僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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大変お待たせしました。


舞い踊るは桜吹雪5

「榛名は気がつくとこちらの海上に居ました。そして近くを通りかかった艦隊に保護されて、提督不在艦娘として大本営に引き取られました。そこで榛名の改二の能力を見込まれて、提督が見つかるまでという条件の下、作戦に協力してきました」

 

「優先的に榛名の提督を捜索してくれると言う話でしたが、単に力のある違う提督が榛名の力を欲しているだけで、碌に探してくれている様子はありませんでした。それでもこちらで単身提督を探すことは難しく、他の娘たちの力を借りるためにも大本営に所属し続けました」

 

「その甲斐あって、いろいろな提督の情報を手に入れることはできましたが、どれも榛名の提督ではなくて…。でもあるとき提督を見つけることができたのです!」

 

「大急ぎで提督の下に行こうとしたら、そこには別の榛名が居て…。提督にどうやって受け入れてもらうか考えるために一度出直すことを決めたのです」

 

ん?ということは斉藤の榛名といるところを見たってことか?

 

「別にそのタイミングで声をかけてくれれば良かったと思うんだけど、どうして出直したの?」

 

榛名は少し困った顔をしたのち、おずおずと言った。

 

「…その、お恥ずかしい話ですが嫉妬してしまいまして…。それに提督にもう()()が居るなら榛名はいらないってなったらいやだったんです…」

 

そんなことないんだけどなぁ…

ただゲームのころ基本的に僕は同じ艦を複数所持することはなかった。

それを知っている榛名だからそう考えてもおかしくないか。

 

「大本営に提督を見つけたことを伝え、それ経由で押しかければ否応無く榛名を受け取っていただけるのではないかと考えたのですが、大本営は榛名を手放す様子がありませんでした。なのでなりふり構っていられなくなり…」

 

「直接押しかけてきたと」

 

「はい。ご迷惑をおかけしてしまいますが、提督のお傍に居られないほうが榛名は嫌だったんです」

 

シュンとうなだれる榛名。

 

「…そっか。うん。僕も榛名と居られないのは嫌だな。だから気にしなくて良いさ」

 

出来る限り軽い口調で。

色々一人で背負っているのだろう。いらないものまで背負う必要はないとやんわりと伝える。

 

「提督…」

 

少しは明るくなった榛名。

それでいい。その榛名のほうが魅力的だ。

 

コンコンッ

 

そんなこんなしているうちにノックがなった。

 

「誰だい?」

 

「わたしよ。ちょっといいかしら」

 

この声は瑞鶴?一体どうしたというのだろうか?

まだ集合時間でもないし、朝食の時間までもうすぐだ。

榛名に目で問うと頷いて答えてくれた。

それに礼をしてから声をかける。

 

「空いています。どーぞ」

 

「失礼しまー…」

 

声を出しながら扉を開けかけていた瑞鶴がなぜか途中で止まった。

 

「まだ時間には早いですよ?それとも何か問題でもありましたか?」

 

「…えっと、うん。なんで榛名さんが居るの?」

 

ドアノブを握り、体の半分だけ部屋に入っている中途半端な体勢で問う瑞鶴。

 

「ん?あぁ、少し先に話したいことがあってね。ずいずいはどうしたの?」

 

「…へんな呼び方はやめて。榛名さんと話したいことねぇ…。じゃ私は居ないほうがいいかな?」

 

用があって来たのではないのか?

なのにさっさと帰る?よくわからないな…

 

「別にそうでもないけど、というより何か用があったのでは?」

 

「いいわよ、大したことじゃないし」

 

「瑞鶴さん、ちょっとこちらへ」

 

榛名が割って入る。

どうしたというのだろうか?

