僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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今回で一旦回想編終了です。


閑話_訓練生時代_叢雲視点3

皆と交流部屋に着く。

何人か手の空いている艦娘が居るが、訓練生も教官も彼を除き誰も居なかった。

ある意味当たり前と言える。

訓練生のほとんどは適正があるからと引っ張ってこられただけだし、教官連中もほとんどが深海棲艦に恐怖し、その唯一の対抗策といえる艦娘を使う()()を育てるためにここに居るだけだ。

多くの者は私たちに好意的ではない。艤装という強力な力を持ち、あの深海棲艦に対抗できるのだから。

そのため恐怖感を持つのも致し方の無いことだろう。

またある者たちは私たちのそういった在り方だけでなく、容姿も毛嫌いしているようだ。

比較的私たち艦娘は整った容姿をしている。むしろ整い過ぎているといったほうが正しいのかもしれない。

ある者は嫉み、ある者は畏怖した。ある者は気色悪い下心しかなく、ある者は区別がつかないと困惑した。

なので、艦娘たちと好き好んで交流を持とうとする人はあまり居ない。その中でも純粋に好意を持つ人は限られている。

そう考えると彼はその限られた枠に入る奇特な人と言えるのではないだろうか?

確かに大破判定でボロボロになった服の隼鷹さんに目がいく程度の下心はあったが、その程度だ。やがて司令官になることを踏まえて好き勝手するタイプにも見えない。

 

「おや、まだ早いのによく来たね。そうか、君らはすぐこれるのか」

 

こちらに気づいたのか声をかけてくれる。

 

「せや。だからお先に来たで!」

 

龍驤さんが代表して答える。

大き目のテーブルに一人で座っていたので、皆してそのテーブルにつく。

私は彼の斜めの席だ。

 

「んでんで、結局どういう戦略だったん?」

 

喰い気味に龍驤さんが尋ねる。

 

「まぁまぁ、何度もお話を伺うのはお手数をかけてしまいますし、皆が揃ってからにしませんか?私、何か飲み物を持ってきますので、ご希望をおっしゃってください」

 

それを鳳翔さんが押さえつつ立ち上がる。

 

「あ、すみませんね。じゃあ僕は冷たい飲み物でおねがいします」

 

司令官が言う。

 

「私も同じもので」

「手伝うぞ」

 

といった声が上がり、何人かを連れて鳳翔さんが飲み物を取りに行った。

 

「それにしても本当にあの隼鷹を使うとはねぇ…」

 

龍驤さんが腕を組みなんだか感傷に浸るかのようにうんうんと頷いきながら言う。

 

「言うほど何か問題があったのですかね?実際やってもらって何の問題もなく、というかこちらの指示に完璧に応えてくれましたし」

 

私たちの多くはただの飲んだくれとしか認識していない中、彼は何かを見抜き、さらに引き出すことまでしてのけたのだ。

隼鷹自体の能力もあるのだろうが、それを活かした彼の指揮能力はずば抜けていると評して間違いないだろう。

 

「でもどうして隼鷹さんを選んだのかしら?私には龍驤さんの方が良いと思ったのだけど」

 

疑問をぶつける。

 

「それ聞いちゃうかぁ…うち、ちょっと席はずしたくなってきたわ…」

 

龍驤さんが大げさにうなだれる。

私が聞こうとしていることは龍驤さんより隼鷹がいいと彼の口から引き出すことと同義だから当然かもしれない。

それにしては結構冗談交じりな反応だからそれほど気にかけているわけでもないようだけど。

 

「それも彼女らが戻ってきてからの方が良さそうですね。たぶん隼鷹さん自身も気になっていそうですし」

 

「生殺しかいなぁ…。ところで、何で今日になって急にさん付けで呼ぶん?昨日までは呼び捨てだったと思うんやけど」

 

ころころと表情を変えながら話題を変える龍驤さん。

 

「あぁ、呼び捨ては良くないと注意を受けただけです」

 

