僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

49 / 64
修羅場を書けるようになりたい。


舞い踊るは桜吹雪3

ものすごーくピリピリとした気配を感じるけれど、無視し続ける。

いや、無視し続けられないんだけどね。

でもがんばって無視する。

 

執務室へ向かう間ずっと叢雲が無言のプレッシャーを掛け続けてくる。

どう考えても先ほどの榛名の言だ。

僕と一緒に寝るだのなんだの、突拍子もない話ではあるが、提督という立場上あの場面では公然と却下すべきであったのにも関わらず、そうできなかった僕に苛立っているのだろう。

 

あぁ、執務室に着いてしまった。

どんな尋問がされるのか今から怖いよ…

 

扉を開け、ソファに腰掛ける。

叢雲は無言で向かいに座り、川内は傍で立ったまま待機している。

 

「川内さんも座ったら?」

 

「私はいいよ、気にせずに~」

 

ひらひらと手を振る川内。

 

「んんっ」

 

叢雲が咳払いをする。

はい。わかっていますよ。

 

「それじゃあまずは現状確認から行うよ。大本営から通達があった艦隊を保護した。その保護した艦娘の中に僕に対応する艦娘が居た。彼女らの行動理由は正規の移動手続きを本営が実行しなかったから。簡潔にするとこんな感じでいいかな?」

 

抜けがないか叢雲に問う。

 

「…えぇ。流れはそれで良いわ。それより、説明してもらえるわよね?」

 

すごく、目が怖いです。

 

「えっと、何をでしょうか?」

 

「榛名さんについてよ。最初のあの光は一体何なのよ?」

 

最初の光?

あぁ、桜吹雪のエフェクトか。

 

「エフェクトのこと?僕もどういう原理でああなるのか知らないんだよね」

 

とりあえず叢雲が怖いから余計なことは言わずに、ただただ質問に答えるだけにしよう。

 

「本当に?本当に何も知らないの?」

 

「指輪つけたらああなるって本当に不思議だよね」

 

「知っているじゃない。指輪が関係しているのね。で、その指輪ってなに?」

 

なんだか視線がさらに冷たくなった気がする。

 

「カッコカリの指輪…だと思う。榛名にも確認しないと確証はないけれど」

 

「かっこかり?かっこかりって何よ?」

 

「カッコカリっていうのは、簡潔に言うとレベルキャップ解除のシステムだよ。ただ僕の知っているモノと同じかどうかはやっぱり榛名に確認したいかな」

 

榛名が指輪を持っていて、あのエフェクトもあるんだ。

()()()でも同じと仮定するのが妥当だろう。

 

「れべるきゃっぷ?しすてむ?ちょっと何の話かわからないから、詳しく話して頂戴」

 

「レベルキャップって言うのは練度の上限ってこと。その解除ってのはこれ以上経験を積んでも能力が伸びないってところから、さらに上の段階にいけるようにするってこと。システムっていうのは今回ので言うと、レベルキャップ解除を行うための手続きというか手段というかそういった感じのことだ」

 

「ひとつ私からもいい?」

 

川内が手をあげて質問する。

叢雲に目で問うと許可してくれた。

 

「どうぞ」

 

「そのカッコカリっていうのの指輪をしている榛名さんは他の榛名さんよりも強いってこと?」

 

「カッコカリをしていない榛名よりは強いと考えて大丈夫だと思うよ」

 

「じゃあ私にもその指輪もらえない?」

 

川内が指輪をせがむ。

普通に考えたらうれしいのだけれど、話の流れからして単に強くなるためって意味だよなぁ…

どちらにしろ指輪は持っていないから渡せないのだけれどね。

 

「そもそもその指輪が無いから渡せないよ。川内さんにも渡せるぐらい指輪が複数あれば渡すけれど」

 

指輪を戦力面で捉えるなら川内はそれほど優先順位が高くない。

同じ軽巡でも性能的に神通や大淀のほうが優先されるだろうし、そもそも軽巡という枠自体が指輪を優先し難い艦種だ。

 

「ふーん。そ」

 

わりとあっさりと引いてくれた。

 

「で、その榛名さんとは一体どういうつながり?初対面には見えなかったけれど?」

 

あー、デスヨネー

どう答えるか難しいな…

正直に言うか?

