僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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北上をおんぶしたい。


舞い踊るは桜吹雪6

「えー、提督と叢雲は諸事情で遅れるってさ。先にはじめろって命令だからやるよー」

 

珍しく日が昇っていても起きている川内が声をかける。

 

「知ってる娘も多いだろけど、昨晩2艦隊分の艦娘と合流。大本営から通知が出ていた娘たちだね。悪いけど来てもらえる?」

 

川内の招きに応え、金剛を先頭に12隻が前に出る。

 

「皆サーン、金剛型一番艦!金剛デース!!」

 

片手を腰に、もう片方を前に突き出しポーズを決める金剛。

 

「はい、じゃあうちまで来た経緯は金剛さんに説明してもらっていいですか?」

 

他に説明できる叢雲も提督も居ないため川内が説明しなければならないのだが、眠気の所為で説明するのが面倒になってきたため金剛に振る。

 

「いいデスよー。こちらの提督がマイシスターの榛名の提督ということで送りにきましタ!」

 

ざっくりと経緯を話す金剛。

ざっくりとしすぎていて困惑している娘らも多い。

 

「えー、コホンッ。私、霧島が金剛お姉さまの補足をさせていただきます」

 

それを察してか霧島が一歩前に出て解説を始める。

内容は榛名がここの提督を見かけ、自身の提督だと判断。

直属の上官に申告するも、榛名の能力の高さからうやむやにされかけていた。

しかし、話が分かる人物も居た。

その人物はこちらに榛名を送り届けるだけの裁量を持っていなかったが、榛名をここに送り出す作戦を提案。

それに従って任務中に深海棲艦に襲われ、保護された先の提督に適正があったというシナリオを実施。

多くの鎮守府に知られてる状況下であればうやむやにできない。

といったことの詳細を話した。

 

「といった経緯となります。ただ、予想外の出来事として、北上および瑞鶴もこちらの提督と対応することが発覚いたしました」

 

まとめの最後に北上と瑞鶴についても話す。

 

「流石霧島デース!とってもわかりやすかったデース!」

 

「ありがとうございます」

 

金剛にべた褒めされて頬を赤らめ照れる霧島。

そのタイミングで扉が開いた。

 

―・―・―・―・―・―

 

「お待たせしました。話はどこまで進みましたか?」

 

正直、一旦自室にもどって休みたいけどそうも言っていられない。

叢雲の折檻をなんとか短く切り上げてもらったのだ。

ダシにつかったこの場に出ないわけにはいかない。

 

「あ、提督。丁度金剛さん達が何で来たのか説明してもらったところ」

 

川内が簡潔に答えてくれた。

 

「了解。北上さんと瑞鶴さんについては?」

 

「ちょっとだけ触れたかな」

 

「あとは引き継ごう。さて、説明の通りうちの所属が増える。正規の手続きはまだな上、経緯の関係で何らかのトラブルが起きるかもしれないが、それについてはこちらで対応していくつもりだ。何か質問がある娘は居るかい?」

 

川内から進行役を引き継ぐ。

こういう司会進行は艦娘たちのほうが得意なのだが、叢雲さんが怖いので真面目に働いている姿を見せておかねば。

 

見回してもまだ整理し切れていないのか特に質問が出る様子はなさそうだ。

 

「ほーい」

 

と思っていたら後ろから気の抜けた声が聞こえた。

振り向くと北上が手をあげていた。

 

「なんでしょうか、北上さん」

 

「あのさ、提督はどうして私たちが提督の艦娘だと分かったの?」

 

む?どういう意味だろうか?

 

「あぁ、そういえば不思議ね。私も知りたいわ」

 

瑞鶴も乗ってきた。

 

「いや、特に決定的な理由はないですよ?あ、この娘うちの娘だって感じただけなんで」

 

「ちょ、ちょっとまってください」

 

急に大淀が声をあげた。

 

「どうしたんですか大淀さん」

 

「ちょっと話が見えないので確認させてください。北上さんと瑞鶴さんはこちらに来たときに提督が自身の提督だと分かったんですよね?」

 

「そうだよ」「そうね」

 

大淀は何が気になったのだろうか?

