以前言っていた外伝です。
設定はカレンがギアス世界に戻って約半年、皆が一学年進級したところから始まります。
外伝 プロローグ 「……ドッキリか何かですか?」
カレンが元の世界に帰ってから半年、IS学園は新学期を迎えていた。
この半年、私はお姉ちゃんやカレンに追いつきたくてひたすら努力をし続けた。
多分、今までだったら、自分の体調すら顧みず訓練し続けただろうけど、ルルーシュと虚さんが無理がなく、効率的なトレーニングメニューを組んでくれたから、体を壊す事も無かったし学校の行事にもしっかり参加した。
その成果はちゃんと出始めている。一年生の時何度かあった全クラス合同で行う実習の際に行った模擬戦で他の専用機持ちに負けなし、お姉ちゃんとの模擬戦でも勝率は4割を超えるまでになった。
極めつけは、学年末に有った、全学年合同のトーナメントで準優勝した事。決勝でお姉ちゃんには負けたけど、勝ったお姉ちゃんの残りのシールドエネルギーも一桁という超接戦だった。
これらの事は私を見る周りの目も変わっていった。『生徒会長、ロシア国家代表、更識楯無の妹』というものから『日本代表候補生、更識簪』へ。
一年の時のクラスメイトの何人かは教えて欲しいと直接言ってくれた事もあった。私自身、そんなに頼れるような人間じゃないと自分では思ってたけど、頼ってもらえる事は嬉しかったし、人に教える事で、私自身が勉強になった事もあった。
「かんちゃん、二年は同じクラスだね~。よろしく~」
「こちらこそよろしくね、本音。ルルーシュも」
「ああ、よろしく頼む。クラスでも、生徒会でも」
二年のクラス替えで私は運良く、幼馴染の本音と、去年一年で知り合って、凄く頼りになる事を良く知っているルルーシュと同じクラスになれた。二人は私と同じ生徒会のメンバーでもある。
去年、三年生だった虚さんが生徒会を引退したのと、カレンが居なくなったから、私は一時期生徒会とクラス代表を掛け持ちしていたけど、今年は生徒会に集中するつもりだ。役職は虚さんの後釜で会計。カレンの所(副会長)にルルーシュが入った。
「でも、今年は去年以上に盛り上がりそうだよね~、学校生活」
「モンド・グロッソの第三回大会があるからな。しかも、開催は日本だろ?」
「うん。世界で一番IS関係の施設が揃ってるからね。当分は奇数大会は日本でやるみたいだよ。……まあ、開催は年末だし、まだまだ先の事だよ」
そう、この時はまだそう思っていた。
『二年四組、更識簪。放課後に第一会議室に来るように』
放送で私は呼び出された。あの声は織斑先生。……私、何かしたかな?
「かんちゃん、何か呼び出される事したの?」
「特にしてないと思うけど……」
「打鉄弐式の関係の書類は俺も確認して作ったから、それの不備での呼び出しでは無いだろうし、生徒会関係なら、俺達や楯無も一緒に呼び出されるだろう。簪は模範生と言っても差し支えないから普段の生活での呼び出しでも考えられないが……」
「とりあえず、お昼休みに行ってみるしかないね~」
「そうだね……。もうすぐ授業始まるし、席に戻った方が良いよ、二人とも」
「そうだな。……もし、厄介事なら、放課後生徒会で集まるんだ、その時に相談しろ。俺でも本音でも楯無でも相談に乗る」
「どんとこいだよ、かんちゃん」
こう言ってもらえると、去年一年で私の周りの環境はやっぱり劇的に変わったなと思う。
一年前は自分の殻に閉じこもって、その中で無茶な努力をしていた。それがここでの出会いのお蔭で私の周りには頼れる人が居てくれて、その人達に私は頼ってもいいという事を知った。
『人という字は人と人が支えあって出来ている』って良く言うけれど、それも今では納得できる。
「いざという時は皆に相談するよ。ありがとうね、二人とも」
だから、その気持ちは貰っておこう。そして、二人が困っている時は少しでも力になれば良い。
放課後、私は呼び出された第一会議室に向かった。
