いつか見た理想郷へ(改訂版)   作:道道中道

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 投稿が大変遅れてしまい、誠に申し訳ありません。


say goodbye

 

 髪を切った。

 

以前の自分なら、そんな衝撃的なイベントを迎えるつもりは微塵もなかっただろう。ましてや、自らの意志で行うなど、天地がひっくり返ってもあり得ないと自負していたに違いない。

 行きつけの美容室に入って、ものの十五分。

 後ろ髪の先が腰に触れるかもしれないというくらいまでに伸ばした長さは、すっかりと襟足までになってしまった。またお越しくださいね、と顔馴染みの女性店員が後ろから声をかけてくれる。後ろ手にドアを閉める際にちらりと彼女を見ると、表情は見るからに動揺の色を隠せていない。

 

 ―――そんなに、悪くないと思うんだけど……。

 

 後ろ髪の長さに合わせて切り揃えてもらった横髪を指で遊ばせながら、美容室を離れる。一応は、切り終えた髪型を真正面から鏡を覗いて確認している。決して、他人に引かれるようなものではないはずである。

 

 まあ、でも。

 

 確かに、驚きはするかもしれない。

 

 行きつけの美容室だ。女性店員とは顔馴染みで、髪の調子を上げてくれる時には世間話もしていた。今までの自分がどれほど髪を大切にしていたのかも、よく知ってくれている。なのに、ある日唐突に髪を切ると注文して来たら、それは、そう、引いてしまうだろう。髪を切っている最中に個人的な会話を一度もしなかったが、もしかしたら、気を遣っていたのだろうか? 思い出してみれば、何やら失恋した少女を見下ろすような生暖かさがあったようにも思えた。

 

 もしそうならば、恥ずかしい。しかし、顔を赤らめるほどの羞恥ではなかった。そういう可能性は十分に考えられたことだし、決心したこと。

 

 節目として。

 そして、不甲斐ない自分との決別。

 髪を切ったのは、今まで大切にしてきたそれが、中忍選抜試験において何の役にも立たなかったからであって、色々と切り替える為の決意表明としては、打ってつけだったからだ。

 

 春野サクラは、切り落とした髪の分の軽さを伴うように、足取りに力を込めた。これから、買い物に行くのだ。母から買って来てほしいと頼まれた項目を思い出しながらも、自分の欲しいものも考える。任務などで貯めた貯金で、今日はゆっくりと買い物を楽しむつもりだ。

 

 本当なら、もっと別の事をしたい、とも実は思っている。

 

 例えば、サスケに会いに行くだとか。例えば、第七班の中で唯一最終試験にまで進んだナルトの様子を見に行こうだとか。しかし、どちらも、あまり意味が無いのだろう。既に二人には会っている。

 

 中忍選抜試験の前試験。それが終わって三日ほどに、サスケに会いに行った。身体の容態が心配だったこともそうだが、何より、彼の心が心配になったのだ。サスケは、紛れもなく、下忍の中では抜きんでている。正直、最終試験に出場する殆どの者たちより優秀である事は間違いないだろう。

 

 しかし、大蛇丸というイレギュラーと、日向ネジと勝負することになってしまった不運。もし自分が彼だったら、やりきれない気分がずっと続いてしまうだろう。心配になって会いに行ったのだが、意外にも彼はいつも通りだった。

 長く会話をしたわけではないが、だからこそ、まあ、いつも通りなのだと、判断できた。逆にナルトに会えることは出来なかった。何度か彼の家に行ったが、常に留守の状態。どうせ、修行をしているのだろう。火影になってやると、いつも豪語していて、その第一歩である中忍選抜試験の最終試験まで辿り着けたのだ。きっと彼は、常日頃から変わりなく、努力を積み重ねているのだろう。

 二人とも、おそらく、いつも通り。だから今日は、少しだけ自分に贅沢をしよう。

 長い髪を切って、風通しの良くなった襟足が心地良い空気に触れるのを感じ取りながら、歩いていく。もう自分には、中忍選抜試験に対するプレッシャーも、生き死にの境界を歩く緊張感も無い。

 

 髪を切ったのは、やはり正解だった。

 

 今日という日だけは、シンプルな自分を自覚できる。そしてそのままの自分を維持し続ける事が出来るという確信を抱けた。所属する第七班のメンバーと、これまで以上に良い関係が築けるのではないか、とも。

 今すぐにでも鼻歌を歌ってしまいそうになるが、少しして、その気分は減退する。通りの角から、山中いのが現れたのだ。

 

 彼女はサクラの顔を見るなり、立ち止まり、数秒、瞼をパチクリとさせた。

 

「……え? えぇえッ!」

 

 楽しい感情は、そのわざとらしい驚愕の声に、一瞬にして減退させられてしまう。わざとらしいというのは、そもそも表情が笑っていることもあるのだから容易に想像が付く。それなりに付き合いが長いせいもあってか、もはや彼女が嫌味を言ってくるのか、分かってしまう。

