僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~ 作:荒井うみウシ
「山城さんはどう思いますか?」
談話室で外を眺めていると声を掛けられた。
「ごめんなさい。話を聞いていなかったわ。なんのことかしら?」
赤城さんの方を向いて話を聞く。
「提督の女性の好みについてですよ。以前山城さんがそういった話をしていたと伺ったので」
そういえばそんな話をしたことがあったような…
でも赤城さんにはしていなかったはず…
「別に知っているわけではないわ。勝手に想像しているだけよ」
前と状況も変わってきているし。
「それでも良いので教えていただけませんか?」
話すのはかまわないけど、単に教えるのは戸惑うわね…
「そうね…。赤城さんも教えてくれたら話すわ」
「私の想像ですか?そうですね…。自身を諫めることができる娘でしょうか?叢雲さんや霞さんなどに代表されるような娘に信頼を置いているように見えますし」
それもありえそうね。
「なるほど。私は今のところ長髪の娘じゃないかと思っているわ。最近潮さんと仲が良さそうですし。逆に私とかは忌避しているきらいもありますし」
あと赤城さんも長髪だし。
「そうでしょうか?山城さんも十二分に信頼されているように見えますが…」
「あたしは山城の説に一票。本音は賛成したくないけど、短めなあたしもそこまで好かれていないからな」
摩耶さんが同調する。
「摩耶さんの場合は口調の方が問題なのでは…?」
羽黒さんがつっこみを入れる。
「し、しかたないだろ!こういう喋り方が素なんだからよ」
「それにしては曙さんなんかは受け入れられていますからね…。それほど口調は気になさらないタイプだと思いますよ?」
赤城さんがフォローする。確かにどちらも提督に対して"クソ"ということがあるが、曙さんの方が受け入れられている気がする。
「やっぱり提督はロリコ…小さい娘が好みなのでは?」
羽黒さん。言い直す意味ない気がするわ。
「まとめると長髪で自身を諫めてくれる駆逐艦?」
自分で言っておきながら相当偏見のある内容だと思う。
仮に正しかったら私はまったくカスリもしないわね。
「「「「はぁ…」」」」
全員の溜息が重なった。
考えていることはほとんど同じなのでしょうね。
「赤城さんは長髪じゃない。私も伸ばそうかしら…?」
「でも私たち艦娘ってそう簡単に容姿を変えられないですよ?入渠したらほとんど元に戻ってしまいますし。かと言ってずっと入渠しないまま過ごすのも不可能ですからね」
何でそうなのかは私たちも知らない。艦娘というものがそういうものなのだろう。
お陰で最悪資材と施設があれば私たちは延々と活動できる。
だからこそこうしてお茶を飲みながらお話できる環境を作ってくれる提督の人の良さがわかるものだ。
「あ、山城さんだ」
敷波さんが談話室に入ってきた。
「何かしら?」
「先ほど司令官が山城さんを探していました。何かお話があるそうです。後で執務室へ向かってもらえますか?」
提督が私に…?
何かの命令があるのでしょうね。
「そう、わかったわ。ありがとう。そういうことなら私行くわ」
「えぇ、また後ほど」
「後でな~」
「はい。お疲れ様です」
赤城さん、摩耶さん、羽黒さんに声をかけて席を立つ。
湯呑を片付けて談話室を出る。
執務室に向かう途中で提督と鉢合わせた。
「あら、提督」
「お、山城さん。丁度よかった。頼みたいことがあるんですよ」
頼みごと?
「私に頼みたいこと…?」
「えぇ、この役目は山城さんにお願いしたくて。現状山城さんが適任、というか山城さんにしか頼めないレベルの内容なので」
少しだけ深刻そうな顔で言う提督。
彼がそう言うなら引き受けよう。
「わかったわ。それで何をすれば良いのですか?」
そう答えると彼の表情が緩んだ。
「一時的に秘書艦になっていただき、装備の開発をお願いします。使用する資材の量はこちらに記載しています」
書類を手渡される。
というか私が秘書艦?珍しいこともあるわね。
たしか、大型艦のほうが戦力として期待しているから、そういった業務は小型艦を中心にするという話だったはずなのに…
しかも開発?確かにアレは艦娘の手助けが必要といえば必要だけど、わざわざ私を指名する理由もわからない。
わからないことだらけだけど、彼なりになにか考えがあるのだろう。私はただ従うだけでいい。
「はぁ…。別にかまいませんが、どの程度ですか?」
「一日あたり5回ほどでお願いします。タイミングはそちらの空いているときでかまわないので」
5回も?普段はせいぜい多くても3回程度なのに。
不思議に思って、何か書類に答えがないか探す。
書類の中には資材の必要量が書いてあった。
が、他にめぼしいことは書いていない。
これで彼の望みはかなえられるのかしら?
