を駆け抜ける。グラウンドの端から、校舎の前まで全力で。――って、校舎は無かったか。無かったな。

 

「……なんか、笑ったかあいつ」

「笑ったねえ。なんだったんだろう」

「だがまあ。生きの良い奴じゃねえか。気に入ったよ、会長さん」

 

 

 

(そして・・・)

 

 

 

 

 何をしようかな。

 

 ひとまずチームメイトに挨拶を終えた俺は、特に何を考えるでもなくグラウンドから商店街の方へと歩みを進めていた。そろそろ日が暮れる頃合いだろうし、今日からしばらく泊まるハウスを作らねばならんのだが――段ボールを駆使しておうちを作るほどの技量は俺にはない。

 

 無難にテントかなぁ。それはさておき、商店街に足を踏み入れるとそこそこには賑わっていた。シャッターが少し目立つあたりに哀愁を感じるが、それでも夕飯前のこの時間だ。

 呼子の声が賑やかで、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

 権田はあのあと、この商店街に対する想いを軽く語ってくれた。

 自分たちで守ろうとする意志は尊いものだと思ったし、俄然協力しようという気にはなった。……だが、せっかくだからこの商店街を一度しっかり自分の目で見ておくべきかもしれないな。

 

 もしかしたら、今度は誰かを守る戦いができるかもしれないのだから。

 

「さて、どこへ行こうかな」

 

 商店街中ほどにまで歩いてきて、きょろきょろとあたりを見渡す。

 八百屋やら食材が並ぶエリアだったせいでやたらに腹が減った。

 

 ……ん?

 

「……」

 

 なんか凄い頭のメイドが居る……。

 

「……」

 

 近寄らないでおこう。商店街にあの見た目で当たり前のように歩いているあたり、絶対まともなヤツじゃない。

 俺? 俺はほら、風来坊だから。気ままな旅ガラスですから。

 

「わ、わー!! 止めて止めてー!!」

「ん?」

 

 ゆるやかな上り坂の方から、まだ拙い少女の声。

 見ればスケートボードに乗った童女が涙目で商店街に突っ込んできていた。

 その進行方向には――嘘だろ、気づいてねえぞあのメイド!

 

 気が付けば足が動いていた。

 

 坂を突っ込んできた少女を小脇に抱きかかえ、スケートボードが突っ込んでいかないように蹴り上げる。その瞬間にはメイドも近くで何が起きたか気づいたらしく目を丸くしているがこれはスルー。落下してきたスケートボードを片手で掴み、抱えていた童女をゆっくり降ろした。

 

 周りから拍手が起きたのを軽く会釈して受け流す。

 ……嬉しいもんだな。自分の行動が褒められるのは。

 

「お兄ちゃんありがとう!」

「坂道は危ないから気を付けろよ」

「うん!」

 

 ぴょこんと結ばれた髪を撫でながら、走って坂道を登っていく彼女を見送る。「何やってるの麻美!!」と母親らしき怒鳴り声が聞こえたから……きっと彼女はこのあとこってり絞られることだろう。お説教は身内に任せるのが一番だ。

 

 さて、行くか。

 

「ありがと」

 

 そろそろヒモ沈んできたことだし……じゃねえ日も沈んできたことだし、早いところテントを張らないと。まあ別に河原で良いよな。条例違反とかないよな?

 

「ちょっと、ありがとってば」

 

 しかしお腹がすいた。今日も食べられそうな草を探すしかないか。小波から貰ったお金は大事にしなければ。

 

「ナンデムシスルノ?」

「はいなんでしょう!」

 

 勢いよく万歳して元気にお返事!

 決してやばい頭したメイドの顔がやばいことになっていたからではない。決して。

 

「お礼の一つくらい受け取ってくれたっていいじゃない。危うく子供に轢かれるところだったんだし」

「……それほどのことでもないさ。頼まれたわけでもないしな」

「確かに助けて、なんて言ってないけど。でも、助けられたらお礼を言うのは当然だよ」

 

 ……頭でやばい人だと決めつけてすまなかった。と心の中で謝っておく。

 ジト目を向けてくるメイドさんは、しかしなんだか俺が今まで一番欲しかった言葉を当たり前のように言ってくれて。自然と目じりが下がった。

 

「…………そうか。ありがとう」

「あはは、変なお兄さん。……私、近くの喫茶店でアルバイトしてるから、良かったら来てよ。割引券あげるから」

「残念だが受け取ったところでどうしようもないな」

「なんで? この辺の人じゃないの?」

「しばらくこの辺りに滞在する予定だけど……どんなに割り引かれたところで文無しだから」

「うわあ……仕事してないの?」

「気ままな旅ガラスなもので」

「すごい頭してるんだね」

「きみに言われたくはないな!!」

 

 けらけらと笑う少女との縁が、もっと笑えて面倒で楽しいものになることを――この時の俺は知る由もなかった。




主人公
Name:小波・深紅
【ポジション】…投手、外野手
【投打】…右投左打
【打撃フォーム】…ノーマル1
【弾道】…3
【ミート】…13B
【パワー】…150A
【走力】…14A
【肩力】…15A
【守備】…14A
【耐エラー】…14A
【野手特殊能力】…人気者
【投球フォーム】…オーバースロー1
【球速】…155km/h
【コントロール】…150C
【スタミナ】…250A
【変化球】…スライダー2、フォーク2、シュート2
【投手特殊能力】…剛球、人気者

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