 

「なに?」

 

手招きに応じて瑞鶴がやっと部屋に入ってくる。

 

「ふふふっ、こうです!」

 

近寄ってきた瑞鶴に対して突如腕を掴み引っ張る榛名。

 

「きゃっ」

 

「ちょっ」

 

そしてそのまま体勢が崩れた瑞鶴がこちらに来る。

急いで受け止める姿勢をとる。

と、目の前で瑞鶴が止まった。

手を離していなかった榛名に支えられているようだ。

 

「ぇぅ」

 

数センチも無い距離に瑞鶴の顔がある。

どんどん瑞鶴の顔が赤くなっていく。

 

「榛名、急に危ないじゃないか」

 

「受け止めてくださいね提督」

 

こちらの言をスルーしながら手を離す榛名。

中途半端につんのめった体勢の瑞鶴はそのままこちらに倒れこんできたので、怪我をしないように隣の席へ誘導する。

 

「大丈夫?」

 

顔を真っ赤にしたまま黙り込む瑞鶴。

大丈夫だろうか?

 

「瑞鶴さんはこうしたかったんだと思いますよ?」

 

にこやかに言う榛名。

何がしたかったんだ?

 

「何がなんだかわからないけど、危ないから今みたいなのはもうしないでくれよ?」

 

「えへへ…ごめんなさい」

 

かわいい。

じゃない。

 

「ちゃんと瑞鶴さんにも謝ってね。で、瑞鶴さんはいつまで固まっているんだい?」

 

「…」

 

煙でも出そうなくらい真っ赤な瑞鶴はいまだ無反応。

 

「急にごめんなさい、瑞鶴さん」

 

「え、へ?あぁ。うん。危ないからもうしないでよね」

 

やっとこっちに帰ってきた様子。

 

「大丈夫かい?」

 

声をかけつつ顔色を覗く。

 

「だ、大丈夫。というか提督さん近いっ」

 

「あぁ、ごめん」

 

確かに受け止めるときにほぼ抱きしめるような感じに一瞬なっちゃったし、そのまま隣の席に座らせたからほぼ密着状態。その上顔を覗き込んだら確かに近いわな。

少し離れたところに座りなおす。

 

「もぅ。それで榛名さんはなんで急にこんなことしたの?」

 

「瑞鶴さんは提督の傍に来たかったのでしょう?でも榛名の所為でチャンスを逃すのは悪いと思いまして、折角ならお手伝いをしようと思ったんです」

 

ふんすっと自信たっぷりに良い仕事をした感を出す榛名。

瑞鶴の用は僕に会いに来ただけってこと?

瑞鶴が?

 

「だ、だれが提督さんに会いたくて一人先に来るモンですか!」

 

「ですよねぇ…」

 

そういったことをしてくれるほど瑞鶴と交流していないし、そもそも親交を深めても僕みたいなのにそんな風に思ってくれる娘は居ないだろう。

それこそプレイヤーに対してデフォルトで好意を持っている()()()()()()でもない限り…ね。

 

「けーっきょくこうなってるんだねー」

 

「…北上様、いつの間に?」

 

気付かぬ間に居た北上が気だるげ…というかジト目で言う。

 

「やっほー、北上様だよー。来たのはついさっき。ツインテが提督に抱きついてるところから」

 

「だれがツインテよ!」

 

瑞鶴が吼える。

 

「わかってるじゃん。ま、そっちがそうするのは好きにしてればいいしー。私は私で好きにするからさ」

 

そう言って近づいてくる北上。

 

「北上さん?」

 

「提督。ちょっと前かがみになってくれない?」

 

すぐ横に立つ北上のリクエスト。

 

「?いいけど」

 

よく分からないがとりあえず従っておこう。

 

「じゃ、失礼して」

 

「おふっ!?」

 

ひょいと視界から北上が消えたかと思うと背中に柔らかな感触と重み、そして微かに潮の香りが降りかかった。

 

「ちょっ、北上!提督さんに何しているのよ!」

 

「まぁっ大胆ですね」

 

瑞鶴が北上を降ろそうと暴れ、対照的になぜかうれしそうな声をあげている榛名。

こっちはぐらぐら揺らされて落ち着かない。

 

「ちょ、瑞鶴さんストップ。それは僕に負担がかかる」

 