ん?それは私のことかしら?明らかにこちらを見ながら言うし。

 

「嫌なら別に無理してつける必要はないわよ」

 

「いえ、そういうことは無いのでお気になさらず」

 

気に障る言い方ね。こういう面に関しては矯正してあげるべきね。

 

「そういう言い方、良くないからやめなさい」

 

「まぁまぁ、そうカリカリせんと、好きにさせとけばええやん。な?」

 

龍驤さんが間に入って私たちを止める。

私も何熱くなっているんだか。

 

「お茶、お持ちしました」

 

鳳翔さん達が戻ってきた。

 

「どうも。いただきます」

 

私も初雪から一つ受け取る。

 

「ありがとう」

 

「ん」

 

「それで提督、今日が初めての戦闘指揮でしたよね?ですが非常にしっかりとした作戦を立てられたようですが、元々何かそういった経験や知識をお持ちなんですか?」

 

時に訓練生の中には身内に司令官が居て、ここに来る前から多少知識を持っている人も居る。

鳳翔さんが尋ねたのは彼もそういうタイプなのかということ。

 

「いやぁ、せいぜいゲームとかをやったことがあるだけで、真っ当な経験や知識はもってませんよ。というかよく今日が初めてって知っていましたね」

 

言われてみればそうだ。いや、一応いつ誰が誰を使って模擬戦をするのかは公開されているから調べればわかることではあるが、鳳翔さんは今回の模擬戦のためにわざわざ調べ上げたのだろうか?

 

「ふふ、一応誰がいつ模擬戦をやるのか把握していますので。今までに居なかった方なら初回ではないかと思っただけです」

 

どうやらすべての訓練生による模擬戦を把握しているようだ。鳳翔さんすごい。

 

「おぉぅ。それはすごいですね」

 

彼も感心している様子。

 

「あの、鳳翔さん。戦闘していた娘たちが戻ってくるまでそちら側がどのような指示をされていたのか伺っても良いですか?」

 

ちょっとだけ真面目な顔をのぞかせながら彼が話を振る。

鳳翔さんは少し悩んだ後、口を開いた。

 

「そうですね…。初めての方ならよくある感じの指揮でした。事前の作戦は定石通りに私が艦載機を飛ばして逃げ道を塞いだところを伊勢さん達による集中砲撃を行うといったものでした。戦闘中になると細かく誰が誰をどう狙えとか、どう動いて回避しろとか、そういったことを出されましたね」

 

実際の動きとどう指示があったのか具体的に鳳翔さんが説明し始める。

 

それを聞いてみるとよくあるタイプの戦闘指揮だ。

初めてならよくある感じというのは不必要なほど細かい指示がよく出ていたり、戦局を局所的に見ているが故の悪手が少々あったことを差しているのだろう。

無難でわかりやすい。多くの訓練生もこういった戦法をよく採用する。

それ故大型の艦は大人気だ。

だがこれは同時に火力の差異によって優劣が決まるので、戦闘前の編成によってすでに勝敗は決まっているともいえる。

使用する艦の申請は教官を通して許可される。だからゴマすりの上手い訓練生が勝率を上げていた。

他の作戦も多くは人気となる強力な艦を使用するといった内容なので、結局ゴマすりの上手さが戦績に反映される歪な状態が続いている。

とはいえ私たち側から何かできるわけでもないし、いずれ居なくなる人たちのために何かをする気もないのだが。

 

それを踏まえた上で改めて彼の異様さが際立つ。

先ほどの反応からして教官から好かれているようには見えなかった。ゴマすりはしていないのだろう。

現に使用した艦はほとんどが人気の無い娘らだ。

駆逐艦は模擬戦においてはほとんど数合わせ程度にしか使われないのにも関わらず、彼はそれが半数を占める艦隊を編成している。

潜水艦は模擬戦で使用されることがほぼない。少なくとも私は見たことが無かった。

軽空母は皆入れたがるが、お酒ばかり飲んでいる隼鷹さんを選ぶ人はまず居ない。他の空母が誰も空いていないから仕方なくというのがほとんどなのに、龍驤さん曰く隼鷹さんをわざわざ名指ししたようだ。