 

 いのは近づきながら、やはり、わざとらしい視線を切ったばかりの後ろ髪に向けてきた。

 

「なになになに? ええ? デコ助サクラが髪を切るなんて……。あ、もしかしてアンタ、とうとうサスケくんにフラれたの? あらぁ、それは同情するわー」

 

 瞬く間にサクラの感情は不安定に―――いや、むしろ強固になったと言ってもいいかもしれない。慣れ親しんだ相手との一対一では、女性というのはなかなかどうして、威風堂々としたものである。

 サクラは満面の笑みを浮かべながら、言ってやる。

 

「なにバカなこと言ってんのよ。アンタなんか、サスケくんと碌すっぽ会えないくせして。嫉妬してるの?」

「頭でっかち相手に嫉妬なんかするほど、私も暇じゃないわよ。アンタこそ、同じ班にいるくせしてなーんにも進展してないじゃない。いい加減諦めなさい。アンタとサスケくんじゃ、全く不釣合いなんだから」

「鏡に向かって言う事を、私に言わないでくれない?」

「額に立派な鏡を付けてるじゃない」

「誰が鏡よ」

「デコ助サクラ」

「花オタク」

 

 互いに奥歯を噛みしめるような笑みを向け合った。その二人の脇を、何も知らない穏和な空気をかき分けて歩いていく。傍から見れば、健やかに話しをしている二人としか、映らないのかもしれない。

 数秒して、二人は同時に「はあ」と、ため息をつく。

 

「……いの、止めましょ。なんか虚しいわ」

「同意。くだらない」

 

 こんな所で静かな罵り合いをしたところで、サスケとの心的な距離が縮むわけでも無し。互いに団栗の背比べ状態で、ましてやサスケが恋愛などに興味が全くないというのは、もう分かりきったこと。

 

 二人は示し合わせたかのように、平坦な空気を作った。

 

「それで、真面目に、どうして髪切ったのよ」

 

 と、いのは訊いてくる。

 

「アンタ、前に自慢してたじゃない。大分前だけど。手入れもしっかりやってたのに、勿体ない」

「別にいいでしょ? 気分転換よ」

「どんな気分転換よ。でも、悪くないじゃない」

「へへーん。やっぱり? 似合ってるでしょ」

「私も髪、切ろうかしら」

 

 後頭上部で一本に纏めた長髪の先(、、、、)を、いのは指先で遊びながら呟く。

 

「いのこそ、何をしてたの?」

「買い物に行く途中。あ、もしかしてサクラも?」

 

 二人は並んで歩き始めた。いのも親に買い物を頼まれたらしい。同じ店で買い物をしてから、二人は近くの甘味処に寄った。寄ったと言っても、店先の赤い椅子に腰かけて、団子を注文したに過ぎない。

 

「あー、なんだか、久しぶりに甘いものを食べたような気がするわ。美味しい」

 

 三色団子を食べながら、いのは言った。確かに、久しぶりのような気がする。同じ三色団子を注文していたサクラは、白い団子を食べた。

 

「明日が、中忍選抜試験の最終試験かあ」

 

 何となしに、呟いてみる。自分の身の回りでは大きな予兆は無い長閑な空気。口の中に広がる甘味が、おそらく明日控える大きなイベントの存在を強調させているのかもしれない。同じことを考えたのか、隣のいのも「そうよねえ」と呟いた。

 

「なんか、色々信じられないわよね。つい一カ月くらい前に、自分も試験を受けてたなんて、考えられない」

「しかも、無事に生きて帰ってこれるなんてねえ。正直私、試験に落ちるってことは、死んでるんじゃないかって、試験前に考えてた」

「あ、それ私も同じ」

 

 と、いのは左手に持った団子の櫛をバウンドさせる。

 

「アスマ先生ったら、やたら滅多に脅してくるんだもの。もうヒヤヒヤよ」

「まだいいじゃない」

「どうしてよ」

「こっちのカカシ先生なんて、なーんにも言わないんだから」

「あー……。あの人はそんな感じねえ」

「サスケくんは緊張している様子は無いし、ナルトはナルトで逆に意気込んじゃうしで、なんていうか、ストレス? 前日とか、夜中眠るの大変だったわよ」

 

 分かる分かる、といのは頷く。彼女の班のメンバーであるシカマルとチョウジの方が、おそらく、こちらが抱いたストレスよりも大きいものだろう。

 

「でもま、試験には落ちたけど、お互いに無事で良かったわよね、本当」

「……………………」

 

 無事に、日常に戻ってくることが出来た。

 だけどそれは、決して自分の力によるものではなく。

 ただ単に運が良かっただけ。

 自分の力が影響したところは、一つとして無かった。

 

