IS~紅の戦乙女~   作:ピーナ

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プロローグ

「…疲れた。結構体鈍ってるかも」

 

ここ、トウキョウ租界郊外の軍施設の近くを歩く一人の少女がそう呟いた。

少女の名前は紅月カレン。私立アッシュフォード学園に通う学生である。

しかし、彼女の名前は別の意味で世界中に知られている。

おおよそ一年前、世界はその三分の一を神聖ブリタニア帝国が占めていた。

そんな帝国に反旗を翻したレジスタンス組織、黒の騎士団。

元は小さな波だった物がいつの間にか大きくなり、最終的にはブリタニアと黒の騎士団による最終決戦があった。

彼女はその黒の騎士団のトップエース、いやこの時代最強のKMFパイロットと言っても過言ではないだろう。

しかし、そんな彼女も現在はただの学生であるのだが、何故こんな所に居るのかというと…

 

「軍や関係企業に良いパイロットいないのかしら?ま、こっちは割の良いのバイトだし、ストレス発散にもなるしね」

 

彼女の戦争中の愛機、紅蓮弐式の開発者であるラクシャータ・チャウラーによるテストパイロットの依頼だった。

カレン自身、知り合いに頼まれた事だし、何よりお金の為だった。

彼女の家族は病気の母親のみの二人暮らしである。

現在の日本の首相である扇要や元超合衆国最高評議会議長皇神楽耶が援助しているが、そんなに多額の援助を貰っている訳ではない。

終戦後、彼女自身の騎士団時代の活躍にかなりの額の金銭が支払われているので特に問題はないが、それでもどのタイミングで出費があるか分からないので、たまに騎士団時代のツテで仕事をしている。

今日もその仕事の一つだった。

ちなみに彼女の言葉なのだが、彼女クラスのパイロットは恐らく5人もいない。

彼女の最後の機体、紅蓮聖天八極式自体が6割の状態で乗りこなせる人間がいないとまで開発者自身が言ってしまうほどのものである。

それを乗りこなし、同世代のランスロット・アルビオンと相討ちながらも互角に戦えるのだから、その実力は推して知るべしだろう。

 

「さてと、今日は何を作ろうかなー」

 

そんな事を呟きながら歩いていると突然、カレンは光に包まれた。

そして、その光が無くなると、彼女の姿は無くなった。そう、まるで神隠しの様に消えてしまった。

 

 

突然光に包まれたカレンが目を開けると、そこは何もない真っ白な空間だった。

 

「一体、ここは何処なの?」

「カレンなのか?」

 

カレンは自分の名前の呼ばれた方を向く。

振り向いた先には、一人の少年が。

その少年は肩にかからない位の長さの黒髪で意思の強さを秘めたアメジスト色の瞳を持っていた。

いや、彼の事をカレンは良く知っている。

 

「ルルー…シュ?」

「ああ、久しぶりだな。カレン」

「ルルーシュ…」

 

彼の名前を呟きながら、カレンは近付き、

 

「一発、殴らせろー!」

 

そう言った後、拳を思いっきり振り切った。これまで溜まってきたものを含めて。

 

「あーすっきりした」

「カレン、突然殴るとは酷いじゃないか」

「うっさい!自分の胸に聞け!」

「…すまない」

「いいよ。ルルーシュが何をしたかったか私は分かってるつもりだから。さっきのは自分の中でのけじめだから」

「そうか」

「で、ここ何処なの?」

「俺も分からない」

 

そう言って、ルルーシュは周りを見回し、カレンもそれに続くように周りを見た。

周りは一面白い世界だった。何もない。

 

「すみません。突然お呼びして」

 

声のした方に二人が振り向くと、一人の女性が立っていた。それはどことなく二人の知っている人間に似ていたのだが、どこか違う感じのする。

 

「なあ、カレン。C.Cに似ている気がするんだが、何かが違う」

「奇遇ね、私もそう思うわ。何だろう、この小骨が喉に引っかかった感じ」

 

二人がそう話していると、

 

「私は、そのC.Cという方とは別人ですよ。ルルーシュさんとは一度お会いしましたけど。と言ってもこの姿ではありませんが」

「どういう事だ」

 

少し、厳しめの口調で聞くルルーシュ。少し警戒のレベルを彼の中で上げる。

 

「私は、無意識集合体。シャルル・ジ・ブリタニア達が神と呼んでいた存在」

「神!?」

 