続きを聞こう。

 

「今の北上さんの言い方だとまるで()()()自身の艦娘だと分かったということですか?」

 

「あぁ、そうなりますね。それがどうかしましたか?」

 

榛名がアグレッシブ過ぎたので印象深いけど、確かそんな流れだった気がする。

それの何が気になるのだろうか?

 

「発言してもよろしいでしょうか?」

 

赤城が、というとうちのか本営から来たのか分かり難いな。

とりあえず今回は本営所属のほうの赤城が一歩前に出て言う。

 

「どうぞ」

 

「通常、提督…いえ、人間は自身に対応する艦娘を識別できないというのが通説です。しかし、あなたは北上さんと瑞鶴さんが自身の艦娘だと識別できました。それが不可思議だということです」

 

あー、確かに言われてみれば今までは分からなかったな。

現に分かってたなら斉藤の榛名を建造したときに気付くはずだし。

でも今は識別できる。

理由はわからない。が、心当たりはある。

 

榛名だ。

 

正確には榛名の持つケッコンカッコカリの指輪。

榛名に触れ、あれが反応してから北上たちが自分の艦娘だと認識できた。

今この場に居る娘たちにも同様の感覚を覚える。

 

これについて説明するのは難しいな。

分からないことが多すぎるのだ。

だからこれを示すのがはやいかな。

 

「榛名」

 

「はい」

 

一言声をかけただけでこちらの意図を察し左手を差し出す榛名。

 

「たぶんこれが関係していると思う」

 

榛名の左手を取る。

するとどこからかあたりに桜の花びらが舞い始める。

突然の光景に動揺する艦娘たち。

二度目でもその光景が珍しいのか最初にやったときに居た面子も呆然としている。

 

「これは…一体…?」

 

何とか搾り出すように大淀がつぶやく。

 

「これのおかげで榛名となんていうか…繋がった感じ?になれるんだ。そしたら何かいろいろ感じ取れるようになった。それ以上のことはわからないかな」

 

そっと手を離すと光の花びらは消えていった。

ほんの少しの間静寂で満たされる。

 

「あ、榛名も質問良いですか?」

 

榛名。僕の榛名の方だ。

静寂を破りいつもと変わらない様子で手をあげた。

 

「かまわないよ」

 

「それでは提督。そちらの榛名とはどこまでイキマシタカ?」

 

これまた唐突な質問だなぁ…

あれ?何か表情も話し方も普通なはずなのに、なぜだろう…背筋が急に寒く…

榛名はにこやかに少しだけ小首を傾げて尋ねている。

 

「えっと、別にどこもなにもないです…よ?」

 

やばい。何がやばいかわからないが第六感的な何かが緊急エマージェンシーを発令している。

重複表現?知ったこっちゃねぇ。そんぐらいやばいんだ。

なんで急にこうなった?

 

「ソウデスカ。なら、よかったです」

 

榛名が…これまた分かり難いから、僕の榛名をマイ榛名としよう。斉藤のは斉藤ズ榛名で。

マイ榛名の視線が斉藤ズ榛名へ向かう。

斉藤ズ榛名はこの異様な空気、例えるなら真夏の直射日光が当たる場所にも関わらずなぜか一切溶けていない氷が一個あるような異質感にただただ困惑している様子だ。

 

「えっと…」

 

「提督の榛名はハルナダケデスヨ?」

 

「ひゃっひゃい!」

 

おーい、マイ榛名のハイライトさーん。帰ってきて。

 

「は、榛名。そ、その辺で。ね?」

 

何とか威圧するマイ榛名を止めようと声を掛けてみる。

 

「えぇ、榛名は大丈夫です」

 

何が大丈夫なのだろうか?

