僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~ 作:荒井うみウシ
ジリリリリッ
とけたたましい音で目が覚める。
この音は緊急連絡用通信機の着信音だ。
急いで出る。
「こちら提督。どうぞ」
緊急用のものを使うレベルだ。急いで頭を起こす。
「こちら叢雲。警邏中の川内より緊急通信。複数の艦娘と遭遇。先日通知された大本営所属の艦娘と推定。提督との面会を希望。以上」
は?
正直疑問だらけだが、ここで唸ってもしょうがない。
迅速に対処すべく、行動しよう。
「了解。悪いが執務室に来てくれ。そこでもう少し話を聞きたい」
「わかったわ」
「よし。通信を切るぞ」
とりあえず今夜担当の叢雲と執務室で落ち合おう。
―・―・―・―・―・―
「状況は?」
執務室に入ると既に叢雲が待機していた。
「川内さんからの情報だと、特に損害を受けている様子はないそうよ。ただ…」
「ただ?」
「提督と面会したいそうよ。寄港と面会の許可を要求してきているって」
僕に会いたい?
本営所属の提督も本営所属の娘も知り合いなんて居ないぞ?
不明点が多いな。
「今、川内と連絡取れるか?」
「いつでも」
そう言って通信機を差し出す叢雲。
受け取り、発信する。
「こちら提督。川内、聞こえるか?」
「こちら川内。良好だよ。で、どうすればいい?」
「今どんな状況だ?」
「海上で彼女らと待機してる。通知された12隻全艦揃っているよ」
叢雲が海図を広げて凸型の置物を置く。
どうやら川内たちがいる場所らしい。鎮守府近海で待機している…というかもう目視できる距離じゃないか?
「寄港と面会と言っていたな。具体的にそれ以上に何を希望しているか分かるか?」
正直キナ臭すぎて関わりたくないのだが…。
「聞いてみるから少し待ってて」
そういって一旦音声が途切れる。
「どう思う?」
叢雲に振ってみる。正直なぜうち?
確か今回の娘らは呉から出てきたはずだ。
そこからなぜ関東に有るここまで来た?
「判断がつかないわ。大本営内部に何かあって、比較的つながりの薄い鎮守府に逃げたかったとか?」
叢雲の説も有り得る。
「ていとくー。大丈夫?」
通信機から川内の声が聞こえる。
「大丈夫だ。どうした?」
「会ってあげてくれない?どうやら提督の艦娘が居るらしいよ?」
僕の艦娘?
どういうことだ?
僕に対応する艦娘という意味だろうけれど、もしそうならば普通に正規の手続きで移動してくれば良い…
いや、それができないから強引に会いにきたと見るべきか…。
「わかった。川内を信じよう。全艦を引き連れて一旦戻ってくれ。一応補給をさせてから、応接室…じゃ狭いな。第3会議室に案内してくれ。確認だが、負傷している娘は居ないんだよな?」
「わかった。みんな怪我は無いよ。それじゃあ連れて行くからしばらく待っててね」
「頼んだ。それじゃあ通信きるぞ?」
「はーい。通信終わり」
通信が切れた。
「さて、内部で何が起きているんだか…。叢雲さん、来てくれます?」
「もちろんよ」
―・―・―・―・―・―
会議室で待機しているとノックがなった。
「どうぞ」
「失礼します」
先頭は川内だ。
「提督、連れてきたよ」
「あぁ、お疲れ」
ぞろぞろと部屋に入ってくる。
金剛、比叡、はる…
「てぇえええええとくぅうううううううううううううう!!!!」
榛名が入ってくるや否やすぐに駆け寄ってきた。
「榛名!ステイッ!」
が、金剛たちに止められる。
「お姉さま!今は止めないでください!!」
「落ち着くネー!提督は逃げたりしないヨ!」
「榛名、落ち着いて!」
金剛、比叡に両脇から押さえられる榛名。
「司令。突然の失礼申し訳ありません」
「いや、うん。落ち着かせられたら良いようん」
霧島が謝罪するが、うん。言葉が出ないね。
―・―・―・―・―・―
「マイシスターがお騒がせして申し訳ないデース」
全員が並び頭を下げる。代表して金剛が改めて謝罪をした。
「それはかまわない。とりあえず、色々聞きたいから楽にしてくれてかまわない」
「ありがとうございマース」
とりあえず皆が座るのを待つ。
「あの…提督…」
榛名がこちらに近寄ってくる。
「榛名…」
榛名は改二か・・・ん?
