IS~紅の戦乙女~   作:ピーナ

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短いお話です。


第三十四話 「そのギアス確かに受け取ったわ」

亡国機業の本拠地強襲を終えた日の夜、皆が寝静まってから、カレンはこっそり部屋を抜け出し、屋上に向かった。

屋上にはすでにルルーシュが手すりにもたれかかっていた。

 

「全部話してもらうわよ、ルルーシュ」

「ああ、分かっている。俺がここに実体化した事で、俺はより直接的に干渉する事が出来るようになった。ならば、積極的に関わり、早めに片付けようと考えた」

「どうして?」

「理由はいくつかあるが、大きな理由はお前だ、カレン」

「私?」

「そうだ。お前は俺とは違い、あっちでの暮らしがある。待っている家族や友人たちがいる。俺が出来るのはお前を元の生活に一刻も早く戻す事だ」

「どうして……」

「あの時……斑鳩で最後に言ったお前に言った言葉、覚えているか?」

「『君は生きろ』って……」

「それだ。俺は、あの戦いで沢山の物を失ったし捨てた。家族、友人、信頼、部下、自分の命……上げきれない程な。だが、その末に平和を築けた。それに後悔はない。だが、そんな俺でも大事に想う人は居る。その人には俺が創った世界で生きていて欲しいんだよ。少しは優しくなった世界で」

「そんなの…エゴだよ」

 

弱く呟くカレン。

 

「ああ、そうだ。俺のエゴだ。だが、俺は他人の事を気にしない筋金入りのエゴイストだ。だから、俺の目的のために動いただけだ」

「貴方の気持ちは分かった。……でもさ、私の前で悪役を演じる必要は無いよ」

「……やはり、君にはかなわないな」

「出発前にした約束、ルルーシュの答えを教えてよ」

「……正直、最初は便利な駒位だったな。白兜に勝てる駒位の認識だ。それがブラックリベリオン位の頃になると、作戦に欠かせない存在になった」

「案外酷いね、色々自信あったんだけど」

 

そう言いながらも笑うカレン。

 

「その頃は俺自身余裕がなかったからな。この認識が変わったのは、蓬莱島に行った頃だ。ゼロを演じていながら、お前と話している間だけはルルーシュとして居られた。それが俺にとって非常に大きな事だった。だから、お前が居ない間はお前の存在の大きさに俺自身が驚いたものだ。ただ、これがどういう感情なのか理解するまでは少し時間が必要だったがな。自覚したのはさっきの言葉の直前、皆に銃を突き付けられた俺の前にお前が立った時がきっかけだ。『このままでは俺のせいでカレンが傷付く』そう思った。何故、そう思ったのか? その時は分からず、君を護るために悪役になるために言葉を吐いた。……まあ、その後、本音も出てしまったがな。それからゼロレクイエムを行うまでの間にじっくり考えて、ようやく答えが出た。カレン、お前は俺にとって大切な存在になっていた。これが俺の答えだ」

「なら!」

「だが、ここは君が居る場所じゃない。君が居るべき場所は向こうの日常だ」

「……ルルーシュはどうするの?」

「俺の仕事はここから、少しずつこのバカげた世界を変えていく事だ。向こうの様に焦る必要も武力も必要ない。時間を掛けて世論を変えて行けば変われる。所詮、10年で出来たものだ。今回は協力者も沢山いるし、なにより世界を壊し作るのは俺の得意技だからな。」

 

ルルーシュはそう言って、不敵な笑みを浮かべる。

しかし、カレンの表情は暗い。

ルルーシュは溜め息を一つ吐いた後、カレンに近付き、彼女を抱きしめた。

 

「そんな顔しないでくれ」

「でも…」

「ならば、ルルーシュ・ランペルージが命ずる。紅月カレンよ、君の事を待っている人の元に帰り生きろ。……これが俺の願いだ」

「願い? ギアスみたいな言い方なのに?」

「ああ、ゼロレクイエムの直前に思った事だ。願いとは自分の力だけでは叶わない事を相手に求める。それが、俺のギアスに似ていると思ってな。だから、ギアスを使う時の言い方で言ったんだ」

「……分かったわ。ルルーシュのルルーシュ自身の願いという、そのギアス確かに受け取ったわ」

「ありがとう。そして、お別れだ。俺はこの世界で生きていく。それが向こうの世界で罪を犯した俺の贖罪らしいからな」

「……ええ」

 

お互いの顔が近付いて行き、互いの存在を刻み込む様に口づけを交わす。来た時の様に光によって、カレンが消えるまで。

 

 

カレンが消えた屋上でルルーシュは一人呟いた。

 

「二度目のサヨナラだ、カレン。俺の……大事な人」

 

呟いたルルーシュの頬を一筋の涙がつたっていたのは、誰も、他ならぬ彼自身も気付かなかった。




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