僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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軽巡の娘は訓練大好きなイメージ。
主に長良型の所為だろうけど。


神通さんと練度上げ_裏1

「第三艦隊ただいま帰還いたしました。こちらが報告書です」

 

白雪さんが遠征から帰投して提督に報告する。

報告書を受け取った提督はそれを眺めつつ退室を促した。

 

「はい、補給を取ってしっかりと体を休めてくださいね」

 

「わかりました。それでは失礼いたします」

 

丁寧に礼をした後、退室する白雪さん。

それに軽く手を振り、送る提督。

そしてこちらに目を向けた。

 

「それで、遠征について話があるんでしたよね?神通さん」

 

姿勢を正し、軽く息を吐く。

本来ただ上官に従うべき立場の私たちが図々しくも意見具申するのだ。

懲罰を受ける覚悟を決めなければならない。

 

「はい。資材不足の現状を打破すべく、差し出がましいことと重々承知していますが「大丈夫だから続けてくれる?」

 

提督がスッと目を細めながら遮り、本題を促す。

醸し出す空気に気圧されるが、萎縮してばかりでは貴重なお時間を割いていただいた意味がなくなってしまう。

意を決して発言する。

 

「申し訳ありませんでした。では端的に。現在遠征待機組となっている者を集めて、訓練をする許可をいただけないでしょうか?」

 

現在の艦隊運営はある程度シフト制になっていて、出撃できる艦隊数に限りがある以上、待機組が多くなっている。

これをどうにか稼動側にもっていくことで鎮守府の能率は上がることが期待できる。

ただし、現状資材不足が蔓延しているので、資材を使うことは控えたい。

となれば、資材を使わずに能力をあげることができる行動をすることで、ただ待機しているだけでなく、効率的な艦隊運用ができるようになるだろう。

 

「訓練をしたいと言うけれど、一体どんなことを目的として、何をするのだい?」

 

口調は優しげにしているが、その目の奥にある鋭さは絶えず私を射抜いている。

 

「ただ待機しているだけではその分非効率です。なので、そこを有効的に活用すべく、訓練をして、出撃や遠征時の能力を上げることを目指します。訓練内容は各艦娘に合わせて発起人である私が担当いたしますのでご心配なく」

 

しっかりと提督の目をみて伝える。

しばし沈黙したかと思うと提督はゆっくりと口を開いた。

 

「つまり、もっと訓練をすべきである、と?」

 

強く見つめるその瞳に引き込まれそうになりつつも、何とか頷き肯定する。

 

「少し考えさせて」

 

彼はふぅと一息吐いてから短く答え、目を閉じ腕を組んで思考し始める。

沈黙が続き、緊張し息苦しいようなでもずっと続いてほしいと思ってしまう居心地の良さという矛盾した感覚が部屋の中に漂う。

 

時々組んだ腕をあごに当てたり、んーと唸ったりする提督。

いつまでも見つめていたいような、でも声を聞きたいようなそんな彼に私はいつまでも付いていき、力になりたいと幾度も思う。

 

短くも長くも感じれる思考の後、提督沈黙を破った。

 

「まず結論から述べますと、練度上げを実施します」

 

しっかりと私を見て答える提督。

私の意を汲んでくれたことに感激し、すぐさま実行に移そうと思った。

 

「では早速「待ってください」

 

踵を返そうとすると提督から待ったがかかった。

彼に向きなおして話を聞くことにする。

 

「練度を上げる手段についてはこちらで指定します。それに従って行動をしてください」

 

「わかりました」

 

普段から忙しい提督に私のわがままで仕事を増やしてしまうのを申し訳なく思いつつ、そのわがままに付き合ってもらえるということをうれしく思ってしまう。

 

「実を言うと前々から考えてはいたのですが、まだ早いと思っていました」

 

ちょっとしたいたずらを思いついた子どものような茶目っ気を含んだ笑みを浮かべながら彼が言う。

やはり提督は私が考える程度のことは事前に考え付いていたのだ。

しかし、私たちの実力ではまだ実行不可と考えていたようだ。

彼の求めるところにたどり着けない自分の非力さを悔いつつ続きを聞く。

 

「ですが実施する前にいくつか確認をしておきたいことがあったので、今回は実験的にそれを調べることを優先させてもらいます」

 

少し顔を引き締めながらくれぐれも勝手なことをしないようにと暗に言う提督。

そして確認したいこととは何だろうと疑問に思いつつ耳を傾ける。

 

「まず一つ目、艦娘の練度は陸上での訓練ではあまり効果がないんすよね?」

 

重苦しい空気にならないように軽い口調を使うのは提督の常用手段だ。

彼の質問に端的に回答する。

 

「その通りです。ですがまったく効果が無いわけではありません。また海上と違って資材を使用しなくて済みます」

 

