僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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忙しいときほど趣味が捗る時ってありますよね…



健康診断_交渉

中将について行くと個室に招かれた。

大き目のベッドに一人掛けのソファが二つ、小さなテーブルの上にはワインボトルとグラス、それに氷の入ったバケツみたいなものまである。

壁には絵画が飾られてあり、見るからに高級そうな部屋だった。

おそらくここが中将に割り当てられた部屋なのだろう。

 

「そちらに掛けて楽にしてくれ」

 

そういって中将は奥側にあるソファに座る。

失礼しますと一声掛けてから正面のソファに腰掛ける。

 

「娘たちと何か話はしたかね?」

 

「えぇ、タウイタウイ泊地で不当な扱いを受けている艦娘を救い出すとのことですよね?それについてならある程度お話を進めさせていただきました。とはいえまだ詳細を詰め切れていないので、纏まってから報告したほうが良いでしょうか?」

 

「ふむ…」

 

そういって少し腕を組む中将。

何だ?今の話で何を悩む必要がある?

なんだか中尉のときとは違った違和感を覚えるぞ。

嫌な予感もする。

 

「いや、そうだな。今日の内容は娘から聞こうと思うが、君からも後日書面でまとめて欲しい。それとこの件に関してキミに一つ頼みたいことがある」

 

頼まれたくないなぁ…

 

「頼みごと、ですか?」

 

「あぁ。その作戦。どうにか娘を止めて欲しい」

 

チョットナニイッテイルカワカラナイ。

そもそも中将の作戦じゃないのか?

 

「どういう意味でしょうか?この作戦は中将の指揮下だと伺っていましたが…。なぜ私が止めに入る必要があるのでしょうか?」

 

自分でやめさせればいいやん。

 

「そうだな、そこから説明しなければならないな。まず、海軍とも言われる我々の組織において大なり小なり多くの派閥があることは知っていると思うが、その中でも大きく二つ方針があると考えて欲しい」

 

そういってグラスを手に取る中将。

その中に氷を入れていく。

というか今更だけどワインなのに氷があるのは変だな。

 

「この方針とは深海棲艦相手にどのように立ち向かうかという点で異なっているのだが、私も属する所謂ハト派、こちらは深海棲艦というものに対してどちらかというと防衛戦を主体に行おうとする派閥だ。出自も大元もわからない深海棲艦に対して、どうやったら根絶することができるかを究明できるまで大規模な戦闘を控えるようにして消費を抑え、いずれ根本を叩けるようにする考えだ。それに対してもう一つは所謂タカ派。こちらは深海棲艦を迫り来る脅威は即座に叩くべきという考えで行動する派閥だ。ゆえに攻めにでる作戦行動が多い。確かに被害が出る前に叩くというのは正解の一つではあるだろう。が、叩けど叩けど湧いてくる深海棲艦相手にこちらの体力がつきるのが先ではないかと我々は考えている」

 

ワインボトルからグラスに注ぐ中将。おい、アンタも健康診断中じゃないのかよ!

 

「キミもどうかね?」

 

「いえ、明日に差し支えるので」

 

「ん?あぁ、これは水だよ。ワインボトルに入っているのは単に私の趣味だ」

 

確かにグラスに入っているのは透明っぽい液体だ。

 

「何か特別なワインボトルなのですか?」

 

「あぁ、私の生まれた年のワインのものでな。飲みきってしまった後も単に飾るだけでは味気ないと思って、こういう酒を飲めないときに雰囲気を味わうために使うのさ」

 

「なるほど」

 

せめて気分だけでも酒を飲みたいってか?

 

「と、話を戻そう。派閥には大きく二つの方向性があることを説明したな。それで、タカ派の一部で艦娘を酷使する奴らが居るのだが、その中でもひどい連中に対しては同じ派閥内でも批判が湧いてきているのだ。そして、その批判している側の者から私に相談などが持ち込まれてな。いくら派閥が違えど、国を守り、深海棲艦()を討つ同志であり、同じ組織の仲間であるのだから協力し合えるところは協力するのでこういったことは多々あるのだが、それを娘が勘違いしてしまってな。どうにも私が艦娘を酷使する奴らを摘発するつもりでいると思っているようで、勝手に動き始めたのだよ。はじめのうちはもう子どもでもないし、部下を持つ身にもなったから大それた行動はしないだろうと考えていたのだが、少々暴走気味でな、私の声にも耳を貸さない。強引に引き止めることはできるが、そうしてしまうとあの子は独り立ちできない状態になりかねなくてな…。キミのように歳の近い者から悟り、自らを正せるようになってほしいのだよ。斉藤君に頼もうと考えていたが、彼はもう娘のほうに同調してしまってな…。情けない話だが頼りになりそうな人がそう思いつかなくて、ふと斉藤君から聞いた有能な同期、つまりキミならなんとかできるのではないかと思ってしまったのだよ」

 

とりあえず、話が長い。

勘違いで暴走した娘を止めろ。だそうだ。

 

「なかなか厄介な状況ですね。放置したら厄介ごとの最中であるタウイタウイ泊地に突撃しかねないと。それを回避したいということですよね?」

 