ただ予想でしかない話をするのは憚られる。

突拍子の無い内容ならなおのことだ。

 

「うまく説明できないんだよね…。僕もわからないことが多いし。もう少し確認作業をする必要があるけれど、君たちに出会うより前に出会った榛名なんだと思う」

 

嘘はついていない。

ただ、現状から推察した内容があまりにも現実的ではないから、それを確固たる証拠もなく提示するのは無用な混乱を招くだろう。

なら伏せて説明するしかない。

 

「…」

 

叢雲は黙って僕を見続ける。

 

「私がアンタの初期艦じゃないのね」

 

そう小さくつぶやいた。

 

「そう決め付けるのはちょっと早計じゃないかな?」

 

「どういう意味よ」

 

叢雲が顔を上げる。

 

「初期艦の定義の問題だよ。だって艦娘の指揮自体は訓練生のときにやっているから、初めて僕の指揮下になった艦娘という意味では叢雲は外れるね。ただ、こうして訓練校を出て提督になった後、僕の直属の部下として配属された艦娘という意味なら叢雲となるわけだし」

 

「アイテム屋さんや任務娘さんは?」

 

「彼女らは大本営からの貸し出し扱いで、厳密には僕の部下ではないからね」

 

あくまで彼女らは出向中の身であって、僕の指示に従うよう本営の指示に基づいて行動している。

だから叢雲が初期艦というのは定義次第なのだ。

 

「…屁理屈ね。でも今回は見逃してあげるわ…ありがと」

 

「どういたしまして」

 

叢雲はどうも初期艦であることにプライドを持っている様子だから、変にそこを刺激しないよう気をつけていた。

今回は何とか上手くフォローできたようでよかった・・・

 

有能で普段助けてもらっている分、拗ねられると相当厄介なのだ。

あと僕の精神的にも睨まれ続けるのはつらい。

主に後者のほうが割合が多いのはここだけの秘密だ。

 

「さて、そういったことは後にするとして、まずは彼女らの対応について考えよう」

 

叢雲の勢いが収まったところで話を変える。

あまりこの話題を続けたくないからだ。

それに対応についてもちゃんと話さないとまずいしね。

 

「単に保護しましたって報告をするだけじゃダメなの?」

 

「川内さんの案は悪くないけどあまり良策とは言えないかな。そう報告するだけだとじゃあ返してってなる可能性が高い。僕に反応しましたってことをそれとなく、でも確実に伝える方法を考えないといけない」

 

正攻法で正面から通れなかったから榛名は多少悪手でも強行した。

それをこちらが無碍にするのは憚られる。

どうにか三隻が残れる報告方法を考えねば…

 

「直接本営に伝えるのではなくて、ワンクッション置くのはどうかしら?例の中将とかを一旦通してみるとか」

 

中将に借りを作るのは下策だ。

だがその方向性は有りだな。

 

「うーん、方向性だけいただこうかな。霧島さん達の提督、今回彼女らを後押ししてくれた人ならおそらくこちらの意図を汲んでくれるだろうから、その人を通じて報告するとしよう」

 

人物指定の理由は対応する提督と直に連絡を取りたかったからとか何とでも言いつくろえる。

中将とその人物とどちらに借りを作るかという二択になるのだが、表向きは霧島たちを保護したということで、むしろこちらが貸しを作ったように見える分後者のほうがマシだろう。

 

「…うーん」

 

川内が何か唸っている。

何か不備があったか?

