Are you レディ?   作:先詠む人

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素敵な原作を作ってくださった源治さんに感謝を。


「中坊」と「暁」

「きりーつ」

 

 日直の気の抜けた声が教室に響く。

 

「れ~い」

 

 日直が教室にいる生徒全員が立ったのを目視してから言ったその声に合わせてぺこりとそろって一礼をして、

 

「ありがとうございました~」

 

 の声が聞こえる前に俺は椅子を後ろに蹴り下げて鞄に手を掛け、すぐ隣の窓を開ける。

 それに少し遅れるかのように周りの席の奴らが声を合わせて礼を言っている最中に俺は

 

「した~」

 

 と言いながら肩に鞄を引っ掻け、窓から外へと飛び出した。

 俺がいる教室は一階だから別に窓から飛び出したところで怪我はしない。それにうちの中学校は下駄箱で靴を履き替えなくてもいいからわざわざ正規のルートで校庭へと行く必要性が感じられなかった。

 

「こら北崎!!またお前はそうやってぇえええええ!!」

 

 窓から身を乗り出して木刀を振り上げつつ叫んでいるのであろう担任の声を後ろから聞きながら俺は校庭を通り抜け、そのままま閂で閉じられている校門へと手を掛ける。

 

「よっこいせ!!」

 

 そしてパルクールでもするかのようにそれを一気に乗り越え

 

「きゃん!?」

 

「セーフ!?」

 

 小学生ぐらいの背丈の幼女の目の前に着地した。

 

「わりぃ、大丈夫か?」

 

 急に上から降ってきた俺に驚いたのか、尻餅をついている幼女へと手を伸ばす。

 

「………」

 

 手を伸ばしても幼女は目を見開きながら俺を見つめて固まったまま。

 

「……?お~い、大丈夫か?」

 

 気づいていなかっただけでもしかしたら当りどころが悪いところへ鞄か何かが当たっていたのかと俺が心配しながら幼女の頭をなでると

 

「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」

 

「………は?」

 

 突然変なことを言いだした幼女に、世界(とき)が止まった。そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中坊」と「暁」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 無言のまま見つめあう。

 まるでそこだけ時間の流れから切り取られたかのようにピクリとも動いていないように周囲の人から見たら感じとられたことだろう。

 

(さて、こんなわけのわからないシチュエーション。暁ってのがきっとこの子の名前なんだろうけれど、レディーってなんだよ。背伸びしすぎだろう。)

 

 そう思った俺は

 

「そうかそうか~。なら一人でも大丈夫だな?それじゃ、俺急ぐから。」

 

 全力で走って逃げることを選択した。どっちにしろ今日はやりたいことがあるから早く家に帰って用意してから家を出ないといけないのだ。

 

「え?ちょっと待ってよぉぉぉぉおお!」

 

 後ろで泣き出した気がする暁と名乗った幼女を放置して俺は自転車を頼み込んで隠し置いている親戚のおばちゃんの家の敷地に入り、そのまま裏口に置いている自転車のサドルに腰かけた。

 

「よし、行くか。」

 

 自転車の鍵を開けて裏口から家の方角へと自転車を走らせ出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人暮らしをしている家へと帰り、地味に身分とかその他もろもろのせいでかたばって動きづらい制服から動きやすい私服へと着替え、自転車の鍵と財布、そして携帯をもって戸締りをしっかりと確認してから飛び出す。

 自転車にまたがって向かう先は近所のゲームセンター。

 今日はそこでFPS、要はガンコンを使ったゲームの大会が行われる予定になっており、俺もそれにエントリーして

 いた。

 

 

 自転車を走らせている途中で海のそばを通り、大きな島と橋がうっすらと見えたので一度止まる。

 

 昔、この世界は一度滅亡の危機に瀕したんだよ。

 

 今では「内地」とかそんな呼ばれ方をする昔淡路島と呼ばれていたその島を見てそんな語り口から始まる病気で死んだばあちゃんの話を思い出した。

 

 

 

 

 

 昔、この世界は一度滅亡の危機に瀕した。

 深海棲艦とか言う深海に棲む怪物が現れて海路はめちゃくちゃ、空路はズタボロ。

 しまいには北海道は壊滅したらしい。

 四国とか九州も危なかったそうだが、運よく完全に壊滅する前にどこかから現れた艦娘が提督と呼ばれる人。まぁ多分自衛隊の人とかなんだろうけれどそう言った人たちと共同でことに当たって深海棲艦を倒して世界に平和をもたらしたそうだ。

 

