僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~ 作:荒井うみウシ
side:霰
鎮守府に着任してからすぐに司令官はどこかに出張してしまった。
帰ってきたかと思えばすぐに皆を集めて次の作戦について話をされた。
あんまり事情はよくわからないけど、司令官がしたいことを支えられたらいいなと思う。
そういえば司令官のことまだまだ知らない…。
見た目に反して結構可愛い人だと思うけど、もっと知りたいと思う。
そう思ってたら自然と司令官の後をついて歩いていた。
執務室で席について一息ついたところで司令官が口を開いた。
「で、何かご用事でしょうか?霰さん」
「んちゃ」
とりあえず返事はしておく。
良くは知らないけど、なんだか面白い言葉だからよく口ずさんでしまう。
結構気に入ってる。
「いや、うん。んちゃ。じゃなくて、用があるなら聞きますけど?」
ん~、特に用はない。ただ司令官を見に来ただけだし。
「別に」
「左様ですか」
司令官はお仕事を始めた。
報告書か何かの書類を眺めてたり、なんだかカタカタやってたり、唸ってたりする。
すごく真剣に作業をしている。
前見たときは結構茶目っ気と可愛げのある感じだったけど、こうしてみるとかっこいい感じの人かもしれない。
「霰さん。見てるのはかまわないけどさ、立ちっぱなしはつらくないかい?」
ふと顔をこちらに向けて気を使ってくれる。
司令官をみてるだけで飽きないから問題ないと首を振って答える。
すると司令官は軽く頷いてまたお仕事に戻った。
少しするとノックの音がした。
「潮です。よろしいでしょうか?」
潮ちゃんのようだ。
「どうぞ、あいてますよ」
司令官が答えると、潮ちゃんが入ってきた。
「失礼します…?」
目が遭うと動きが止まった。
一体どうしたのだろうか?
「えっと…霰…ちゃん?」
「ん」
「えっと、霰ちゃんはいったい何を…?」
司令官を見ているだけ。
「…見てるの…」
「は、はぁ…」
なんだか納得しているのかしていないのかよくわからない表情。
別にそんなに変なことじゃないと思うんだけど。
「さて、潮は何か用かい?それとも単に会いに来てくれたのかな?ナンチテ」
司令官がそういうと潮ちゃんは顔を伏せた。
図星なのかな?
潮ちゃんもかわいい…
「その…えっと。はい。おかえりを言いたくて…」
もじもじとしながら潮ちゃんが言うと、司令官がすごく驚いた顔になった。
うん、なんだか二人ともすごく初々しい感じがしてかわいい。
「えっと…うん。ただいま、潮」
「はい!おかえりなさい、提督!」
二人は仲良いのかな?すごくお互いにうれしそうだ。
ニコニコもじもじかわいらしい。
「んんっ。少し待っててね。今区切り悪いから。切り上げたらお茶でも飲もう」
照れた感じを隠すためか咳払いをしてから司令官が提案する。
「えっ。そんな、悪いです…。お気になさらずに、どうぞ」
潮ちゃんもまだ顔が赤い。
二人ともなでなでしてあげたいぐらいかわいい。
「いや、僕が饅頭たべたいだけなんだ。言い訳になってくれない?」
どうにか理由をつけて誘う司令官。
「そういうことなら…」
もともと一緒にお茶したそうだったんだし、最初から素直にお茶すれば良いなんて野暮なことは言っちゃダメだね。
「と言っている間に終わり。さて、用意するから二人とも座った座った」
あれ?二人ともってことは霰も?
まぁご一緒させてもらおう。
「その…失礼します」
「んちゃ」
司令官がお茶の準備をしに行った。
潮ちゃんは落ち着かなさそうにそわそわしている。
司令官も機嫌良さそう。
こういう空気は好き。
「はい、お茶。熱いから気をつけてね」
しばらくすると司令官がお茶をくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとう…ございます」
口に含めるとお茶の香りが広がる。
不思議と渋みや苦さは感じない。
すごくおいしい。温度も熱すぎずぬるすぎず飲みやすい。
司令官がお饅頭を手にとってうれしそうに頬張る。
もぐもぐと幸せそうに咀嚼する。
そして飲み込んでから一つ頷く。
「うん。おいしい」
小さくつぶやく。甘いものですごくうれしそうに食べるところとか本当に子どもみたいでかわいい。
「あれ?提督のお茶、冷たいのですか?」
潮ちゃんが司令官のコップを見ながら言う。
「ん?あぁ、僕は水。というかよく気づいたね」
ほんと。どうして気づいたのだろう?
「湯気が出てなかったので…。お水で良いのですか?」
なるほど、言われてみれば確かに。熱々ではないにしろ、こっちのお茶は湯気が出てるのに、司令官のコップからは湯気が出ていない。
潮ちゃんよく見てるなぁ。
「うん。結構ミネラルウォーターっておいしいんだよ。あと僕が猫舌っていうのも理由かな」
「猫舌…ですか」
「猫舌です」
司令官、猫舌なんだ…。
うん、なんだかかわいい。
「急にどうしたんだい?霰さん」
「なんでも…」
司令官がかわいいなって思っただけ。
「提督。私たちがお饅頭を二ついただいちゃっても良かったのですか?」
そういえばさっきもらった分はまだある。
「ん?あぁ、いいんだよ。余った分は早いもの勝ちって伝えてあるし。こうして独占もしていない。なにも問題ないさ」
そんなことも言ってた気がする。
まぁ気にせず食べる。
おいしい。
「…そうですか。じゃあいただきます」
潮ちゃんも食べる。
みるみる顔がほころんでいく。
「おいしいですぅ」
かわいい。
「よかったよかった」
司令官もすごく和んだ顔で見つめていた。
この後もしばらくお茶をした。
―・―・―・―・―・―
side:潮
提督が帰ってきた。
急に召集をかけたと思ったら、なんだか他の鎮守府で大変なことが起きているみたい。
提督は艦娘たちを助ける作戦を行うという。
もちろん提督が望むのであれば私はどんな作戦にも参加しようと思う。
それで仲間が救えるのであればなおのことだ。
そして真面目な話が終った途端いつもの明るい提督が皆にお土産を配ってくれた。
どうやらお饅頭らしい。
お礼を言って受け取る。
それで会議は終了した。
一応会議の時にみんなで提督にお帰りと言ったけど、しっかりとお帰りを伝えたいと思った。
一旦部屋にお土産を置いてから、提督に会いに行く。
きっと執務室でお仕事をしているだろう。
執務室の前で深呼吸をしてからノックをする。
「潮です。よろしいでしょうか?」
するとすぐに返事が返ってきた。
「どうぞ、あいてますよ」
「失礼します…?」
なぜか部屋の真ん中に霰ちゃんが立っていた。
何かやっている最中だったのかな?