「……ありがとうね、いの」

「ん? 何がよ。急に改まっちゃって」

「第二の試験の時に、助けてくれて」

「……ああ、そのこと。別に、感謝されるほどの事じゃないわよ。結局私も、横やり入れた癖に何も出来なかったし。お礼を言うなら、シカマルとか、ヒナタとか、後は……そう、あのロック・リーっていう人に言いなさいよ」

「でも、いのがあの時、術を使ってくれなかったら、今頃私もサスケくんも、ここにはいなかった……」

 

 膨張でも何でもなく、客観的に判断である。

 あの時。

 砂漠の我愛羅。

 大蛇丸という凶悪から逃げる事に成功したというのに、不運にも出会ってしまった、新たな凶悪。

 今でも思い出せる。身体中を覆った、砂の感触。

 あの時、間違いなく自分は死んでいた。

 どのように殺されるか、それは想像も出来ないし、したくもないのだけれど、その結果だけは本能的に察することが出来た。

 

 

 

 正に、我愛羅の術が発動されるだろうという瞬間。どれほど、自分が祈ったか分からない。

 

 神様と。

 助けてほしい。

 こんな終わり方は嫌だ。

 

 涙を流しながら、不規則な呼吸を続けながらも、身体を固定してくる砂は震えさえも、胃の内容物を吐かせる予備運動もさせてはくれなかった。

 

 ああ、死ぬ。

 死んでしまう。

 あと、少しで、自分の人生が―――。

 

『心転身の術ッ!』

 

 だからきっと、あの時、いのが草陰から姿を現し、我愛羅に向けて術を放ってくれたのは、神に祈りが通じたのだと思った。

 

 いのの声。

 

 そして、彼女が得意とする術。自身の精神を相手に放ち相手の身体を乗っ取る術だ。

 砂の圧力が微かに弱まったのを感じ、心底、祈ったことが無駄ではなかったと錯覚した。

 

『おい馬鹿、いのッ!』

 

 遅れて、奈良シカマルの声。彼は、地面に倒れた彼女を抱きかかえた。

 その時点で、時間は五秒は過ぎていただろう。永遠とも判別できない程の、五秒だ。さらに一秒して、秋道チョウジが。

 

『ね、ねえシカマル……戦うの? それとも―――』

『どうせ、いののこった。サスケを助けてえとか、そんなだろッ! チョウジ、砂に捕まってるサスケに突っ込めッ!』

『うん、分かったッ!』

『誰だお前―――ッ!』

 

 全く予想だにしない方向からの敵襲に、テマリが真っ先に反応するが、我愛羅の精神に潜り込んだいのが、我愛羅の身体を使って彼女に飛び掛かる。その隙に、チョウジが倍化の術で身体を肥大化させる。真ん丸と太った身体をパチンコ玉のように地面の上を転がしながら、砂の覆われたサスケに向かって突進した。

 

『んな面倒な事されちゃあ、我愛羅があとでヤバくなるじゃんッ! 邪魔すんじゃねえッ!』

 

 我愛羅が何かの術に囚われていると察したカンクロウがチョウジを見定める。背負っている、包帯で全体を覆ったソレを使おうとするのを、シカマルが許さない。

 

『影真似の術ッ!』

 

 いのの身体を地面に置き、印を結ぶ。草陰の足元から、彼の影がカンクロウを目掛けて地面を這わせた。

 

 おそらくシカマル自身は、カンクロウを術で拘束できるとは考えていなかったのだろう。自身の影を操り、相手と影を接続する事によって、自身と同じ動きを強制させる術。しかし、速度は決して躱せない程のものではなく、カンクロウは舌打ちをしながら後ろに退く。

 

 微かな時間稼ぎ。

 

 それが功を奏してか、チョウジの突進は、砂の拘束ごと、サスケを解放した。そのままチョウジは、サクラを解放しようとする。

 

『サスケ、ナルトを担げッ! さっさと逃げるぞッ!』

 

 シカマルの指示と同時に、サクラも砂から解放された。地面に投げ出される。受け身が咄嗟に取れず、顎を地面に打ち付けたが、死から解放されたチャンスを無駄にしたくないと、笑ってしまう膝に必死に力を入れた。

 役割を終えたチョウジはシカマルの傍に戻ってくる。

 

『よし……チョウジ! いのを背負って逃げるぞッ! 今ならまだ術が発動してるッ! いのの心転身が解ける前に―――』

『ッ!』

 

 そこで、シカマルにとって予想外の事態が起きる。

 

 いのの心転身の術が、急に途切れたのだ。眠ったように力なく地面に倒れていた彼女の殻が極端に振動したかと思うと、上体をがばりと起こし、火事場から逃げてきたかのように荒い呼吸をし始めた。『なに、アレ……』と、顔色が青ざめている。

 

