僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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自分がする設定の甘さが酷いです。つっこみ感謝です。



駆逐艦緊急会議

普段司令官の指示によって、夜間消灯後、警備担当以外は自室で休息することが決まっている。

日中出撃のみならず遠征もこなす駆逐艦娘(わたしたち)は全員そろって何かをする時間を取るのが困難だった。

けれど今回の事はそんなことを言っている場合ではない。

司令官(あのバカ)が唐突に非効率な大型艦の建造をしたこと、そして出てきた榛名さんへの対応から私たちの今後が危ぶまれるからだ。

 

「私で最後みたいね。それで今日はいきなりどうしたのかしら?」

 

最後に来た霞が他の娘たちを見回してから叢雲(わたし)に尋ねる。

今日、消灯時間前に駆逐全員速やかに集合するように声をかけたからだ。

内容は司令官について。この一言で皆が集まってくれた。

 

「今日、司令官が大型艦の建造で榛名さんを出したことは皆聞いているわね?」

 

まずは情報の整理からはじめる。

皆それぞれ頷いて応えてくれた。

 

「司令官はたまにふざけてバカなフリをすることはあったけれど、大きな影響が出ることではしなかったわ。だけど今回は違う。磯波に確認したところ明らかに多量の資材を用いて大型艦を欲していたことがわかったわ」

 

もじもじと潮が手をあげている。

 

「潮、どうしたのかしら?」

 

「あのぅ、戦艦が増えるのは戦力増強って面ではいいこと・・・なんじゃないかなぁ・・・って、思うんだけど・・・」

 

「そうね、扱える戦艦が増えるのなら確かに心強いわ。だけどね、現状では資材的に扱いきれないのよ。だから単に建造分資材の喪失と持て余す艦が増えただけなの」

 

「それに司令官の娘じゃないっていうから、榛名さんの司令官が見つかるまでっていう不安定な状況だしねぇ」

 

私の説明に敷波が付け足す。

 

「あれ?自分のところの娘以外が建造されたときって、資材は大本営から補填されるんじゃなかったかしら?」

 

曙が疑問を口ずさむ。

 

「それは対応する司令官が見つかって、所属変更をした後の話ね。しかも艦種によって決まった量だから使用分より基本少ないし、こちら預かりの場合は預かり中の負担は補填されないしで資材面では損しかないわ」

 

あ、そうかという顔をする曙。

 

「それも問題といえば問題なのだけれど。重要な点は司令官が大型艦を欲していることと、榛名さんだったことにとても喜んでいたってこと。ここまではいいかしら?」

 

皆が頷く中、満潮が手をあげる。

 

「何か気になるところがあるのかしら?」

 

「気になる、というか司令官ってまだ着任して一年も経ってないでしょう?大型艦に憧れを持つのはそこまで変なことではないと思えるわ」

 

満潮が言うことも尤もだ。

新人の指揮官は手っ取り早く手柄をあげたがる。そのため強力な大型艦を早急に求め、持て余すというのが多々ある。

だが彼は違う。指揮官の立場と艦隊運用の基本は押さえている。

補給線の確保と地道ではあるが確実な進軍。新人にありがちな先走った間違いは起こさないと言い切れる。

 

「そうね、普通の新人ならありえるけれど、彼には当てはまらないわ。訓練生時代からそういうのを理解していたもの」

 

「訓練生、ですか?」

 

磯波がつぶやく。

 

「そういえば磯波にはまだ話していなかったわね。私は彼が訓練生の時から知っているのよ」

 

「それについては今度話してあげて頂戴。他の知らない娘も叢雲も隠していたわけではなく、話す機会がなかっただけだから許してあげて」

 

霞がフォローしてくれる。手振りで感謝する。

話を本筋に戻そう。

 

「続けるわね。で、今回の建造はもしかしたらたまにある()()なんじゃないかと思うのだけれど、皆はどう思うかしら?」

 

皆に確認をすると数名首を傾げた。

 

()()って何よ?」

 

曙が首を傾げたまま尋ねてくる。

 

「司令官は時たま()()()()()()()()()()を知っているのよ。例えば初めて行く遠征任務にも関わらず、必要最低限の艦で出撃させたりするとか、私たちの改造に必要な練度を知っていたりだとか」

 

「あっ、先々月の末にあった進軍のときも初めて行く海域なのに、敵方のおおよその戦力や編成なんかを知っているかの様な口ぶりでした」

 

