僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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糖分がたりない。


健康診断_裏2

side:中将

 

「では最後に改めて私の()()()()()()()()、および横須賀鎮守府への研修手続きをお願いします」

 

「わかった。手配しよう。今日はもう遅い。ここまでにしよう」

 

「わかりました。それでは失礼します」

 

そう言い残し、()は去っていった。

人となりは真面目な若人だが、時たま妙に達観しているところや鋭いところを垣間見せる。

おそらくこちらの考えについてある程度までは見抜いていて、ある程度道化を演じていると踏んだほうがいいだろう。

今回のことをテストとして使うことにしたが、それは不要な心配だったかもしれない。

 

彼がもし元帥の言う()()()()()()()でなくてもこれまでの実績から考えれば実力は相応にあるだろう。

あと問題があるとすればこちらに共感を得られるかどうかだ。

どうにも信頼は得られていないように感じた上に、何か普通の人とは違う何かを感じた。

それが何なのかは不明だが、対人関係について含みがあるのは確かだろう。

 

どうにかこちらの真の作戦に乗ってくれれば良いのだが…

 

考え事をしているとノックがされた。

 

「誰だ?」

 

「私です。幸です」

 

「空いているぞ」

 

声を掛けると娘が入ってきた。

 

「彼はどうでしたか?お父様」

 

「手を貸してくれるようで助かった。記録で読み取れる以上に優秀な人材だろうな。しばらく横須賀鎮守府(うち)で研修をするという名目で密に連絡を取る。幸も彼から多くを学ぶことができるだろう」

 

「えぇ、非常に明晰な方でした。ぜひとも色々とお伺いしたいものですわ」

 

うれしそうに両手を組み、微笑む幸。

歳の近い知人ができてうれしいのだろう。

私も妻もこういった職業柄あまり普通の女の子として過ごせなかったのだから余計だろう。

正直若い男ということで父親として複雑な感情を持たないわけではないが、それ以上に娘が喜ぶことであるほうが大事だ。

 

「それで、幸としてはどう動くつもりなのだ?他所の問題に口を出すのだ。任せろと言う以上私を納得させられる行動をしてもらうぞ?」

 

「ご心配なく。事は上手く行っておりますわ。それに彼の力も借りられるならもう成功したも同然です」

 

娘が近寄ってきてソファに座る。

 

「まず、対象の鎮守府に対して妖精さんを通じて情報を聞き出している最中です。内情を把握できたところで私が演習目的で入り込み、相手の気を惹きつけます。その間に艦娘たちで救出作戦を行い、泊地を出た後は少尉たちに回収を依頼してあります。細かな作戦行動は彼らの意見も取り入れてより万全にしますわ」

 

妖精さんを通じて…か。だが本来そういった裏工作の様なことを妖精さんが進んでやるものなのだろうか?

あまり想像ができない。また、人以上に意思疎通がし難い妖精さんからの情報をどこまで汲み取れる?

漏れがあったらその時点でアウトだ。

潜入方法もシンプルな点はいいが、相手の規模によっては難しい方法だ。どこまで惹きつけられるのかなどやってみなければわからない。

いくらサポートに彼が入るとしてもあまり現実的な方法ではないな。

 

「確実性がない作戦と受け取れるな。わたしは「大丈夫ですよお父様。私にお任せください」

 

こういう頑固なところは私に似たんだろうな…

しっかりと咎めれば幸も思いとどまる。そこまで愚鈍な娘ではない。

だが彼がどう動くのか、一応確かめさせてもらおう。

上手く諭してくれるのであれば助かるのだが…

 

―・―・―・―・―・―

side:敷波

 

無線機から音声が聞こえなくなってからしばらく経つと、司令官が部屋に帰ってきた。

 

「ただいまぁー。あーちかれた」

 

いつものおちゃらけた司令官だ。

さっきまでの真面目でかっこいい司令官もいいけど、こういうだらけた司令官もそれはそれで可愛げがあって良いと思う。

 

「おかえり。一応あたしのほうで聞き取れた分はメモしておいたよ。それにしてもなんだかすごいことになってきたね」

 

「ほんとにねー。でもうちに来てくれるはずの娘が居るって言う話だから放っておけないんだよねぇ…」

 

あ゛~と変な声を出しながら服を緩め、椅子に座る司令官。

ちょっと親父臭いかも…

でも鎮守府でもこんな姿なかなか見れないから珍しいといえば珍しいかも。

普段本当に大変なときでも淡々とこなしていくし、休むときは奥の資料室に篭ってるから疲れた姿を私たちに見せたりはしない。たぶん彼なりの配慮なのだろうけど、だからこそ今回はちょっと特別かも。

 

「お疲れ様。お茶でも飲む?」

 

「あー、冷たいお水でお願いします」

 

「わかった」

 

コップに氷と水を入れて渡してあげる。

ありがとと小さく言って受け取ってくれた。

 

「それにしても敷波さんは今回の件どう思う?」

 

「どうって?」

 

「何か思うところはないかな?僕はなんだか引っかかるものがあったんだけど、上手く表現できないんだ」

 

中尉の話は正直なんだか安直過ぎるなーとは思ったけれど、中将の話を聞けばなんとなく理解できた。引っかかるところか…

 

「うーん。なんで急に司令官が本営の部隊を指揮することになるんだろうね?」

 