 本来なら、術の活動時間をオーバーするか術者が術を解除しない限り、術者が放った精神は肉体には戻らないはず。

 

 シカマル、いの、チョウジは、我愛羅に視線を向けた。

 

『……貴様ら…………ッ!』

 

 無表情の怒りと殺意を滲ませた我愛羅の砂が、二方向に広がる。

 一つは、シカマルたちの方へ。

 もう一つは、再び、サスケとサクラの方へ。

 まだシカマルたちは躱す事が出来た。体力はまだまだ万全だからだ。

 しかし、サクラもサスケも、躱しきれるほどの体力は無い。サクラはただ、またあの恐ろしい砂が迫ってくるのかと思うと、膝に入れていた力が霧散してしまう。砂は先ほどよりも面積と体積を広げて、気を失っているナルトごと呑み込もうとする。

 

 サスケが動く。

 

 三人の中で最も負担を背負っている彼が、サクラの襟元とナルトの襟元を掴んで、遠くへ投げようとする。

 

 ―――……間に合わない…………ッ!

 

 砂の方が遥かに速く凶暴で、こちらよりもエネルギーが多い。

 サスケくんだけでも……と、声が出ない。大好きな人に対してすら言葉を発せない自分に涙が溢れてくる。

 しょっぱい涙の視界の向こうに、一つの影が。それが、サスケと砂の間に入る。

 

『ナルトくん……ッ!』

 

 とても控えめな声。

 その後ろ姿は、指先を伸ばすように広げた掌で砂を弾いていた。

 

『一人で勝手に無茶すんじゃねえよヒナタッ! 赤丸、行くぞッ!』

 

 野犬のような荒々しい声と『ワンッ!』と応える犬の声。

 

牙通牙(がつうが)ッ!』

 

 我愛羅とすぐ目の前の砂を繋ぐ太い砂のラインを、犬塚キバと赤丸が高速回転しながら突撃し、切断する。

 

『キバ、お前のも無茶というものだ。何故なら―――』

 

 日陰のように小さすぎる声は、けれど不思議と全員の耳に届いた。油女シノは少しだけ離れた大木の上から全体を俯瞰していた。

 

『わざわざ相手のスタイルに突っ込むのは、ただの無謀だからだ。砂を使うなら、こちらは蟲たちを使うまでだ』

 

 地面を蠢く、大量で、それでいて一つ一つが小さい蟲たちが、我愛羅の砂をも呑み込むほどの質量で我愛羅たちを呑み込んだ。

 

 それでも尚―――我愛羅は砂で蟲たちをすり潰していき、テマリは背負った扇で風を巻き起こしカンクロウと共に安全圏を確保する。

 

『次から次へとなんだよこいつらッ!』

 

 とカンクロウが吐き捨て。

 

『我愛羅、少し落ち着いてここは―――』

 

 テマリは我愛羅を見る。

 

『黙れ』

 

 しかし我愛羅は、砂をさらに、瓢箪から出す。

 

『こいつらは皆殺しだ』

『そうはさせませんよッ!』

 

 また、声が増えた。

 我愛羅の後ろにいつの間にか回り込んでいたのは、ロック・リー。太い眉毛と立派なおかっぱ頭な彼は、見た目からは判断できないほど精錬された回し蹴りを我愛羅の頭部目掛けて打ち込む。

 完全に不意を突いた形。それでも、彼の回し蹴りは、我愛羅の意図とは全く関係なく、自動的に砂が動き防いだ。

 

『貴様も殺してやる―――』

 

 砂が手の形に変わり、リーの足を掴んだ。砂に圧力が掛かる前にリーは足を引き脱するが、後退する彼を追いかけようと、手の形へと姿を変えた砂が押し寄せる。

 瞬間。

 彼我の間に、今度は上空から、巨大な手裏剣が。

 地面に突き刺さる手裏剣が半ば盾の役割を果たした。

 

『リーッ! アンタ、何こんな所で油売ってんのよッ! もうッ!』

 

 リーの後方で、テンテンが呆れながら得意の手裏剣術で我愛羅を狙う。砂はどれも漏らすことなく雨のような数の手裏剣を防いだ。効果がないように見えるが、一瞬でも砂の壁が我愛羅の視界を防ぐことによって、リーが退避する隙を作っていく。

 

 リーが引けば、今度はキバと赤丸が我愛羅を狙い、さらには大量の蟲たちが襲っていく。

 

 たったの数十秒。その間に激変した状況に、サクラは―――もちろん、サスケもだが―――戸惑うしかなかった。死の予感から一転して、生き残れるという直感。安堵共に、皆がどうして、こんな偶発的にここに姿を現したのか、不可思議でしかない。

 

 サスケと視線が重なり、同時に頷く。

 逃げるなら、今しかない。

 どうしてシカマルやヒナタたちががここにいるのかは分からないが、結果的に助けてもらう形になってしまい、そんな彼らを置いて行くことになるものの、それを考える精神的余裕が無い。

