僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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作者の自頭が悪いと頭のいいキャラクターが書けなくてつらいですよね。

え?そんな事情知らない?すいません。


摩耶さんの殴りこみ_裏

「はぁ…」

 

「どうした羽黒?ため息なんかついてさ」

 

夕食を共にしていると羽黒がため息をついた。

もともと活発な娘ではないが、最近は気落ちしているように見える。

 

この鎮守府(ここ)では重巡が摩耶(アタシ)と羽黒しかいないから何かと行動を共にすることが多い。

そのため今日も夕食を共にとっていた。

 

「いえ…、その、最近実戦が多くなりましたよね」

 

たしかに何日か前から出撃が多くなった。

詳しい話は良くわからないが、提督がそう判断したなら従い、戦果を上げるだけだ。

 

「なんだよ、それで気が滅入っているのか?ならアタシが代わりに出撃しようか?」

 

山城を含めたアタシたち3人は交代で出撃している。

他の艦よりも比較的多く出撃しているのは確かだが、提督の指揮ではまだゆとりある出撃頻度であるはずだが。

 

「いえ、多く出撃できるようになって活躍する場面が増えるのは良いのですが、編成を見るに司令官さんの方針が見えてしまって…」

 

「方針?そんなの皆で強くなって敵をやっつけやすくするってやつだろう?アタシだって言われたことぐらい覚えているよ」

 

出撃が増える理由については事前に事情説明が行われたことを思い出す。

戦力増強を主軸にするといった話だったはずだ。

 

「それはそれで正しいのですが、それだけではないってことに気づいたのです」

 

再びため息をつく羽黒。

何に気が付いたというのだろうか。

 

「それだけじゃないって、どういう意味だ?」

 

「戦力増強といっても全体的なものは現状できません。もっと艦娘が多くて鎮守府の規模が大きければいいのですが、今それをやる余力がないんです」

 

「それで?」

 

「その前提を踏まえた上で編成を振り返ってみると、重点を置かれている艦が居ることがわかっちゃったんです」

 

「つまり、提督が贔屓して一部の娘ばかり優先してるってことか?」

 

「その通りです。具体的には神通さんと霞さん、叢雲さんに白雪さんです。別に絞って戦力を上げるのは悪手ではないのですが、それに私が含まれなかったっていうのが…」

 

確かに思い返せば名前が上がった娘らのうち誰かは常に出撃メンバーに居て、旗艦を担うことが多かった。

彼女らが提督のお気に入りということだろうか。

そう考えるとため息を吐きたくなるのもわかる。

 

アタシだって提督のためにがんばっているんだ。もう少し見てくれてもいいじゃないか。

 

「まだ規模の小さいこの鎮守府(ここ)では軽巡や駆逐を優先するのは合理的ではあるのですが、それで割り切れるものでもないなぁって。そうなっている自分にも何か嫌気がさしてしまって…」

 

羽黒も同じ気持ちのようだ。

 

「…よし、じゃあ明日提督に直訴しよう」

 

言わなければ伝わらないことも多い。

もっと自分たちを重宝してほしいと伝えれば何か変わるかもしれない。

 

「でも提督がその、小さめの娘が好みで、その…」

 

もし、選ばれた娘の理由が合理性のみならず、私情が含まれているとしたら…

あの提督が私情で指揮をとるとは思えない。思えないが、もしかしたらということを考えてしまう。

 

「提督がロリコンで駆逐や軽巡を重視するって?」

 

はっきりと口に出すと羽黒がコクリと頷いた。

 

「たぶん、それはないわよ」

 

「うわ、びっくりした」

 

後ろからいきなり声がかかり驚く。

振り返ると山城が居た。

 

「ただ声をかけただけでこれだもの。不幸だわ…」

 

はぁと暗い表情がさらに暗くなる。

 

「えっと、ごめんな?ちょっと驚いただけだから」

 

あわててフォローを入れる。

 

「いえ、いきなり声をかけた私も悪かったわ」

 

少しは立ち直ったのかもしれないが、相変わらず暗い表情のまま横の席に着く山城。

 

「その、それはないってどういうことですか?」

 

羽黒が先ほど山城が言ったことを尋ねる。

 

「提督の好みは赤城さんよ」

 

はぁとため息を吐く山城。

 

「赤城?ていうかなんで断定できるんだ?」

 

意外な名前が出て少し驚いた。普段から秘書艦として手元においている駆逐艦たちではなく、あまり接点がないように見える赤城がなぜここで出てくるのだろうか?

