僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~ 作:荒井うみウシ
まるまるくまぐま。
「…というわけで、私が話したのはちょっと誤解を含んでいたみたい。わるかったわ」
再び夜に駆逐のみんなを集めて今日あったこと、保有数についての誤解と、解体される心配はないことを共有する。
「まぁ乗った私たちも問題だけど、要は叢雲の暴走ってことよ」
霞がまとめる。
「えぇそうよ。うっさいわね。もう謝ったでしょ!?」
いちいち一言多いのよ。まぁ事実だからある程度しかたないし、申し訳なさもあるけどさ。
「ということで前に言っていた司令官の訓練生時代について詳しく話してもらおうかしら?」
「どういうことでよ。つながりないわよね?」
「償いの意味を込めてってことよ。それに大雑把な話は聞いたことあるけど私も詳しくは聞いたことないし。叢雲だけが知っているのは不公平じゃないかしら?」
屁理屈をまぁこねること。
「ま、まぁ私はどうでもいいけど、知っておけばクソ提督の弱みとか分かるかもしれないし、聞いてあげるわ」
曙、興味津々なのばればれよ。アイツもいないんだし、ここでそんなに意地をはる意味ないでしょうに。
「そういえば前回集まったときその話は今度するっていう話もしてましたからね。ちょうど良い機会ではないでしょうか?」
白雪まで同調し始めちゃったし。他の娘らも興味津々な顔で乗り出してきている。
「わかったわよ。そうねぇ、一番初めに彼の指揮下で動いたときの話からしましょうか」
―・―・―・―・―・―
今日は今期入ってきた訓練生による模擬戦をやる日だ。
訓練生はそういった娘らを一時的に指揮下に入れて模擬戦などを行うのだ。
斯く言う私もその一人で、建造されたのは良いが、その鎮守府にいたどの司令官も私に対応する人が居らず、ここにやってきてしばらくする。
どちらかというと古株で、多くの訓練生を見てきた。
最近はあまり良い訓練生は居らず、たとえ対応したとしても指揮下に入りたくないと思う人が多かった。
実際、多少は私の司令官かも?と思った人も居たが、黙っていれば他者からは判別がつかないため、流したことも1度や2度ではない。
ある時期までは素敵な司令官に出会える期待を持って働いていたが、下手なやつの下につくよりはここのほうがマシなので、ここしばらくは黙々と働くだけになっていた。
「あ、見つけました」
正面から大柄の男性が声をかけてきた。
周囲に私以外居ないため、おそらく私に声をかけたのだろう。
「なんの用かしら?」
「急にすみませんね。キミ、叢雲だろう?ちょっといいかな?」
強面とは裏腹に丁寧な言い回し。少々軽い口調が気に障るが、黙っておこう。
「初対面なのに呼び捨てなのね。まぁ良いわ、それで?」
「あっはい。すみません。叢雲さん。ご存知かと思いますが、今日僕ら訓練生は模擬戦をやるので、君の手を借りたくて声をかけさせてもらいました」
どういうことだろう?模擬戦をやるのは知っているが、普通事前に使用する艦を選んで通達をだすはず。
私にはそんなものは来ていないし、もしや誰かの代役?
さっきからこの人を見ていると妙な感じがしてそれがもどかしくイライラする。
「通達は来てないわよ。代役なら他に当たって」
もし代役なんて探しているなら余程のことだ。
通常何かしら艦娘側の問題、例えば体調不良などならば訓練生自身が動くのではなく、教官が通達を出すはずだ。
そうでないということは一番考えられる理由は訓練生に問題があって選ばれた艦が急遽拒絶したということ。
何をしでかしたかは知らないが、そんな相手に進んで手を貸そうと思えるほど私はお人よしではない。
「いや、代役ではないです。極端な話ですが叢雲さん自身は何かする必要はないので」
?何を言っているのだろうこの人は?それにさっきから感じている何かが体の中で増えていてそれがとても気になり苛立ちが募る。
「わけのわからないことを言うのね。私の手を借りたいのに私は何かする必要がないってどういうことかしら?」
「えっと、内密に聞いてもらえます?」
周りには私たち以外誰も居ない。別に妙なことであれば教官に知らせれば良い話だ。適当に頷いておこう。
「では端的に。キミの装備、魚雷をお借りしたいんです」
は?
一瞬意味が分からなかった。よくよく考えても意味が分からない。
艦娘は皆自身に対応した艤装を持つ。同じ艦娘ならともかく、共有はできないはずだ。
ここに居る叢雲は私だけだから他の叢雲を使うけれど私の艤装が欲しいということはありえない。
「あーっと、ちょっと勘違いしているようなので付け足すと、艤装ではなく、装備ですよ?」
…
なるほど、そういう意味か。
確かに私たちは一部妖精さんの力を借りることで能力を向上させられる装備をつけられる。
だがそれはここにいる娘なら誰もがしっかりと上限まで装備しているはずだ。
彼は何がしたいのだろうか?
