僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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赤城というと、艦これの初期にいる大型艦の代表格という認識があります。任務で入手できますし。

でも作者は翔鶴が最初でした。任務に気づかず、建造で出す人ってのも一定数いますよね?



赤城さんと訓練

しんと静かな空間、自分の呼吸音ぐらいしか音がないのではというほどだ。

 

空気はどんどん張り詰めていき、もう厳しい、でもまだいけるとどこまでも際限なく苦しくなりそうだ。

しかしここでめげてはいけない。じっと自身をおさえ、控える。

時間にすれば数瞬なのだろうが、延々と続くようにおもえてくる。

そんななか、それまでのじりじりとした張り詰め方から一転、一瞬で一気に空気が()()なる。

 

即座にわずかながら風を切る新たな音が生まれる。

 

そしてワンテンポ後にはトスッとさほど大きくないはずなのに、それまでに比べれば大きな音が生じる。

 

間。

 

やがて張り詰め濃くなっていた空気は緩み、時間の流れも通常通り、波の音や鳥の鳴き声、そのほかのさまざまな音があたかも止まっていなかったがごとく、自然とそこにはあった。

 

皆中(かいちゅう)・・・であっているんでしたっけ?さすがですね」

 

ここまで日常に戻ったのであれば、声をかけても問題ないだろうと判断し、口を開く。

 

彼女・・・赤城はこちらを向いてほんのりとした微笑を浮かべながら答えた。

 

「お褒めの言葉、ありがとうございます。皆中であっていますが、まだ鍛錬が足りていませんね」

 

顔色を変えず言う彼女。その表情から心中を察するのは困難だが、普段の言動から察するに言葉通り自身を戒めているのだろう。

放つ矢はすべて的に納まっているのだ。もう少し誇らしげであってもよさそうではある。

こちらが的と彼女を交互に見ているとくすりと笑みをこぼしながら赤城が答えてくれた。

 

「後の二射ですが、雑念が多く含まれていました。それでズレているんです」

 

よくよく的を見てみると、中央に矢が二本纏まって刺さっているが、残りの二本は外側にすこしずれて刺さっているようにも見える。

だがどれも的の中心付近にしっかりと刺さっていた。

 

「あれだけできていればいいと思ってしまうのは僕が素人だからですかね?」

 

正直な感想を述べてみた。

 

「私がここで行っている鍛錬は精神を対象としたものです。自覚できるほどの雑念を抱き、その上それに影響を受けてしまった、という事実が未熟な証拠なんですよ」

 

そういって彼女はすこし遠くを見るような目をして空を仰ぎ見る。

 

「未熟な精神でありながら慢心をして、それで()()・・・」

「大丈夫ですよ」

 

彼女の言に割ってはいる。

彼女たちが艦の時はそうだったかもしれない。でも今は艦娘であり、その上彼女らはそれらを踏まえて前にでる力がある。

少なくとも僕はそう信仰している。

 

「今赤城さんはこうやって慢心しないようにしています。だから貴方のせいで仲間が危機に陥るなんてことは無いでしょう。

というか現状貴方がたは僕の指揮下です。なにかあったときは貴方たちではなく、僕の責任です。そのときは僕のせいだーって叱ってくれればそれでいいんですよ」

 

だから君が背負う必要は無い。引きずる意味もない。重要なのは糧にすることなんだ。

そう意志をこめて彼女を見つめる。

 

しばし見つめあった後、彼女が目をそらしながら口にする。

 

「・・・。ではその際にはたっぷりとお説教させていただくので。えぇそれも霞さんや曙さん、叢雲さん以上にたっぷりと」

 

にっこりとした顔を向ける彼女。

意志は伝わったようでなにより。

これは彼女なりのジョークなのだろう。

 

「それは勘弁願いたいので、そうならないようがんばりますよ」

 

軽く手をふりながら答える。冗談であってもあの娘ら以上にたっぷりと説教というのは嫌なのだ。

そんな僕の様子にクスクスと笑いながら口元を手で隠す赤城。

 

「ではまず慢心しないようにこちらをやってみますか?微力ながらお手伝いいたしますよ?」

 

普段通りの笑顔で和弓をこちらに差し出す彼女。基本いつも同じ表情だから冗談だと判断し難い。

 

「いえいえ、すでに慢心しないよう見張る娘らがいるので、赤城さんにまでなってほしくないですよ」

 

冗談風に言っているがマジな話です。

 

「それは残念です。提督なら結構いい線いけると思うのですが」

 

わざとらしく残念な顔をする赤城。しかしすぐに普段の顔に戻る。

 

「また、ここでご一緒してもよろしいでしょうか?」

 

ん?言い方がすこし気になったが気のせいだろう。

 

「あまり多くの機会は取れませんけど、ご希望ならこれそうな時はまた赤城さんの鍛錬を見させてもらいますよ。といっても見るだけで助言も何もできませんがね」

 

期待させる物言いは好かないので、予防線を何本も引く。

 

「・・・それでもかまいませんので、よろしくお願いします」

 

いつもの笑顔で頭を下げる赤城。

すこし間のある回答だし、やはり判断しづらいが、あまりお気に召すものではなかったようだ。

 

 

 

 

 




ちなみに作者は弓道とかぜんぜんわからないので、弓道経験者の方はいろいろ言いたいことがあってもスルーでおねがいいたします。

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