モンハン世界に生まれて、理想のキリン娘に会う為にハンターになった男   作:GT(EW版)

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キリンγ完成した記念に。
最近はマム装備もいいなと思ってしまった今回はちょっとシリアスな話です。


にゃあにゃあにゃにゃあにゃあ

 

 むかしむかし、あるところに小さな村がありました。

 

 その村には人間だけではなく、たくさんの種族の生き物が住んでいました。

 

 村人たちはときどきケンカをすることもあったけど、長い間みんなで仲良くくらしていました。

 

 

 しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸珊瑚の台地に直接訪れたことが少ない私だから言えるのかもしれないが、その鍾乳洞には新大陸でもそうは目に掛かれない神秘的な光景が広がっていた。

 ダイヤモンドのような煌めきを放つコケや鉱石が光蟲達の光を反射させ、鍾乳洞内に流れている湧き水の泉を眩く彩っている。

 

 まるで、別世界のようだと――テトルー達の住処であるこの場所に来て私は思う。

 

 しかし当のテトルー達は皆岩陰に隠れて私とキリの姿を怖々と窺っており、警戒の色を隠せない様子である。それこそ私達をこの場所に案内したのが彼らの「守り神」でなければ、有無も言わさずに追い払われていたところであろう。絵描きテトルーの言う通り、住処のテトルー達は非常にピリピリしている様子だった。

 

 そんな多くの視線が周囲から注がれている中で、私達二人を先導して案内してくれた「守り神」、キリンはおもむろに立ち止まり、振り返って私達の姿を見下ろす。

 その全長は平均的なキリンと比べてやや大きく見えるが、古龍種として見ればやはり小柄な部類であろう。しかし目の前に立つ白き幻獣は今も帯電どころか敵意すら見せていないにも拘わらず、全身から凄まじい威圧感を放っていた。

 テトルー達から「神」として崇められるのも納得の迫力である。このキリンと比べてしまえば、私が今まで狩ってきたキリン達すら紛い物に思えてしまう……そんな不謹慎極まりない表現をしてしまうほどに、目の前の幻獣だけは規格外の個体だった。

 

 この勘による見立てでは、現役時代の私でも勝てるかどうかというところだ。少なくとも今の私ではまともに戦っても勝機はなく、キリの力を以てしても厳しい相手であることは確かだった。

 

 ……にも拘わらず、不思議なものだ。

 

 本来であればこのような天災級の怪物は、発見次第即刻調査拠点アステラに帰って報告しなければならない存在である。

 このように案内されるがままに怪物の後を追うなど以ての外であり、キリの安全の為にも速やかに帰還するべきだったのだ。

 しかし、私にはそれが出来なかった。ルーキーでもそうするであろうに、とんだハンターマスターが居たものである。

 

 だが、このモンスターに対しては何一つとして心配していない私が居ることもまた確かだった。

 

 これほど圧倒的なモンスターが目の前に居るというのに、私の心に警戒は無い。この幻獣と対面した私はソードマスターの奴や元双剣使いの女性を相手にしている時と同じような感覚で、安心を感じていたのである。

 

 そして、何よりも……今しがたキリの姿を見つめている、まるで我が子を愛でるように優しい瞳をしたキリンの姿には、他のモンスター達のように彼が問答無用でこちらに対し危害を加えるとは思えなかったのである。尤もそんな視線を受けている当の本人は、どうすれば良いのか対応に困っていたが。

 

「ち、父上っ」

「見つめ返してやれ。その幻獣……いや、そのお方はお前にとっても大切な方だ」

「えっ……?」

 

 記憶力が優れているキリとて、流石に赤子の頃の出来事までは覚えていないか。彼女はこの不可思議な状況を測りかね、私とキリンの間で視線をさまよわせていた。

 

 そんなそわそわしたキリの姿をキリンが見つめ、しばしの時間が流れる。

 

 その沈黙を破ったのは、他ならぬキリンの鳴き声だった。

 

 

「にゃあ」

 

 

 ……すまない。訂正しよう。その声は確かに幻獣の口から出たものであったが、かのキリンの鳴き声ではなく、少し前にキリが絵描きテトルーに掛けたものと同じ「猫語」の発声法だった。

 唸るような低い調子の声から放たれる猫語とは、こうも奇妙に聴こえるものか。

 

「えっ、あの……」

 

 キリンの口から放たれた猫語という、世にも奇妙な光景を前にキリは呆気に取られていたが、その言葉を人語に訳せば驚きの意味合いはさらに変わっていく。キリンは今、キリに対してこう言ったのだ。

 

『大きくなったな』

 

 キリンから放たれた今の猫語には、人語で言えばそんな意味が込められていた。

 絵描きテトルーから聞いた話から察するに、キリンとテトルー達の間では何らかの形でコミュニケーションを取れているのだとは思っていたが、よもや猫語を話せるキリンなど夢にも思うまい。

 