 

「川内さんどうしました?何か気がかりなところがありますか?」

 

「え、いや。私は提督に従うからいいよ。おかしなところもなさそうだし」

 

「ではなんで唸ったり?」

 

少し問い詰めてみると罰の悪そうな顔をして頭の後ろを掻く川内。

 

「あー、ちょっと失礼なこと考えちゃってね。見逃してくれるとうれしいなって」

 

失礼なこと、ねぇ。

提督である僕が問えば艦娘の川内は答えざるを得ないだろう。

聞いて欲しくないというなら聞かないで置こう。

 

「気になるわね」

 

叢雲、そこつっかからない。

 

「いいじゃないか。川内さんが聞いて欲しくないって言うなら聞かなくても。だから話さなくていいよ」

 

こう言えば彼女の意思で判断するだろう。

 

「あはは…。提督、怒らない?」

 

「怒るような内容じゃなきゃ怒らないね」

 

「それ、判断基準がわからないんだけど」

 

「うーん。叱ることはあっても僕は基本怒ることがないからなぁ…。覚えている範囲でも、せいぜい楽しみにしていたおやつを勝手に食べられたときぐらいしか怒った記憶が無いし」

 

基本、怒らないタイプだと自認している。

ただし、怒らない代わりに相手を見限ることは多々あった。

怒ってどうにかなることなんてほとんどないし。

一時的な感情の発露で物事が好転することはない。

なら冷静に対処するしかないのだ。

その時、相手がいるのであれば、その相手をあてにして良いのか、悪いのかを判断する。

あてにして良い場合、叱るなりなんなりして改善を促す。

悪い場合はいかにして相手を踏み込ませないか、自分の邪魔をさせないかを考える。

だから怒ることは滅多にない。

流石に感情がないわけではないので、イラッとすることはあるけれど、それでどうのこうのすることはまずありえない。

 

「提督?」

 

「あぁ、ごめん。で、結局話してくれるの?話さないの?」

 

しばらく考え込んでしまったため、川内が声をかけてきた。

 

「提督の知り合いとか私全然知らないなって」

 

唐突に何を言い出すかと思えば。

それでどうして僕が怒ると思ったのだろう?

 

「そういう話をしていないからね、知らなくても仕方ないと思うけれど。それでどうして僕が怒ると思ったのかがわからないなぁ」

 

「アンタねぇ…。わからないならそれでいいんじゃないかしら?」

 

すごく呆れたように叢雲が言う。

 

「えっと、叢雲さんは何でかわかるんですか?」

 

「えぇ。でもわざわざ口にしないわよ」

 

釘を刺されてしまった。

話してといえば話すだろうけれど、口にしたくないというなら深くは問わない。

まぁ、別にいいか。

 

「友達とかと連絡取ったりしているの?」

 

「いんや全然。忙しいのもあるけれど、そんな頻繁に連絡取る相手もいないし。一応家族には月一ぐらいで近況をまとめた手紙を送ってはいるけれど、それぐらいかな」

 

祖母に当たる人物と、叔父に当たる人物には定期的に連絡をしている。

職業柄詳しく書けない部分が多いため、せいぜい元気でやっている程度になってしまうけれど、送らないよりはマシだろう。

 

「提督の家族ってどんな感じ?」

 

「両親はいなくて、祖母ちゃんと叔父さんが米を作ってるよ。他の親類は僕もわからないかな」

 

「ふぅん。じゃあ鎮守府にそのお米が届いたりするかな?」

 

申請すればたいていのものは手に入る。

ただし検閲はされるけれどね。

 

「頼めば来ると思うよ。頼もうか?」

 

「うん。提督のおうちの米食べてみたい」

 

「じゃあ手配してみる。届いたら知らせるよ」

 

「あ、皆で食べれる分をお願いね」

 

「ん、そうだね。多めにお願いしてみるよ。日持ちするものだし」

 

米ならしっかりと保管すれば年で持つ。

今後増える可能性を見越して多めに頼んでも問題ないだろう。

 

「さて、他に気になることは…あっ」

 

「何よ?」

 

気になることが無いか聞こうかと思ったら、ひとつ気になることがあることを思い出した。

 

「話がまったく関係ないことになるのだけれどさ、僕が健康診断で留守にしている間に、そこの休憩室もとい資料室に誰が入った?」

 

「へっ!?」

 

異様に反応する叢雲。

どうしたというのだろうか?