潮が言われてみれば不自然かもといった表情で語る。

 

「詳しく聞こうとするとへらへら流されちゃって私も知らないのよね。誰かこれに関して聞けた人居る?」

 

霞が皆に尋ねるが誰も肯定しない。

 

「となると、今回なんで急に大型艦を必要としたか詳細を知っている人は居ないってことかしら?」

 

こちらの質問には全員が肯定した。

 

「じゃあこの点は保留で。機会があれば皆尋ねてみて欲しいわ。もし教えてもらえたら共有して頂戴」

 

皆それぞれ了承してくれた。

 

「この点ってことは他の点もあるのですよね?」

 

白雪が静かに言う。

 

「えぇ、正直こっちのほうが私たちには重大よ・・・」

 

これからの話題について考えると気が重くなる。

が、話し合わなければならないことには変わりない。

意は当に決している。

 

「今回の司令官は様子がおかしいのよ・・・」

 

近くに居るからこそわかるものがある。

彼の隣に一番居るのは私なんだから。

 

そんな私の姿に皆が緊張した様子で聞き入っている。

 

「おかしなところって?」

 

続きを促すよう霞が問う。

 

 

「・・・司令官の方から艦娘(わたしたち)に対して積極的に近づこうとすることって今までなかったわ」

 

「そうね、仕事上の話をするか、仕事が上手くいくようにコンディションチェックを兼ねたコミュニケーションぐらいしかとろうとしないわね」

 

現状を確認するように霞が繋げてくれる。

 

「・・・」

 

意を決したはずなのに、出そうとする言葉が出てこない。

 

「・・・具体的にあいつ、何したの?」

 

そんな私に対して曙が怒りと不安を混ぜたような様子で問う。

 

「夕食を。榛名さんを夕食に誘ってた。しかも司令官が手作りするって・・・」

 

思い返すだけでも悔しさと悲しさで胸がいっぱいになる。

霞のいうとおり、今まで彼の方からコンタクトを取るのは仕事で必要なときか、こちらの様子を気遣って上官としてフォローをするためだ。

私用で声をかける姿など一度もなかった。

食事に関してもこちらに対して注意を払うことはあっても自分には無頓着で、即席麺や栄養補助食品なんかばかりをながら食いしてばかりなのに。

私たちが何度も声をかけてようやくまともな食事を時々取るようになったほどなのに。

なのに榛名さんなら声をかけるし、榛名さんとなら食事をするし、榛名さんになら食事を作る。

つらくて、苦しくて、胸元を手で強く押さえつける。

 

部屋中に重苦しい空気が漂う。

皆強いショックを受けていた。

 

「つまり私たちよりもかまいたくなるような何かが榛名さんにはあるってことでしょ?・・・ただそれだけのことよ」

 

満潮が強がりながら言う。でもその声は今にも泣き出しそうなほど震えていた。

 

「・・・それでも」

 

白雪が呟く。

 

「それでも私たちは司令官の艦娘です。ただ彼の指示に従い、ただ敵を討つ。それだけでいいんです。それでいいんです」

 

自分に言い聞かせるように呟く白雪。

声は大きくなかったが、静まりきった部屋では充分に聞き取れた。

 

話を、話を続けなければならない。

本来伝えたいことはこれだけではないのだから。

 

「皆、聞いて欲しい。ここからの話は本来艦娘(わたしたち)が通常知りえないことなの。さっきのはショックだろうけどちゃんと聞いてくれる?」

 

私自身落ち着きを取り戻しきれては居ないが、先導しなければならない。それが今私のすべきことなのだから。

 

皆がこちらを見つめるのを確認してから口を開く。

 

「司令官には、司令官になる人にはね、艦娘の最大保有数っていうのがあるの」

 

皆が私の言葉を飲み込めない様子でこちらを見ている。

 

「最大・・・保有数?」

 

敷波が繰り返す。

 

「そう。意味は言葉通り艦娘をどれだけ抱えられるかってことよ」

 

「それが一体何なのよ?」

 

曙が強い口調で言う。彼女もショックから立ち直りきれていないようだ。

 

「私はね、私が一番懸念しているのはね。今後現れるであろう駆逐艦のだれかに対して、榛名さんみたいな反応を彼がしたらどうなるのかってことなのよ・・・」

 