 そんで、そのあとに艦娘たちは妖精たちに頼んで子供を産める体にしてもらい、提督と引っ付いて子供を産んで産んで産みまくって大家族とかそう言った感じのハッピーエンドを迎えたんだとさ。正直個人的には眉唾もんだけど艦娘って言うのは一度容姿が固定されたらぽっくり死ぬまでその固定された若い身体のままだそうだ。

 だからぽっくり死ぬまでに大量の子供を産んで、出産後にぽっくり死んだ…なんて話も噂で聞いたことがある。とはいってもあくまで噂だからうさんくせーけどな。

 

 まぁ、そうやって子供を大量に産んだから減りに減った人口はUの字を描くように急激に増えて、そうやって人口が増えたことで文明の状態も深海棲艦が襲ってき始めたときとかなり似た状態にまで復興したのが現在(いま)だそうだ。

 

 と言ってもその話を俺がばあちゃんに聞いたときにふと疑問に思って聞いてみたことがある。

 

『その話っていつ頃の話で、今でもその艦娘たちは生きているの?』

 

 ってさ。そしたらばあちゃん、どこか懐かしいような顔で

 

『昔も昔、だいぶ昔さ。それと当時の艦娘たちはもう死んでしまったからもういないねェ…。大体寿命は80ぐらいだったそうだから。』

 

 と言っていた。そしてこう続けていた。

 

『だけど、今でも艦娘は生まれてきているよ。昔の艦娘と提督との子孫の中から艦娘が生まれるそうだからねぇ…』

 

 てな理由(わけ)で、今でも艦娘はいるらしい。

 まぁ、うちの中学校にはいないけど同じ小学校の校区だった奴から聞いた話だとそいつの中学校には夕張、狭霧、叢雲がいるそうな。別にうらやましくも何ともねーけど。

 

 PP!

 

 ふと横を通った自転車のクラクションでぼーっとしていてはいけないことを思い出し、慌てて自転車を再び漕ぎ出す。

 ぼーっとしていた時間が長かったのか、ゲーセンの看板が見えてきたころには時間ぎりぎりになっていた。

 

「やべぇやっべ!!」

 

 あわあわしながら急いで駐輪場に入ってすぐの場所で自転車に鍵をかけて止め、転がるかの様にゲーセンの入口からゲーセンへと俺は入店する。

 ゲーセンの入口のすぐ近くにある時計を見て制限時間のほんとギリギリなことに安堵しながらも受付コーナーですぐにエントリーの状態を確認。しかし…

 

「え?みんな棄権したっておやっさんどういうこと?」

 

 このゲーセンの主、通称おやっさん(無色童貞自称39歳)が俺に告げたのはみんな棄権したから大会自体が無くなったということだった。

 

「どうもこうも、そう言うことだ。よりによって”白い鍋”が来ちまったからみんなチキって棄権しやがった。『勝てるわけがねー』ってな。」

 

 ”白い鍋”。その名前は最近有名になった俺が参加しようとしていたゲームの数多くある大会の一位を総なめした常に白く塗った鍋を被ってプレイしているプレイヤーの通り名だ。

 

 

「んなあほな。普通そこは燃えるところだろう。せっかく有名プレイヤーが来てるならやるべきに決まってるじゃねーか。」

 

 俺が呆れながらそう言うとおやっさんは首を横に振りながら

 

「このドアホ(ダホ)。このゲーセンでそんな戦闘狂(ウォーモンガー)染みた考え方すんのはお前ぐらいだっての。……それにあいつらが棄権したのは幼女に負けたくなんかねーってことだろうよ。」

 

 そう言い、筐体の方を指さす。するとそこには

 

「………Hit。」

 

 真っ白な髪を隠すかのようにお鍋を頭にかぶったコートを着た小学生がガンコンをもってゲームをプレイしていた。しかもその幼い見た目と違ってかなり上手い。

 

「……おやっさん。」

 

 俺はそれを見ながらおやっさんに声をかける。

 

「……お前も棄権するか?」

 

 心配そうな表情で俺に声をかけてくるおやっさんの方を向いて俺は告げた。

 

「俺、やるわ。」

 

 俺がニヤリと笑ってそう言いながら100円玉を投げ渡した時のおやっさんの驚いた表情は、一生忘れることはできないだろう。

 

「それ参加費。んじゃ、行ってくる。」

 

 俺はそう言って右肩を回しながら筐体の方へと足を向けた。

 筐体の前にたどり着くと、白い鍋はため息をつきながらガンコンを筐体へ戻そうとしていた。まだ画面にはクレジットが残っていると表示されている。

 

「つまんないな…」

 

 そうつぶやきながら彼女はガンコンを筐体にしまうために手元で回転させる。そんな彼女の前に割り込むかのようにガンコンを収めるケースが付いている本体に100円玉をぶち込んだ。

 

