僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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もしくは提督の暴走。


提督の空回り

艦娘は皆魅力的である。

 

そう、魅力的であるのだ。その方向性は多彩なれど、とっても魅力的なのだ。

そういった中でも各提督諸兄には好みの傾向があるのは確かだろう。

 

例えば王道なツンデレスタイルが魅力的な娘だったり

例えばむっちりスケベボディが魅力的な娘だったり

例えば逆に小さいからこそ愛でる魅力がある娘だったり

例えば…

 

それこそ十人十色千差万別。

僕?僕は…

 

 

「これ、たぶん金剛型っぽいよね」

 

建造中はどの娘が出てくるかは不明だ。

不明ではあるが、必要時間等からある程度絞込みができるのは()()()でも同様だ。

 

「そうなんですか?」

 

こちらのつぶやきに反応する明石。

 

「いや、確定ではないけれどね。山城さんが来てくれたときより少しだけ短いからそう思ったんだ」

 

大本営を主体とした軍もどきではあるが、情報はどちらかというと各鎮守府で秘匿されている傾向が強い。

wikiでみんな協力しようという流れはないようで、艦種の特定なども古い鎮守府か、そういった鎮守府とつながりを持つところのみしか知りえないようだ。

それゆえなぜそういうことが言えるのか?という点で艦娘から不信に思われることも初期はあった。

今はそういうものなのかと流してもらえているみたいで、何も言われなくなってきたが。

 

「あの、良かったのでしょうか?」

 

秘書艦としてついて来ていた磯波が質問する。

 

「よかったって何が?」

 

資材が少ないのに大型艦を建造しようとしていることが悪手であることなど百も承知の上でとぼけて聞き返す。

 

「そのぅ、いえ、何でもありません」

 

磯波は引き下がった。

そう、磯波は引き下がるのだ。

だから磯波が秘書艦をやる日を選んだのだ。

他の娘らならもっと強く止められるのが目に見えている。

それでも大型艦を建造したかった理由。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

癒しが…欲しいんです…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はね、艦娘といちゃいちゃしたくて提督になったんですよ。

なのになんですか現状は。

提督になり自分の鎮守府を持ち早数ヶ月。

ただただ真面目な娘はまだいいですよ。

当たりが強い娘ばかりで正直疲弊してきています。

僕の考えていた提督ライフはもっときゃっきゃうふふな生活、いや、まぁ、欲を言うとちゅっちゅえへへやその先まで行きたいんだけどそれは置いておいて。

全然違うわけですわ。

 

そんな中、もっと明らかに提督LOVEな娘を欲するのは当然でしょう?

かといって駆逐を狙うのはよろしくない。

今居る駆逐たちのうち、年功序列的なものができているようなのだ。

下手に新しい駆逐の娘を優遇すると古株に僕が絞められる。

それでも彼女らは大型艦にはそれほど口出ししないように見える。

 

狙い目はそこだ。

かといって軽巡狙いはよろしくない。

結果的に軽巡がでるのは良いだろう。

しかし、軽巡狙いでは駆逐の確率も高いはずだ。

とすると重巡以上を狙うべきだ。

本当は空母を狙うのがいいのだろうが、ボーキサイトはまだまだ補給線が確立できていないため、コスト的に厳しい。

運用面では赤城しかいない上にそんなに消耗するような戦い方をさせていないから何とかなるのけれどね。

 

そこで今回の建造予想はすばらしい。

おそらく金剛型は間違いないだろう。

そして金剛型といえば提督LOVEの代名詞ともいえる型だ。

唯一比叡は提督<金剛ではあるが、それでも同じ姉さま主義の山城よりもかなり好意的であることは確かだろう。

 

なによりも僕は榛名ホイホイ提督なのだ。

榛名という大当たりが1/4となっただけでも本当にすばらしい。

 

「結果が楽しみだな」

 

うきうき気分でその場を後にし、今日の仕事を進めよう。

はじめに有能提督と思ってもらえれば好感度の初期値が高まるだろう。

 

 

―・―・―・―・―・―

 

「高速戦艦、榛名です!よろしくおねがいします」

 

ほ、ほっ、ほあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

榛名きたあぁあああああああああああああああああああああああああああああああ

いょっっっっしゃぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!

 

 

内心パレード開催である。

これで勝つる!

 

「榛名、よく来てくれた。これからよろしく頼む」

 

できる限りニヤつきを押さえ、さわやかな笑顔を意識して握手を求める。

すると榛名はこちらを上から下へ、そしてまた上へとマジマジとみる。

そして徐々に表情が曇っていく。

どうしたというのだろうか?やっぱり気持ち悪さが出てしまったか?

いきなり触れ合うのはご法度だったか?でも握手ぐらいは挨拶でやれるだろう?

それとも他の要因か?におうとか?あれ?風呂は毎日入ってるぞ?

いや、昨日の夜入ったあと今日は入っていないからな。やっぱり会う前にシャワーぐらい浴びておくべきだっただろうか?

 

「あの…歓迎はありがたいのですが…」

 

申し訳なさそうにもじもじとする榛名。かわいい。いやそうじゃない。何か問題なのだろうか?

