僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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タイトルには神通とありますが、今回は話の中にしか出てきません。


神通さんと練度上げ_裏2

「で、私たちに何の用かしら?」

 

珍しく真剣な雰囲気を纏った司令官から呼び出しがかかった。

普段のだらけた雰囲気を一切持たず、これから何か重大なことがあることが伺える。

正直今の彼は非常に魅力的だ。こんな彼に詰め寄られたらどのような抵抗もできる気がしない。

むしろ今すぐ詰め寄ってほしいとさえ思ってしまう。

 

いけない。変なことを考えていないで彼の指示を聞こう。私たちにはそれがすべてなのだから。

 

「これより君たちに少々厄介な指示を出す。質問は適宜時間を取るのでそのときにするように」

 

司令官が重苦しく口を開いた。呼び出された叢雲(わたし)、霞、白雪は一斉に姿勢を正し、聞き入る。

 

「端的に言えば『神通のフォロー』を行ってもらう。具体的な内容の前にあらましを話そう。先ほど神通が戦力の有効活用として待機組の訓練実施を提案してきた。それにあわせて前々から考案していたある実験を平行して実施することにした。ここまでがあらましだ。何かあるか?」

 

私たちを順に見つめていく。

実験というものにひっかかりを覚えたが、彼の性格からして必要があれば後に説明があるだろうと私は黙って見つめ返す。

 

「霞、なんだ?」

 

霞を見ると手を挙げていた。

 

「ある実験っていうのはなに?」

 

司令官に促され手を下ろした後に質問をする霞。

 

「いい質問だ。だがそれはすぐに説明するから少し待ってほしい。白雪は何かあるか?」

 

「いえ、何もありません」

 

話を振られた白雪は目を伏せながら粛々と応える。

その返答に軽く頷く司令官。

 

「では続きを、と言いたいがここから先は正直君たちにとっては耳障りな物言いをするが許してほしい」

 

頭を下げる司令官。

 

「顔を上げなさいな。あんたは私たちの司令官で、私たちはあんたの艦娘なんだから、あんたの思うようにすればいいのよ」

 

正直今の空気を保ったまま頭を下げられるのは非常に心苦しく感じてしまう。

 

「すまない。それとありがとう」

 

顔を上げはにかむ様に微笑む司令官。

ズルイ。

そんな顔でありがとうといわれたらなんでもしてあげたくなってしまう。

私は自分の顔が赤くなるのを感じて慌てて横を向く。

そんな様子がおかしいのかクスリと笑う司令官。

普段のふざけた感じの子どもっぽさが感じられない大人びた余裕を感じさせるその声に心の高鳴りとほんの少しのイラつきがわく。

そういうのができるなら普段からやってほしいものだ。

でもそれはそれでつらいものがあるかもしれない。主に魅力が強すぎる意味で。

 

「さて、話を戻させてもらう」

 

朗らかな雰囲気を一蹴し、再び緊張した空気を醸し出しながら話す司令官。

 

「実験とは君たち艦娘の限界を知ることだ。連続して出撃した際の戦力変動を見たい。そのため無茶な出撃要請を行わせてもらう」

 

司令官は一旦言葉を切り、私たちの様子を見る。

彼の知りたがる内容は充分理解できる。感覚として自身がどの程度やれそうかということは把握できても、司令官がそれを全員分把握していなければどうしようもないことだ。

そしてぶっつけ本番でどこまでやれるかチキンレースとなるのは非常に良くない事態だ。

だがそれのどこが耳障りの悪いことなのだろうか?

 

「ではそれを私たちが請け負うということですね?」

 

白雪が確認を取る。

 

「いや、君たちはむしろ除外対象だ。一応報告はしてもらうがね。君たちには他の娘がこの実験にてどのような状態になっているのかの報告と、無茶をしすぎた艦娘の制止、ないし救助だ。一番考え得るのはほぼ毎回出撃させる予定の神通に問題がおこることだ。よく観察をして必要ならば独自の判断で全艦帰還させてほしい。この実験は必要なことではあるが、これによって沈まれては元も子もない。それを防ぐのが君たちの仕事だ」

 

私たちの顔を見て、意図を汲み取れているか確認をする彼。

 

「あとこの実験のことは内密にしてもらう。あくまで訓練を実施しているだけということにして自然な状態での限界を確かめたい。ここまでで何か質問はあるか?」

 

白雪が静かに手を上げる。

 

「白雪、なんだ?」

 

「よろしければなぜこのメンバーなのかをお教え願えますか?」

 

確かに気にはなる項目ではあった。

勝手な想像では彼の信頼の厚い娘を集めたといったところであればうれしいのだが、実際には比較的古くから居る娘を選んだというのが実情だろう。

 

「適任だと思える艦を選んだ…、では足りないか。自身の意見を通せる者、というのが選考要件だ。この指令は状況によっては独断遂行が必要となる。それを比較的スムーズに行える人選だ。とまで言えば納得してもらえるか?」

 

なるほど、確かに通常は旗艦の指示に従うべき作戦行動中であっても、それを無視して鎮守府へ引き返させたりするといった芸当をさせるのは私や霞がちょうどいいだろう。

白雪はあまりそういうイメージはないが、司令官が選んだのだ。反対するほどのことではない。

 

白雪は司令官に納得したことを伝え、他にいくつか細かい確認事項をしていく。

 

「それと、実験として意図的に無茶をさせていることさえ伏せれば内密に別命が出ていることは開示してかまわない。むしろ旗艦の指揮に反する場合が想定できるのであれば事前に通達するようにしてほしい。判断は君たちに任せる。以上だ、よろしく頼む」

 

「「「了解!」」」

 

彼の期待に応えられるよう全力を尽くそう。それが艦娘たる私の、私たちの存在意義なのだから。

 

 

 

 

 


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