にしては提督は黙々と作業をしている。
「えっと…霰…ちゃん?」
「ん」
反応はしてくれるけど、いまいち何を考えているのかわからない娘。
「えっと、霰ちゃんはいったい何を…?」
「…見てるの…」
「は、はぁ…」
提督を見ても肩をすくめて分からないって返された。
何を見ているのかな?
「さて、潮は何か用かい?それとも単に会いに来てくれたのかな?ナンチテ」
本題を忘れてた。
提督に言われてハッとする。
おかえりって言いたくてって思ってたけど、本当はただ単に会いたかったんだと気づいて顔が熱くなる。
「その…えっと。はい。おかえりを言いたくて…」
「うん。ただいま、潮」
はにかみながらも返事をしてくれるのがすごくうれしかった。
「はい!おかえりなさい、提督!」
たった一日。
だけど長く感じた一日。
提督が帰ってきてくれたんだと実感する。
とても暖かい何かで全身が満たされていくのを感じた。
「少し待っててね。今区切り悪いから。切り上げたらお茶でも飲もう」
提督が提案してくれる。
けど、そこまで気を使わせてしまうのは良くない。
本音を言うともっと一緒にいたいし、お話したい。
けど、これから作戦もあるし、出張から帰ってきてお仕事がたくさんある。
我慢しないと。
「えっ。そんな、悪いです…。お気になさらずに、どうぞ」
「いや、僕が饅頭たべたいだけなんだ。言い訳になってくれない?」
あくまで提督のわがままに付き合うため。そういう建前。
でもそんな風に言われたら断れないじゃないですか…
「そういうことなら…」
「と言っている間に終わり。さて、用意するから二人とも座った座った」
そういって立ち上がってお茶の準備を始める提督。
私とお話しながらも着々とお仕事を進められるのはすごいと思う。
「その…失礼します」
「んちゃ」
霰ちゃんも私の隣に座って待つ。
「はい、お茶。熱いから気をつけてね」
そういってお茶をもらう。
ほのかに湯気が立っているが、言うほど熱くはなさそう。
「ありがとうございます」
「ありがとう…ございます」
提督のお茶。初めてもらうけど、良い匂いがする。
一口飲むと、びっくりした。
全然渋みや苦味がない。すごく良い茶葉なのかな?
もらって良いのかな?
と、提督の方を見ると、コップから湯気が立っていないことに気づく。
「あれ?提督のお茶、冷たいのですか?」
「ん?あぁ、僕は水。というかよく気づいたね」
お水?お茶じゃないの?
「湯気が出てなかったので…。お水で良いのですか?」
「うん。結構ミネラルウォーターっておいしいんだよ。あと僕が猫舌っていうのも理由かな」
なんだか私たちはこんなに良いお茶もらっているのに、当の提督は水って申し訳ない気もする。
でも提督がそれがいいっていうのならいいのかな?
それに提督は猫舌だったんだ…
「猫舌…ですか」
「猫舌です」
覚えておこう。あんまり熱いものは出さないように気をつけなきゃ。
他の皆にも教えてあげようかな?
私だけが知っているっていうのも良いけど、きっと皆も知っていたほうが良いことだと思うし。
「…ふふっ」
急に霰ちゃんが笑った。
「急にどうしたんだい?霰さん」
「なんでも…」
と思いきやすぐにいつもの無表情に戻っちゃった。
笑うとかわいいのに…
あ、そういえば。
「提督。私たちがお饅頭を二ついただいちゃっても良かったのですか?」
さっき皆にひとつずつ配られたのに、すぐに二個目をもらうのは他の娘に悪い気がする。
「ん?あぁ、いいんだよ。余った分は早いもの勝ちって伝えてあるし。こうして独占もしていない。なにも問題ないさ」
提督の言う通りではあるけれど…
うん。でも談話室にまだあるだろうし、これだけにしておけば大丈夫…だよね?
「…そうですか。じゃあいただきます」
お饅頭、かわいいしおいしい!
提督と一緒だからたぶん余計においしいんだと思う。
「おいしいですぅ」
「よかったよかった」
提督がすごく優しい顔で見つめてくれて、うれしいやら恥ずかしいやらで顔がまた熱くなった。
その後もほのぼのと過ごせました。
霰の一人称がすごく難しいです。
wikiの台詞集を見てもあえて自分のことを"霰"と呼んでいるだけで、実際の一人称は自分の名前ではない可能性を感じるんですよね。
同系統に朝潮や大潮など。
榛名や不知火とかは素で自分の名前が一人称だと思います。
別枠で卯月や那珂なんかはキャラ付けのために名前やあだ名を自称しているイメージです。