IS学園はその特性上、色んなところから人が訪れる。学園長が対応しなければいけない人、例えば国の偉い人や企業の重役などはちゃんと調度品が揃った部屋に通されるが、それ以外、スカウトに来た国の役員や、企業の人事部の人など、教員の方々が対応する時は普通の会議室が使われる。
今回呼び出された第一会議室はそんな部屋の一つで職員室のそばにある。
ちなみに、委員会や部活関係など、生徒がクラス、学年を飛び越えて行う会議は各学年の教室がある教室棟にある視聴覚室を使うことが多い。
目的地のドアの前に着いた私は一回深呼吸をして、ドアをノックした。
『どなたですか?』
「二年四組の更識簪です。呼び出しを受けてきました」
『更識か。入れ』
そう言われたので私はドアを開け、部屋に入った。
中に居たのは織斑先生と山田先生の二年一組担任・副担任の二人だった。これで、ますます何故私が呼び出されたかが分からなくなる。
私と二人の先生のつながりなど、ほとんど無い。
実習は2クラス合同で行なわれるから、一年の時四組で実習が三組と合同だった私は全クラスでの実習の時くらいしか面識は無い。
私が日本の代表候補生で、先生達も日本代表、代表候補生だったけど、私がなった頃には二人とも引退していたから、そこでの面識もない。一方的に私が知っているだけだ。
織斑先生はもちろん超有名人だから。むしろここに居て知らないって人は居ない。
山田先生を良く知るようになったのはとある事が切っ掛けだった。
ある時私は実際に動かすこと以外に自分から出来る事は無いかを考えてみた。どんだけ時間を作っても実機を動かす訓練の時間は限られる。他の人との差を付けようと思ったら、それ以外の事を考えるべきだと思ったからだ。
その結果行き着いたのは『上手い人の操縦している映像を見る』というものだった。それは私が思っていた以上に得る物があった。
私を含めIS学園に居る専用機持ちの生徒は第三世代が多い。つまりは特殊兵装ありきの戦い方が身に沁みついている。
特殊兵装はその機体の代表的な武器で優秀ではあるけど、それだけじゃダメだと思う。特殊兵装はいわば『応用』なのだ。そこを支える土台である『基礎』を磨く事が重要という当たり前の事を気付いたのだ。
それに特殊兵装関連の訓練は自分で考えていかないといけない物で見本が無い。それに比べると基礎技術は見本も多く、練習方法も確立されているから、学びやすかった。
その中で、入手のしやすさと一番勉強になったのが日本代表候補時代の山田先生だった。
カレンやお姉ちゃんや織斑先生も見本として良かったけど、戦闘スタイルの問題で参考にしにくい部分が多い。でも山田先生のはオーソドックスな射撃型の物だったから、私にあったスタイルだったし、お手本として最上級の物だと思った。
その後、現役時代の山田先生を知る、日本政府の代表候補生管理官の川島絵梨(かわしまえり)さんに聞いたら、「あがり症さえなかったら部門別代表になっていた」と評価していた。
お姉ちゃんも「これは掘り出し物ね。これくらい教材としてうってつけの物も無いわね。私としても勉強できるところがあるわ」とまで言っていた。
その映像を参考にしつつ、難しい所は山田先生にコツを聞きに行って自分の中に消化をしていった。それが今の私に繋がっている。
「とりあえず、座れ」
「はい」
先生達の対面に座る。面接みたいで緊張する……。
「今日呼びだしたのは、お前に渡すものがあるからだ」
「……私にですか?」
「はい。それがこちらです」
そう言って、山田先生が私に渡したのはA4サイズの封筒。
「中身、見てもいいですか?」
「どうぞ」
許可をもらったので封筒を開ける。中には一枚の紙が。
書かれていた短い一文を一度読み、内容が信じられなかったからもう一度読み直した。……夢じゃないらしい。
そこには『日本代表候補生、更識簪を第三回モンド・グロッソ日本代表に任命する』と書かれていた。
「……これ、ドッキリか何かですか?」
読み返しても信じられなかったから、私はそう聞き返した。
「違う、事実だ」
「私なんて、まだまだですよ? 国家代表なんて大任務まる訳……」
