僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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ぼのたんファンは少々お待ちください。


潮の融解_裏

「みんなお疲れ。後はアタシがやっておくから先お昼行ってて」

 

そう言って敷波ちゃんが遠征の報告書を持って行っちゃった。

 

「私はちょっとアイテム屋さんに用事があるから気にしないでいいわ」

 

霞ちゃんも用事があるようなので、一人でお昼に行きましょう。

 

―・―・―・―・―・―

 

今日のお昼はお魚定食にしよう。

 

今食べているのは神通さん、羽黒さん、摩耶さんに赤城さん。

遠征に行っていた私たち以外の駆逐艦のみんなは先に食べ終わっちゃったのかな?

 

お邪魔するのも何だし一人で食べてよう。

 

「いただきます」

 

鯵、おいしい。

 

あれ?曙ちゃんに提督が来た。

珍しい。いつも部屋で食べてる提督が食堂で食べるなんて。

今日の秘書艦が曙ちゃんだから出てきたのかな?

私のときは一回もできなかったし、やっぱり曙ちゃんすごいな。

あんまり見てるとつらくなるから早くご飯食べちゃおう。

 

あ、こっちに来た。

挨拶ぐらいはしないとだめだよね。

 

「ご一緒してもいいかな?」

 

曙ちゃんを見ると私の隣に座った。

 

「えぇと、はい、…だいじゅ、大丈夫です。」

 

か、噛んじゃった。

うぅ、やっぱり私はダメな娘だ…

こんなんじゃ真っ先に捨てられちゃっても仕方ないよね…

 

「焼き魚定食ですか、いいですね」

 

正面の提督から話しかけられちゃった。

あ、何かちゃんとお返事しなきゃ…

 

「ぇ、あ、は、はぃ…」

 

やっぱりダメダメだよぅ。

うぅ、すごく気まずい…

 

「潮さん、最近どうですか?」

 

ぁぅぇ!?

どう、ってどうなんだろう?なにが?え?

落ち着こう、私。

ちゃんと聞けば提督は答えてくれるもん。

 

「えっと、どう…とは?」

 

「うーん、楽しいこととか面白いことがあったりだとか、逆に辛いことや苦しいこと、気になることとかそういうの」

 

あー、うー、正直今とってもつらいです。

でもそんなこといえないし。

曙ちゃん助けて!

……

………

知らんぷりされちゃってる。

うー、やっぱりこのままじゃわたし、この間霞ちゃんが言っていたみたらしになっちゃうよぅ。

 

「…とくには…ないです…」

 

ごまかすしかないよぅ。

でもうぅ、提督に隠し事してるなんてやっぱり悪い娘だよ。

 

「そうかい?そうならいいのだけれど、僕にはなんだか怯えている様に見えるのだけれど?どうかな?」

 

怯えてる。

うん、私、捨てられるの、提督の傍に居られないのがすごい怖い。

こんなダメダメな私でも、がんばってるって、いい娘だって褒めてくれる提督の傍にいたいのに。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ずっといられると思ったのに、でも他の娘と比べたら私よりそっちを取るよね。私だったらそうする。

 

「提督が怖がらせたんじゃない?」

 

曙ちゃん、そんなことはないよ!ダメなのは私なんだから。

 

「えっと、そうならあー、ごめん」

 

そんなに悲しそうな顔をしないで欲しい。

私の所為でそんな顔させたくない。やっぱり私は居ないほうがいいのかな?

でもでもでもでも…

 

「ぇと、あぅ…そうじゃ、ぅー」

 

うまく言葉にできない。

でも提督はそんなわたしでも見続けてくれている。

優しく私を待っててくれる。

もしかしたら、もしかしたら私でも傍に置いておいてくれる。

そんな妄想をしちゃう。

 

「みたらしに、なりたくないんです…」

 

言っちゃダメって言われてたけれど、つい言葉が漏れてしまう。

 

「みたらし?」

 

提督は何のことかわからないのか驚いた顔をしている。

 

「潮」

 

静かに、でもしっかりと曙ちゃんが言う。

それ以上は言っちゃいけないと伝えてくる。

 

「曙、少し控えて」

 

威厳のある言葉がそれを遮る。

前を見ると真剣な顔でこちらを見ている提督が居た。

作戦前のときのような厳しくも私たちを強く信じてくれているその目つき。

 