まだ私の言うことの意味が通じていない娘が多いようで、大半は不思議そうな顔をしている。

そんな中わなわなと体を震わせながら顔を真っ青にしていく娘がいた。

霞だ。彼女は私の言葉の意味がわかったようだ。

 

「・・・叢雲。ちなみに司令官の最大保有数って知っているのかしら?」

 

小さく問う霞。

 

「わからないわ。けれど大抵は40前後、多くても70ほどらしいわ。例外的にすごく多い人も居るみたいだけど、そういう人は訓練生のときから別扱いされてたわ。残念だけど彼はそちら側ではなかったわ」

 

「・・・40前後ということは妥当な内訳は、戦艦と空母で10~15、重巡で4~6、軽巡で6~9、駆逐で13~18、潜水艦で1~3といったところでしょうか?」

 

白雪がぼそりという。

 

「保有数の話?ならそうね。私もそんな感じの割り振りだと思うわ」

 

私の大雑把な計算でも無難な運用をするのであればそういった数になると思う。

 

「大目に見ても駆逐は20隻ってことかな?」

 

「あくまで無難な値だから、目安だけれどね。堅実なタイプの司令官なら大きく外れないと思う」

 

磯波の確認に対して敷波が応える。

 

「今は私たちで8隻。あとは12隻?」

 

潮が恐る恐る言う。

 

「というかその最大数に達したらどうなのよ?」

 

曙が言う。

 

「建造はできなくなるわね。資材を投入しても着工できないみたい。あと他所に居た艦娘の場合はその娘から自分の司令官として認識されなくなるらしいわ」

 

「あれ?てことは慌てなくても先に居るあたしらは気にする必要はないんじゃないの?新しい娘がきたって司令官の近くに居られるんだしさ」

 

私の回答に敷波がなーんだといった感じで言う。

 

「…ねぇ敷波、餡蜜と大福と串団子、どういう順番で好き?」

 

唐突に霞が言う。

 

「突然何さ?」

 

「いいから教えて」

 

霞が何をしようとしているかわかったため、黙って見届ける。

他の皆も黙って聞いている。

 

「別にいいけど。そうねー、というか串団子ってどんなやつ?みたらし?」

 

「みたらしでいいわ」

 

「んーと、じゃあ大福>餡蜜>みたらし団子、かな?」

 

「じゃあちょっと私の言うとおりに想像してみてもらえる?」

 

「え?う、うん」

 

「まず、前提として、今敷波はそんなにお腹がすいていないとするわね、だから何か甘味を食べるとしても1つか2つがせいぜいって感じよ。いい?」

 

「うん、いい」

 

「で、今司令官が普段のご褒美として甘味をくれるとするわ。それで最初にみたらし団子を渡してくるの。それを受け取る?」

 

「ご褒美・・・、うん、もらう」

 

「そう、今受け取ったのに、さらに司令官は餡蜜も取り出すわ。そしてこういうの、『敷波には特別にもう一個あげよう』って」

 

「えへへ、特別かぁ」

 

「受け取る「受け取る!」うん、そうね。で、今敷波はどんな風に甘味を持ってる?」

 

「え?団子と餡蜜をもらったんだよね?じゃあ両方持ってる・・・と思うんだけどだめ?」

 

「いいわ。でもそれ以上はもう持てないの。何か持とうとするならどちらかは置かなきゃいけないわ。いい?」

 

「う、うん。わかった」

 

「そこで司令官は大福を出してさらに言うの『そういえば敷波は大福のほうが好きだったな、なんならこれをあげてもいいけどどうする?』って敷波はどうする?」

 

「うーん、大福をもらうかなぁ・・・」

 

「でももう持てないから餡蜜かみたらし団子のどちらかは置かなきゃいけないわ。どうする?」

 

「じゃあみたらしを置くよ」

 

「みたらしを置こうとすると司令官がこういうわ『置いたやつは回収する。本当にみたらしを置いていいのか?』って。どうする?」

 

「え?うーん、置いたらダメなんだよね?じゃあみたらし食べて全部もらうってできる?」

 

「それはダメってことで」

 

「じゃあみたらしを置いて大福もらっちゃうかな…」

 

「そのみたらし団子に私たちはなるかもしれないってことよ」

 