よくよく見てみると金剛型全員と利根・筑摩・北上は改二だった。
やっぱり本営の主力ともなると練度が高いのだろう。
「その…先ほどは申し訳ありませんでした」
「いや、落ち着いたならそれでいい。で、それだけじゃないんでしょう?」
「はい。お話の前にお手をお借りしてもよろしいでしょうか?」
そう言って榛名は左手をこちらに差し出す・・・左手?
左手の薬指…これは・・・
「榛名…ひょっとして…?」
「触れていただければそれで分かると思います」
榛名がジッとこちらを見つめる。
こちらも榛名を見ながらそっと左手に手を重ねる。
とたんに周囲が明るくなり、桜吹雪のようなものが宙を舞う。
この光景は。
よく慣れ親しんだ光景が。
そしてその途端に何かと繋がったような感覚に陥る。
すごく暖かく、安心する何かだ。
「あぁ…ようやく…。ようやく提督に…」
「榛名…」
間違いない。この榛名は
「提督…。榛名は提督に会いたくて…。これからはずっとお傍に居させてください…」
感激的な言葉を言う。
だが少し冷静にならねば。
他の娘も居るしね。
「あぁ、ありがとう榛名。色々聞きたいこととかもあるんだけど良いかな?」
「はい!提督のお傍に居られるなら榛名は大丈夫です!!」
「じゃあ一旦あそこの席に付いてもらえる?」
「…あとでもっとくっつかせてくれますか?」
…一瞬気が遠くなりかけた。
やっぱり榛名は可愛い。
「あぁ。後でね」
「分かりました。では失礼します」
榛名が離れると桜吹雪は無くなり、明るさも収まった。
「さて、みんなも、ご苦労様。ここまで来るのは大変だっただろう?」
「可愛いシスターのためなら関係ないネー!良かったネ榛名!」
「はい!ありがとうございます!」
金剛が代表して話す。
「ちょいちょーい。あたしも一個いい?」
北上が手をあげる。
「たぶんそれ、分かる。君も僕の艦娘ってことだろう?」
なんとなく直感でわかった。
「あらら。分かっているならいいや。そゆことでよろしくー」
ゆるゆる北上さん。
いいねぇ~。しびれるねぇ~。
ゆるゆると北上さんの間にヌキヌキとか入れちゃダメだぞ!
「あと瑞鶴さんもかな?」
「!…そうよ。普通提督さん側が気づくことってないらしいけど、よくわかったわね…」
「あら、そうなの瑞鶴?よかったわね!」
翔鶴がうれしそうにしている。
残念ながら他の娘は僕の艦娘ではなさそうだ。
「さて、うれしい話は一旦後にしよう。それよりも君たちの現状について話してもらいたい。正規の手続きを使わずにこうしてきたのは何か事情があるのだろう?」
「それについては私からお話させていただいてもよろしいでしょうか?」
霧島が手をあげながら発言する。
「頼む」
「分かりました。まず私たちの所在についてお話いたします。私たちは現在本営直属の精鋭部隊に配属されています。この部隊は本営内に居る練度の高い艦娘を集めたものなのです。ほとんどは本営所属の提督の下に居る艦娘が対象なのですが、中には対応する提督が居ない娘も練度によっては含まれる形になっています。榛名のように」
「前者としては私や加賀さんなどですね」
赤城が補足を入れる。どうやら赤城と加賀は既に別の提督の下でありながら精鋭部隊に行っているようだ。
「それで榛名のような艦娘には基本的に他の本営に居る艦娘と同様、対応する提督が見つかり次第そちらに引き渡す手続きがとられるとされてきました」
されてきました…
過去形ね。
「今回、榛名が偶然司令を確認したため、ソレが機能していないことが発覚しました。たまたま今回だけなのか、以前からなのかは判別はつきませんが、その話を聞いた私たちはどうにか榛名を司令の元へ送りたいと考え、行動を起こした次第です」
北上と瑞鶴のことも考えると、強力な艦娘を外部に出したくないという考えが働いた可能性が高そうだ。
相手が僕みたいな新人だから持て余すだろうという考えの可能性もあるが、前者の意も含んでいるだろうし。
「で、勝手に抜け出してきたと」
「いえ。そうではありません」
あれ?