なので他の訓練生でも通常入れる可能性があるのが多摩さんぐらい。

それにおかしいのは軽巡の名取さんを入れなかったこともそうだ。

模擬戦においては駆逐より軽巡の方が優れているのは目に見えている。

なのにそれを採用しないのは理解できない。

 

聞けば聞くほど相手は通常の、彼は異様な作戦を取っていたように思えてくる。

 

「なるほど。艦種による性能を活かす作戦を彼は取ったのですね」

 

ふむふむと彼は鳳翔さんの説明を飲み込んでいた。

 

「おーい、おまたせ。何の話してたんだい?」

 

隼鷹さんがちゃんとした服を着てやってきた。

他の娘たちも一緒だ。

 

「お疲れ様です。鳳翔さんに相手の指揮を伺っていたんですよ」

 

彼が立ち上がり軽く頭を下げる。

 

「そういうのいいって」

 

ひらひらと手を振りながら照れる隼鷹さん。お酒以外の理由で顔を赤くするなんてはじめてみるかも。

 

「ねね、私、司令官の隣に座りたい。だめ?」

 

伊168が司令官の隣に座る龍驤さんに聞く。

 

「ええで。今回の旗艦様やからね」

 

「わーい。やたっ。龍驤さんありがとう!」

 

そういって席を変わる。

司令官はそんな彼女らを微笑ましそうに見つめている。

ちなみに反対側は鳳翔さんだ。

 

「私、模擬戦で勝てたの、しかも旗艦でなんて初めて!すごくうれしいわ!」

 

興奮気味に伊168がいう。

すると司令官は驚いた様子だ。

 

「え?それは本当ですか?」

 

「えぇ。潜水艦と水上艦を混合編成するのはむずかしいって今まで全然イムヤを模擬戦に入れてくれなかったし」

 

彼は両手を組み首を傾げる。

 

「それはなんていうか…。まぁここだとそれが普通なのかな?」

 

「一人納得していないで話してよ」

 

なんだか独り言つ彼に苦言を申す。

 

「あぁ、すみません。こちらのことなんでこれは気にせずに。さて、今回の戦闘の種明かしをしましょうか」

 

彼が居住まいを正す。皆静かに彼の言葉を待った。

 

「今回やったことは主に3つ。一つ目は鳳翔さんを無力化すること。二つ目は伊168さんに「イムヤ」…イムヤさんに指揮を執らせること。三つ目は雷撃を決めること」

 

途中伊168に名前を訂正させられる。

 

「確かに鳳翔は完封されていたけど、あれは一体なんやったん?」

 

龍驤さんが質問する。

 

「まず、皆は訓練生が模擬戦に使用する艦の情報を事前に収集できることは知っている?」

 

「知ってるぞ」

 

若葉が答える。

 

「よし。じゃあ話は簡単だ。鳳翔さんの情報を仕入れて、それを押さえるのに充分な娘を用意すれば良い」

 

「簡単に言いますが、言うほど簡単ではないと思いますが?そんなに強力な艦娘がいるならば他の訓練生もこぞってその艦娘を使用したがるでしょうし」

 

不知火の言うとおりだ。

それに押さえるのに充分な娘でなぜ隼鷹さんになる?確かに艦としては鳳翔さんより隼鷹さんの方が上だろうが、圧倒できるほどではないはずだ。

 

「そうだね。だから艦娘以外に着目するんだよ」

 

「装備…ですか」

 

「五月雨さん正解。さっき聞いたんだけど、鳳翔さんは艦載機で相手、つまり僕の艦隊を牽制・誘導を行うことを目的としていた。ここでの空母はそういう運用がほとんどなんだろうね。装備も皆そういう感じにしやすい構成になっていたし」

 