「代わって欲しいなら後で交代するから揺らさないでよー」

 

のんきな声でありながら、しがみつく強さは結構強い北上。

 

「だ、だれも代わって欲しいなんていってないでしょ!いいから降りなさい!」

 

「えー、ちょっと落ち着き悪いけど結構良い感じだからヤなんだけど。提督が降りろっていうなら降りるけど?」

 

「提督さん、北上を降ろして」

 

なぜか矛先はこちらへ。

北上にくっつかれるのは良いのだが、座った体勢から上半身だけ倒したこの状態で上から押さえられるのは少々きついものがある。

悪いが降りてもらおう。

 

「あー、北上さん。この体勢は厳しいので降りてもらいたいです」

 

「ん。じゃあ別の体勢で」

 

すんなり退くと流れるようにおねだりする北上。

というか北上ってこういう娘なの?

ちょっとビックリ。もっとダウナーな娘でありながら面倒見の良い娘ってイメージだったけど、結構積極的に甘えてくるのね。

 

「あー、じゃあ膝の…いや、待てよ」

 

膝の上は流石にまずい。

何がまずいって?まずいものはまずいんです。

 

「ちなみに希望はあります?」

 

「…。じゃあやっぱり背中」

 

なんか間があったような…でもまぁ問題ないだろう。

少々居心地悪そうだけどね。

 

「こうすれば大丈夫ですかね」

 

座る位置をソファの浅いところにして背もたれと背中に隙間を作る。

するとそこに北上が入ってきて、そのまま背中にしなだれかかった。

 

「うーん。いいねぇ」

 

「…はぁ…」

 

もうなんだかあきらめた様子で溜息を吐く瑞鶴。

 

「あ、北上さん。一ついいですか?」

 

ニコニコしていた榛名が何かひらめいた顔で言う。

 

「なぁに?」

 

「先ほどおっしゃっていましたし、後で榛名に代わっていただけませんか?」

 

そういえば確かに代わって欲しければ後で代わるといっていたが…

 

「しばらく堪能してからで良いなら待っててー」

 

「はーい。お待ちしてますね」

 

勝手に順番待ちが出来てしまった。

 

「君たち、僕の意思は無視かい?」

 

「ん?そんなことないけど。もしかして嫌だった?」

 

「嫌ではないよ」

 

「なら無視してないじゃん。嫌じゃないだろうなーって思ってしてるんだもん」

 

なにやら北上にはお見通しのようだ。

 

「さよですか…」

 

「さよですよー。私がこうなっているのも()()()()()なんだしー。ちょっと重いのは我慢してねー」

 

「はいはい、さほど重くないのでだいじょ…ん?」

 

ちょっと待った。今北上が何か妙なこと言ったような?

 

「どうしました?」

 

「いや、今の北上の「あんたたちなにやってんのよ!」へぁっ!?」

 

大きな声に驚き、扉のほうを見ると叢雲がわなわなと震えながら仁王立ちしていた。

 

あぁ、そういえば瑞鶴が来たときからずっと扉開けっ放しだもんね。

廊下から丸見えやもんね。

 

「その…叢雲さん?」

 

「あ、叢雲さんもします?次は榛名ですのでその後になりますけど」

 

「だれが!というより、アンタこっちくる!」

 

「はい!北上さん。ちょいごめん」

 

「行ってらー」

 

叢雲の怒りが有頂天な状態だ。これは逆らわずただ濁流に身を任せるのが最善策だろう。

お説教。短いと良いなぁ…

朝飯、食えるかな?




一ヶ月以上経ってしまって申し訳ないです。
私事で申し訳ないのですが、生活環境が大きく変わりまして、少々時間が取り難くなっていました。
大変ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
だいぶ落ち着いてきましたので、多少は続きを書けそうです。

さて、言い訳タイムは終わりです。
だいぶアグレッシブな娘が増えました。
北上がおよそ他のところとは大きく異なる感じがあるかも知れませんが、それについてもおいおい触れていく予定です。
次もいつになるか分かりませんが、お待ちください。

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