「潮、みたらしになりたくない。どういうことか教えてもらえるかな?」

 

続きを伝えて欲しいと優しく訴える提督に、私はもうがまんができなかった。

 

「…大福に、大福になれなくても、餡蜜でもいいので、みたらしになりたくないんです!」

 

私の中にあったナニカがあふれてくる。

それを押さえ続けることはもうできそうもなかった。

 

「ていとく、わたし、みたらしにならないようにするの、どーすれば…」

 

少し困ったようなそれでいて真剣な表情で受け止めてくれる提督。

そしてゆっくりと立ち上がると私の横まで来てしゃがんだ。

 

手を伸ばしてくる。

何をするのだろう?

あ、あったかい。

提督が頭、なでてくれてる。

すごくやさしく、丁寧に。

私みたいなダメな娘でもとても大事なものに触れるように。

 

「なぁ、潮。どうして大福になれないと思うんだ?」

 

ゆっくりと言う提督はとても優しくて、暖かくて。

ずっとこうしてて欲しいと思っちゃうくらい素敵。

でも聞かれたことには答えないと。

 

「わたし、てーとくに、その。うまく、ぅぅ…。あんまり、いい娘じゃないから。だから…」

 

あぁ、やっぱり上手く言えない。

 

「僕には潮はとってもいい娘だよ。お仕事も普段からがんばってくれているし、悪いことをすることもないし。どこがいい娘じゃないっていうのかな?」

 

「てい…とく…」

 

あぁ…

本当にもっとダメな娘になっちゃう。

私は、艦娘は戦うために生まれたのに、提督の傍で、こうしてゆっくりとしていられたなら、それだけの時間がずっと続けばと思っちゃうダメな娘になっちゃう…

 

「ん?」

 

それでも良いと受け入れられたように感じてしまう。

 

「その、うしお、本当に、いい娘。…ですか?」

 

彼が言うのだ。私なんかが思うのよりもきっと彼のほうが正しい。

 

「あぁ、とても」

 

すごく心地いい言葉が彼の口からこぼれる。

それをもっと聞きたくて。

 

「でも、その、わたし、いくじなしだし、ちゃんとていとくとお話できないし、だめだめだし…」

 

そんなことを言ってしまう。

 

「いくじなしかな?僕には観察力と慎重さを併せ持っているすごい娘だと思うよ?」

 

「観察力と慎重さ…?」

 

彼には私はどんな風に見えているのだろう?

彼の傍に居られる娘だと思われてたら良いなぁ…

 

「そう、だってキミが戸惑うときって、ちゃんと物事を見た上で、早とちりしちゃいけないってちゃんと判断できているときだろう?これはまだ必要なことが出きっていないことを見極める観察力と、進むべきでないときにちゃんと踏みとどまれる慎重さがあるってことじゃないか。これはすごいことだよ」

 

「すごい、こと…」

 

えへへ、すごいことできる娘だって。

とてもうれしい。

 

「それに僕とお話うんぬんは僕がちゃんと聞いてあげられなかったのが悪いんだし」

 

「そんなこと!ないです!わたしが…!!」

 

彼に悪いとこなんでない!

全部私がダメダメなのがいけないんだ。

意気地なしで、ちゃんと提督に大好きだって言えない、傍にいたいって言えない私がダメなんだ。

 

「そっか、じゃあおあいこにしよう。これからはもっとお話しよう?」

 

そんな私でもお話をしてもいいんだ…

うれしい。

 

「えぅ、あ、は、はい…」

 

あぁ、返事がまた変になっちゃった。

でも優しくなでてくれている手が、大丈夫と私に伝えてくれる。

大きくて、暖かい手。大好きな提督の手。

 

「じゃあ早速お話してもいいかな?」

 

しばらく撫でてくれていると提督がちょっとだけ普段の調子に戻って声をかけてくれた。

 

「は、はい。なんでしょう?」

 

何のお話だろう?