カレンが素っ頓狂な声を上げた。ルルーシュは何事もなく聞いている。

 

「私はあなた方の世界だけでなく、あなた達とは違う世界、いわゆる平行世界すべての人の無意識集合体なのです。実はその中の世界の一つの意識に、少しノイズが混じりだしまして、あなた方の力を借りたいという訳なのです」

「それは分かったけど、どうして私達?」

「その世界の機動兵器、インフィニット・ストラトス通称、ISは女性しか使えないんです」

「「はっ?」」

 

まさかの言葉に言葉を失う二人。

 

「…ねえ、ルルーシュ。それって兵器としてどうなの」

「はっきり言って、欠陥品だな。俺がトップなら絶対使わん。ただ、その欠陥を有り余るほどの何かがあるんだろう」

「そうよね」

「まあ、良い。神よ、なら俺を呼んだ?俺は男でなおかつ死人だぞ」

 

ルルーシュは思っていた事を聞く。

 

「あなたには彼女のサポートを頼もうかと思いまして…。具体的にはこちらで用意するISのAIという形で付いて行ってもらおうかと」

「俺は死んだ身だ。かまわないが…カレン、お前が決めろ」

「え、私!?」

「当たり前だろう、今回は俺は君のサポートなんだ。やるかやらないかの決定権はカレン、君にある。俺は君の意思に従おう」

 

ルルーシュにそう言われてカレンは考えた。

学校の事。

戦争が終わった後にできた新しい友達の事。

昔からの友達の事。

何よりもたった一人の家族の事。

そして、目の前の人の事

 

「…行く」

「いいのか?」

「女に二言はないわ。ルルーシュ、あなたに聞きたい事もあるしね」

「…分かった。だそうだぞ、神よ」

「ありがとうございます。では、あなた方をその世界にお送りします」

 

神がそう言うと、目の前がまた光に包まれる。

そして、真っ白な世界には神のみ残された。

 

「お願いします。異界の英雄達よ…」

 

 

「ちーちゃん、おひさー」

「久しぶりだな束」

 

大きな建物の前で二人の女性が話していた。

一人はスーツを纏った凛々しい女性。

もう一人はファンシーな服を着た女性。

何気なく話しているが、方や稀代の天才いや天災、篠ノ之束。方や世界最強の称号を持つ、織斑千冬。

傍目からみたら、とんでもない状態である。

 

「束、一夏の事を聞かせろ」

「なんで、いっくんがISを動かせたかって事?」

「ああ」

「うーん、正直に言うと分かんないだよねー。いっくんがISの開発に参加していたのならともかく、そういう訳でもないし」

「そうか」

「だ・か・ら!いっくんの機体は束さん直々に用意する事になりましたー!やったね、いっくん!」

「…やりすぎるなよ」

「分かってる、分かってる」

「はあ…」

 

ため息を吐く千冬。

その時、彼女の携帯端末に連絡が。

 

「むー、折角のちーちゃんとの時間を邪魔するのは誰だー」

「静かにしろ、束。―私だ」

『織斑先生、学園近くの海岸に異常反応をキャッチしました!』

「分かった。調査に向かう」

 

そう言って通信を切る。そして現場に歩き出す。

 

「ちーちゃん、私も興味あるから手伝うよ」

「好きにしろ。学園の近くであって敷地内でないから私にはどうこうする権利はないからな」

「やったー、ちーちゃん大好き!束さんとハグハグしようよー」

 

そう言って飛びかかってきた束を千冬はアイアンクローで迎撃した。

千冬の握力はそれこそ、クルミを素手で割れるくらいはある。

しかし、あっさり抜け出してしまう。

 

「くだらない事やってないでさっさと行くぞ」

「あいあいさー」

 

 

「…ここは?」

 

神によって飛ばされたカレンは海岸に立っていた。当然知らない風景である。

 

『一応、日本のようだ』

「うわ、ルルーシュ!?どこに?」

『お前の右手首にあるブレスレットだ。どうやらそれがカレンのISの待機状態のようだな』

 

そう言われて、カレンは自分の右手首にあるブレスレットを見た。彼女の愛機と同じ真紅のブレスレットがそこにはあった。

 

「で、これからどうする?」

『そうだな…。それを考える暇もないみたいだ。誰か来た。その人間とまずは接触しよう』

「分かったわ」

 

こうして彼女たちは出会う。

天災と、最強と、異界のエースが。

 

 




とりあえず一話を仕上げました。

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