僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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タイトルから卑猥なことを連想した人、正座。


山城さんと開発

「私に頼みたいこと…?」

 

半分は興味なさそうに、もう半分は不信そうに問う山城。

 

「えぇ、この役目は山城さんにお願いしたくて。現状山城さんが適任、というか山城さんにしか頼めないレベルの内容なので」

 

基本私に関わらないでくださいオーラMAXな山城だが、命令であれば話は別だ。

指揮には忠実かつ確実にこなしてくれる優秀な娘だ。

あと思ったほど不幸不幸言わない。

姉様とは言うけど。

 

「わかったわ。それで何をすれば良いのですか?」

 

憂鬱そうにしながらも承諾してくれる山城。

まだ内容も伝えてないけど、無茶なことは言わないだろうという程度には信頼してくれているみたいだ。

 

「一時的に秘書艦になっていただき、装備の開発をお願いします。使用する資材の量はこちらに記載しています」

 

そういってレシピを載せた紙を渡す。

 

「はぁ…。別にかまいませんが、どの程度ですか?」

 

「一日あたり5回ほどでお願いします。タイミングはそちらの空いているときでかまわないので」

 

僕のみでタウイタウイから艦娘を回収する場合の準備だ。

 

「尋ねてもいいかしら?」

 

「何をです?」

 

「この資材の量で望みの装備を開発()()()の?」

 

渡したレシピは燃料/弾薬/鋼材/ボーキ=10/90/90/30のものだ。

()の通りならこれで問題ないはず。

 

「開発だからね。確実に出るなんていえないさ。だから後は回数でカバーかな」

 

大きな差異が無ければ、の話だが。

 

「ふーん。まぁそういうことにしておくわ。でも資材は貯蓄するのではなくて?開発に使っていいのかしら?」

 

「必要経費と割り切るしかないですね。一種の保険という部類になりますが、保険はかけてなんぼですから」

 

中尉はあてにしないほうが良さそうだ。

どの程度の技量かわからないし、手の内もまだ明かしていない。

となれば確実性を担保するためにも自力で保険をかけるしかない。

 

「そう。まぁ無駄にならなければいいのだけれど」

 

山城は納得しているのだかしていないのだか…いや、興味が無いといった風だ。

 

「それと、山城さんにはもう一つやってほしいことがあります。こちらはかなり危険を伴うので、拒否してもかまいません」

 

前置きをして、意識をこちらに向かせる。

 

「ざっくりというと、交戦中に()()()()をして欲しいんです。それを狙ってできるように訓練をこれからお願いします。口頭で説明は難しいので、こちらを」

 

そう言って資料を差し出す。

山城は黙ってそれを受け取り、中身を読み始める。

 

「摩耶さんや羽黒さんにもお願いする予定です。参加してくれる娘が決まり次第詳細な打ち合わせを行います」

 

見る見る表情がこわばっていく山城。

 

「これをやれと?かなり無茶な注文ですね」

 

「えぇ、ですから拒否してもかまいま「やるわよ」いいんですか?」

 

僕の言葉を遮り承諾してくれる山城。

 

「無茶とは言ったけれど、不可能ではないわね。ただ即興でやれるかと聞かれれば否。確かに多大な訓練が必要ね。他のメンバーはどうするつもり?」

 

「拒否されなければさっきも言ったとおり摩耶さんと羽黒さん。それに神通さんと那珂ちゃん。そして白雪さんかな」

 

「赤城さんは入れないのね。それに叢雲じゃなくて白雪なの?」

 

ざっくりとしか読んでいないはずなのに、()()を所望する辺り僕の意図は汲まれているようだ。

非常に話が進めやすい。

 

「確かに練度を考えれば叢雲さんが良いだろうね。ただ状況的におそらく叢雲さんは別に使っている可能性が高いから白雪さんを入れる感じかな。それと赤城さんを入れないのはわざと。総合的に見ると赤城さんは実行時に艦隊に居ないほうが良い」

 

赤城が居た場合のメリットもあるが、居ない場合のメリットが上回っている計算だ。

ただあくまで現状の試算だから変更の可能性は否定できないが。

 

「そう。どうでもいいわ。命令されたことをこなすだけよ。他のメンバーが確定したら打ち合わせに呼んで頂戴」

 

そういっていそいそと立ち去ろうとする山城。

 

「わかりました。ありがとうございます。開発の件もよろしくおねがいしますね」

 

さて、普段の練度上げ出撃の代わりにこの訓練を入れよう。

練度は上がらなくなるし、使用する艦が艦だから出費も激しい。

しかしやっておかねばならない内容なので、致し方なし。

 

「大淀から提督へ、本営から入電です。至急執務室にお戻りください。繰り返します───」

 

話し終わったタイミングで館内放送が流れる。

どうやら大淀が呼んでいるようだ。

本営からの電文?なにか異常事態か?