「それだと隼鷹さんも同じだから鳳翔さんのを全部落とすなんておかしいぞ」

 

長月が指摘する。

 

「そこで龍驤さんの登場。龍驤さん、隼鷹さんに渡すようにお願いした装備の内容を話してくれます?」

 

「ん?艦戦を渡…あぁっ!そういうこっちゃね!」

 

「なるほど、それなら納得できます」

 

「まぁ航空戦をこれでまかせるって言われたらそうなるよねぇ」

 

「空母組で理解してにゃいで、多摩たちにもわかるように説明するにゃ」

 

空母組の三人が納得しているが、私たちにはわからないため、多摩さんがつっこむ。

 

「艦載機には種類があるのは君たちも知っているだろう?んで、隼鷹さんには龍驤さんから借りた分も含めて対艦載機用の艦載機をどっさり載せてもらってたのさ」

 

「私は皆さんを攻撃することも視野にいれた装備のため、提督の言い方に合わせると対艦娘用の艦載機が多く、隼鷹さんの対艦載機用の艦載機に太刀打ちできなかったのです」

 

司令官の回答に鳳翔さんが付け足してくれる。

 

「えっと、つまり隼鷹さんは今回艦娘への攻撃ではなく、鳳翔さんの艦載機のみ攻撃したということでしょうか?」

 

「名取さんの認識で問題ないです。鳳翔さんの攻撃で逃げ場を無くすことを前提とした相手の作戦はこれで瓦解。こっちは逃げ道だらけだから被弾が少なくなるってわけ」

 

「こちらもそれを理解していましたが、戦闘区域は限られています。なので多少強引ですが、そのまま砲撃を開始しました」

 

あぁ、あの火力で押し切れだの叫んでいたときのことね。

 

「そちら側としてはその手が一番無難でしょうね。でもこちらはイムヤさんが居ましたからね」

 

ここで伊168?

 

「イムヤさん、僕がどんな指示を出していたか皆にも話してもらえます?」

 

「いいわよ。旗艦として海中から全体を見渡して、皆の回避行動を指揮しろって。それでどこら辺が手薄か探したり、どこら辺に牽制をするべきか指示をだしたりしてたわ」

 

戦闘中確かに見えなかった。

潜水艦だからそういうものだと思っていたが、そういったことをしていたのか。

 

「潜水艦ならではの特性を活かして立ち回ってもらったのさ。で、残りの娘らには雷撃だけは集中してくれ、他のことは旗艦の指示と普段の訓練通りに動けばいいと伝えてたんだ」

 

「あれだけ逃げ場がある状態なら訓練通りの動きで大体避けれるからね」

 

「あははー、避け切れなかった私はどうなのさー」

 

朧の言に隼鷹さんが嘆く。

 

「すみません、私のドジを庇ってくれたばかりに…」

 

五月雨を庇って大破したのか…

 

「いやぁ、それは気にしないで良いよ。そのあと自分の所為で思いっきり被弾しちゃったし、ちょっと真面目に訓練しなおさないとなぁー」

 

反省反省と自分のおでこを叩く隼鷹さん。あの人も訓練しようって思うことあったんだ。

 

「んであとは主砲の代わりに魚雷を増した皆で一斉雷撃。結果はご存知の通りさ」

 

雷撃に特化した装備にして、小型の艦でも大型の艦を撃破しにいくという部分は納得ができる。

小型艦が優位に動ける条件でもなければむしろそれぐらいしか大型艦を倒す現実的な策はない。

 

「一つ聞きたいのだが、何で若葉たちを呼び集めたんだ?提督の策ならば装備だけそろえればいいんだし、わざわざ交換なんて面倒なことをする必要を感じないのだが…」

 

言われてみればそうだ。

 

「あぁ、それは規定を破らないためだよ。ほとんど裏技みたいなものだけど、違反ではないから問題ないって教官も認めてくれたし」

 

開始前のやり取りのことだろうか?かなりしぶしぶといった様子だったが。

 

「どういうことですか?」

 

「朧さんは模擬戦における規定ってどういうのがあるか知ってる?」

 

「えっと、事前に申請した艦娘しか出しちゃだめとか、八百長しちゃだめとかそういう感じ?」

 

「あってます。その中で、"艦娘の使用する装備は模擬戦用の装備のみとする"っていうのがあるんだ」

 

危険が無いように模擬戦用の装備にしなければならないのは当然だ。

だがそれがどうしたのだろう?

