拝啓
大分と暖かくなり、桜の花が付き始め、新しい日々が近付いてくる足音が聞こえるような時期になりましたが、いかがお過ごしでしょうか? 私は元気です。
私がカレンと出会った、あの日から早5年経ち、私と本音も気付いたら成人を迎えました。
カレンと一緒に居た期間は半年にも満たなかったけど、カレンとの出会いは私の人生にとって非常に大きい物だと今でも思います。
カレンとの出会いが冷え込んでいた私とお姉ちゃんの関係を昔の様に戻してくれて、それまで私が持っていたコンプレックスも吹き飛ばしてくれたと思っています。
この5年間は世界的にも、私達的にも本当に色々ありました。
お姉ちゃんは第三回のモンド・グロッソで総合部門に優勝し、織斑先生の後の『ブリュンヒルデ』になりました。まあ、その後すぐに国家代表を退いて、更識の家の仕事に専念したんだけど。
虚さんはそのお姉ちゃんの総合部門制覇を二人三脚で支え、一部では『ブリュンヒルデの影』とまで言われている。たまにIS学園の臨時講師の依頼があって、後輩たちを教えに行っている。
それに恋人が出来ました。お相手は織斑君の友達の五反田弾君。少し抜けている感じだけど、話したらとてもいい人だった。虚さんには幸せになってもらいたいな。
本音は私と一緒に大学に行っている。相変わらずのゆっくりした性格だけど、それでも、少しは変わっている……と思う。
でも、その雰囲気に助けられているし、本音はこのままでいいと思う。
私は二年に上がったと同時に、日本代表を拝命した。正直、お姉ちゃんを始め何人か会った国家代表には及んでいないと自分では思っていたんだけど、他ならぬ前日本代表の織斑先生の推薦があったらしい。織斑先生は、一年の間ずっと続けていた私の努力を見ていたらしい。それを言われた時は恥ずかしかった。
お姉ちゃんには準決勝で負けたけど、第三回大会で総合部門で三位、射撃部門で『ヴァルキリー』になる事が出来た。
そこから、さらに頑張って操縦技術と機体開発に励んだ結果、第四回大会では射撃部門二連覇と『ブリュンヒルデ』を日本に持ち帰る事が出来た。一部では「IS作って、それを乗りこなすとか……チートかよ」と突っ込まれてるけど。
今は、もうIS乗りからは引退して、IS制作の方に集中している。私としてはこっちの方が向いていると思うし。
モンドグロッソの事だけど、この5年で二回あって私と同級生の他の専用機持ち達は結局、国家代表にはなっていない。原因は何かと言われたら……織斑君にかまけていた事、これに尽きると思う。第三回は私が二年の時に有ったから、年齢的に難しかった(全出場選手で私が最年少だった)だろうけど、その三年後の去年行われた第四回大会の時にも誰も出てこなかった。
IS学園の三年間で、本国で訓練していた候補生に抜かれたという話を後で聞いた。訓練風景を見ていたけど、いつもいがみ合って、まともな訓練出来てなかったし。
IS学園の私達の学年は結果的にIS乗りとしては暗黒の世代、狭間の世代になった。私という、『ヴァルキリー』『ブリュンヒルデ』が居たけど、国家代表になったのが私だけ。
国家代表のいない世代もあるけど、学園所属の時に専用機持ちや代表候補生の多さを考えればこの評価は仕方ないのかもしれない。
逆に、私達の代は整備や開発などの面で優秀な人材が多い。理由はいくつかあるけど、一番大きいのは私が居たからだと学園の先生方は言っていた。
第三回大会の時、IS学園には三人の国家代表が居た。私とお姉ちゃん、それにお姉ちゃんの同級生でカナダ代表のフォルテ・サファイアさん。
三人とも大会で優秀な成績を残した結果。IS学園の生徒の意識が変わったらしい。三年は卒業までわずかだったけど、私と同じ二年はびっくりするくらい変わったと言っていた。
それで、私自身が整備やIS開発をしていた事もあるのだろう、何人もの同級生が手伝いたいと申し出て来てくれた。最初は教える側だったけど、ドンドンみんなの腕が上がっていって、第四回大会の頃の日本代表専属整備・開発チームの中核を担う人たちばかりになっていた。
……私は第四回大会後のインタビューで「私が『ブリュンヒルデ』になれたのは学校から一緒に歩いてくれたかけがえのない仲間のお蔭」だと答えたんだけど、多分、その事が無かったら『ブリュンヒルデ』にはなれなかったと今でも思う。