資材不足の今、海上と陸上での差を聞くのであればこの事実は提言しておくべきであろう。

 

「いや、資材以外のことを含めて考えると圧倒的にパフォーマンスが悪いんすよ。なので、海上に出てもらいます」

 

しかし彼はそれを踏まえた上で資材を使う選択をした。

 

「少ない資材を抑えたい気持ちはわかりますし、ありがたいけどね」

 

こちらの意を見抜き、フォローしてくれる。

こういう気遣いがとてもうれしく感じる。

 

「次いで二つ目、内部演習よりも実戦のほうが練度が上がりやすい?」

 

質問の意図がわからず、一瞬戸惑ってしまったが、まずは質問に答えるほうが大事だ。

 

「実戦のほうがより多くのことを身につけることができます。演習でも外部と行うのであれば多少は異なりますが、内部の演習では実戦や外部との時よりは劣っているように感じます」

 

提督がしっかり考えた上での確認なのだから、どういうことなのかは私が考えずとも良いだろうし、彼ならきっとその意味を何らかの形で教えてくれるだろう。

 

提督はふむふむと頷き、いろいろと合点したようだ。

 

「残りの幾つかは実際にやりながら聞いていくので、神通さんにはそのリーダーになってもらいたいんだけどいいかな?」

 

提督が私を選んでくれた。とてもうれしいことである。

もともと発起人である私を主軸にするのは妥当な流れではあるけれど、それでも直々に頼られるのは感激だ。

 

「私でよろしければ」

あなたの命であればよろこんで。

 

「ではよろしく、今日はさすがに予定に隙間がないから無理だけど、明日からならできるから早速お願いしますね」

 

「はい!ありがとうございます」

 

明日からとても楽しみです。

 

―・―・―・―・―・―

 

「ではこのメンバーでこの海域に出撃、一定時間経過か一定数の敵艦を撃退したら一時帰投し、次のメンバーを連れて同じ海域に出撃、以下繰り返しです。良いですね」

 

「了解!」

 

提督が指示に返答し出撃の準備を行う。

するとはじめに出撃するメンバーの一人、霞さんが私に声をかけてきた。

 

「ちょっといいかしら?」

 

少々高圧的な言い方をすることが多いけれど、芯のしっかりした良い子です。

 

「何でしょう?」

 

怪訝に顔をしかめながら私に問う。

 

「今回の出撃、詳しくは聞き出せなかったけど、神通は何か別命があるんでしょう?それにあなたは出ずっぱりじゃない、大丈夫なの?」

 

どうやら私の心配をしてくれたようです。

やっぱり優しい子です。

 

「提督の命令です。だから大丈夫ですよ」

 

彼の命令なら私は何だってやってみせる。

それに彼は私にできないことは命令しません。

たとえ実行できなかったとしても、それは私に瑕疵があるのであって、彼の間違いではないはずです。

 

「…そう、そういうならいいけど。それと、私も、というか私を含めた何人かもある命令をされているの。悪いけど内容はあなたに伏せる様にということも含めてね。それに従わなければならない状況になったら旗艦であるあなたの指示に背くから」

 

そう言い捨てるようにして去っていく霞さん。

私に伏せるようにと指示されているのに伝えてくれるのはなぜでしょうか?

しかし、()()()()()()()()()()()()という言い方からして、何らかの条件を満たしたら何かをするように言われているようですね。

提督は何か確認したいことがあるともおっしゃっていたので、おそらくそのあたりに関係ありそうですが、深くは問わずとも後々わかるはずです。

 

 

―・―・―・―・―・―

 

「旗艦神通、出撃します!」

 

鎮守府より南西よりの製油所付近海域での行動である。

艦隊は旗艦が神通、以下霞、磯波、敷波、山城、赤城である。

 

「山城より各艦に伝達、偵察機より敵影を感知。西南西に数4」

 

出撃後、指定海域へ到達する直前に会敵した。

 

「こちら神通、了解しました。各艦へ、戦闘態勢に移行してください。赤城さん、艦載機の発艦お願いします」

 

神通が指示を出す。

 

「赤城、了解しました。これより航空戦力による先制攻撃を行います」

 

次々と赤城から艦載機が発艦していく。

 

「着弾を確認、成果は駆逐1撃破、他損傷軽微です」

 

淡々と結果を述べる赤城。

 

「このまま反航戦で砲撃を開始します。全艦砲撃戦用意!」

 

神通の指揮の元、どんどんと敵艦隊に近づいていく。

敵艦隊は重巡を旗艦にした水雷戦隊だ。

 

深海棲艦は奇声を上げながら砲撃をしてくる。

それを避けながら近づいていく。

 

「私と磯波で牽制をするわ!しとめて頂戴!」

「が、がんばります!」

 