私の言葉に織斑先生は溜め息を一つ着いた後、話始める。
「更識、お前は自分自身の評価が低過ぎる。お前の実力なら十二分に国家代表を務められる。私も横に居る真耶もお前のこの一年の頑張りを知っている」
「そうです。更識さんはこの一年、この学園に居る誰よりも努力をして、それをものにしました。それがこの結果に繋がっているんです」
「私と真耶は日本代表の選考に関わっていて、私達が推薦して、学外の候補生で適格な人間がいなかったから、お前が代表に選ばれたんだ。私たち以外の選考に関わっていた者の反対も無かった。昨年度の全学年合同のトーナメントで準優勝していたのも大きかったな。国家代表に肉薄していたんだから」
私の努力をちゃんと見ていてくれて、評価をしてくれる人がいる。それだけで十分なのに、その人達が『国家代表』なんて、最大の評価をくれた事、それが一番嬉しい。努力が実を結ぶとはこういう事を言うんだろう。
「……私はまだ、私には国家代表は大任だと思ってます。でも、先生方が推薦してくれて、IS操縦者なら憧れる
「頑張ってください。教師としても、個人としても応援していますよ」
「お前ほどの努力家に言うのもなんだが、これに満足せず精進しろよ? ここはスタート地点だ。ゴールはモンド・グロッソ本戦なのだからな。正式発表は明日の全校集会で行う」
「はい! それでは、失礼します」
そう言って、会議室を出る。出て、もう一度封筒の中身を確認する。うん、夢じゃない。
まずは皆に報告しないと!
「遅れてゴメン!」
生徒会室に入っての第一声はこれだった。すでに他の役員、お姉ちゃん、本音、ルルーシュはいた。
「良いわよ、呼び出しがあったんだし」
「そうだよ、かんちゃん。気にしない気にしない」
「それで、呼び出しの理由はその封筒か?」
ルルーシュは私の腕の中に有った、封筒を指差す。
「うん」
「中身はなんなの?」
「見れば分かるよ、お姉ちゃん」
私はそう言ってお姉ちゃんに封筒を手渡した。受け取ったお姉ちゃんは封筒の中身の紙を読む。ルルーシュと本音もそれを覗き込みに行く。
「……簪ちゃん」
「何、おねえ、わぷっ」
いきなりお姉ちゃんに抱きしめられ言葉を中断させられてしまう。
「おじょうさま~、かんちゃんが苦しそうですよ~」
「そうだ、離してやれ、楯無」
「つい、行動に出ちゃった。でも、おめでとう! 流石は簪ちゃんね!」
「やっぱ、かんちゃんは凄いよ~。おめでとー」
「ああ、去年の簪の頑張りが形となったな。本当におめでとう、簪。今日の生徒会の仕事を終えたら、虚にも連絡してやれ。きっと喜んでくれる」
「そうするよ。……お姉ちゃん」
「なに?」
「モンド・グロッソでは負けないよ」
「それはこっちのセリフよ」
その言葉と共にお姉ちゃんはニヤリと笑みを浮かべる。多分私も同じ表情をしているだろう。それも当たり前だと思う。だって尊敬するお姉ちゃんと最高の舞台で戦えるのだから。
「書類仕事は俺に任せろ。教員にも話を通して減らしてもらえるようにする。……二人とも残りの時間を後悔しないようにな」
「私はルール―を手伝いながら、機体の整備かな? お姉ちゃんにも頼まれているし、お手伝いできそうなのはそれくらいだしね~」
こう言っているけど、去年の一学期の終わりから、自主的に虚さんに師事して整備の勉強をしていた本音は現状で学園トップレベルの能力を持っている。二年だけなら、私と同レベルだと思う。これはそれくらいじゃないと思うんだけど。
この後、夕飯後に虚さんにも私が国家代表になった事を連絡した。虚さんも皆と同じでおめでとうと言ってくれた。そこから、久しぶりに少し話していたんだけどその時に虚さんが「しかし、私や本音にルルーシュさん、それと私の両親や先代様たちは困りますね。お嬢様と簪様、どちらを応援するべきなのでしょうかね? 贅沢な悩みですけど」と言っていた。
それは当事者に言われても困るよ……。
探り探り書いていくので次回がいつになるかは分かりませんが気長にお待ちください。