 

「これが難問であり、ミソでもあるんだ。代えの装備を用意する権限は訓練生には無いんだ。だから基本的に教官を通して行うのだけど、その申請が結構面倒らしくてさ。余程のこと、例えば故障したとかじゃない限りやってくれないんだよ」

 

…これはおそらくそういうことにされているんだろう。

確かに教官を通さずに装備を変更させることは訓練生にはできない。が、模擬戦の戦術のために装備変更をさせることはよくある。

やっぱり司令官はあんまり教官に好かれていない…どころか嫌われている可能性が高い。

 

「つまり艦娘が既に装備している模擬戦用の装備を使うしかなかったんだ。それで君たちに声をかけさせてもらったのさ」

 

艦娘の情報は訓練生でも知ることができる。きっと彼はお目当ての装備を持つ先ほどの時間が空いている艦娘を探して声をかけてまわったのだろう。

 

「あ、そういえばどうして龍驤さんじゃなくて隼鷹さんを選んだのですか?龍驤さんを選ぶこともできましたよね?」

 

「私も気になる。自分で言うのもおかしいけど、飲んだくれよりはちびっ子の方が頼りになりそうだろ?」

 

「だれがちびっ子や!」

 

名取さんの質問に隼鷹さんも乗り、龍驤さんがつっこむ。

先ほど私が聞いた質問だ。

 

「あぁ、前提として空母は1隻しか入れさせてもらえないのよ。もう所属先も決まってるようなここを出る直前の人や、成績優秀者なら後学のためってことで複数入れた艦隊を指揮できるらしいけど、僕らみたいな新入りは資材やら空母自体の数の問題やらで許可されないんだ。で、隼鷹さんである理由は単に艦載機の総搭載機数が多いからっていうのと、装備の問題かな。具体的な内容を話すと長いから端折るけど、龍驤さんは強力だけど尖った性能なんだ。で、今回の条件ではその部分を活かすことができなかったんだ」

 

「じゃあ条件次第じゃうちを使っていた可能性もあったってこと?」

 

「もちろんです。たまたま今回の条件では隼鷹さんに分があったということなので、むしろ使えるなら二人とも入れたかったですもん」

 

「ほほぅ。ま、そういうことにしとこか」

 

「じゃあさ、何で司令官は私を旗艦に選んでくれたの?戦闘経験自体も少ないし、ましてや旗艦なんて経験したことない私を選ぶって普通なら変だし」

 

今度は伊168が言う。

確かにほとんどの艦娘が大きな被害を受けていないことを考えれば彼女の指揮能力は高いことはわかった。

けれどこれは結果論だ。経歴を見てもそんなことはわかるはずもないし、どこでそれを見抜いたのだろう?

 

「前々から交流があったわけではないのか?」

 

「ううん。今回の件で初めて知り合ったのよ」

 

長月の質問に伊168がふるふると首を横に振りながら答える。

単に知り合いだったからというわけでもないようだ。

 

「単にイムヤさんを信じてただけですよ。もちろん他の皆も。この娘たちなら任せてれば大丈夫って。だからこの勝ちは君たちのおかげさ。改めてありがとう」

 

そう彼は微笑みながら言った。

 

 

―・―・―・―・―・―

 

 

 

「…とまぁ、そんな感じ」

 

「ちょっとまって、綺麗に終ったようにしているけど、さっき言ってたしょうもないことってなによ」

 

私が話し終えると霞がすぐに声を荒げた。

 