 こんな状況でも意識を失ったままのナルトをサクラは背負った。

 

『―――ッ! 逃がさんッ!』

 

 逃げようとしたのが、見つかる。

 リーやキバ、躱し続けていたシカマルたちに向けていた砂が、自分たちに―――ヒナタの前に収束してしまう。砂の勢いと量。両手にチャクラを集めた柔拳で砂を弾いていたヒナタの処理能力が追い付けなくなる。

 

『貴方がどこで死のうが勝手ですが―――』

『え?』

 

 冷徹な声に、ヒナタはすぐ横を見た。

 

『俺の前で死なれると、わざと見殺しにしたんじゃないかと周りに思われて、後々面倒なんです。さっさとどいてください』

 

 ちょうど、ヒナタが砂に呑み込まれる寸前だった。彼女を後ろに押しのけた日向ネジは、彼女と似たような体術を用いながらも、遥かに精密で、遥かに高速度で砂を捌いていった。

 

『おい、そこの犬みたいなのと、サングラス』

『あん? 俺の事か?』

『……俺か?』

 

 ネジの呼び声に、キバとシノが反応する。

 

『ヒナタ様を連れて、さっさとこの場から離れろッ!』

『えッ! でも、ネジ兄さん―――』

『お前たちもだ。さっさと逃げろ』

 

 ヒナタの言い分を無視し、白い瞳がこちらをギラリと睨み付ける。砂が襲い掛かってきているのにも関わらず、彼は砂を捌き続けている。サスケもサクラも、ただ頷くだけしかできなかった。

 

『テンテン!』

『分かってるよッ! リー、しっかり合わせなさいよッ!』

『はいッ! それではサクラさん、ゴールでお会いしましょうッ!』

『チョウジ、いの、俺達も逃げるぞッ!』

『分かった! 行くよ、いの』

『う、うん……』

『ヒナタッ!』

『で、でも、ナルトくんが……』

『この場から離れれば、あいつも問題ない。なぜなら、あいつは気を失っているだけのようだからな。それよりも今は、ここから離れる事を優先しろ。ここまで他のチームがいれば、後々混乱する』

 

 テンテン、シカマル、キバが煙玉を大量に放り投げると、咽返るほどの白煙が辺りを覆い。

 誰もが一様に、その場から脱することを迷うことなく選択した。

 

 偶然に集合し、混乱した場。

 

 ネジは、ただの厄介事だと評価した。ここまで多数のチームが入り乱れては、泥沼に嵌ってしまうと。そうなる前に場を均し、後腐れなく逃げる事を選択した。

 

 シカマルは面倒事だと評価した。本来なら隠れて見逃す場面だったが、いのの独断による行動で、危うく死ぬところだった。彼らは脱兎の如く逃げることを選んだ。

 

 ヒナタは、ただナルトの事が心配だった。どうして気を失っているのか、身体に異常は無いか、それだけが心残り。白眼でサクラたちが逃げた先が安全であるかを確認し、安全を確認しながら、消極的にその場を離れる事にした。

 

 そして。

 

 我愛羅の眼には。

 苛立ちを残響させた場に映った。

 まるで、うずまきナルトという人物一人を助ける為に、多くの人間が姿を現したかのように。

 かつて慕っていた、夜叉丸の言葉が、脳裏をかすめた。

 

 

 

「ヒナタやリーさんが助けに来てくれたのは、感謝してるけど、何より、いのが最初に割って入ってくれなかったら、やっぱり、助かってなかった」

 

 空を見上げる。

 綺麗に晴れた天気だ。

 この空を見る事も出来なかったかもしれないと思うと、怖い。

 いのはクスリと笑った。

 

「別に、アンタを助けたくて無理した訳じゃないわよ。サスケくんを助けたくてやったのよ。あ、もしかしてサスケくん、私の雄姿に惚れちゃったり?」

 

 そんな軽口も、今では尊く思えてしまう。「ないない!」とサクラは軽口で返した。いのからの親切を無下にしたくはなかった。

 

 それからは、ただ、他愛もない話しが続いた。半分くらいは、サスケに対しての話題だったが、会話の流れは無秩序で、脱線したり、したかと思えば前の話題を忘れて、話題が飛翔したり。

 

 明日が最終試験だ、という話題も出た。シカマルとナルト。互いに、チームメイトが出場することになっている。意外なメンツだ、と話した。それに、ヒナタが出場している事も、意外だとも。彼女はアカデミーでは影が薄かったため印象はあまり残っていないが、凄いとも。

 

 サクラは心の中では、ナルト、シカマル、ヒナタ。三人は応援したいと心に決めていた。ナルトは同じチームメイトだから。シカマルとヒナタは、助けてくれたから。本当なら、ネジも応援したいのだけれど、サスケを不合格にしたということ、ヒナタの対戦相手という事もある為、応援はしないと考えた。

