謎のISの襲撃があって中止になったクラス対抗戦から時間が過ぎ、もう六月に入っていた。
今日は休日なのだが、生徒会室には生徒会メンバー全員と用事があって訪れた簪が中に居る。
所で、原作の中では更識姉妹の仲はそれほど良くない。しかし、今は昔ほど…とは言えないがかなり良好になっている。
何故か。その理由はここから数週間も前になる。
その日、生徒会室には生徒会のメンバーは全員揃っていた。
仕事は無かったものの、全員が偶然この部屋に居たのだった。
楯無は以前ルルーシュと約束した人の思考を読む事について聞いている。
「しかし、楯無。話した所、君はかなり優秀な人間だ。別に俺にこの事を聞く必要なぞ無いと思うが」
「…『更識』家はね、この国を裏から護る、対暗部用暗部の家なの」
「なるほど、上からの命令をより確実にこなすため、手札は多い方が良いと」
「そういう事よ」
「確かにそれもあるだろうが、それが一番の理由ではないだろう?」
「…私の中の一番大事な理由は、簪ちゃんと仲直りをするためよ」
そこから、楯無による、自分と簪の昔と今の関係についてと、自身がどれだけ簪を溺愛しているかを結構な時間語った。ちなみにその割合は前者2割、後者8割とかなり偏っていた事を書いておく。
「ふむ、溺愛している妹との仲直りの為に聞きたいと」
「…はい」
「正直、それを進める事は出来ない。というよりはこんな物使わなくても仲直り位ならできるだろう?」
「えっ?」
「簡単な話だ、腹を割って本音でぶつかれ。それで何とかなるだろう。お前たちは血の繋がった姉妹なんだ。しかも二人とも話せる距離に居るのだから…」
このルルーシュの言葉には重みがあった。
ルルーシュには生前、最愛の妹、ナナリーがいた。どれくらい愛していたかと言うと、まあ…彼女を護る為に自分の手が汚れても構わないとは思うくらいだ。
しかし、兄妹はすれ違いをしていた。それを知ったのはルルーシュが自らの死を決めた後、フジサンでの決戦の時だった。
妹を護るために世界を壊し、世界を創ろうとした兄。ただ、兄と普通に暮らしたかった妹。
しかし、ルルーシュはそこで、護られるだけだったナナリーの成長を見て、自分の選んだ道を進むのだった。
そして、すれ違いの果てに、兄は死に、死後も世界中の人々から忌み嫌われ、妹はその世界で重要な仕事をこなしながら生きている。
ルルーシュはフジサンの決戦から死ぬまで、時間がある時、何度も考えた。もしも俺が、何処かでナナリーと話していたらもっと違う時代を歩めたのではないか、と。
最後には、IFなんて考えても仕方ない。自分の選んだことだ。今さら後悔はしない、と自分でいつも納得するのだが。
「…そうだね、話してみるよ。ありがとう、ルルーシュ」
「礼は仲直りが終わってからでいい。さっさと行け」
「えっ、今から?」
「当たり前だろう。日本のことわざにも『善は急げ』とあるだろう」
「無理無理無理、絶対無理!」
「抵抗するか…。カレン、虚、本音、話は聞いていたか」
ルルーシュの問いに三人はそれぞれ聞いていたと答えた。
「ならば、話が早い。カレンと虚は楯無を連れていけ。本音は簪を連れてこい。話をさせる。場所は…カレンと簪の部屋で良いだろう」
「分かった~それじゃあ行ってくるよ~」
そう言い残して普段からは思えないような速さで簪を探しに行く本音。
それで開いたドアからゆっくり逃げようとする楯無を両サイドからカレンと虚は捕まえる。
「楯無さん」
「会長」
「「さっさと覚悟を決めてください」」
「無~理~」
その言葉を残しながら、楯無は二人に連行されていった。
その後、カレンと簪の部屋で四人の立会のもと、本音をぶつけ合った二人は、以前みたいなすれ違いもなく、一緒に食事したり、普通に会話をしたり、お互いの部屋や生徒会室に行き来したりと良好な姉妹仲になっていた。
そんな事があって、簪は休日だが生徒会室に居る。
実はその後、楯無は簪を生徒会にスカウトしたのだが、簪が「クラス代表に集中したいから」という理由で断った。
休日に生徒会のフルメンバーが生徒会室に居る理由だが、
「楯無さん、書類多くないですか~」
弱音を吐くカレン。
IS学園生徒会は他の学校の生徒会に比べると仕事が多い。理由は、「生徒会に入るほどの人間なら将来、書類を書くことが増えるだろうから、それの社会に出る前の練習」らしい。
楯無曰く、「そうは言ってるけど、先生達も少し楽したいから、体の良い押しつけだよ」と言っている。
「仕方ないよ。この前の謎のISの事件と、もうすぐある学年別トーナメントの書類が同時にきているからね」
手を休めず、答える楯無。その横で黙々と仕事をこなす虚。
「…頑張りますか」
覚悟を決めて仕事に集中するカレン。
もう一人のメンバーである本音は…
「zzz…zzz…」
爆睡中だった。