「先ほど赤城が申した通り、赤城・加賀それに私と鳳翔は対応する提督が本営に居ます。その方々が今回の件を後押ししてくださいました」
内部の人間が手を回しているのに、連絡が取れなくなったと周りに通達を出しているってことは…
また内部抗争ですか。
「ふむ。…今君たちが行方不明扱いになっていることは知っているかね?」
「…私たちの司令が上手く誤魔化してくれているのだと思います。どういった方法なのかまでは通知されていなかったので、少々驚きはしましたが」
誤魔化す…ねぇ。
「おそらく司令は榛名をここに連れ出されたくない人たちの目を眩ませるためにそういった情報を流したのだと思います。そしておそらくそこからのシナリオはこちらの鎮守府で私たちを保護。その際に榛名たちが反応を示したのでそのまま移籍という流れにするのだと思います。大本営とこの鎮守府だけのやり取りなら握りつぶされかねないことでも、一旦他も交えた発表ならば、規則に則った行動をせざるを得ないでしょうし」
確かに一理ある。
今回彼女らについて全体に通知されている。
となれば見つかったら同じく全体に通知をする必要があるのだ。
その際に榛名たちについて公表すれば規則を守らざるを得ない。
「なるほど。それなら確かに上手く榛名たちをこちらに引き入れられそうだ。多少面倒事が起きるのは仕方ないとしても、時にはこういう強引な手が必要だな」
結構ゴリ押しだけど、それが有効なときもある。今回もその類なのだろう。
「お話が通じて何よりです」
「さて、とりあえず今はもう遅いから、連絡を取ったりするのは明日にしよう。ただ悪いのだけど、今から君たちの人数分部屋を用意することができない。それは許して欲しい」
「用意していただけるだけありがたいです。私たちも何かできることがあればお手伝いいたします」
ふむ。他の娘を起こすのもアレだけど、彼女らの手を借りるのも問題だな…。
「ありがとう。でも君たちは客人だし、何より榛名たちを連れてきてくれた恩人だ。煩わせるわけには行かないよ。叢雲さん、川内さん、それに白雪さんも頼めますか?」
「そういうと思って先に白雪には準備させてるよ」
そういえば始めから白雪は居なかった気がする。
榛名の暴走が印象的すぎて触れられなかったけれど。
本当は今日の夜間警備は川内と白雪が海上を警戒、叢雲が鎮守府内で待機する組み合わせだったのだ。
「じゃあそれの手伝いをしに行かなきゃね。皆さんは少々こちらでお待ちを。榛名と北上さん、瑞鶴さんもこちらで「ちょっといい?」はい?」
一緒に待っててと言おうとしたら瑞鶴が止めた。
「どうでも良いことかもしれないけどさ。なんで榛名さんだけ呼び捨てで私たちはさん付け?」
「ほんとにどうでも良いことじゃん」
北上が突っ込みを入れる。
「あー。ふたりとも呼び捨てでいいならそうしますけど?」
「いや、うん。そこはどっちでもいいんだけどさ。気になったのよ」
「瑞鶴。そこはちゃんと"瑞鶴"が良いですって本音を言わないとダメよ?」
翔鶴が不貞腐れ気味な瑞鶴に一言伝える。
本音は呼び捨てが良いの?
「ちょっ!翔鶴姉!」
「北上さんは?北上ってよんだ方がいい?」
うーんと悩む様子の北上。
「別に提督の呼びやすいほうでいいよ。北上でも北上さんでも」
「ハイパー北上様でも?」
「本気で言ってる?」
「すいませんでした。冗談です」
改二の北上と言えばハイパーってつけるべきかなと。
「北上様でもなんでもいいよ。私はそういうの気にしないから」
「まるで私ばっかり気にしてるみたいじゃない!」
「瑞鶴さん、落ち着いて」
鳳翔がなだめている。
「うーん、だったらズィーカクとか?」
「なにその微妙に変な言い方!普通に瑞鶴でいいじゃない!」
「うん。じゃあ瑞鶴で」
「ぁっ。そ、そうよ。それでいいのよ」
顔を赤くしてそっぽ向く瑞鶴。
ちょっと遊びすぎたかと思ったけれど、翔鶴や鳳翔がくすくす笑っているからこれで大丈夫なのだろう。
「それじゃあ皆さんはここで待っていてくださいね。すぐ用意してきますので」
さて、客室に布団を敷いてこよう。
ついに榛名を出せたよ!
やったね!
さて、いろいろと話が進みそうですね。
区切りが微妙なところですが、次回をお待ちください。