 

「さっき言ってた大福になれないってどういうことか、教えてくれる?」

 

あ。

 

「それは、その…」

 

本当は提督には言っちゃいけない話。

でも聞かれたからには答えないと…

 

「言いたくないならいいんだ。ただ僕にできることがあるなら、やらせてほしいなって思っただけなんだけど、どうかな?」

 

「あぅ…。そのぅ…」

 

私が話しちゃいけないっていうのを踏まえて言ってくれているんだろうな。

うれしいけど上手くお話できない自分がつらい。

それでも提督はゆっくりと落ち着かせてくれるように頭を撫でてくれる。

 

うん、ちゃんと伝えなきゃ。

 

「みたらしだと置いてかれちゃうんです。でもわたし、捨てられたくなくて…」

 

「で、餡蜜になろうって?」

 

頷いて返事をする。

 

「ちなみに聞きたいのだけれど、みたらしだと置いてかれるのはわかったけれど、大福と餡蜜の違いって何かな?」

 

「えっ?」

 

そういえばどうなんだろう?

大福のほうが大事なんだろうけど、結局両方とも取ってもらえるんだよね?

じゃあ違いってなんだろう?

霞ちゃんが用事を終らせて来ていれば聞けるんだけど、まだ来てないみたい。

 

「えっと、わからない…です。ごめんなさい」

 

「いや、わからないならそれでいいんだ。ただ、どこからそんな話になったのかなって気になってさ」

 

そう言って提督は私の頭をぽんぽんして撫でてくれるの終っちゃいました。

 

 

「さて、お話もいいけれど、ご飯が冷めちゃったら良くないし、食べながらお話してもいいかな?」

 

あぅ、提督が戻っちゃう。もうちょっと続けて欲しかったけど、まだご飯の途中だもんね。

 

「和菓子で思ったんだけどさ、潮ってこしあんと粒あん、どっちが好き?」

 

 

「はぇ?」

 

唐突に言われてちょっと戸惑っちゃった。

えっと、こしあんか粒あんか。

うーん、アンパンはこしあんのほうが好きだけど、大福とかは粒あんのほうがいいかな?

 

「えっと、物に…よります。どちらかというと…粒あん?」

 

うん、粒あんのほうが好きなものが多いと思うし。

 

「曙さんは?」

 

そういえばずっと静かにしていた曙ちゃん。

どうしたのかと思って横を見てみると、暗い顔をしてる。

 

…それもそっか。明らかに提督は私ばかり見てくれている。

私みたいなのも置いておいてくれるのだから当然曙ちゃんも置いておいてくれると思うけれど、曙ちゃんから見たら違うと思う。

いや、普段の落ち着いた曙ちゃんならちゃんとそれぐらいわかると思うけど、目の前で提督が他の娘ばっかりかまってたら冷静になっていられないのも当然かもしれない。

 

「ありゃ?曙さーん?」

 

下を向いているから提督からはあんまり曙ちゃんの顔が見えないのかな?

軽い調子で声をかける提督。

 

「ごちそうさま。私は先に戻ってるから」

 

たぶん、この状況に耐えられなくなったんだと思う。

さっさと立ち上がって行っちゃう曙ちゃん。

落ち着いたらきっと大丈夫だろうし、しばらく一人にしてあげたほうが良さそうかな。

 

「うーん、乙女心は秋の空とはよく言ったものだよ。潮は曙さんと親しいよね?僕からもフォローするけれど、キミからもやってもらえる?」

 

たぶん、私がしなくても曙ちゃんはしっかりしてるから大丈夫。

でも提督がかまってくれるせっかくのチャンスは無くさないようにしてあげよう。

 

「は、はい。でも、私からだと…」

 

一応私自身も一要因だと思うし。

 

「余計拗れちゃう、かな?うーん、やっぱり僕のほうでしっかりやるべきか…」

 

頭の後ろを掻きながら提督が少し遠い目をする。

どんな風にフォローしようか考えてるのかな?

 

「まぁ曙さんのことはすぐにフォローするからいいとして、今は潮とお話だもんねー」

 

ねーのところでにこりと笑う提督。

うん、今までお話できなかった分もいっぱいお話したい。

でも何から話そうか?

やっぱりここで面白いお話できないと折角気にかけてもらえてるのに嫌われちゃうかもしれないし…

 

「潮、お話はこれからもできるからそんなに悩まなくても良いんだよ?」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

今日だけじゃない!うれしい!