それを聞く勇気は僕には無かった。

ただマイ榛名が目を伏せ下がったのでこの場はよしとしておきましょう。

してください。

 

 

「え、えーっと。他に質問ある方ー?」

 

こんな空気で質問しようなんていう娘は居なかった。

そりゃそうだ。この短時間で室温が数度下がったように感じられるし。

 

「じゃ、じゃあ今回の緊急集会は終了。みんな解散。お仕事にもどってね」

 

手を叩いて終わりをつげる。

するとざわざわと話し声が始まり、皆がそれぞれの持ち場に戻り始めた。

 

「Hey提督。私たちはどうするネ?」

 

金剛が尋ねる。

 

「君たちは客員扱いでしばらく待機しててもらうよ。大本営に連絡して向こうと打ち合わせしてから送り出すことになるので。それまではこちらで待機という名の休養をしていてくださいな」

 

「わかりマシタ。皆さん戻りましょう。部屋でティータイムにしまショウ!」

 

金剛が本営から来た娘たち─榛名、北上、瑞鶴を除いた娘らを連れて部屋を出て行く。

 

「じゃ、私も戻るね。そろそろ寝たい」

 

川内がそういい残して立ち去る。

今度今回の埋め合わせしないとな。

 

残っているのは僕、マイ榛名、北上、瑞鶴、叢雲、霞、大淀だ。

 

「で、どうして遅れてきたのかしら?」

 

霞がズイと顔を寄せながら言う。

それを聞くために残っていたのね。

 

「あー、うん。叢雲さん、お願い。僕は戻る」

 

こりゃ霞からも説教っぽいな…

朝一から叢雲に説教食らってんだし、逃げるが勝ちよ。

 

「は?アンタがアホなことしてたからじゃない」

 

しかし叢雲に回り込まれてしまった。

 

「アホなこと、ねぇ…」

 

霞にものっそいジト目で見られる。

 

「別にそうでも無くない?」

 

北上が言う。

思わぬところから助け舟だ。

 

「何したって言うのよ」

 

「提督は何も。ちょいちょい提督こっち」

 

そういいながら北上に手を前に引っ張られる。

どうしたのだろうか?

 

「なんでしょう?北上さん」

 

問に答えることなく黙って後ろに回る北上。

何だろう?

 

「そぉれ」

 

「おぅゎ」

 

「なっ」

 

北上が背中に飛び乗ってきた。

 

「危ないじゃないですか」

 

「大丈夫なときにしかしないからヘーキヘーキ」

 

へーきじゃないです。いくら一般的な女の子よりも軽くてもそれなりの重量があるんですよ?

助け舟かと思ったが、違ったようでちょっとよろしくないかも。

 

「あ、北上さんずるいです。次は榛名の番って話でしたよね!」

 

突っ込むのはそこですか…

 

「いやー、まだ満足してないんで」

 

「なにやってるのよ、アンタらは!バッカじゃないの!?」

 

霞がキレた。

 

「うーん、バカで結構かなぁ…。こういうのはやらないでいると後悔するよ?」

 

「北上?」

 

なんていうか、哀愁のような、後悔のような、懺悔のような。

明確な判別はできないが、北上からはなにやら悲しそうな感じがした。

 

「デレデレしてないでさっさとおろす!このクズ!!」

 

デレデレする余裕なんてないんだけどなぁ…

 

「その、北上さん。霞さんもこうおっしゃってるので降りてくれるとありがたいなって」

 

「…しょーがないねぇ・・・」

 

のそりと降りる北上。

振り向き表情を見るもぽけーとしているその顔からは何も読み解くことは出来なかった。

もともとそういうの苦手だしね。

 

「あの、そろそろ業務の話をしてもよろしいでしょうか?」

 

控えていた大淀がコホンと仕切りなおしてくれる。

この助け舟に乗らない手はない。

 

「あぁ、そうしましょう。とりあえず早急に金剛さんたち関連を報告と調整を始めないとね」

 

ものすごく鬱憤がたまっている感を出している霞だが、仕事の邪魔をする気はないようで控えてくれている。

北上たちもそれらを察してくれたようで退出し始めた。

さて、いろいろ立て込んでいるけれど、悪いことばかりではない。

なにより今回榛名が来てくれたのは非常に良い。

ちゃっちゃと面倒を片付けて榛名とのんびりしよう。




前世記憶持ちのヤn…デレデレ榛名、なにやら好感度高く乗っかってくる北上に比べて瑞鶴が控えめですね…

既存組も含めてシナリオ進行だけではなく、単なるイチャつき話をそろそろ差し込みたいなと考えていますが構成ってむずかしいですね。

あと最近タイトル詐欺という感想が多く見受けられますし、自分でもそう思い始めたので開き直ってタグ追加しようかと考え中です。
なんていうかスミマセン。

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