 

「彼女、あんたの艦娘じゃないわね」

 

なぜかついて来ていた叢雲が衝撃の一言を放つ。

 

「も、申し訳ありません!」

 

頭を下げる榛名。いや、悪いことをしたわけじゃないのだから別に頭を下げなくてもいいのだが。

 

だいぶ頭が真っ白になってる。

 

「ほら、私たちを差し置いて悪いことしようとするから罰が当たったのよ。榛名さんは気にしないで。このバカが勝手にいろいろ期待しすぎているだけだから」

 

呆然とする僕の変わりに叢雲が話を進める。

 

「で、早速だけどどうする?ここにしばらく居てもいいし、大本営へ向かってもいいわよ?お勧めは大本営ね。このバカが何しでかすかわからないし」

 

普段以上に棘があるように感じる。榛名が来たのにこの仕打ちのほうがきつい。

 

「そ、そうですね。どちらにしましょうか…」

 

「ぜひともうちにいてください。居てくれるだけでいいので」

 

口が勝手に動いた。

榛名は少し驚いた様子の後、笑顔で答えてくれた。

 

「わかりました、では榛名の提督が見つかるまであなたのお世話になりますね」

 

僕は軽くガッツポーズを取る。

はぁ、とため息を叢雲がこぼす。

 

「まぁ、そう決めたならいいけれど。このバカが変なことしたらすぐに伝えて。折檻するから」

 

正直僕の榛名じゃないのがつらいが、榛名が居てくれることは決まったのだ、それだけでしばらくは良しとしよう。

 

「叢雲さん、先ほどからだいぶ僕の扱い酷くありませんかねぇ?」

 

「ア・ン・タが先にあほなことをしたからでしょうが。反省なさい」

 

ジト目で睨みつけてくる叢雲が怖いので榛名のほうを見て癒されよう。

あ、微笑んでくれた。

 

「では榛名さん、早速ここの案内をしようかと思うのですがいいかな?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

丁寧に礼をする榛名。かわいいなぁ

 

「それは磯波がやるからあんたは私と仕事に戻る」

 

叢雲が割ってはいる。

 

「え、叢雲ちゃん。今日の秘書艦は私なんだけど…」

 

今まで黙っていた磯波が言う。

 

「これも秘書艦の仕事よ。終ったらこっちに来て。さ、いくわよ司令官」

 

「え、あ、ちょっと」

 

有無を言わせず僕を引っ張っていく叢雲。

今日の大半は終らせたのになぁ…

 

榛名と磯波を置いて引きずられていくのであった。

 

 

 

―・―・―・―・―・―

 

「で、そんなに私たちに不満があるのかしら?」

 

執務室に戻り、扉を閉めた叢雲と二人きりになる。

 

「不満って。もっと人手が欲しいというのは実情を鑑みたら正常な思考でしょう?むしろ不満を持たれるような何かをしている自覚でもあるのかな?」

 

話をそらして正論を突き通す。

 

「話をそらさないで。現状大型艦が増えても持て余すだけでしょう。この際だからはっきり言いなさい」

 

そらせなかった。

 

「そういわれてもなぁ…。しいて言うならもうちょっと棘のある言い方を控えてもらいたいかなぁって」

 

この際だからそれっぽいことをいってごまかす。

 

「棘があるように感じるのはあんたの言動の所為よ。もっとがんばんなさい」

 

叢雲がフンと顔をそらす。

 

「あいあい、がんばりますよ」

 

「返事ははい」

 

「はーい」

 

「伸ばさない。そういうところを言っているのよ」

 

睨みつけてくる叢雲。

 

「気をつけますよ」

 

正直今日はショックであまり付き合っていられないのだ。

 

「ほら、さっさと仕事やるわよ。どこまでやったか見せてみなさい」

 

机に向かっていく叢雲。

 

「そこにおいてあるのは終ってるので、後は任務娘さんに渡すだけだよ。あと残っているのは今出てる娘らの報告書をまとめるのと、榛名さん関連の書類ぐらいだよ」

 

対応も雑になっているがそれだけ先ほどのことがショックだったのだ。

 

 

 

もともと艦娘は同じ娘が多く居る。

そして基本的にそれぞれの提督が居るのだ。

大抵は自分の鎮守府で建造した娘はそこの提督の艦娘であることが多いが、今回の榛名のようにそうでない娘が出てくることもある。

そういった娘は大本営に届出を出し、提督を捜索する決まりになっている。

ただし、見つかるまでの間は必ずしも大本営に行く必要はなく、本人の希望があれば建造された鎮守府に滞在し、そこの指揮に従っても良いことになっている。

 

各艦娘は自分の提督かそうでないかを感覚で識別できるようだ。

識別するために一番いいのは直接面会することだが、写真や私物等でも反応するらしい。

そのため、各提督は大本営に居る提督が見つかっていない艦娘のために自分の写真や私物を提出しておく必要があったりする。

 

例外的というほど数が少ないわけではないが、複数の提督に反応する艦娘も居る。

その場合、どの提督の下につくかは艦娘自身の意志で決めることができる。

 

 

 

「やればできるじゃないの。なんでいつもこうじゃないのかしら。じゃあさっさと榛名さんの書類やるわよ」

 

叢雲が声をかける。

 

今は黙々と作業をやって無心になったほうが精神衛生上いいかもしれない。

 




やっと、やっと榛名を出せた…
でもまたしてもよそ様の娘なんだよなぁ…

さて、彼は望みのイチャラブ生活をすることができるのでしょうか!?

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