「えっと、無理にとは言いませんが、どうでしょうか?勝手な都合で申し訳ないのですが、時間がないので早めに返答いただきたいのですが」
「正直何にどう使うのかわからないことに手を貸したくないのよ。何かあって巻き込まれたくないし」
「そうですか。わかりました。失礼します」
彼が踵を返そうとする。
「待ちなさい」
彼が止まる。
「誰が貸さないと言ったかしら?条件を飲むなら手を貸してあげるわ」
どう使うのかがわからないからいやだ。だけれどどう使うのか興味が出てきた。
見届けさせてくれるなら手を貸してあげよう。
「条件とは?」
「どんな風に使うのか私に説明なさい。そうすれば貸してあげるわ」
彼は少し悩んだ後口を開く。
「説明する時間が惜しいので、実演しながら解説っていうのではダメですか?」
時間というのは模擬戦の時間だろう。
ギリギリまで何をやっているのだか。
「仕方ないわね。それでもいいわよ。案内なさい」
「ありがとう。恩に着ます。こちらです」
そういう彼の後についていった。
―・―・―・―・―・―
彼の後をついていくと、多くの艦娘が居た。
「お、おかえりー。見つかったのかい?」
軽い調子で迎えるのは隼鷹さんだ。
いつもどおり徳利を片手にもう片方の手をひらひらと振っている。
「ただいまです。見つかりました。これでなんとかなりそうです」
見るとここに居るのは私も含めて全部で12隻。
駆逐艦は長月・五月雨・初雪・朧・若葉・不知火そして私の7隻
軽巡は多摩さん・名取さんの2隻
軽空母は隼鷹さん・龍驤さんの2隻
そして潜水艦の伊168の1隻
おかしい。普通艦隊は6隻までしか扱えないはず。
その倍の数を用意しているのは一体なんだろう?
私のように声をかけてまわったというのか?
「で、一体何をしようというのかしら?」
「装備の調整ですよ。というわけで叢雲さん、キミの魚雷を朧さんの主砲と交換してもらえます?」
「朧はそれでいいの?」
一応装備が無くとも行動は可能ではあるが、妖精さんのサポートがなくなるため、極端に性能が落ちる。
それも主砲を外すなどという暴挙など通常考えられないことだ。
「…提督に従うつもり。どうなるかは…やってみるしかないかな」
「そう、朧が良いなら良いわよ。ほら」
そうして私の魚雷を渡し、主砲を受け取る。
「よし、じゃあいきましょうか。下手したら遅刻になりかねないので」
「説明は?」
「戦闘中にします。ついてきてください」
そういってぞろぞろと引きつれ彼は歩いていく。
一体なんなのよ…
―・―・―・―・―・―
「ギリギリだな。特に減点等はしないが、もう少しゆとりを持ったほうが良いぞ」
教官が苦言をこぼす。間に合いはしたようだが、本当にギリギリだったようだ。
「以後気をつけます。早速はじめましょうか?」
「おい、そっち艦娘多くないか?」
相手の訓練生が指摘する。それもそうだ。倍の12隻連れているのだから。
「模擬戦に出るのは申請した娘らのみですよ。他の娘らはまぁ、手を借りていますが規定違反はしていません。ですよね教官?」
「別に問題ある行為ではないな。だが妙な動きをさせたら貴様、わかっているな?」
「えぇ、もちろんです。他に何もなければはじめましょうよ。時間、押してますよ」
「誰の所為だと」
相手が言おうとするが教官が止める。
だが教官もあまり彼に対して好意的ではないことは察することができた。
当然だろう。ギリギリに来て、連れてきたのは倍の数、その上はやくはじめようと言い出すのだから。
相手は舌打をして下がる。通常注意される行為だが、教官も同感なためだろう、注意しない。
「それじゃあ皆、よろしく」
「「「「「「了解」」」」」」
戦闘に出るであろう伊168・多摩さん・不知火・五月雨・朧・隼鷹さんが返答し、海上へ移動する。
というか旗艦は伊168なのね。非常に意外。このメンバーなら隼鷹さんか多摩さんが妥当なのに。
明らかに何か企んでいる。彼に対する何かは変わらずあるが、それによる苛立ちが薄くなっているのを感じた。
相手の編成も見てみる。
旗艦が伊勢さん、続いて鳳翔さん・高雄さん・古鷹さん・龍田さん・吹雪。
かなり強力な編成だ。
というか向こうの半数は大型の艦なのにこちらの半数は駆逐艦である。
普通は勝てない。
ここから彼はどうするのだろう?
