僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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車内の様子はカットされました。



健康診断_到着

時刻はもうすぐ一四○○。予定より少し遅れてはいるが、無事施設に到着した。

 

「流石におなかがすいてきましたね」

 

「はい。まずはお食事でいいんですか?」

 

「食事をしていいらしい。食前にやる必要がある検査は明日の朝やるんだってさ」

 

「それじゃ、早く行こうよ。あたしもおなかすいた」

 

敷波に急かされる。

 

「あいあい。それじゃあ荷物は妖精さんにお願いして、僕らは食べに行こうか」

 

―・―・―・―・―・―

 

「なんていうか、ファミレスの味だったな」

 

施設の食堂を利用した感想だ。

おいしいはおいしいが、ファミレスとかの味だった。

 

「妖精さんが作ってくれる普段の食事のほうがあたしは好きかな」

 

「僕も」

 

「お、いたいた」

 

食後に軽く話していると声を掛けられた。

 

「ん?あぁ、久しぶりだな」

 

振り向いてみると、細身の男が立っていた。

 

「2ヶ月ぶりだな。その様子だと飯は食い終った感じ?」

 

「さっきね」

 

「司令官、この人は?」

 

敷波が尋ねる。

 

「あぁ、こいつは同期のタナカだ」

 

「斉藤だよ!だれだよ田中って!」

 

そう、こいつは斉藤。僕と同期の提督で階級は同じく少尉。

そして以前電をつれて会議に参加していた提督だ。

 

「いや、日本人によくいそうな名前っていうのは覚えてたんだけどね」

 

「確かに斉藤も田中も多そうだけど!というか同期の名前くらい覚えてろよ!」

 

ずいぶんとノリがいいな。

 

「あ、あぁ、あの…」

 

榛名が妙な感じになってる。

 

「榛名さん?どうしました?」

 

「おぉ、お前戦艦クラスも居るのか。良いな!」

 

「いや、この娘は客員だよ」

 

「…はじめまして、提督。金剛型戦艦三番艦榛名です。よろしくお願いします!」

 

ん?

 

「ひょっとして、榛名さんや。こいつがキミの…」

 

「はい!」

 

「え?」

 

「良かったなスズキ。戦艦クラスが着任だぞ。おめでとう。喜べよ」

 

こいつ、電だけならず榛名まで持つのかよ。

マジうらやましい。

 

「ちょっとまて、唐突の出来事に混乱してる。というか斉藤だとさっき訂正したよな?鈴木ってなんだよ!てか榛名が来てくれるのはうれしいけれどさ、お前喜べと言いつつ顔が引きつってるぞ!祝う気あんのかよ!?」

 

元気だなぁ。

 

「落ち着きたまえヤマダ。こういうときは事実を整理すると良いぞ。まず久々に同期に会った。同期が連れてきていた榛名が自分の艦娘だった。ヤッタネ部下が増えるよ!」

 

「だから斉藤だ!あぁ、お前に付き合うと疲れるよ。えっと、榛名、歓迎するよ。実際にうちに転属となるのは手続きが済んでからだから少し後になるけれど、これからよろしく」

 

流石に切り替えは早く、榛名に対して紳士的な態度を取る斉藤。

 

「よろしくお願いします!」

 

元気に答える榛名。

 

「おめでとう榛名さん。あぁーでも残念だなぁ榛名さんみたいに良い娘が行っちゃうのは。イトウ、大事にしないと承知しないからな。榛名さんはいつでもうちに戻ってきていいからね」

 

「ありがとうございます」

 

「だぁかぁらぁ…。つっこむのもめんどい。話、はじめて良いか?」

 

お辞儀する榛名と呆れ顔の斉藤。

そして少し真面目な顔になる。やっぱり久々に会ったというよりは会いに来たということなのだろう。

 

「なら場所を変えよう。ここは騒がしい」

 

「わかった。ついて来てくれ」

 

席を立ち、斉藤に付いていく。

 

―・―・―・―・―・―

 

「司令官、お帰り」

 

「もう、レディを待たせるのは良くないのよ!」

 

「お帰り司令官!」

 

「お帰りなさいなのです」

 

わぁお。ここは天国かな?