 

「確かに唯一の空母ですから多少扱いが違うとは思っていますが、その観点で言えば唯一の戦艦である山城さんも同じではないでしょうか?」

 

羽黒が言うことももっともだ。まだ空母は赤城、戦艦は山城しかいないから多少差があってもそういうものだと流せたが、どう違うのだろうか。

 

「理由を話す前にひとつ確認したいのだけれど、あなたたち、提督と私用を共にしたことあるかしら?」

 

山城がこちらを見つめながら問う。

羽黒のほうを見ると目があった。

 

「…そういったことはまったくないです。ほぼ仕事絡みだけです」

 

「アタシも。というかアイツが仕事以外しているところを見たことすらない。この間なんて飯食いながら作業していたし」

 

本当に仕事人間だ。さすがに夜は寝ているだろうが、それ以外は本当にずっと仕事をしているのではないだろうか。

 

「そうでしょう?私もそうだし、私の知る限り駆逐や軽巡の娘らもそう」

 

山城は何が言いたいのだろうか。目で話の続きを促す。

 

「少し前の話よ。早朝に提督と赤城さんがふたりで居たのを見たの。それはべつにたまたま会ったのかなと思っていたのだけれど、数日後にまた一緒に居たのよ」

 

「それだけで判断するのは早計ではないでしょうか?というより話を聞く限り山城さんも同じではないのでしょうか?」

 

羽黒がつっこむ。確かにそう何回も朝に出会うのは気になるが、赤城と会っているのを見たという山城もその時間にいるのだ。

両者の差異は一体なんだろうか。

 

「私のことは放っておいて。提督と会話したりするわけじゃなくてただ見てただけで彼は私に気づいていないでしょうし。というよりそこは重要じゃないのよ」

 

「じゃあどこが重要なんだ?」

 

「重要なのはここから。赤城さんに提督と朝何をしていたのか聞いたのよ。そしたら一緒に弓矢の練習をしていたっていうのよ。しかもたまたまではなく習慣的に」

 

戦線に出ない指揮官であっても鍛錬をするのは良いことだ。

それの何が問題なのだろう?

 

「司令官さんって弓を使うんですね。初めて知りました」

 

羽黒が感心している。確かにあまりそういう印象はないので、意外と言えば意外だった。

 

「二人とも、私が最初に聞いたことを思い返してから今のことを良く考えてみて頂戴」

 

呆れたような言い方で山城が言う。

最初に聞いたこと?提督と私的なことを話したことがあるかって言う類のことだったような…

 

「っあ」

 

羽黒が短い悲鳴にも似た声を上げる。

 

「どうした?」

 

「羽黒さんはわかったみたいね。摩耶さんはわからない?」

 

わなわなと震える羽黒を見ながら山城が言い、こちらを向く。

 

「どういう意味だよ。何の話だよ」

 

訳がわからずつい声が荒くなる。

 

「他の娘も提督が弓をやっているなんてことを知らないのに、赤城さんには明かしていた。それどころか一緒にやっていたのよ?あの仕事人間の提督が。どういう意味か考えて見なさいな」

 

…ここまで言われたら理解できた。

仕事一筋にしか見えない彼が赤城だけには()の部分を見せていたのだ。これを鑑みれば誰を特別視しているかは明白だ。

 

「…認めない」

 

「なにかしら?」

 

「認めない、アタシはそんなので負けたなんて認めないからな!」

 

声を荒げて言う。

確かに現状赤城が先行しているのかもしれない。でもまだ決定打まで行っていない筈だ。

ならまだ負けを認めるわけにはいかない。

 

「誰が勝ち負けの話なんてしていたのかしら」

 

「あ、いや、確かにそうだな。…あはは、気にしないでくれ」

 

危ない危ない、慌てて取り繕う。

アタシがアイツに惚れているなんてこと言いふらしてもいいことなんかない。

変に周りに気を使わせたくないし、アイツに惚れさせてから公言しようと決めていたからだ。

 

「…私、決めました。司令官さんに意見具申しに行きます。私の良さをもっと知ってもらうためにも」

 

黙っていた羽黒が意を決したように言う。

 

「お、おぅ!アタシもいくぜ!もっとアタシらがすげーんだってことを思い知らせてやるんだ!」

 