「確かにそこも変なところだよね。もっと適当な人は居るだろうし、具体的には中将自身とか。話の持っていき方も急だった。ここになにかあるのは間違いないだろうけど、それ以外にも何かありそうなんだよね…まぁ、ありがとう」

 

あたしが気づくぐらいのところにはとっくに気づいているよね。

 

「あっ、もう一つ。他所の鎮守府って司令官・・・えっと提督をやっている人以外にも人がいるのが普通なの?うちには()()は司令官しかいないよね?」

 

ふと思いついた疑問を口にすると少しだけ司令官の目つきが変わった気がする。

 

「いいところに気づいたね。まず、普通は他にも人…()()はいるよ。事務や雑用なんかはその人たちにやらせているみたい。それと大体の鎮守府は提督自体も複数いるね。後半の部分はいろいろ聞いてたからわかるだろうけど、前半の部分については僕が配備を断ったのが理由」

 

配備を断った?雑務の人を…いや、()()を拒んだってこと?

 

「えっと、あたしが聞いてもいい範囲で教えてくれる?」

 

「別に隠すような理由じゃないからかまわないよ。単に僕が他人を鎮守府に入れたくないだけ。()()は何をし始めるかわからないからね。自分のテリトリーの中でびくびくして過ごしたくないんだよ」

 

何をし始めるかわからない…他の人を毛嫌いしているってこと?

 

「…じゃぁ、あたしたちもできれば一緒にいたくない?」

 

「それはない。君たち艦娘は別だよ。そういう意味では僕は()()()()()()()()しているね。人間ならともかく、艦娘(君たち)提督()を裏切らない。だからそういうことは無いよ」

 

普段よりも真剣な物言い。これはちょっとだけいい情報を仕入れたかもしれない。

今ならもう少し踏み入っても答えてくれそう。

 

「逆に、その…あたしたち艦娘が司令官の傍に行くのは良いの?」

 

「大歓迎だね。ただ無理はしないでいいよ。そういうのを嫌う娘もいるだろうし。敷波さんも無理に僕と接触しなくてもいいからね。今回みたいな仕事はその、耐えてもらうけど…」

 

大歓迎か。そっか。ならもうちょっとやってみようかな。

というか今回の仕事はあたしから引き受けたようなものだし…

なんかイラついてきた。おいしいことがあってもいいよね。

 

「?どうしたの敷波さん?」

 

無言で司令官に近づく。

不信にしている司令官。でも戸惑ってはいても拒絶感はない。

 

「えい」

 

そのまま投げ出されている彼の左手をつかむ。

ニギニギ。

 

「?????」

 

そんなあたしを司令官はすごく不思議そうな顔をして見ている。

 

司令官の手、結構ごつごつしてる。

それにあったかい。

爪は結構深く切っているんだ。

 

「敷波さん?」

 

「潮にはこういうこと許してたんでしょ?ならあたしもいいでしょ?」

 

「別にかまいませんが、その、突然だからちょっとどうしたのかなって?」

 

ただ手を触れている。いや、結構ニギニギしてるけど。

それだけで結構良い…

 

「別に。ただしたいからしてるだけ。大歓迎って言ってたのにあたしだとダメなの?」

 

「いやいやいやいや、大歓迎だけどね。いきなりだとちょっとびっくりしちゃうんだよ」

 

「ふーん。そういうことにしておく。そういえばさ、なんで潮には最近"さん"をつけないで呼んでいるの?」

 

基本司令官は艦娘を"さん"をつけて呼ぶ。

作戦のときなんかは結構呼び捨てだったりするけど、こういう落ち着いているときに呼び捨てにする娘は居ない。

せいぜい那珂"ちゃん"が異例かな?

だけどこの間から潮のことは呼び捨てで呼んでいる。

来るときも呼び捨てだった。

何か理由があるのだろうか?

 

「あぁ、そう呼んでも問題なさそうだったから流れで。あれ?嫌がってました?」

 

「別にそんなことはないけどさ。逆にあたしは"さん"なんだ」

 

「敷波さんが良ければ呼び方変えますよ?呼び捨てが良いですか?」

 

それだと何かあたしが強制したみたいで嫌だ。

潮みたいに司令官から変えてくれるのがいいのに。

 

「別に。無理に変えなくてもいいよ」

 

「んー」

 

「なにさ?」

 

じーっと見つめてくる司令官。

 

「ねぇ、僕も手を握っていいかな?()()

 

!?

 

「え、あ、う、うん。いいよ」

 

「じゃあ失礼して」

 

そう言って右手であたしの手を包むように握る司令官。

不意打ちに呼び捨てでそれはちょっと威力が高いよ…

 

「敷波の手はあったかくて気持ちいいね」

 

「あったかいのは司令官のほうだと思うけど」

 

「そ?まぁどっちでもいいや。にぎにぎ~」

 

こ、これはちょっと恥ずかしいけど、良い…

どう良いとはあらわせないけど、とにかく良い。

しばらく続けているとなんだかホワホワしてきた。

 

「ん?敷波、眠いのかい?もうこんな時間か。そろそろ寝ようか?」

 

「んーん…、もーちょっと…」

 

まだこの温もりを感じていたい。

 

「そっか、でも立ったままだとつらいだろう?ここに座ろうか」

 

司令官に手を引かれて座らされる。

 

「んー」

 

隣に座る司令官にくっつく。

もっとあったかくなった。

とても幸せな気分で過ごせた。

 

 

 




敷波に手をニギニギされ隊。

※コンジェニタルとは"先天的な"といった意味です。
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