 そしてキリンがその言語を用いたのは、私達に猫語が通じることを知った上での発声であろう。

 

『猫語を話せるのですか?』

『昔、仲の良かったアイルーの友が教えてくれたのだ。亡き黒龍のようにキミ達の言語を話せれば良かったのだがな……私の声帯では、猫の言葉を発するので精一杯なのだ。許せ』

 

 試しとばかりに私が猫語で問い掛けてみると、キリンはやはり猫語を発し、はっきりと応じてくれた。

 

 今ここに、私達とキリンの間で猫語を共通語としたコミュニケーションが成立したのである。

 

 

『美しい場所だろう? 私も、猫人族の皆に住まわせてもらっているこの場所は気に入っている』

『……イカズチ殿、やはり貴方は、意図的に我々を招いたのですか?』

『ああ。見ての通り、私に敵意は無い。ただ私はキミ達と、この穏やかな場所で落ち着いて語り合いたかったのだ。テトルー達も今は少し気が立っているが、次第に落ち着くと思う』

『左様ですか……私も、貴方と話せたことを嬉しく思います』

 

 超越的存在である古龍とこうして明確な意思疎通が出来たのは、あの時戦った黒龍以来のことか。そう思うと今の状況は、中々に感慨深いものがある。

 数多の意味で衝撃的な対面だった、かの宿敵のことを懐かしみながら感傷的になると、私は今一度確認の意味を込めて彼に問い掛けた。

 

『貴方はやはり……あの時のキリンですか?』

 

 まだ赤ん坊だったキリを背中に乗せて、私に託していった白き幻獣。

 単刀直入に切り出した私の問い掛けに、目の前の幻獣は私が望んだ通りの言葉を返した。

 

『そうだ』

 

 ああ……なんという、因果か。

 十七年の時を経て、あの時の幻獣と会えた幸運に私は感謝した。

 そして彼の方もまた私のことを覚えていたという事実は、現役時代国王に名前を覚えていただいた名誉以上に誇らしく思えた。

 

『私も驚いたよ。静かに眠れる場所を求めて訪れたこの島に、三つもの馴染み深い気配を感じたのだからな。一つはヒトに生まれ変わったミラの魂……そしてもう二つは、キミ達の存在だった』

 

 しみじみと感慨に浸るような口調で、キリンは語る。

 この状況に因果なものを感じているのは、あちらの方も同じだったようだ。

 

『人の世を離れた筈の私が、再びキミ達に出会うとはな』

 

 どこか寂しさを感じさせる目でこちらを見据えるキリンに、まだ要領を得ないキリが戸惑いながら私に問う。

 

「父上……これは、どういうことですか?」

 

 あの時のことを覚えている筈も無いキリからしてみれば、お互いに敵意を見せない私とキリンの光景はさぞや奇妙に映っていることであろう。

 尤も、私もキリンの穏やかな対応には非常に戸惑っている。

 何と言えばいいのであろうか。私自身もモンスターと話しているというよりも、旧友と話しているような感覚だった。

 そんなキリンに対して多大な恩を感じている私は、かの神のことを改めて紹介した。

 

「この方は、私にお前を引き合わせてくれたキリンだよ」

「……っ!」

 

 私の語った真実に、キリは目を見開いて驚きを露わにする。

 そう、私の人生において最も大きな転機となったキリとの出会い――その原点こそが、この不思議なキリンだった。

 

『イカズチ殿、せっかく会話が出来るのだ。私は貴方に、是非とも訊ねたいことがあった』

『……ああ、わかっている』

 

 もしもその時が訪れたなら、是非とも知りたいと思っていたキリのルーツ。

 そこに間違いなく関係しているのであろうキリンは、そんな私の思考を悟ったように言い放った。

 

『あの時の私には余裕が無く、キミとも一瞬の会遇だったからな。聞きたいのだろう? 何故私が、その子をキミに託したのか』

『出来ることならば、貴方が何者なのかも知りたいですな』

『良い。だが対価として、後でキミの話も聞かせてほしいな』

『ええ、いくらでも語りましょう』

 

 静かに佇む幻獣は、キリの姿を慈しむように見つめながら口を開いた。

 

『では、語ろうか……私のような怪物(モンスター)が、あの場所で人の子を背負っていた理由を』

 

 ――キリの出生に関わるその物語は、壮大で物悲しい御伽噺のような真実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて、とある森の秘境に村があった。都から遠く離れた場所に位置するその村は、多くの人々からは存在すら認識されていない小さな村だ。

 

 しかし、村は数百年に渡って豊かに繁栄を続けていた。土地を囲んでいる周りの森にはモンスター達の生息圏が広がっていたのだが、村の人々が襲撃に傷つき、困窮に喘ぐことはなかったのである。寧ろ村の治安は、度々古龍の影が空を横切る王都よりも平和ですらあった。そのように長年の平和を維持している最大の理由は、村を守護している「神」の存在にあった。

 

 ――それが、キリンという幻獣である。

 