 

「いや、帰ってきたら掃除されてあってね。してくれた娘にお礼を言っておこうかと思ってさ。誰かしらない?」

 

あそこは僕以外入らないという思考でいたため、結構ほったらかしにしていた。

しかし、帰ってきたら綺麗に掃除と整頓がされていたのだ。

おそらく布団も干してくれたのだろう。

だがタウイタウイの件やら大本営からの件やらでごたごたが続いて聞きそびれていた。

 

「…ええっと、私から伝えておくのはダメかしら?」

 

ということは叢雲は誰がしてくれたのか知っているということだな。

 

「直接お礼を言いたいな。で、誰だい?」

 

なんだか叢雲が形容しがたい顔をしている。

苦々しいようなやらかしたような…

たかだか掃除のお礼をしたいというだけなのにそこまでなるか?

ただ言い回し的に叢雲本人ではなさそうなんだよな…

 

「言いづらいな「霞よ…」あら」

 

言わなくてもいいと言い切る前に教えてくれた。

それにしても霞か。

なんだかんだ面倒見がいい感じは元々あったけど、あくまで上官としてしか見ていないと思っていた。

そうか…

うちの霞もママだったのか…

 

この事実には感激ですわ。

ただどうしてそれを隠そうとしていたのだろうか?

やっぱり照れ隠しとかツンデレとかかな?

口がちょっと悪い部下というタイプじゃなくて、テンプレ通りのツンデレ霞ママだったかぁ~

いや、僕としてはそちらのほうが大歓迎なんですけどね。

 

「ちょっと提督?大丈夫?」

 

「うれしすぎて大丈夫じゃないかも。もう少しまって」

 

無言な僕に川内が確認してくる。

だがこのうれしさをもう少しかみ締めておきたい。

 

きっと『私が居ないと掃除もできやしないんだからまったくもう』とかいって掃除してくれたんだろうな。

そしてそれを黙っているのも『別に司令官のためにしたわけじゃないわよ。勘違いしないでよクズ。単に片付いていないのが気に食わないだけよ』とかツンデレ満載なんだろうなぁ…

 

これはどうするか。

素直にお礼を言うのも一手だが、あえて黙っておくのも一手だ。

叢雲も黙っていようとしていたし、知らないフリをしておいて、ある程度してからいつもありがとママンって何かプレゼントと一緒にお礼をするのだ。

やるとしたら母の日とか?

流石に先過ぎるな。

どうしようか…

 

「とりあえず、僕は知らないことにしておくよ。叢雲も言いたくなさそうだったし」

 

「そ、そう?でももう知ってしまったのだから、意味無いんじゃ…。というか私から聞いたということを伏せて欲しいだけよ…」

 

何かあきらめたかのように言う叢雲。

あぁ、後で霞から『よくもあのクズに教えたわね!』って言われたくないのか。

結構あの娘に言われるのはキツイものがあるからね。

 

「うーん。とりあえずお礼を言うタイミングは僕のほうで測るし、叢雲から聞いたということは内緒にしておくよ。叢雲も僕に話したことを内緒にしておけば大丈夫じゃないかな?」

 

「…なら私は黙っておくわ…」

 

「川内さんも、この話は内緒ってことで」

 

「りょーかい。でもちょっと良いこと聞いちゃった。あの霞がねぇ~」

 

なにやら意味深な顔して頷く川内。

確かにテンプレの霞を知らないと結構意外な感じに見えるからね。

そういった反応もあるだろう。

 

「さて、朝担当の娘や他の娘たちが起きてくるのはもう少し後だから、お茶でも飲もうか?仮眠しようとしたらそのまま寝落ちしそうだし」

 

「…そう、じゃあ用意するわ」

 

叢雲が給湯室に行く。

 

「私はちょっとお手洗い~。すぐ戻るよ」

 

川内が立ち去る。

 

「おっ、おう。じゃあの」

 

一人ぽつんと残された僕。

さて、叢雲を待とうかね。

 

 

 

 

 




提督は情事…じゃなくて事情を知らないのでこういった妄想に耽っています。

私的な都合で申し訳ないのですが、今後更新ペースが更に乱れそうです。
意外と早く投稿できる可能性もありますが、気長にお待ちいただくスタンスだとありがたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告