「艦娘を信じたこと、装備を変えて相手の意標を突く作戦といったポイントを押さえさせることの二つは出てきましたが他はないですよね?」

 

白雪も同調する。

 

「提督が艦娘にさん付けで呼んで、距離を取るようになったのは叢雲の所為じゃ…」

 

曙、そこは気にしなくていいわ。というか気にしないで。お願いだから。

 

「実は残りのところは後日聞き出したのよ。だからこの時は私も知らなかったわ」

 

「それ、あたしたちが答えを見つけられない問題だったんじゃないの?」

 

敷波が文句を言う。

 

「そうでもないわよ。彼らしいことだもの」

 

「それは艦娘を信じてることではなくて?」

 

「それもだけど、もう一つも彼らしいことよ」

 

満潮の問いに答える。

 

「答えは練度じゃないかな?」

 

「えぇ正か…川内さん!?」

 

正解を当てたのはいつの間にか居た川内さんだった。

 

「やっほー。川内参上!なんてね。でどうなの?」

 

ニコニコとしている川内さん。

 

「え、えぇ、正解よ。例えばさっきの話で出てきた艦娘で名取さんが一番練度が低かったの」

 

「だろうねぇ。提督は結構確実性を取るタイプだからね。普段も少しでも安定して進められる案を取るからさ。練度が高く強い娘を選ぶ。シンプルで当たり前のことだけど、大事なことだよ?たぶんその訓練校にいた多くの戦艦とか重巡よりも選ばれた駆逐艦たちのほうが練度が高かったんじゃないかな?」

 

頷いて肯定する。訓練校に居る大型の艦は大抵建造されてすぐ大本営にいった娘たちだ。それに対して駆逐艦などは大抵建造されたところで少し働いた後であったり、適正をなくした提督の下にいた娘だったりする。

その上戦力に見られる大型の艦は比較的すぐに引き取られるが、小型の、特に駆逐艦はなかなか引き取られなかったりして長く居る場合も多々ある。

そのため大型の艦と小型の艦で練度に差があった。

 

「さて、皆元気そうだね。元気なのはいいけどさぁ、もう消灯時間過ぎてるんだよねー。提督とのお約束を守らないほど元気ならこれから私と一緒にスペシャル夜戦訓練をしようか?」

 

スペシャル夜戦訓練。どんなものか想像もできないが、とてつもなく嫌な予感がする。

何せ川内さんはあの神通さんと那珂さんの姉なのだから。

神通さんは普段からスパルタ訓練で有名だ。それでもあの人なりに抑えているらしいが、とにかく厳しく、つらい。

那珂さんは神通さんと方向性が違うが、訓練をレッスンと称しこちらも非常にしんどい内容が多い。

そして川内さん自身は普段から夜戦に目が無いことを触れ回り、司令官から夜間警備を主任務とされているため、訓練などを一緒にすることはあまりない。

だからこそどんな内容をおこなうのか想像ができないのだ。

 

全身から血の気が引いていくのがわかった。

きっと青い顔をして冷や汗をかいているのだろう。

そしてそれは皆も一緒だろう…

 

「でも、良い話聞けたから今回は見逃してあげる。提督にも報告しないでおくし。あ、自主的に夜戦訓練したいって娘が居るなら面倒見てあげるよー」

 

どうかな?と小首をかしげる川内さん。

私は大きく首を横に振る。見えないがきっと皆もそうしていると思う。

 

「それは残念。じゃあ早く自室に戻って寝ようね。じゃないとスペシャル夜戦訓練だけじゃなく、提督に報告して叱ってもらうからね」

 

じゃあねと軽やかに去っていく川内さん。

彼女が見えなくなるまで静寂が続いた。

 

「…今日はもう戻って休みましょう」

 

拒否する娘はだれも居なかった。




時々名前は上がっていたけど初登場の川内ちゃん。
一応これでこの鎮守府に居る娘は全員出ました。

続きはのんびりお待ちください。
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