「尋ねてもいいかしら?」
「何をです?」
「この資材の量で望みの装備を開発
「開発だからね。確実に出るなんていえないさ。だから後は回数でカバーかな」
だから一日5回。でも彼の言い回しから、開発できる確信があるようだ。
それほど多く装備開発をしているわけではないはずなのに、どうして彼はこの資材量で目当ての装備が開発できるといえるのだろうか?
まぁそれは私が考えることではないわね。
「ふーん。まぁそういうことにしておくわ。でも資材は貯蓄するのではなくて?開発に使っていいのかしら?」
確か何か作戦をするために備蓄を増やす方針だと言っていたはずだ。
一応これも確認する。まぁ彼ならとっくに考慮しているだろうけれど。
「必要経費と割り切るしかないですね。一種の保険という部類になりますが、保険はかけてなんぼですから」
深くは問わないほうが良さそうね。
「そう。まぁ無駄にならなければいいのだけれど」
「それと、山城さんにはもう一つやってほしいことがあります。こちらはかなり危険を伴うので、拒否してもかまいません」
先ほどまでと打って変って真剣な表情。
重要な内容はこちらなのでしょう。
「ざっくりというと、交戦中に
そういって新たに書類を渡される。
それをぱらぱらと確認し始める。
読み進めていくとどんどん混乱して行く。
「摩耶さんや羽黒さんにもお願いする予定です。参加してくれる娘が決まり次第詳細な打ち合わせを行います」
なぜ提督は深海棲艦と接敵しているのにも関わらず、戦闘中であるにも関わらず、
これが何を意味するのか…
方向を考慮するとどこかへ誘導?
それが何の意味になる?
いや、それは私の考えることではない。
珍しく提督が
深い意味があるに違いない。
「これをやれと?かなり無茶な注文ですね」
「えぇ、ですから拒否してもかまいま「やるわよ」いいんですか?」
彼がやれと言うならやるわ。それは元から決めていたことだもの。
それに彼は私に出来ないことは命令しない。
彼の言うとおり危険ではあるだろう。けれど、不可能ではない。
可能性は低くとも実現可能な行動だ。
それを彼が望むのであれば私はただ遂行するのみ。
とはいえ、少しでも確実性をあげたいのは本音。
そこは彼に頼るしかないわね。
「無茶とは言ったけれど、不可能ではないわね。ただ即興でやれるかと聞かれれば否。確かに多大な訓練が必要ね。他のメンバーはどうするつもり?」
「拒否されなければさっきも言ったとおり摩耶さんと羽黒さん。それに神通さんと那珂ちゃん。そして白雪さんかな」
提督が頼むのであれば誰もが受けるわ。
それにしてもメンバーが本気ね。うちの主力といえるメンバーじゃない。
にしては赤城さんと叢雲さんが居ないわね。
正規空母の能力は強力だし、駆逐艦の最高練度は叢雲さんのはず…
「赤城さんは入れないのね。それに叢雲じゃなくて白雪なの?」
「確かに練度を考えれば叢雲さんが良いだろうね。ただ状況的におそらく叢雲さんは別に使っている可能性が高いから白雪さんを入れる感じかな。それと赤城さんを入れないのはわざと。総合的に見ると赤城さんは実行時に艦隊に居ないほうが良い」
何か考えがあるのね。ならいいわ。
「そう。どうでもいいわ。命令されたことをこなすだけよ。他のメンバーが確定したら打ち合わせに呼んで頂戴」
これだけ真剣な態度で話していたことだから相当重要なことなのでしょう。
なら今からでも艤装の整備をしっかり見直してしっかりとこなせるよう気張る必要がありそうね。
なんだかんだいいつつ山城は一途ないい娘だと思うんですよ。
今、重いって行った奴表に出ろ。鍵閉めるから。