「そうだ。件の艦娘は他の者が政治的な方法で救い出すように動いている。ゆえに余計他から手を出されるとやっかいなのだ。そしてこの騒動は元々タカ派の内部での問題に娘、つまりハト派である私の側近が手をだすという状況はタカ派とハト派の関係に悪影響を及ぼす。事は見た目以上に複雑で根深いのだよ」

 

嫌な予感的中。

正直放っておいてもいい問題だが、妖精さんの言っていた僕の艦娘も居るということが問題だな。

 

「政治的な方法で解決するとおっしゃっていましたが、どれほど時間がかかりそうですか?またその後の艦娘たちの扱いは?」

 

「正確な進捗を確認できないため時間はわからないが、おそらく二、三ヶ月でやるだろう。奴は…相談してきた奴はそれぐらいの手腕がある。その後の艦娘たちの扱いについてもおそらくそいつの一任だろうな。おそらく本営に送られ対応する提督を探すことになるだろう」

 

となるとその娘たちがうちにくるのは最低でも四ヶ月程後。だがそんなすぐに識別作業が終るならもっと待機艦娘は少ないだろうから、それ以上時間がかかると思うべきだな。

そんなに待ち続けられるかな?場合によっては上手く僕の娘だけは引き抜けるよう動くことを視野に入れておこう。

それぐらいの報酬がなければやっていられない。

というかそうだ、報酬は?

 

「そうですか。例えばの話ですが、もし私がその頼みを断ったらどのようになるのでしょうか?」

 

「…その場合、私は他を当たるしかないな。だがキミは断る気などないのだろう?斉藤君から群れるのを嫌うタイプだと聞いたが、どちらかというと厄介ごとを嫌うタイプに見える。となればより厄介なことを避けるために多少厄介なことをする場合もある。違うかな?」

 

明言する気はないが、断ればもっと厄介な目に遭わすぞって意味だよな。

中将という地位にもなれば少尉程度簡単に扱えるだろうし。

仕方ない。これは動ける範囲で可能な限り利潤を出さないとな。

 

「さて、私のタイプはともかく、今回の頼み、引き受けはしますが期待はしないでくださいね」

 

「キミなら上手くできるさ。でなければわざわざこういう場を用意したりせんよ」

 

勝手なことを言ってくれる。

さて、少しでも利を取れるように交渉しなければならないな…

 

と話しているとテーブルの上に小さな影が。

昼間会った妖精さんだ。

何か中将に伝えている。

 

「テイトクサンヲアソコニツレテカナイノ?」

 

あそこ?

 

「ん?あぁ、そうか…。実を言うとだな、頼みを聞いてくれた礼を用意してあるのだ」

 

解決すらしていないのに?

妙だな。

 

「成功報酬、ということですか?」

 

「君が居れば成功も同然だろう?だから用意した。とはいえ引き受けてくれた時点でもうこうする予定だったのだが」

 

こうする?

なにかをするのか。

 

「本営直属で精鋭部隊を扱うところがある。そこにキミを推薦させてもらう。安心してくれ、確かに重要度の高い作戦を任せられることもあるが、キミにならできるだろう。それにある程度の地位も約束されるから他所から口出しされたり厄介ごとに巻き込まれたりすることも減るだろう。少なくとも現状受けている嫌がらせはだいぶ収まるはずだ」

 

「現状受けている嫌がらせ…ですか…」

 

「そう。そんな中でもしっかりと指揮をできるキミになら問題なくこなせる仕事さ。むしろ今よりも楽ができるだろう」

 

とりあえず嫌がらせって何のことだ?一人運営は嫌がらせらしいがむしろ助かるし、それ以外に何かされているのだろうか?

 

「具体的にどの程度待遇が良くなるのでしょうか?」

 

「まずもっと人員が回されるだろう。施設の管理をキミと艦娘たちで賄うのは大変だろう?他には資材の融資がされる。遠征に割く艦娘が激減するため海域攻略が非常に楽になる。他にも給与が増えたり、もちろん階級も上がるだろう」

 

「人員増加…私に対応しない艦娘も指揮下に入れるということでしょうか?」

 

「そういうこともあるだろうが、人員増加は艦娘ではなく人間の部下が増えるという意味だ」

 

…なるほど。なら()()だな。

この話。給与増以外はまったく魅力がない。

だがなんだか妙に引っかかる。

なんだか第六感的な何かがここで断ってはならないと告げている…

そう、囁くのだ、僕のゴー…いや、やめておこう。

ふと、妖精さんと目があった。

こちらをジッと見つめている。

そういえば妖精さんが伝えようとしていたこと…

まだはっきりとしない点が多いが、ここは()()()()()()()()中将に従おう。

 

「なるほど。ちなみに推薦ということは確実にそこにいけるわけではないのでしょうか?」

 

「ふむ、痛いところを聞くもんだ。答えにくいがそのとおりだ。だがもし選ばれなくても実力ある提督として見られるだろう。そうすれば下手な連中からは邪魔されにくくなる。それだけでもキミには価値があると思えるが、どうかな?」

 

「わかりました。とりあえず、という気持ちではありますが中将について行かせてもらいます」

 

さぁて、この決断がどう転ぶかなぁ…

 

 




提督の○ーストは一体なんと囁いたのでしょうか。

続きをお待ちください。
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