ある意味、その元凶となった、織斑君は……まあ、あのままの日常を三年送った。卒業後はそのまま倉持技研のテストパイロットになったと、日本代表としての仕事でIS学園に行った時に織斑先生に教えてもらった。
本人としては、織斑先生の後を継いで日本代表になりたかったみたいだけど、学園在籍の間、私に一度も勝てなかったし、織斑先生が実力不足と切って捨てた。
素質から言うと、かなりの物が有ったと思うけど、彼が大成出来なかったのは、あの五人が居た事と、自分で動かなかった事だと思う。
『ISは道具ではなくパートナー』これはIS学園に入ってすぐに言われる事だ。ISは専用機になると乗り手である私達を理解して最適化してくれる。これがさっきの表現の元になっている。
なら、乗り手である私達はどうするべきか? 私は、ISを理解するためにIS開発や整備の勉強を改めてした。いつも100%の力を出せるように訓練後は時間を掛けて自分の手で整備をした。そのおかげなのかは分からないけど、『打鉄弐式』や後継機の『打鉄聖天式』はいつも120%の力で私に答えてくれた。
織斑君はいつも受け身だった。色んな出来事も、恋愛事も、ISについても。パートナーの事を知る努力を怠った事が彼の成長を妨げたのだと私は思っている。
ルルーシュは表では更識が出資し、私の日本代表時代の専用機整備・開発チームが母体となった、『更識技研』の代表を務めている。ちなみに、私はそこで大学に通いながら主任研究員をさせてもらっている。
そのかたわら、裏では亡国機業で得た情報と彼の能力をフルに使い、少しずつ女尊男卑の世界を平等な世界に変えていく努力をしている。
時に荒事になるけど、その時は更識の実行部隊の部隊長で、技研の主任テストパイロットでもあるスコールさんたちが収拾している。
やっている事や、仕事量は相変わらず人一倍している。まるで何かを忘れようとしているように。だから、友達の一人として心配。
これは、届くことの無い手紙だって分かってるけど、私はなんとなく書かないといけない気がしたから今筆を持っている。
また、少ししたら、近況を纏めて書くと思います。それも楽しみにしていてください。
敬具
「なにやってるんだろ、私……」
更識家の自室の机に向かっていた簪はそう呟いた。
最近彼女はほとんどこの自分の部屋には帰ってこない。曰く「研究開発が楽しいから」だそうだ。
あまりのワーカホリックに代表のルルーシュとテストパイロットのスコール、従者の本音が共謀して休ませた。ちなみに今は彼女しか家に居ない。
「ちょっと、庭を散歩しよう……」
部屋をでて、庭に向かう為に廊下を歩いていたら、インターホンが鳴った。
「今日、来客の予定あったっけ? 通販で注文したのなら、朝の内に行ってるはずだし…」
そう呟きながら玄関に向かう。そこには彼女の思いもよらない人間が立っていた。
真紅の髪は彼女の姉の様に外はねのくせ毛。意思の強さを秘めた緑色の瞳。女子なら誰でも羨むであろうスタイルの良さ。
「カ…レン?」
「そうだよ、久しぶりだね、簪」
簪にとって、親友ともいえる紅月カレンがそこにはいた。
「どうしてここに?」
「五年かけてあっちの事を全部片付けてきた。私はやっぱり、一緒に生きたい人がいるからね」
「そっか。ルルーシュは今日、定時には帰って来るから、それまでここに居てよ。話したい事がいっぱいあるんだ」
「それじゃあ、お邪魔しようかな」
二人は屋敷の中に入っていく。
5年の時間を埋めるために。
えー、無事に終わりまで書くことが出来ました。
最後の山場に突入してから、あっという間だった気がします。
実際ギアス本編もゼロレクイエムに3~4話しか使ってないし良いかなと思いまして、こうなりました。
プロローグを上げたのが今から13か月前。最初はなんとなくで書いてみたのですが、皆さんの評価や感想をいただいて、それが嬉しく、活力になり、最後まで書ききる事が出来ました。
最終的にこのあとがきを書いている時点で、UAが16万を超え、お気に入りも1300件を超えました。僕自身が一番驚いています。
最後の方は賛否両論になるとは思いますが、これが僕なりのお話です。
この作品は終わりますが、他の作品はまだ書いていますし、新作も上げて、またどこかで僕の作品を読んでいただける事もあるでしょう。その時はよろしくお願いします。
最後に、読者の皆様への感謝の言葉でこの作品を閉めたいと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!