生徒会のメンバーではない簪はルルーシュと話している。
その理由は、これまた時間は戻る。
仲直りが済んだ翌日生徒会室ではとある会議が開かれていた。
参加者はIS学園生徒会会長・更識楯無、同副会長・紅月カレン、同副会長補佐(仮)・ルルーシュ・ランペルージ、同会計・布仏虚、同書記・布仏本音、そして、今回の会議の最重要人物である、1年4組のクラス代表・更識簪の6名である。
生徒会室に備え付けられたホワイトボードには大きく議題が書かれていた。『第一回打鉄弐式開発会議』と。
なぜ、これが開かれるようになったか。理由は昨日の仲直りの際、簪が
「お姉ちゃん、専用機作るの手伝って?」
と言ったのが始まりだった。これを聞いた楯無は
「良いわよ!すべての仕事よりも優先して手伝うわ!」
と二つ返事で答えた。妹に頼られたのが何年かぶりだったからである。
ちなみにその後、楯無は虚に小一時間説教を食らったそうな。
「マルチロックオン搭載のミサイルシステム、『山嵐』か…」
開発案では、打鉄弐式は二連装の荷電粒子砲『春雷』、ランスロットなどのMVSと同じ機構の薙刀『夢現』、そして、最大武装である八発×六機からなる、マルチロックオン搭載のミサイルシステム『山嵐』の三つの武装が有った。
現在、完成しているのは、機体そのものと、『春雷』『夢現』の二つの武装で、『山嵐』はまだ手つかずだった。(なので、今の打鉄弐式は『第三世代機』とは厳密には呼べない)
「イメージインターフェイスに関しては私のミステリアス・レイディのを参考にすればいいと思うけど、マルチロックオンはどうしようもないわね…」
楯無の言葉に部屋は重い空気になる。いや、一人だけそんな空気を気にしていない人間が。
「ふむ、それなら何とかなるだろう」
この部屋唯一の男性にして、唯一の死人、ルルーシュはそう言った。
その言葉に全員が唖然とする。一番最初に戻った当事者である。簪が聞く。
「どうやって?」
「あの映像に出てきた、俺の機体、蜃気楼のドルイドシステムを使う」
「でも、あれって防御用なんじゃ…」
「いや、蜃気楼では確かに防御の為に使っていたが、あれは元々解析の為の高度な演算システムだ。調整は必要になるだろうが、それでも構わないか?」
「構わない。よろしくお願いします」
そして、この日から『山嵐』開発の為にルルーシュと簪が良く話すようになった。
といっても、ルルーシュが話せるのはカレンと簪の部屋か、全員がルルーシュの存在を知っている生徒会室だけなのだが。
今日も二人は『山嵐』の開発を進めている。
「簪、イメージインターフェイスの調整の方はどうだ」
「70%くらいは終わったかな。マルチロックオンの方はどう?」
「仮組は終わっている。イメージインターフェイスの調整が90%超えたあたりで一度接続して不具合が無いか確かめよう」
「了解、実際に使ったりはそこから調整してだね」
「そうだ。武器は念入りに準備をしないと、失敗の代価を自分の身で払う事になるからな」
「そうだね。…そう言えば」
何かを思い出したかのような言葉を出す簪。
「どうした?」
「この事でお礼を言ってなかったなって。ありがとう、ルルーシュ」
「別に大した事じゃない。気にするな」
「ふふ、ねえ、カレン」
簪は目下、書類と格闘中のカレンに話しかけた。
「何?」
「ルルーシュって、不器用だけど優しいね」
「なっ」
「でしょ。もうちょっと素直になれば良いのに」
「だよね」
二人の会話にたじたじのルルーシュなのであった。
「ようやく、終わった~」
机に倒れこむカレン。気が付くと、もう夕食の時間だった。
「お疲れさま。さて、皆で食事行きましょ」
楯無がそう言って、席を立とうとした時、
「あっ、そうだった。カレンちゃん、本音ちゃん言わなきゃならない事が」
何かを思いだし、二人を呼んだ。
「何ですか、会長」
「実は、明日1組に転校生が来るのよ、二人」
「どこの代表候補生ですか~」
鈴の時もそうだったが、IS学園に編入してくるには、相応の実力と国の推薦が無いといけない。そんなものを持っているのは、国家代表かその候補生位なものなので、察しはつく。
「フランスとドイツよ。で、二人は生徒会のメンバーとして少し、気にかけておいて欲しいの」
「分かりました。…また、面倒な事になりそうだけど」
「りょ~かいです」
「よし、じゃあ、食堂に行きましょ」
そう言って全員生徒会室を後にした。
原作2巻の最初って、弾&蘭が出てくるところなんですよね。
そこにカレンを出しても良いかなと思ったのですが、せっかく生徒会なんだから、そこのお仕事をしている所も書こうかなと思い、入れました。
次回は、金髪&銀髪のあの二人が登場!
完全に余談なのですが、ISのオリ主物を書きたいなと思う今日この頃。もしかしたら書いちゃうかもしれません。いい設定を思いついたらですけど。