放送を使うほどだから急ぎなのだろう。

 

―・―・―・―・―・―

 

「遅くなってすまない。何があった?」

 

執務室に入ると既に大淀が待機していた。

一応真面目モードで話を始める。

 

「お疲れ様です。大本営より緊急の入電がありました。宛ては本土内全鎮守府です。こちらを」

 

そう言って書類を差し出す大淀。

 

「先日、大本営所属の一部艦娘が本土近海で突如音信不通になったそうです。周囲への警戒強化および、可能な場合は対象の艦娘を捜索。もし発見できた場合は保護と報告をとのことです。対象の艦娘については一覧が記載されていますので、後ほどご確認をお願いします」

 

書面では言い回しが難しくなっているが、おおよそ大淀の言う通りの内容だった。

艦娘名が書いてある一覧もあり、2艦隊分が連絡不能状態のようだ。

 

対象の艦娘は以下の通り。

金剛・比叡・榛名・霧島・赤城・加賀

利根・筑摩・翔鶴・瑞鶴・鳳翔・北上

 

「大型艦が多いな…」

 

戦艦4、正規空母4、重巡2、軽空母1、雷巡1

北上が雷巡扱い…?

まぁ、ありえるか。

 

「これは書面には載せられていない情報なのですが…」

 

こちらが一通り目を通し終わったことを確認して大淀が口を開く。

 

「今回対象の艦娘はどうやら大本営直属の艦娘のようです。他の対応する提督を捜索中である一時所属ではないとのことでした」

 

つまり、これは正規の本営戦力となるわけだ。

そりゃ大急ぎで回収したがるわけだ。

これだけの戦力、無くなるのであれば相当なことが起きたと考えるべきだし、注意喚起も大急ぎということに納得がいく。

 

この編成で、しかも唐突ということを踏まえれば潜水艦を想定するのが普通だな。

対潜装備はほとんどないうちでは厳しいところもあるが、駆逐が主体だから多少はカバーできるか…

 

とはいえ決め付けるのはだめだな。情報も少なすぎる。

どんな作戦を実行中で、どんな装備だったのかも知らされないと判断がつけられない。

方針としては対潜警戒を強めにした上で索敵自体も強化するとしか今のところできそうに無いな…

 

だが今回の件で一つ考えを見直さなければならないことが出来た。

ある意味これは収穫だ。

今まで艦娘は()と同じく、深海棲艦と遭遇する場合に感知することはできると思っていた。

実際にこの半年ほどでは()()()そうだった。

だが今回の件を考えると、遭遇に気づけないまま轟沈させられた可能性もあるのだ。

別の可能性として気づいていたが、連絡を阻害されたという可能性もあるが、本土近海でという場所を考慮すればこちらは低いだろう。

気づいていた場合、艦の数も多ければ簡単に沈むような艦種でもない。

ならば多少被弾しながらでも本土に救援要請を出せるはずだ。

それをさせないほどの戦力を敵が持っていたなら気づくことができるか、そもそも本土がもう落とされてもおかしくない。

だから気づけなかった場合を考えたほうが順当だろう。

気づく前に接敵され、混乱のうちに大打撃を与える。

不意打ちかつ一方的な戦法を取れば短時間で大戦力を削ることも不可能ではない。

 

ただこの考えも正直腑に落ちないところはある。

だから断定は出来ない。

酷ければ両方されているパターンもありえるし…。

或いはそもそも()()()()()()()()()パターンもありえる…

 

「この件は全艦娘に通達。今後の哨戒は対潜警戒を強めることも伝えるように。これだけの艦が仮に敵にやられたものとすれば現在の戦力では太刀打ちできない相手と想定される。むやみな捜索は行わない。別の作戦行動中や哨戒中に見つけた場合のみ保護等をするように」

 

「了解しました。その様に通達いたします」

 

敬礼をしてすぐさま立ち去る大淀。

いろいろと急に立て込んできたな…。

こっちを巻き込まなければ良いのだが…。

 




作者正座中。

山城「タイトルに私の名前があるのに、私の出番は半分程度…。不幸だわ…」

さて、また新たな問題が発生したようです。
これが彼らにどのような影響をもたらすのか…
今後をお待ちください。

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