 

 気が付けば空は、少しだけ赤色が混ざり始めている。

 いのと別れて、帰路を辿る。

 明日の試験会場に、サスケは姿を現すだろうか。行くときに、声をかけてもいいかもしれない。あるいは、カカシが声をかけているかもしれない。あの人物は意外と、生徒のケアをするという意外な一面がある。

 

 サスケ、カカシ、そして自分の三人が、ナルトの応援をする。不思議だが、けれど、おかしさは感じない。彼はそれ相応の努力をしてきたし、実力もある。

 

 チームメイトが、中忍選抜試験で活躍する。

 

 日常の中から、特別が生まれる。その感覚は、誕生日にも似た楽しさがあった。

 

 明日が楽しみでならない。

 

 大蛇丸という憂いがあるけれど。

 

 それは、頭の中では楽観的に捉えていた。

 

 里には、火影がいる。カカシだっているし、木ノ葉の神童と呼ばれる、うちはイタチがいる。最終試験までの準備期間である一カ月の間、特に大きな事件も耳に入ってこない(、、、、、、、、)。つまり、大蛇丸は里に手出しが出来ていない状況という事なのではないか。

 

 サクラは明日の最終試験を楽しみ、鼻歌を歌った。

 

 切ったばかりの髪の毛が愉快そうに、風に流される。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 とうとう、中忍選抜試験の最終試験が控えるのは、明日となった。一段落では、ある。何事もなく前日を迎えることが出来たというのは、幸運と判断して間違いではないだろう。予想外にも―――予想外の事が全く起きなかった。

 

 いや、それこそが、予想の範疇を超えた出来事であると、テマリは頭を悩ませていた。

 

 静か過ぎる。弟の、我愛羅の事だ。

 

 狂気と暴力が、線香の煙のような気紛れさを持つ彼が、パタリと問題を起こさない。正直なところ、人一人くらいは殺してもおかしくはないと予想していた。我愛羅を知っている者なら、誰もが同じことを考えるだろう。

 

 異変に気が付いたのは、二~三週間前の事だった。

 

 我愛羅は、夜の最中に散歩に出掛ける事が多い。散歩の最中に何をしているのかは、恐ろしくて調べようとも思わないが、散歩しに行くことは間違いない。木ノ葉に来た当初も、その傾向は見受けられた。同じ宿で寝泊まりしている者としては、我愛羅が外でブラブラとしているというのは安眠の条件だった。だからこそ、途端に我愛羅が、夜に出歩かなくなったことに違和感を抱いたのだ。

 

 ある日を境に、ピタリと。

 

 豪雨が途絶えながらも、不動の分厚い雲が真上にあるくらいの不気味さ。それに加え、横隔膜が痙攣してしまうほどの恐怖もある。一歩一歩と進むたびに、胃が痛い。何度も唾液を呑み込んだせいで、口の中はすっかり乾いてしまっていた。

 

 これから、明日の【戦争】について、バキから話しがある。話し、と言っても、具体的な行動内容を聞かされる訳ではないだろうと、テマリは判断している。同じチームと言っても、まだ自分たちは下忍だ。砂隠れの里が、木ノ葉との同盟を破ってまで決行する戦争。その詳細を教えるというのは、リスキーが過ぎる。

 

 単純に、意志を確認する為のものだろう。

 

 下忍である自分たちが、本当に戦争に加担できるのか。それを見定める為に。

 

 本来ならば、我愛羅にその確認をする必要はない。彼にとって、人を殺す事が出来る戦争に消極的になる理由が無い。バキも、呼び出しにはテマリとカンクロウだけしか呼んでいない。

 しかしテマリは、一人で我愛羅の部屋へと向かっていた。我愛羅に会うために。

 

 ―――……ったく、私は何やってんだ…………。

 

 心の中で、独り言ちる。自分の行動における矛盾に腹立たしさは、自身の部屋を出てからずっと抱いていた。

 

 格別、必要のない行動だ。我愛羅に会っても、得なんてないのは自明だ。風呂上がりだというのに嫌な汗をかいてまでする意味がないのに。

 

 こんなに自分は頭が悪かったかと、小さく舌打ちをしてしまう。廊下には誰もいない。嫌気がしてしまうほどスムーズに、部屋の前に着いてしまう。

 

 ドア。自分やカンクロウが使っている部屋と全く同じ物なのに、中に我愛羅がいると思うだけで、向こう側には地獄が広がっているのではないかと想像させられてしまう。

 

 やはり、止めようかと、考えが過る。我愛羅に不要に接しても、彼の機嫌が悪くなるのが基本だ。止めよう。

 

『約束して? 皆と、ずっと傍にいるって。貴方たちは、家族なんだから』

 