 

「潮はお魚好きなの?」

 

提督が私の食べている焼き魚を見ながら言う。

 

「あ、どちらかというとお肉の方が好きです。でもあんまり偏って食べるのはよくないかなって。だから今日はお魚です」

 

「そっか、それは良い心掛けだね。バランスよくいろんなものを食べて身にしないと。特に体を使う君たちは食事も気にかけないとね」

 

前々から提督は私たちの食事をよく気にかけてくれる。

でも提督自身の食事はおざなりになりがちなんだよね。

あれ?そういえば提督ってどんな食べ物が好きなんだろう?

 

「提督はどんなものが好きなんですか?」

 

「食べ物の話…だよね?うーん、しいてあげるなら白米…かな?」

 

白米。

 

「じゃあ、おにぎりとか、ですか?」

 

「いいねぇ、おにぎり。好物だよ。ただ腹持ちとエネルギー、もといカロリーはいいんだけどあれは栄養的には偏りが強いんだよねぇ…」

 

ちょっと喰い気味に返してくれた。

おにぎりが好物。覚えておこう。

 

「その、中の具は何が好きなんです?」

 

「具はツナマヨかな?あとシャケとか。色物かもしれないけどたくあんが入ってるやつが結構おいしいよ」

 

ツナマヨにシャケ、たくあん。

今度作ってあげたら喜んでくれるかな?

 

「潮はおにぎりの具は何が好き?」

 

「私もシャケ…ですね。あとは梅干とか。あんまり他は知らないのですけど」

 

「うん、いいね」

 

「その、他にはどんなものが好きなんですか?」

 

もっと彼のことを知りたい。

思えば思うほど私は彼のことを知らないのだから。

 

「うーん、甘いものは全般的に好きかな。和洋問わず」

 

甘いものは大体好き。

これも覚えておこう。

 

「ちょっと話変わるけれど良いかな?」

 

ちょっとだけまた真面目な感じで提督が言う。

何だろう?

 

「はい、何ですか?」

 

「正直な意見を聞きたいんだけれど、僕ってそんなに話し難い雰囲気出してる?」

 

「話し難い…?」

 

「うん、あんまりみんなと雑談とかされないしさ、僕のほうからしようと話しかけても結構避けられちゃうし。自分じゃわからないこともあるから聞いておきたくて」

 

あぅ、今まであんまりお話できなかったことについて、だよね。

みんなって言ってるけど、たぶん私のことだと思う。

 

「えと、ごめんなさい。私、提督に嫌われないようにお話できないと思ってて、それであんまり…。お話して嫌な娘って思われたくなかったから…」

 

「いや、あー、うん。なんていうか、ごめん。でも潮が悪いわけじゃないからそんなに縮こまらないで欲しいな」

 

「いえ、私が悪いんです!」

 

「ん、じゃあこれもおあいこってことで」

 

そういって微笑む提督。

なんだかすごく気を使わせちゃった…。

嫌われてないかな?

 

「みんなっていうとわかり難いか。例えば曙さんとかどう?」

 

「曙ちゃん?」

 

「そう、結構呆れさせちゃってるみたいでさ。場を和ませようと思ったら逆効果ってのが多くて。でも何もしないと結局いろいろ注意されちゃうんだよね」

 

曙ちゃんも提督のこと大好きだと思うけど。

うーん、ちょっぴり言い方が強い時があるし、そのことかな?

 

「曙ちゃんはダメだと思ったら何も言わなくなるタイプなので、大丈夫だと思いますよ。それに提督にかまって欲しくて色々言っちゃうんだと思います」

 

黙ってしまう私とは反対に。

 

「うん、潮がそういうならきっと大丈夫だね。さて、悪いけれど曙さんもお仕事も放っておくわけに行かないからそろそろ行くね」

 

いつの間にか提督はご飯を食べきっていた。

 

「あ、はい」

 

もうちょっとこうしていたいってわがままは言っちゃだめだね。

 

「じゃあ、またお話しよう」

 

ご馳走様とそういい残して提督は行っちゃいました。

()()。提督はそう言ってたし、そのときが来るのを楽しみにしよう。

 

 




みなさんはおにぎりの具、何が好きですか?

作者はコンビニにあったから揚げとか焼肉とか漬けマグロとか好きです。
でも本当に一番好きなのは何も入っていない塩おにぎりなんですけどね。

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