ここぞと羽黒にあわせて話題をそらす。

このまま呆然としていても現状は変わらない。なら行動あるのみだ。

 

「そう、がんばってね」

 

気だるそうに山城は言い捨てた。

 

 

 

―・―・―・―・―・―

 

翌日、羽黒と共に提督のいる執務室へ向かう。

昨日あの後二人で話をまとめ、重巡の利点とその重要性を説き、駆逐と軽巡のみならず、自分たちも重点を置くように意見具申することとなった。

 

「な、なんだか少し緊張してきました」

 

羽黒がおどおどとし始めた。昨日の威勢のよさはどこへやらだ。

 

「なんならアタシ一人でもいいんだけど、どうする?引き返すか?」

 

こう聞けばきっとついて来るだろうと思い、あえて意地悪く質問する。

 

「…ううん、決めたもの。私もいきます」

 

「うし、ならいこうぜ!」

 

思っていた通りの答えを聞き、意気揚々と執務室の前まで来る。

二人で顔を合わせ、頷きあい、軽く深呼吸した後思い切ってドアを開ける。

 

「こぉら!提督!アタシらをもっと活躍させろ!」

 

部屋に入ると同時に要件を述べる。

こういうのは率直に伝えたほうがいい。

 

提督はちらとこちらを睨みつけた後、小さなため息をついた。

これに気圧されてはならない。提督のほうに歩み寄る。

 

「敷波さん、手大丈夫?」

 

提督が秘書艦の敷波に声をかける。

見てみるとお茶をこぼしたようだ。

タイミング的にアタシの所為だ。悪いことをした。

 

「う、うん、大丈夫。布巾もってくるね」

 

そういってこちらにくる敷波。

 

「あー、すまん」

 

「いいよ、別に」

 

小さくすれ違いざまに会話する。

謝罪をすませた後に提督の前に立つ。

提督はこちらを見もしない。

いらだって注意を向けるために机に手をつき顔を覗き込む。

 

「で、返事は!?」

 

ちらりとこちらを見る提督。

正直非常に怖い。彼のその雰囲気から歓迎されていないことが感じ取れる。だがここで引いては意味がない。

 

提督ははぁとため息を再びつき、口を開いた。

 

「今のところこれ以上何かさせるつもりはありませんよ。で、今度はこちらです。今の摩耶さんの態度はいかがなものでしょうか?」

 

意味ありげな言葉を使う。

彼の意図を想像することはできなくはない。が、それで誤解が生じては意味がない。

こういうときこそしっかりと聞き出すべきだ。

 

「んだよ、アタシに文句あるっていうのか?はっきり言ってみろよ」

 

ぐっと顔を近づけ、無視させないようにする。

すると提督は今度は大きくため息をついた。

 

「はぁ~、まずは部屋の入り方。執務室に入るときはノックをして「んな細かいことは置いといて出撃の話だよ!」

 

細かいことを上げて煙に巻こうとしているのが見え見えだ。

言葉を遮り、話を続ける。

 

「前よりも出撃頻度は高くなっているはずですが?」

 

やっとまともにこちらを向いた。

ここで気がつく。

今、アタシと提督、すごく近くで、顔を合わせてる。

もう少し近づけばキ、キスができそうなくらいに。

 

はっ、いけない。それが目的ではない。いや、そうなるのはやぶさかではないというかむしろ願ったりかなったりではあるのだが。

 

「確かにそうだけど…もっとこう、ドガァーっと進軍したりさ、そういうのをアタシらを使ってやろーぜってことよ」

 

あわてて言葉を紡ぎ、彼から距離を置く。言い方が少々変になってしまったが、変に思われなかっただろうか。

 

「気持ちはわからなくもありませんが、まだ早いです。話がそれだけならもう戻ってください。出撃がまだ控えているはずですよ」

 

気持ちはわからなくはない!?

キスしてもいいってことか!?