 下唇を小さく噛む。どうして、母の言葉を思い出したのか。大きく息を吸い込んで、テマリは震える右手でドアをノックした。

 

「我愛羅……起きてるか?」

 

 声は小さく、震えてしまった。ドアの向こうから返事は無い。眠っているのだと、都合の良い事を考えたものの、もう一度だけノックし、言う。

 

「先生が呼んでる。明日の事について、話があるみたいだ」

 

 今度ははっきりと言えることが出来たはずだ。返事が来てほしい、このまま無言であってほしい。両極端の感情がブランコのように揺れ動く。

 

 十秒ほど時間は経っただろう。あるいは、三十分かもしれない。恐怖が体感時間をあべこべにする。とかく、返事は、無かったのだ。

 

 もういい。戻ろう。きっと、寝ているに違いない。仕方ない。そう、仕方ないんだ。誰に向けたものなのか分からない言い訳を心の中で広げながら、踵を返す。身体が軽くなったのか、後ろ髪を引かれるように重くなったのか、それすらも分からない。

 

 モヤモヤとした空気を吐き出すみたいに、テマリは小さく頭を振る。と、後ろから、音。ドアが開く音がした。キィ、と、風が押す程度の速度で開いたのだと直感できてしまうくらいに、小さな音だった。

 

 開いたドアを、テマリは息を殺して、じっと見つめる。我愛羅が出てくるのだと、想像していたからだ。

 

 だが、ドアから姿を現したのは、全く別の人物だった。

 

「…………あれ?」

 

 その人物は、自分よりも少しだけ身長が高かった。女性だと判断できたのは、特徴的な配色をしている髪が、それなりに女性的な長さがあったという事と、浴衣の上から分かる身体の細さからだが、決定的なのは、こちらに気付いた時の声が、女性のそれだったからだ。

 

「君……我愛羅くんと似た匂いがするね…………」

 

 我愛羅の部屋を間違えていたのではないかという考えは、彼女の言葉によって否定される。部屋から出てきた彼女は、急激な緩急の付けて顔を近付けてきたかと思うと、すんすんと、細い鼻を鳴らしたのだ。テマリは驚き、三歩後ろに下がる。

 

 不気味な動きが生理的に危機を覚えたのもそうだが、彼女を危険と判断したのは、彼女が巻いている包帯が原因だ。前髪の下を通し、ちょうど眼があるだろうところを、一本の包帯が巻かれている。包帯は随分とくたびれている。色は、白と淡い赤が入り混じり、顔を近付けてきた時に微かにだけ、死臭が鼻を突いた。

 

「お前……何者だ…………」

 

 テマリは相手を警戒する。大声を出さなかったのは、ここで大声を出して騒ぎを引き起こすのは避けなければいけないからだ。だが、テマリは今空手だ。自身が愛用している巨大な扇は今、部屋に置いてきてしまっている。テマリにとって、狭い廊下、そして近距離というのは得意な環境ではなかった。

 

 おまけに、我愛羅の部屋から相手は平然と出てきた。その異様さも相まって、警戒は最大限に引き上げられる。同時に……我愛羅の事が…………。

 

「あまり、警戒しないで。何もしないから。私はただ、家に帰るだけだから。……もしかして…………我愛羅くんの、家族の人?」

「……あいつの、姉だ」

「そっか」

 

 良かったぁ。

 

 深い安堵の息に包まれたその一言は、不気味な雰囲気を漂わせる彼女には不釣合いで、口者に浮かべた笑顔の透明さの意味が分からなかった。

 

 ただ、どこか、そう。

 懐かしさを感じた。

 イロミと出会うのは初めてで―――厳密には、中忍選抜試験の受付で互いに一瞥しているのだが―――懐かしさは、つまり、本質的な部分だった。

 母の笑顔と同じだ。

 だけど、イロミの笑顔はどこか。

 羨望のような、悲しさと儚さを滲ませたものだった。

 

「―――待て」

 

 開きっぱなしのドアから、今度こそ聞こえてくる我愛羅と共に、砂が姿を現す。

 これまで数え切れない程の血と肉を食んできた、恐怖の象徴。それはやはり、迷いなくイロミを掴みかかった。猛々しい量と動き。彼女の顔部分と足、指の先以外の全てを覆う。

 

 テマリは、すぐさま後ろに跳び退いた。次の瞬間には、目の前の得体の知れない女が肉片に変わるだろうと予測した映像を、間近で目撃したくはないという本能がそうさせたのだ。

 

 しかし。

 

 砂は、イロミを捕えるだけだった。

 

「どこに……行くつもりだ…………」

 

 左手で歪む顔を抑えた我愛羅が、姿を現す。その表情はどこか苦しそうで、かといって、殺意に悩まされているという訳ではないように見える。初めて見る、表情だった。イロミを包む砂が、不安定な我愛羅の感情を表すように震えている。