いや、むしろ地獄だな。欲しいものが目の前にあるのに手に入らないのだから。

 

「ただいま。みんな良い娘にしてたか?」

 

「当然よ!というかレディに向かって良い娘って子ども扱いしないでよ!」

 

「ダー」

 

「もちろんよ!」

 

「はいなのです」

 

斉藤を待っていたのは第六駆逐隊、暁型4姉妹だ。

黒髪、というか紺色?の長髪で帽子を被っているのが1番艦の暁。通称レディ(笑)

水色の長髪で帽子を被っているのが2番艦の響。通称フリーダム響

赤みがかった茶色のショートが3番艦の(いかずち)。通称ロリお艦

黄色がかった茶色の長髪をバレッタで束ねているのが4番艦の(いなづま)。通称なのです

 

非常に可愛らしいことで評判のある駆逐艦娘たちだ。

 

「ハァ↑ラショ↓ー!!!」

 

「お前は突然何を叫んでいるんだ」

 

いかん。リビドーが暴走しかけた。

 

「ハラショ。面白い人だ」

 

流石フリーダムさん。ノってくれた。

 

「よろしく。素敵なレディたち」

 

イケメン俳優をイメージして挨拶をする。

 

「司令官。この人、変よ」

 

「はわわ…、暁ちゃん。そういうのは思っても言っちゃだめなのです」

 

「oh,no…」

 

へこむわぁ

 

「ふざけるのもそこまでにしてそろそろ真面目に話したいのだけど?」

 

「わかったよ。それでなんだ?ただの健康診断にしては時間を取りすぎているとは思ったけどキミが出てくるのは予想外だ。いくら新米とはいえ提督の行動にこれほど介入できるほどの上の人から何を託された?」

 

そう、健康診断という名目で呼ばれてはいるが、それだけにしては時間が長すぎる。

何かあるのではないかと踏んでいたが本当に何かあったとは。

 

「察しが良くて助かるよ。お前相手には変に遠回りな言い方はしないほうがいいよな。実はうちの上官がある作戦を実行しようとしている。それに参加を促すよう指示されてきた。ただし、その作戦っていうのは対外的なものではなく、内部抗争の一種だ。だから命令することはできないんだと。お前はこういう派閥抗争には参加するタイプじゃないのはわかっているし、そう伝えているけど、その上でお前の力を借りたいんだってよ」

 

「それで交流のあるキミがネゴシエーターとして呼ばれたと」

 

「そういうことだ」

 

実際派閥抗争に加担するのは好まない。無派閥としてむしろある程度放って置かれるほうが好ましいのだが…

 

「あれ?変な人かと思ってたら意外としっかりした人?」

 

「うちの司令官は変なところが多いけど、仕事はしっかりできる人だよ」

 

敷波、それフォローなんだろうか?変な人なのはまぁ、否定しきれないけどさ…

 

「さて、そんなに期待されるほどの活躍をした覚えは無いが、なぜ僕なのかを聞いているか?」

 

たかだか一提督、それも新米だ。

大きな功績を残したわけでもなければ、誰か有力者の関係者というわけでもない。

思い当たる節がないのは事実だ。

 

「お前は自覚ないのだろうけど、結構評判あるんだよ。そもそもほぼ嫌がらせとして新人一人で鎮守府を一から切り盛りさせられているのに、平気で運営している時点で一目置かれているぞ。普通は元々関係者でもない限りそこらの鎮守府に下っ端としていれられるんだからさ。それと、改めてお前の訓練生時代の戦績が異様なことをうちの上官が気づいたんだよ。それも改ざんされていることも含めてね」

 

確かにいきなり一人というのは数は少ないが異例というほどではないはずだ。

それに戦績の改ざんってなんだ?

 

「ちょっと確認したい。新人一人からはじめるのってそこまで異例か?過去に多くは無いが例はあったはずだぞ?それに戦績の改ざんって?」

 

「やっぱり無自覚だよなぁ。新人に一人でやらせるのが嫌がらせ人事っていうのはわかるよな?つまり普通はそれでてんてこ舞いにさせて、気に入らない新人を潰す腐った連中がいるんだよ。それの対象にされたのに、屁でもない顔してるお前にそいつらは苛立っているし、そうでない連中もそれなりにみてるってことさ。そんで、うちの上官がお前に興味を持って訓練生時代の戦績を見直してたのさ。そしたら戦況と判定結果が明らかにおかしい模擬戦があってな。洗い出したらお前の戦績はほとんど教官共に改ざんされてたらしい。身に覚えないか?」

 

知らないところで評価が上がってたのか。

それはともかく改ざんされた模擬戦?

そもそもそれほど僕は戦績自体は悪くなかった覚えがあるのだが。

 

「ちょっとその記録を見直さないとなんとも。それなりに勝率は悪くなかった覚えなんだが…?」

 

「勝ち負けで言えばそれほど操作されていない。ただ勝ちでもA判定をB判定に落とすとか、負けでもC判定をD判定に落とすとかはやっていたみたいだ」

 

「あぁ、そういうこと。だから勝率は悪くなくても成績は悪かったと。座学の態度評価に引っ張られているのかと思ってたけど違ったのか」

 

「座学態度はあるだろうけれど、おそらく戦績改ざんのほうが大きいだろうな。んで、総合的にみたら新米とは思えない人材ってうちの上官が判断したようだ」

 

「あの、一つ聞いてもいいですか?」

 

敷波が手をあげて質問する。

 

「ん?なんだい?」

 

「司令官って訓練生時代の戦績ってどんな感じだったの?」

 

「不確かだけど、6割ちょいの勝率だったかな?」

 

「7割2分だったよ。俺自身が数えたから確かだ。というか思い返せばお前が負けたっていうのあんまり聞かなかったしな」

 

あれ?そんなに勝ってたっけ?