「さて、一発やろうや。」

 

 それはこのゲームにおいて乱入するときのみんなが守っているマナー。

 乱入しようと思っている相手のクレジットが残っている場合乱入ができるが、その場合何か一言言うのがマナーだ。

 

 俺が100円を入れたことにより画面には<A NEW CHALLENGER>と表示されていた。

 

「……」

 

 白い鍋はそんな俺の行動に一瞬驚いた様子だったが……

 

「ならやろうか。」

 

 ニンマリと笑いながら俺にそう告げ、戻しかけたガンコンを再び構えた。

 

「白い鍋の伝説、それに黒つけてやるぜ。」

 

 俺もそれに応じるかのようにニヤリと笑いながら自分の分のガンコンを手に取って構える。

 武器のチョイス、戦場のチョイス、そして大会仕様で固定されていた制限時間等の確認の画面を超えてカウントダウンが始まった。

 

 5

 

 白い鍋は鍋を被りなおすかのように動かした。

 

 4

 

 ズボンのポケットの中で財布の位置が悪い気がしたので足を挙げて肘でポケットの中に入れている財布の位置をずらす。

 

 3

 

 奥の方でおやっさんがゲーセンの店員に見つかり、追いかけられ始めた。

 

 2

 

 俺はそのタイミングで目を一瞬だけ瞑り

 

 1

 

「Are you Ready?」

 

 両手に持てるようにガンコンをばらしたモードで構え、白い鍋へと告げた。

 

「「………」」

 

 両者ともに見つめあい、フッと一瞬だけ笑った後、<GO!!>と表示された画面の方を同時に向いてからガンコンについているスティックレバーとトリガーを操作して自キャラを操作し始める。

 

 このゲームはガンコンで視点操作、及びキャラの操作までもができるので如何に移動して如何に攻撃するかが勝敗を分けるのだ。

 

 白い鍋が選択したキャラは長いライフル銃を持った長距離狙撃もできるキャラクター。

 それに対して俺が選んだキャラは両手に銃を持ち、スティックを押し込んだ状態でトリガーを引くことで大剣を振り回すこともできるキャラクター。

 

「………」カチャカチャカチャ

 

「沈め!沈め!沈めェえええ!!」カチャカチャカチャ

 

 ステージ内の建物の高いところまでハイジャンプで飛んで、距離を稼ごうとする白い鍋に対して俺はそれを追いかけながら牽制のビームを放つことで距離を詰めようとする。

 

「………」カチャカチャカチャ

 

「こなっ!!クソっ!!」カチャカチャカチャ

 

 それを繰り返し続けること数分。俺の操作するキャラの残りHPは4分の3程、それに対する白い鍋のキャラの残りHPは半分ほどだった。

 残されている制限時間もあまりない、このゲームは制限時間内に倒せないと与えたダメージ量が多い方が勝つことになるが、ギリギリのタイミングで大きなダメージを与えらえた場合そこで俺のキャラのHPが半分を割れば負けになるのだ。

 それが可能なのが、白い鍋が使っているキャラの持つ武器だった。

 あの武器は近接性能を犠牲にした代わりに大火力を積んだ武器という設定になっており、使い方によってはこの武器専用の持ち込み可能なアイテムであるボムを誘爆させることで、相手にチェインダメージを負わせることができるようになっていた。

 そして白い鍋が持ち込んだアイテムが何なのかは俺にはわからない。

 俺が持ち込んだアイテムは既に仕掛け終わっている。あとはどのタイミングでどちらにこのゲームの女神が微笑むかにかかっていた。

 そして残り時間10秒になったその瞬間。

 

「「かかった!!」」

 

 俺たちの声がハモるのと同時に俺はある一点を狙ってトリガーを引き、それと同時に画面が真っ白になった。

 そして表示された結果は……

 

「引き分けかぁ……」

 

 DRAW。

 同時にHP全損ということで引き分けとなっていた。

 俺がゲーム開始直後からちょこちょこと仕掛け続けていたマップ全域に爆発を引き起こす爆弾が、白い鍋が予想通りに設置していた地雷の爆発に誘爆してマップ全体に大爆発を起こしたらしい。

 そのせいで勝ちを確信した白い鍋は予想外の誘爆によってダメージを負ってキャラのHPが全損。同時に俺のキャラもHPが全損したことで引き分け。このゲームにおいては珍しい出来事だった。

 

「ふぅ……」

 

 両手に持ったガンコンをぶらんと垂らしながら息をつく。久々にゲームをしている間集中しすぎて息をするのも忘れて無意識のうちに息を止めてしまっていたみたいだ。

 

「あの……」

 

 そうやって一息ついていると横から声を掛けられる。横を見ると白い鍋がお鍋を頭から外してこちらを見ていた。

 