「これより模擬戦を開始する。はじめ!」
教官が合図すると同時に両艦隊は動きだした。
まずは軽空母同士による航空戦。
これは鳳翔さんと隼鷹さんの戦いになる。
鳳翔さんは私よりも古くからここに居て、多くの模擬戦を担当してきた。
戦績もよく、当たりの良い性格から多くの訓練生が彼女の手を借りてここを出て行った。
隼鷹さんは…うん、飲んでいる姿しか見ないわね。ほとんど模擬戦をしている姿も見ていないし、今も徳利片手に戦っている。
アレで良いのだろうか?艦としての性能差が多少隼鷹さんに分があっても、これでは鳳翔さんの勝ちだろう…
「はぁっ???」
横の訓練生、相手側のほうから声が上がる。
私も唖然とした。鳳翔さんが放った航空機を次々と隼鷹さんの航空機が落としていくのだ。
確かに数は隼鷹さんの方が多い。だからといってこうなるのは異常だ。こんな光景は今まで見たことが無い。
「ええい、航空戦はあきらめろ。こちらのほうが打撃力は上なんだ、ねじ伏せろ!」
相手側から指示が飛ぶ。しかしこちらは何も指示を出さない。
「アンタ、何か指示しないの?」
まだ先ほどの衝撃は抜けていないが、何とかそれを言うことができた。
「問題ありません。というか必要なのはもう伝えていますし。僕にできるのは信じて見届ける…というかもう結果は分かりきっていますがね」
悠々と答える司令官。
この道化、何を見せてくれるのだろうか?
「さて、解説をすると約束しましたからね。簡単に。というかアレがその一端なんですけど」
戦場を見続けながら話し始める。
鳳翔さんの航空機はすべて落とされ、隼鷹さんの航空機も二次攻撃のため一旦戻り始めている。
先ほどの指示通り相手側の艦隊は砲撃を開始していた。
一方こちらも砲撃を開始するが、ほとんど、というかおそらく全員が主砲を装備していないのだろう。
閑散とし、有効打が出るとはとても思えなかった。
「航空戦は有利みたいだけど、現状はとても不利に見えるわ」
「まぁそういう指示だからねぇ」
のほほんと答える司令官。
もどかしい。
「で、一体何なのよ。見てても分からないわ」
痺れを切らして彼に問う。
「そろそろだね。見てごらん」
ちょっと真剣な目つきになる彼。ちょっと素敵かも…いや、そうじゃない。
急いで海上を見る。
相手側の艦隊に大きな水飛沫が上がる。
鳳翔さん・古鷹さん、そして旗艦を庇った龍田さんが中破以上、高雄さんと吹雪も小破し、庇われた伊勢のみが無事な様子。
一方こちら側は砲撃時に受けたのか隼鷹さんが大破。しかし他は小破がほとんどの上、旗艦の伊168は無傷。
「そこまで。判定に移行する。各艦隊は引き上げろ」
審判役をになっている教官が声をあげる。
判定結果を見るまでも無く、彼の勝ちだろう。
見学していた艦娘らも喜びの声をあげている。
「つまり、雷撃にすべてを賭けるってわけ?」
現状を見るとそう結論付けるのが正しい。正しいが何か腑に落ちない。
それだけでは分の悪い賭けになるだろう。それを彼がするようには思えない。
もっと勝率の高くなる何かを仕込んでいるからこそのあの余裕に違いない。
でなければ余程の自信家かポーカーフェイスが尋常じゃないほど上手いか、ただの大馬鹿か。
「あはは、まぁそうなりますね。とはいえそれのためにちょっと小細工していますけど」
「それを教えなさいよ。約束でしょう?」
「というか、わかりません?君にお願いしたようなことを他の娘らにもしていたんです。特に重要なのは軽空母と潜水艦ですね。それは彼女らが戻ってきたらまとめて話します」
そういって優しい目つきで戻ってくる娘らを見守る司令官。
強面の割りにそういう顔も悪くないじゃない。
「私たち勝ったわよね!?」
戻ってきた伊168が一番に声をあげる。
「結果はまだですから落ち着いてね。それにしてもよくやってくれました。流石皆さんです」
一人ひとり上がるときに声をかけてまわる司令官。
「判定結果がでた。全員集まれ」
そうしていると教官から声がかかった。
判定結果はどうなるのでしょうか!?
次話をお待ちください。
それはさておき、前回の赤城人気、うれしく思います。
この作品の赤城はあんまり他に無いタイプなので、どうかなーと思っていましたが、受け入れられて安堵しています。
否定的だったとしても路線変更する気はないのですがね!!