少しの間キョトンとした敷波だったが、徐々に理解していき、先ほどの霞のようにわなわなと震えながら顔を真っ青にしていく。

他の皆も今の例え話で理解したようだった。

 

「で、でもまだ提督の保有数が40って決まったわけじゃないし、もっと多くて70とかかも知れないよ?そうしたら私たちも・・・」

 

「だとしても私たちが残れる保証はないわ・・・」

 

潮の言う可能性を信じたい。信じたいが、それでも確率が高いか低いかの話で、ゼロにはならない。

 

「どう、したらいいのよ…」

 

曙が呟くように言う。

 

「どうしたら、ね。それを私も知りたくて皆を集めたの…」

 

「私は嫌よ!提督と離れるなんて!ぜったいにいや!」

 

いや!いや!と叫び頭を抱える曙。

私だってそんなの嫌だ。でもどうしたらいいの…どうしたら…

 

「ありがとう、叢雲」

 

突然霞が言う。

 

「何よ、急に」

 

「だってこのことはあなたしか知りえないことだったもの。それを教えてくれたことに感謝してるのよ」

 

「こんな内容なら聞きたくなかったわ!」

 

曙がカッと霞を睨みつけながら言う。

 

「ごめんなさい。でもわたしもどうしたらいいか・・・」

 

「いいのよ。曙も、何も知らないで、何もできないままなのは嫌でしょう?」

 

「そうですね、今はまだ何をすべきかわからなくとも、何かをすべきということはこれでわかりました。あとは協力して解決策を模索しましょう」

 

霞にあわせて白雪も曙をなだめるように言う。

 

「…ありがとう」

 

霞に小さく礼を言う。

曙はうぅーと涙目で唸っている。ここで当り散らしてもどうにもならないことは彼女もわかっている。

 

「そろそろ時間も時間なのでまとめをしましょうか。皆さんよろしいですか?」

 

白雪が確認を取る。反対する者は居ない。

 

「ではまず、なぜ司令官が大型艦を欲したかは当面は様子見、保留という形です。続いて榛名さんと私たちとの態度の差異、これの原因を究明します。最後に、最大保有数については秘密裏に調査していきましょう。以上です。何かありますか?」

 

「態度の差異に付いては多少強気で行ってもいいと思うわ。司令官の性格からしても私たちが不満を持っていることを好まないだろうし」

 

白雪のまとめに満潮が付け足す。

 

「あのぉ~、最大保有数のほうは秘密裏ってどうするんですか?」

 

磯波が質問する。

 

「秘書艦としての仕事中に司令官に関する情報をさりげなく探す、ってところかしら。ついでに彼のことで他の事でも知ることができたらできるだけ共有してほしいわね」

 

他には特に無い様だったので、ここら辺で切り上げることにする。

 

「じゃあ今回はこれで解散ってことで。いろいろ衝撃的なことがあったと思うけど、くれぐれも仕事に支障をきたさないようにゆっくり休みましょう。司令官のために、ね」

 

 




感想にて『資材他所持ちで艦娘手に入るのってどうなの?』的なものがありました。まったく考えていませんでした。つっこみ感謝です。
つっこみ用の場を活動報告に作ったので今後はそちらにて行っていただけると助かります。
以下見苦しい言い訳なのでそういうのが嫌な方は読み飛ばしてください。












個人的には同じ艦娘でも複数居るよってことの辻褄あわせとして、艦娘にはそれぞれ対応する各提督がいますよーってことにしたかったのですが、設定が甘かったため、不快に感じた方がいらっしゃったようです。本当に申し訳ありませんでした。
一応元々このあたりの設定は小出しする予定でしたが、資材に関しては本当に抜けていました。ご指摘感謝です。
前から考えていた分は当初の予定通り後々もう少し出します。なので今回の分も含めて今後設定が出てきた際におかしな点や不明な点はどんどん突っ込んでください。そうしていただけると私としてもよりしっかりとした世界観を作れるのでありがたいです。
上記のとおり、活動報告に突っ込み用のものを用意したので、そちらにてご指導ご鞭撻をいただけるとありがたいです。

・・・利用規約的に感想欄ではなく活動報告の方へ誘導するのが良ですよね?
間違ってたらごめんなさい、ご指摘があり次第対応いたしますので、お手数ですが正しい方法と共にご連絡願います。

今後とも私と皆様が互いに楽しめるよう心がけるので、ご協力お願いいたします。

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