 

「そんなに!?」

 

「ハラショ」

 

「ただの変人じゃないのね」

 

「はわわ…」

 

「そこまでとは思っていませんでした…」

 

「す、すごいね」

 

暁、響、雷、電、榛名、敷波の驚く声が上がる。

何か失礼なものがあった気がするが可愛い艦娘だから流してあげよう。

 

「そこまで高かったか?間違えてない?」

 

「いや、お前の全戦闘を見直したらそうなった。というかなんでほとんど小型艦しか使ってないのにそんなに勝てるんだよ。未だに訳わからん」

 

「そう言われてもな…。単にでかい艦使えばいいってことじゃないのに、とにかく大型にこだわるやつらばっかりだったからじゃないのか?」

 

「俺はお前を真似して小型主軸で挑んでもまったく勝てなかったのだが?」

 

「知らんわ。キミがそんなことをしていたことすら初めて聞いたわ」

 

「まぁはじめのうちだけだからな。その頃はとにかく勝った連中の構成を真似してたんだよ。お前とそれなりに話すようになったのは自分の方針ができてきてからだから話してなかったわけだ。だいぶ話が脱線したな。悪い。話を戻すとうちの上官がお前の能力を見込んで力を貸して欲しいのだと。実力はあるのに一部の上の所為でくすぶらせるのはもったいないってことだろう。無理にとは言わないが、その上官と会って話を聞くぐらいはしてみないか?」

 

とりあえず僕に白羽の矢が立った経緯はなんとなくわかった。

けれど、具体的な内容が一切出てこないから判断に困るな…。

 

「派閥抗争の戦力として欲しいって言ってたけど、具体的にどんな派閥で何をするつもりか聞いてるか?」

 

「うちの派閥の目的を話すと、艦娘の扱いを改善することだ。艦娘の扱いは各鎮守府の代表提督に一任されているが、派閥によってある程度方向が決まっているんだ。それで、艦娘を虐げる様な扱いもする派閥があるんだ。そういった連中から艦娘を救う作戦を予定しているらしい。それ以上のことは俺には知らされていない。ちなみに俺が担当するのは虐げられている艦娘の一時的な受け入れだ。お前が参加するとなったら何をさせられるかは正直わからない。他に聞きたいことは?」

 

「少し考えさせて」

 

虐げられている艦娘がいる。これは確かに嫌な気分になる話だ。

だが、だからといって救おうというのは正しいのか?

一見すると救うべきだろう。ただしこれには斉藤の言う通りの状況だったらという前提がつく。

虐げるの度合いが他の鎮守府を確認していない僕には判断できないからなぁ…

単に出撃回数が多く、疲労が溜まっている状態でも戦闘をさせている、といったものも虐げるの類ならば僕もそちらに含まれてしまう。

艦娘側の感覚でどのように感じているかが重要だ。

 

個別で見れば例外は居るものの、基本的に艦娘は戦闘に積極的だ。

()()ことは嫌っていても、()()こと自体に忌避感を持つ者はほぼ居ない。

これは訓練生時代から触れ合ってきたすべての艦娘にいえる。

だからすべてそうだろうとはいえないが、そういった娘らを多く出撃させているのは良くないとして引き剥がすのは違うと思う。

 

もしかしたら艦娘の出撃を控えさせている提督が居るのかもしれない。

戦いたいという艦娘の意思を無視して、安全に配慮という名目で抑えさせるのもある種の虐げだ。

これに対して、斉藤の派閥が艦娘は『戦いたがっている。だから控えさせるのは虐待行為だ』といった考えの場合、控えさせる提督から無理に出撃させる鎮守府へ艦娘を移籍させて救うなんていう話になるかもしれない。

 

そも、艦娘の扱いに正解は未だ見つけられておらず、それ故に提督に一任とされている。

それを自分たちの扱いこそが正しいとして、他に口や手を出す連中とはちょっと関わりを持ちたくない。

斉藤の派閥がどうなのかもわからないし、そもそもそういった類の争いは遠ざけるのが最良だ。

 

では実際僕はどうするべきか?

…よし、答えは決まった。

 

 

 




久々の他提督登場。
六駆に榛名とうらやましいです。

それはさておき、提督の決断はいかに?

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