「?……あぁ。」

 

 そうやって見つめられると変な感情を抱きそうだったが、すぐにゲーム後のあいさつだと気づいてしゃがんでから目線を合わせる。

 

「Nice Game。お疲れさまでした。」

 

 俺がそう言うと、白い鍋は

 

「うん。Nice Gameだったね。」

 

 と言って俺を見つめる。

 

「なに…?何なのさいったい。」

 

 俺がそう言って困惑していても白い鍋はその澄んだ空色の瞳で俺を見つめる。……数秒ほどだろうか。

 体感時間的には長かったがそれぐらい見つめてから白い鍋は

 

「ひび…Верныйだ。信頼できると言う意味の名なんだ。これからもよろしくね。」

 

 と言いながら手を出してきた。

 

「ヴェールヌイ?あ、いや。こっちもよろしく。いい名前だな。」

 

 俺は一瞬困惑しながらもその差し出されたその小さな手を取り、握手した。そうしていると後ろの方から

 

「あーっ!!響いたー!!」

 

 という叫びが聞こえた。二人そろって振り向く。

 

「?げっ暁。」

 

「?……さっきのガキンチョじゃん。」

 

 やってくる声の主を見て俺は学校を出る際に出会った自称レディーの幼女が何でこんなとこに。しかもヴェールヌイのことを知ってるっぽいし……

 

 そう考えながら立っているとヴェールヌイの方を見ながらずんずんと歩いてきていたガキンチョが俺の方を見て固まった。

 

「……?」

 

 固まった様子を見て俺が首をひねっていると暁は口を大きく開いて

 

「しれモゴモゴモモモゴ」

 

 何かに気付いて慌てた様子のヴェールヌイに口をふさがれていた。

 

「それじゃあ、司令官。またね。」

 

 暁の口をふさいだヴェールヌイはそのまま暁を引きずりながら空いている手をこっちに振りつつ去って行く。

 

「……いや、司令官て何さ?」

 

 俺のそんな素朴な疑問に答えをくれる人はいない。

 

 ついでに言うとおやっさんが追われていた理由はそのあとに店員が教えてくれた。

 おやっさん、どうも何かやらかしたらしくてこのゲーセンから出禁になっていたらしい。しかも店長命令だそうだ。かなり怒っているらしい。

 おやっさん……基本めちゃくちゃなことやっても大概笑って流してくれる店長を激怒させるなんて一体何やらかしたんだ……

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「もう、響!何するのよ!!」

 

「シーっ!!暁、しーっ!!司令が近くにいるかもしれないじゃないか。」

 

 暁はレディなのに急に力づくで引きずって司令官から引き離してきた響に文句を言うわ。

 レディには相応の扱いをしてもらう権利があるはずなのよ。なのにみんなそれを分かってない。わかってくれるのはビスマルクさんだけだわ。

 

「いいかい、暁。あの人は多分私たちのことをあまりよく知らない。もし私たちのことを知っているのなら暁のことをガキンチョ呼ばわりしないだろうし、私と話すときに小さい子供にやるみたいに目線を合わせたりしないだろうからね。ここに来るまでに通ってきた街でもみんなそうだっただろう?」

 

「むぅ……」

 

 難しい話をされても暁には理解ができないわ。響はいつも難しいことを言って暁をけむに巻くの。だから嫌なの。今日だっていきなり

 

「ちょっと、伝説を作ってくる。」

 

 な~んて書置きを残してホテルから急にいなくなるし、おかげでみんなで町中探し回らないといけなくなったじゃない。

 

「でも、そのおかげで司令官に会えたんだろう?何となくわかるよ。嬉しそうな感じがあふれ出ているじゃないか。」

 

「……それはそうだけど……」

 

「そして、司令官はあの少年だろう?」

 

「ぴょっ!?」

 

 驚きのあまり変な声が出ちゃったわ。びっくりした表情のままで響の方を見ると響はどこか愉しそうに

 

「見ればわかるさ。」

 

 と言ってから首の角度を少し変えて暁に壁ドンしてから

 

「譲らないよ。私は。」

 

 そうポツリと言ってからホテルの方へと歩き去って行ったわ。

 

「………はっ!?ちょっと待ってよ響!!響ぃぃぃぃいいいい!!」

 

 暁は暗いのがダメなレディなんだからぁあああああ!!!

 

「ふぇぇぇええええん!!」

 

 

 

 

 




 この作中で中坊がプレイしているゲームは、現在もゲームセンターで3が稼働しているガンスリンガーストラトスを参考に設定を作っています。
 とはいっても自分は2の頃に数回ほどしかプレイしたことがありませんが……

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