霞が磯波を引き連れ先行する。

 

「了解、敵の戦隊を崩してください。あと被弾しないよう動き続けてください。」

 

冷静に神通が指示を出す。

 

「山城さんは

「わかってるわ、私の相手は旗艦の重巡。砲門開け!」

 

山城の砲撃が始まる。

 

「では敷波さんは魚雷を装填しながら私に続いてください、軽巡を叩きます」

「了解」

 

重巡は山城に抑えられ、霞たちを相手に突出した軽巡めざし神通たちが詰め寄る。

 

「第二次攻撃開始します。皆さん近づきすぎないでください」

 

再び赤城が艦載機を発艦させ始める。

 

「あったれぃ!」

 

敷波が魚雷を発射する。

軽巡を庇い駆逐に直撃。

 

「よし、これで残り2隻だね!」

「このまま押し切ります、続けてください」

 

駆逐を撃破し、残りは軽巡と重巡のみ。

 

「重巡の脚を止めたわ。今よ」

「艦載機の皆、やってください」

 

山城の砲撃で中破した重巡を赤城の艦爆が襲う。

 

「こちらも、仕留められそうです!」

 

軽巡に砲撃が直撃し、珍しく興奮気味に磯波が声を張る。

 

「もらいました」

 

神通の魚雷が軽巡に直撃、すぐさま撃破した。

 

「周囲に敵影なし、戦闘終了です。警戒を続けたまま、皆さん状況報告を」

 

勝利はしたがまだ会敵の可能性がある海上だ。

すぐさま神通が各艦に確認をとる。

 

「こちら霞、被弾無し、問題ないわ」

「こちら磯波です。…大丈夫です、被弾箇所ありません」

「こちら敷波、どこも被弾してないよ」

「こちら山城、姉さまに会いたいわ」

「こちら赤城、いくつか艦載機が落とされましたが、他は何も」

 

全艦から返答がある。

 

「問題ないようですね。提督からも進撃の指示が来ています。進みましょう」

 

山城はいつものことだから平然と流す神通。

そのまま進撃をするのだった。

 

―・―・―・―・―・―

 

「神通さん、どうだい?まだやれそうかい?」

 

提督が心配そうに声をかけてくれる。

幾度も出撃を続けさすがに疲労を感じてきているが、まだやれる。

 

「…はぁっ…はぁっ、ま、まだやれます」

 

息を整えながら答える。彼に心配そうな顔をさせてしまったのは申し訳ないが、もっとがんばれば今後彼にもうそんな顔をさせずに済むのだからここは踏ん張るところだ。

 

「そうですか。なら信じます。次、行ってもらいますね」

 

ほっと安心した顔で信頼してくれる提督。その信頼に応えなければ神通(わたし)でない。

 

「わかりました。神通、出撃します!」

 

踵を返し、出撃をする。彼の期待に応えたいのだ。

 

―・―・―・―・―・―

 

「お、お疲れ様です。今日はこれで…その、終わりだそうです」

 

帰投すると秘書艦である潮さんが出迎えた。

 

「…提督はどちらに?」

 

まだ動けるのに終了とはどういうことだろうか。

少々強めに潮さんに問う。

 

「ひぅっ…か、か、仮眠をとるって…その…」

 

潮さんが涙目になりながらたどたどしく伝えようとする。

しかしぼそぼそというだけで要領を得ない。

 

「はい、詰め寄らない。終わりっていうのは司令官の指示でしょう?なら終わりなのよ。さっさと補給と整備をするわよ」

 

詳細を尋ねようとしたところを今回共に出撃していた叢雲さんに止められる。

叢雲さんの言っていることは正しい。なので腑に落ちない点はあるけれど、ここは引き下がるべきだろう。

 

「それで潮。他にあいつは何か言っていたかしら?」

 

…叢雲さんも提督のことが気になっているではないか。

 

「こ、これから少し忙しくなるって。私にはよく意味がわからなかったけど…」

 

私のときよりもしっかりと答える潮さん。何か良くない言い方でもしてしまったのでしょうか。

 

「だ、そうよ。別に神通に不満があって終らせたわけじゃないんだからおとなしく従いなさいな」

 

どうやら私の意を汲んでくれただけのようだ。

早とちりしてしまった。

忙しくなるということは、今後も継続的に行っていくことは決まったと考えてよいだろう。

こちらから言い出したことであることでもあるが、何より彼の期待に応えられるよう気を引き締めて取り掛かろう。

 

叢雲さんの後を追いながら私は決意を新たにした。

 




戦闘描写難しいですね。
密度を濃くしようと情報量増やすと戦闘がもっさりしているように感じますし、かといって文字数を少なめにすると淡々としすぎるように感じます。

頭の中のイメージを明文化するのはやっぱり大変です。

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