いや、そうじゃない、落ち着けアタシ。今は出撃の話だ。

 

「いや、それだけって切らずに聞けって」

 

もう視線をこちらからはずした提督に抗議の声を出す。

 

「なんですか?」

 

視線を向けないまま続きを促す提督。

 

「いいか、アタシたち重巡を活用することが如何に大事なことかしっかりと教えてやる」

 

昨日羽黒と一緒にまとめた内容を伝えよう。

 

「どこにでも出せて、大抵こなせる万能型でしょう?重々承知していますよ」

 

話始める前に提督に結論を端的にまとめられてしまった。

 

「ならアタシや羽黒を主軸に置いて艦隊を運用すべきだろう?」

 

「現時点ではこれ以上の海域は確保仕切れません。となると警戒任務や輸送船護衛などが主軸になります。そうすると重巡ではコストがかかりすぎます。つまり現時点での活用が妥当だと考えられますが、何かありますか?」

 

…こういう戦略的位置の見解はどうもアタシは不得手で、言葉に詰まってしまう。

 

「でもよ、先のことを見据えて今からしっかりやっておくっていうのも手なんじゃないのか?」

 

うん、われながら何とかそれらしい内容を言えたと思う。

 

「的を射ている意見ですね。その考えは正しいです。が、先を見すぎて今こけてしまったら元も子もありません。現状は地盤固めを優先すべき段階です」

 

だめだ、こういう点は彼のほうが数段上を行くからアタシなんかじゃ歯が立たない。

羽黒、何とかしてくれと横を見ると誰もいない。

そのまま後ろをまで見ると扉の横に立ったままだった。

何をしているのだろうか?こちらに来るよう手招きをするが反応がない。

 

するとひょっこり大淀が顔を覗かせてきた。

 

「失礼します。提督、今よろしいですか?」

 

「どうぞ」

 

提督が返答する。

 

「おい、アタシの話はまだ「かまいません、そちらを優先します」

 

…アタシよりも大淀のほうが大事なのかよ。

ちょっと、いや結構ショックだった。

いつも前線で戦っている提督直属のアタシよりも、上から派遣されているだけの娘のほうがいいのか。

いや、そうではない。そんな風にすら彼は思っていないだろう。

一人気落ちする。

 

 

「…大本営からの通達でしょう?なら優先すべきです」

 

提督の声が聞こえる。

そうか、大本営からの通達。確かに上官の指示は部下より優先だ。

そう納得するしかない。

 

大淀と提督を見るとアタシのときの重い空気はなく、気安い態度で談笑していた。

 

「…私はこれで失礼しますね」

 

大淀が踵を返す。

一人勝手にうなだれててなんだかバカらしく感じてきた。

 

「あれ?羽黒さんと何かあるのでは?」

 

ふと提督を見るとたった今羽黒が居ることに気がついたようだ。

アタシと一緒に来たのに来たことさえ気づいていなかったのだ。

 

「いえ、彼女は別件でしょう。私の前から居ましたよ?」

 

大淀が答えてそのまま退室する。

 

「ありゃ、そうでしたか。で、羽黒さんはどうしましたか?」

 

少々バツが悪そうに軽い調子で羽黒に問う提督。

さすがにこれはかわいそうだ。

 

やっと提督に気づいてもらえた羽黒は少しおどおどした後

 

「あの…私…いえ、ごめんなさい。失礼…します…」

 

一言残して去っていった。

 

「あ、ちょっと」

 

提督が引きとめようとするがもう遅かった。

そして少し考えるそぶりの提督。

これはフォローをすべきだろう。

 

「…羽黒はアタシと一緒に来てたよ」

 

そう伝えると提督はこちらを向いて悲しそうな顔なった。

 

「…そうでしたか。それは申し訳ないことをしました。でも彼女は次の出撃で出るはずですが…」

 

「いや、アタシとおんなじ要件だよ。もっと自分を使ってほしいって。というかアタシは最初からそういっているんだけど?」

 

ちゃんとアタシ()と言っていたし、途中名前を挙げたりもしていた。

 

「そうでしたか?なら返答は摩耶に言ったものと変わらないということを伝えてください。彼女はもう出撃ですよね?」

 

さらっと言ってのける提督。

少々扱いが雑に感じてイラつく。

 

 

…はぁ。なんでアタシはこんなやつを慕っているんだろう…

 

「ん?何かおっしゃいましたか?」

 

口に出してしまっただろうか?

聞き取れなかったのであればその方がいい。

 

「いや、もういいよ」

 

アタシはイラつきと恥ずかしさで慌ててそういい捨てて部屋を出た。

 




それなりに提督をできるキャラクターにしたいのですが、難しいです。
作者はシミュレーションもストラテジーも苦手なんです。
戦略?知ったこっちゃねぇ。レベルを上げて物理で殴れ!!
艦これも完全に先行組みの情報を元にした攻略サイト頼みでしたし。

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