 

「怖がらないで、我愛羅くん」

 

 そのイロミの言葉は、あまりにも、我愛羅には相応しくない言葉だった。

 

「私は家に帰るだけだから。……多分だけど、我愛羅くんとは、またすぐに、会うと思うの。今までみたいに、一緒にご飯食べたり、お話したりは、出来ないと思うけど…………」

「どういう……意味だ」

 

 短い沈黙。

 

「……私は、もう、何もないの…………」

 

 生まれた時から、家族なんていなかった。

 大好きだった友達は、遠くに行っちゃって。

 三人いたんだけどね。

 ずっと、私の中では、皆と一緒にいる事が、中心だったの。

 ずっと。

 今までも、そうだったの。

 だけど。

 バラバラに、なっちゃった。

 イタチくんって言う友達がいるんだけど、その人が、三人の中で、まだ、傍にいてくれた人なんだけど。

 嘘、つかれちゃったんだ。

 里の掟も破っちゃったし。

 もう……何もないの。

 私も、どこからが自分なのか、もう、分からなかった。

 暗闇の中に立ってる気分で。

 あはは、眼は、今は、無いんだけど。

 自分の身体と暗闇の境界が無い、そんな感じなの。

 

「だから、私、自分の大切な事だけを考えようって、思ったの。忍道とか、どうでもよくなっちゃった。私の中心の為だけに、頑張る事にしたの。―――全部、敵にしても」

「…………何が、言いたい……」

「ねえ、我愛羅くん。君はまだ、家族がいるよ」

 

 イロミは、また笑う。テマリに向かって。

 優しいようで、憧れているようで。

 

「君には、家族が、在るんだよ」

 

 怖がらないでと、イロミは言う。

 君にどんな事情があったのかは、分からないけど。

 だけど……君がここにいるのは、君の家族が、努力したからだよ。

 君の家族が、君が生まれてきてほしいって努力したから、君はここにいるんだよ。

 その努力だけは、評価してあげて。

 

「誰かが傍にいてくれるっていう力強さは、やっぱり、家族が一番なんだよ。血が繋がっているとか、繋がっていないとか、そういうのも、大事なのかもしれないけど……家族に成ってくれた人たちは、必ず努力をしてくれたはずなんだ。それを邪魔だなんて、そんな簡単に見捨てないであげて」

 

 イロミの顔が蝕まれるように紫に変色する。

 蛇の眼光にも似た薄ら寒いチャクラが肌を刺してきた。我愛羅の殺意よりも、もっと、粘質なものだ。

 なのに、どうしてだろう。

 目の前の人物を警戒しようとは、思えなかった。

 

「ありがとうね、我愛羅くん。君のおかげで、気持ちが落ち着いたんだ。ずっと何も変わらない。私はいつも、何もなかった。何が欲しいのか、そのためにどんな努力をすればいいのか、考えが纏まったよ」

 

 紫色に変わったイロミが、水のように、我愛羅の砂の一つ一つの隙間をすり抜けて、出てきた。

 得体の知れない術。

 でも、やはり警戒はしなかった。

 砂も戸惑うように宙を浮遊している。

 

「さっきの怖がらないでって言うのは、私なりの恩返し。お世話になっちゃったし、君が辛そうだったから。安心して、君は化物じゃないよ」

「………………」

「少なくとも私は、そう思ってるから。もし、次に会ったら―――あー、うん、まあ、いいかな。あはは……。バイバイ、我愛羅くん」

 

 素足の彼女はテマリの横を通り抜ける。

 その際に、無意識に尋ねていた。

 アンタは一体―――。

 イロミの耳に届いたのか、彼女は優しく微笑みながら呟いた。

 

「私は、イロリ(、、、)だよ」

 

 去っていった彼女に、取り残されるように、テマリと我愛羅は佇んだ。

 もうそろそろで、バキが言っていた集合時間だろう。

 母の顔と、今さっきまでいた不思議な少女。

 その二人の顔と言葉が重なると、口と喉は軽やかに動いてくれた。

 

「―――我愛羅、先生が呼んでる。明日の事だ。部屋に行くか?」

 

 既に我愛羅の表情は普段の仏頂面に戻っていた。砂を背負っている瓢箪の中に呼び戻しながら、彼は言う。

 

「……ああ。今行く」

 




 補足説明。
 :山中いのの髪は短くなっておりません。春野サクラが音の三人衆と対峙するという場面が存在せず、髪を自ら切り捨てるイベントが発生しなかったことが起因しております。具体的に描写してしまうと、不必要に物語が(かといってこれまでの話しに全く無駄が無かったかと言えばそうではないのですが)長くなってしまうと判断したため、割愛させていただきました。

 次話は6月20日までに投稿したいと思います。

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