 驚くべきことに、村の人々は一体のモンスターを守護神として崇め、お互いに協力し合いながら村の中で共存していたのだ。

 

 そこに住んでいたキリンは古龍種のモンスターとしては考え難いほどに穏やかな性格であり、人間に対して友好的な個体だったのである。

 

 

 人から崇められ、人を救う守護神となっていたキリン――本来の生態からかけ離れたその奇妙な存在を形成したのは、遥か昔のこと。かの幻獣が幼体だった頃から始まった、彼の特異な過去に関係していた。

 

『まだこの世に生まれて間もない頃、私は古龍喰らいのモンスターに襲われ、重傷を負った。過酷な自然界の中で身動きも出来ず、もはや死を待つだけとなっていた私は……二人の人間に救われた。当時まだ健在だったシュレイド王国から追放され、放浪していた一国の王子とその姫君――その子の先祖に当たる二人の若者と、私は出会ったのだ』

 

 200年以上も前の話だ、とキリンは語る。

 幼いキリンはその時自分の手当てをし、命を助けてくれた二人の若者に対して多大な恩を感じたのが彼と人間との関係の始まりだった。

 

 献身的な二人もまたキリンに対して友好的で、絆を深め合った二人と一体のモンスターは同行して共に世界を旅回ることとなった。

 

 キリンを救った二人の若者には、あまりにも壮大で異端な夢があった。

 

 ……それは人間と亜人、モンスターを含む全ての種族の者が争いなく共存出来る、穏やかで優しい国を作ることだった。

 

 お互いに敵対し合うこともなく、異なる種族であろうと皆が仲良く暮らしていける――そんな世界の創造を、彼らは目指したのだ。

 

 現代ほど自然に対する配慮のなかった当時は人間至上主義の全盛期でもあり、モンスターなどは勿論、猫人族や竜人族でさえ人々から迫害されることが多い差別的な考えが根強い時代でもあった。

 そんな中で二人の考えはあまりにも異端に過ぎ、人間至上主義故に発展を続けてきた大国シュレイドの第6王子とその番であった二人は国王から反逆の恐れありと危険視され、国外追放処分を受けることになったのである。

 

『二人は今の時代を基準にしても、相当な変わり者だったと思う。……だが、彼らは誰に対しても心優しい人間だった。そんな二人の下には行く先々で多くの同志達が集い、やがて一つの村が生まれた』

 

 シュレイドから追放された二人の若者はキリンから始まって多くの者達と心を通わせ、同じ志を持つ仲間を少しずつ増やしていった。

 そうして拡大していった彼らのコミュニティーはやがて一つの村になるまで広がっていき、国と呼べる規模ではないにせよ、彼らが望んだ楽園へと築き上げていった。

 

 彼らは自分達自身の足と心で、当初は夢物語に過ぎなかった理想を現実へと近づけていったのである。

 

『流石に私のようなモンスターの同志は少なかったが……あの村は数多の種族が本当の意味で共存している、数少ない場所だった』

『その村で、貴方は崇められたのですか?』

『……そうだな。二人の作った村を守る為に力を振るっていた私は、気づいた頃には神と呼ばれていた。創設者の二人が寿命でこの世を去った後、彼らを知る唯一の存在として祀り上げられたのだ』

 

 懐かしみながらそう語るキリンの目は、キリの姿を通して過ぎ去った過去へと向けられているような気がした。

 二度と戻れない過去を名残惜しんでいるような目は、人間と比べても何ら変わりなかった。

 

『しかし二人の孫の孫の、そのまた孫の孫の……丁度、その子が生まれた頃のことだった』

 

 悲痛な感情が窺えるしばしの間を空けて、キリンは告白する。

 人とモンスターと亜人が共存するその村で生まれた一人の少女を、村とは何の関係もない旅人に託すことになった経緯を。

 

 

『村は滅びた。私を喰らう為に現れた滅尽龍と、他ならぬ私自身の力で』

 

 

 

 

 ――人の幸せというものは、誰かの不幸を犠牲にした上で成り立っている。

 

 ハンターがモンスターを狩り、その命の上で人々の生活が成り立っているように……キリと会えたという私の幸せもまた、多くの犠牲の上で成り立っていたものだった……のであろうか。

 

 

 ……失敗したな。この話は、私だけが聞いておくべきだった。

 

 かの幻獣が私達に語ってくれたその話は、生き物の命を犠牲にする立場になってまだ年若いキリに聞かせるべきではなかったと思ってしまった私は、自分のことを棚に上げている辺り過保護なのやもしれない。そう思って様子を窺ってみたキリの横顔は、その後に続くキリンの話を察しているかのように憂いを帯びていた。

 

 







※側から見ると美少女とジジイと厳つい獣がにゃあにゃあ言っている光景です。


あと関係ありませんが、例の異本からザザミxさんを見習って、マム脚装備の色をあえて肌色にする賢者の方は一定数居るのではないかと思います( ´∀`)
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