僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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提督はヘタレ。

少々摩耶好きの方には好ましくない書き方がされているかもしれないので、ご注意ください。


摩耶さんの殴りこみ

今日も今日とて執務室に篭りPCに向き合い粛々と作業を続ける。

物事を効率良く動かすには分割と単純化が重要だと考えている。

複雑な大きな物事であっても小さな物事の集まりであり、小さな物事ひとつひとつならば単純化を行いやすい。後はそれの組み合わせ噛み合わせを考慮して仕上げてやればいい話だ。

しかしながら全体という大枠を見誤ってはならないというのも気をつけるべき観点だ。

 

鎮守府の運営という大きなこともさまざまな物事の集まりなのだから、そういったところは応用が利く。

 

「こぉら!提督!あたしらをもっと活躍させろ!」

 

バン!と大きな音をたてながら扉が壊れそうなほどの勢いで入ってくる摩耶。

ビックリして敷波がお茶をこぼしている。

 

「敷波さん、手大丈夫?」

 

とりあえずこぼれたお茶がかかったことを心配する。

とはいえ淹れてからしばらく経っていたので火傷の可能性は低いだろう。

 

「う、うん、大丈夫。布巾もってくるね」

 

そういってパタパタと布巾を取りに行く敷波。

ちなみに彼女は今日の秘書艦だ。

すれ違う敷波にスマンと小さく謝る摩耶。

そしてすぐにこちらに近寄り机をバンと叩いた。

 

「で、返事は!?」

 

不良学生がいちゃもんをつけるが如く睨みつけてくる摩耶。

 

「今のところこれ以上何かさせるつもりはありませんよ。で、今度はこちらです。今の摩耶さんの態度はいかがなものでしょうか?」

 

正直言って摩耶はあまり得意ではない。

根はいい娘ということは重々承知しているが、どうも当り散らすようにも取れる空気が苦手だ。

()()()でのときからそれほど注視していた娘ではないが、実際に目の前に居て、関わりを持つとどうも苦手意識が湧いてくる。

 

「んだよ、あたしに文句あるっていうのか?はっきり言ってみろよ」

 

ぐいぐい顔を近づけてくる麻耶。

正直怖い。美形が顔を顰めると結構怖いのだ。

軽く深呼吸をして心を落ち着かせてから話し始める。

 

「まずは部屋の入り方。執務室に入るときはノックをして「んな細かいことは置いといて出撃の話だよ!」

 

置いておかれてしまった。

 

「前よりも出撃頻度は高くなっているはずですが?」

 

先日から練度上げ(レベリング)を多少行うようになったため、全体的に出撃頻度は高くなっている。

それでも不満のようだ。

 

「確かにそうだけど…もっとこう、ドガァーっと進軍したりさ、そういうのをあたしらを使ってやろーぜってことよ」

 

両手を大きく広げながら言う摩耶。

 

「気持ちはわからなくもありませんが、まだ早いです。話がそれだけならもう戻ってください。出撃がまだ控えているはずですよ」

 

戦力的に現状維持が精一杯だ。確かにやろうと思えばもう少し海域を広げられるが、そうすると防衛が手薄になる。

着実に戦力を整えてからでなければ無駄に疲弊するだけだ。

幸い補給線はしっかりと保てているためジリ貧になることは当分考えなくて良いのが救いだ。

 

話は終わりとPCに向き作業を再開する。

摩耶があーだこーだ不満を述べるが話半分で聞き流す。

 

「失礼します。提督、今よろしいですか?」

 

すると任務娘こと大淀が書類の束を抱えながらあらわれた。

なぜか横には羽黒も居る。

 

「どうぞ」

 

「おい、あたしの話はまだ「かまいません、そちらを優先します」

 

摩耶を抑え話を聞く。

 

「よろしいのですか?」

 

「それ、大本営からの通達でしょう?なら優先すべきです」

 

大淀の持ってきた書類の中にそれらしきものが見えたので半分勘で言う。

 

「ええ、とは言っても提督の健康診断についての知らせですけど」

 

そういって大淀はこちらの机に書類束を置き、その中から該当する書類を差し出す。

提督宛の極秘資料などの一部を除き、大淀には事前に内容を確認する許可を出している。

というか事務処理は彼女のほうが比べられないほど優れているため、こちらの判断を必要とするものや通達の類以外は彼女のところで処理をされるのだ。

 

「健康診断ねぇ…。時間作れるかなぁ…」

 

正直しばらくは忙しそうだ。

 

「作れるかな、ではなく作っていってください。貴方がいなければここは成り立ちません」

 

そういって眼鏡のふちを持ち上げる大淀。

 

「うー、そういわれてしまうと行かざるを得ないんですよねぇ」

 

「とはいえ少し後のようですし、調整は利かせ易いのでは?」

 

「おっしゃるとおりです。深海棲艦(あちらさん)が何か変わったことしなければ、ですけどね」

 

「それは考えてどうにかなることではありませんね。まだ仕事があるので、私はこれで失礼しますね」

 

そういって大淀は踵を返す。

 

「あれ?羽黒さんと何かあるのでは?」

 

「いえ、彼女は別件でしょう。私の前から居ましたよ?」

 

羽黒はどうやら大淀が来る前から入り口にずっと居たようだ。

 

「ありゃ、そうでしたか。で、羽黒さんはどうしましたか?」

 

大淀に退室を促し、羽黒のほうを見る。

 

「あの…私…いえ、ごめんなさい。失礼…します…」

 

「あ、ちょっと」

 

引き止める間もなく去っていく羽黒、一体なんだったのだろうか?

後で確認を取ろう。

 

「…羽黒はあたしと一緒に来てたよ」

 

しばらくおとなしくしていた摩耶がぼそりとつぶやく。

 

「…そうでしたか。それは申し訳ないことをしました。でも彼女は次の出撃で出るはずですが…」

 

急ぎの用だったならすぐに確認しなければ。

 

「いや、あたしとおんなじ要件だよ。もっと自分を使ってほしいって。というかあたしは最初からそういっているんだけど?」

 

先ほどよりもだいぶ低いトーンで睨みつけてくる摩耶。

だいぶ怖い。

 

「そうでしたか?なら返答は摩耶に言ったものと変わらないということを伝えてください。彼女はもう出撃ですよね?」

 

羽黒が出撃し、戻ってきたら摩耶と入れ替わりだからその際に伝えてもらえればいいだろうし、羽黒の出撃はこれで最後だから後々僕が伝えるのでも良いだろう。

 

「…はぁ。なんであたしは…」

 

「ん?何かおっしゃいましたか?」

 

ぼそりと何か言う摩耶に聞く。

 

「いや、もういいよ」

 

言い捨てるようにして去っていく摩耶。

 

「敷波さん、今のなんだったのかわかります?」

 

こぼれたお茶を拭き終わり、秘書艦としての作業を再開していた敷波に問う。

 

「うーん、なんとなくは。でもあたしの口から言うのは良くないと思う。司令官が自分で考えてみたら?」

 

ちょっと投げやり気味に答えてくれた。

 

「そういう類の物かぁ…。がんばってはみますよ」

 

ただでさえ僕は他人の考え、特に感情を察するのを苦手としているのに、その中でも最難関ともいえる年頃の女の子の心情を理解するというのは無理ゲーに近い。

がんばっても無理なものは無理なんだよなぁ…




摩耶様はツンデレ?ヤン(キー)デレ?いいえ、私の中ではちょろインです。

提督視点だとキツイ女の子にしか見えてないということを表現したかったのですが、むずかしいですね。

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